機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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ギレンの血脈

 グワンザムに接舷したアヴァロンにネオジオンの兵士が数名乗り込んできた。

 それを出迎えるように待っていたのはフォルストとネージュで、その後ろにはジッパーのついた大きな黒い袋が浮かんでいる。

 ネオジオンの兵士が銃を構えると、フォルストは手を挙げた。

 

「抵抗の意思はない。我々はネオジオンへ亡命するためにここに来たのだ」

 

 フォルストの言葉を聞いても、ネオジオンの兵士は銃を下ろさなかった。

 睨み合いが続くと、ネオジオンの兵士達が通路の脇に整列する。

 兵士達の前に姿を見せたのはディクセルであった。

 

「無礼な歓迎になってすまない。私はディクセル・ニールゲン。貴官がフォルスト・イースレット殿か?」

 

「はい。その通りです」

 

「では、後ろにおられる方が」

 

 ディクセルの視線は、フォルストの後ろに立つネージュへと向いた。

 少しだけ怯えた表情を見せたネージュを見て、ディクセルが怪しく笑う。

 

「ご心配なさらず。あなたに危害は加えません。もちろん、あなたのお父上にも」

 

 うやうやしく頭を下げたディクセルは、グワンザムに続く通路を進むよう促す。

 

「ここで話すのもなんですから、我が艦にいらしてください。フォルスト殿もご一緒に」

 

 こくりと頷いたネージュ。

 兵士の1人が案内をするようにディクセルに指示されると、その後ろをフォルストとネージュが歩き始めた。

 更にその後ろを歩くディクセルに続いて、アヴァロンに乗り込んだ兵士が黒い袋を持ってグワンザムに引き上げていく。

 

 すると、グワンザムとアヴァロンを繋いでいた通路が外され、2隻は分断されてしまった。

 振り返るネージュにディクセルが優しく言う。

 

「ご安心ください。あなたを今後、お守りするのは我らの役目。アヴァロンには、後ほど我が艦隊に入れるよう手筈が整っております」

 

「あの、ネオジオンに亡命を望まない人もいます。その人達を解放してあげられませんか?」

 

「心得ております。サイド6にあるコロニーに話をつけてありますので、そちらに寄り次第、順次解放いたします」

 

 解放の言葉を聞いたネージュだが、まだ顔のこわばりは取れていない。ネージュは止めていた足を進める。

 兵士が案内したのは、艦長室であった。中に入るよう促すディクセルに従い、フォルストとネージュは艦長室に入る。

 

「どうぞ、そちらのソファでおくつろぎください。フォルスト殿、1杯やりませんか?」

 

 そう言うと、ディクセルは戸棚からグラスとワインボトルを取り出した。

 

「いただきます」

 

「そうこなくては。今日はおめでたい日です。こうして、ネージュ様と会うことができたのですから」

 

 テーブルに置かれた2つのグラスにワインが注がれる。

 芳醇な香りが漂うと、フォルストとディクセルはグラスを持った。

 

「新たなジオンの後継者、ネージュ様に乾杯」

 

 グラスの縁を重ねると、ディクセルはワインの香りを楽しみながら口に含んだ。

 同じようにワインを飲んだフォルストが言う。

 

「ディクセル殿、これからのことですが」

 

「フォルスト殿、そう急ぐこともあるまい」

 

「まだあれの確認をされておりません」

 

 ふむ、とディクセルは言うと外の兵士に指示を出し、艦長室に黒い袋を持ってこさせた。

 兵士が去ると、ディクセルは怪しく笑いながら袋のジッパーをゆっりと下げる。

 あらわになったのは、人であった。生命の鼓動を感じないそれは、紛れもなく死体である。

 

 低く笑うディクセルの声が段々と大きくなった。

 声を大にして笑うディクセルは、破顔したままネージュに視線を向ける。

 

「こちらは見られましたかな?」

 

「いえ……」

 

「ならば良い機会です。ご覧下さい。あなたのお父上の姿を」

 

 袋を剥ぎ取ったディクセルが死体の肩に手を回して、愉悦に歪んだ笑みを見せる。

 

「ギレン・ザビ総帥。そう、あなたのお父上、その人です」

 

 防腐処理をされたであろう死体は、生前のギレン・ザビの姿のままであった。

 死体から目を背けたネージュにディクセルが続ける。

 

「おや? ネージュ様、いかがなされました? ちゃんと見て差し上げるべきかと。それとも、やはりもう1人の自分を見るのは気持ちが悪いですかな?」

 

 目をつぶったネージュは首を振って、ディクセルの言葉を聞かないようにしている。

 だが、それを嘲笑うようにディクセルは言った。

 

「ギレン・ザビのクローンである、あなたには、ね」

 

 凍てつくような冷たい声音で放たれた言葉が、ネージュの心に突き刺さった。

 

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