機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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コロニー侵攻

 サイド2のコロニー群が目視できる距離に入ったと艦内放送が告げるのを、ローマンはガザDのコクピットの中で聞いていた。

 コンソールに足を乗せてくつろぐ姿から緊張感はまるで伝わってこない。それどころか鼻歌まで歌っているという落ち着きようであった。

 エンドラ級巡洋艦ハイドラはアクシズで補給を受けた後、コロニーへの侵攻を指示され、またサイド2へと戻ってきたのだ。

 

 アクシズからネオジオンに名前が変わっても、ハイドラの乗組員の士気にはあまり影響がなかった。

 元が海賊稼業で食ってきたことが多い連中だ。生きるか死ぬかのやり取りを続けてきた者達にとって、呼び名が変わってもやることは一緒なのだ。

 生きるために他者のモノを奪う。命だろうが金だろうがだ。それこそがローマンたち宇宙海賊の流儀であった。

 

 開いたままのガザDのコクピットに1人のパイロットスーツを着た者が近づく。

 

「ローマン様、準備ができました。いつでも行けます」

 

 きびきびとした声を上げたのは、アクシズで補充された若い青年パイロットであった。

 熱い思いが表情からも見て取れる。ネオジオンという名に誇りを抱き、この侵略を正義の行いだと考えている顔だ。

 ローマンは顔の前で手を振ると、口角を上げた。

 

「様付けとかしなくていいからさ。お頭の方が性に合ってるんだよねぇ」

 

「お頭……ですか?」

 

「そっ。まあ、もうちょっと砕けなよ。じゃないと、皆と仲良くできないよ?」

 

「はあ……」

 

 青年は戸惑った様子で返すと、ローマンがパンパンと手を叩いた。

 

「さ、MSに乗った乗った。ジークジオン! ってね」

 

 からからと笑うと、つられたように整備士達も声を上げて笑った。

 更に戸惑った青年は失礼しますと言って、乗機のガザCへと向かう。ありゃ、早々に死ぬかもしれんな。

 ローマンは青年の背中を見つめると、無線をオンにした。

 

「皆、準備はできたかな? いつも通りリラ~ックスしてやろうじゃないのぉ。戦争ってやつをさ」

 

 艦内に歓声が響き渡る。ローマンコールが響く中、艦内放送が鳴った。

 

「ローマン、作戦開始だ。さっさと準備しろ」

 

 ヘックスの不機嫌そうな声に、ローマンはヘラヘラと笑い返す。

 

「んじゃ、行くとしますかねぇ」

 

 コクピットのハッチを閉じると、ガザDの単眼に光が灯った。

 ハッチが上がり宇宙空間が広がると、サイド2のコロニー群がモニターに映る。作戦はコロニーにいる地球連邦軍の駐留軍を叩くこと。

 どの程度の戦力かは分からないので、考えないことにした。

 

 出てきた敵を落とす。なんならMSを奪ったって良い。闇で売りさばくルートなら確保してあるのだ。

 正規軍に入ったからとはいえ、贅沢ができる訳ではない。

 海賊をやってた頃、うまく行った日はどんちゃん騒ぎをしていたものだが、今は自由に使える金がなかった。

 

 ないなら奪えばいい。その精神を持った部下が先日、エゥーゴの生き残りを襲いに向かったが、見事に返り討ちにあってしまった。

 仲間を失った悲しみはある。苦楽を共にした仲間だったのだ。

 だが、それと同じくらい心が躍った。

 

 あのリックディアスは2機を相手にしながら、1機をあっさりと撃墜し、もう1機に損傷を与えたのだ。

 それに俺との戦いでも的確に狙ってきたことから、エースパイロットに違いない。

 先行量産型のガザDをゴリゴリにチューンしたお陰で傷一つ負わなかったが、もしノーマルのままだったら多少の損傷はあったのではないかと思ってしまう。

 

 それほどまでに良い動きをしていた。

 張り合いのない敵とばかり戦ってきたせいか、あんな熱い敵とやり合ってしまったら胸の中が滾ってしまってしょうがない。

 こうして宇宙で戦っていれば、いずれまた会えるのではないだろうか。

 

 そう思うと、思わず笑みが浮かんできた。

 オペレーターからの指示に従いカタパルトに足を乗せて、発進準備に入る。

 少しは楽しめる相手がいると良いのだが。淡い期待を持ったローマンに発進の指示が飛ぶ。

 

「ローマン・ローランド。ガザD、出るよ」

 

 カタパルトによる強烈な加速。パチンコで弾き出された玉のように一気に飛んでいくと、MA形態に変形し、更にスラスターを吹かした。

 コロニーに接近すると、いくつかの光点をモニターが捉える。識別番号RGM-79R ジムⅡが3機編隊を組むようにして、まっすぐこちらに向かってきた。

 まずは3機か。ローマンは速度を緩めることなく直進し、ナックルバスターを1機に向けて撃った。

 

 砲口から吐き出されたビームがジムⅡに直撃すると爆散。

 残りの2機は慌てて距離を取ろうとするが、加速のついたガザDから逃れることができなかった。

 MS形態へ変形しつつ、ビームサーベルを抜いたガザDは勢いをそのままにジムⅡへと襲い掛かる。

 

 一閃。ジムⅡの右手が両断され、爆発が生じた。

 ガザDは抜けざまにバーニアを噴射して横回転しつつ、更にビームサーベルを振るい、ジムⅡの頭部を両断する。

 無力化されたジムⅡを放って、最後の1機を追いかける。

 

 ジムⅡは恐怖に駆られたのか、背中を見せて逃げ始めた。

 逃げんなよ、コロニーを守るのがお仕事なんだろ。

 ローマンはガザDをMA形態に変形させスラスターを全開にして、一気に距離を縮める。

 

 ジムⅡとガザDの間には圧倒的な性能差があり、ジムⅡが逃げきれる訳がなかった。

 猛進するガザDはジムⅡの背後に迫ると、再度MS状態に変形し、ジムⅡの背中に取りつく。

 コクピットにビームを収束する前のビームサーベルを押し付けたローマンが接触回線を開き言う。

 

「降参したら命は取らないよ。まぁ、無理にとは言わないけどね」

 

 ビームサーベルに微かに光が灯った。

 

「わ、分かった! 降参だ! 助けてくれ!」

 

「そりゃ良かった。無駄に殺すのは気が引けるからね。ささっと武装解除しなよ」

 

 ジムⅡはビームライフルとシールドを手放し、手を上げた。

 そうこうしていると、後続のガザC隊が到着。1機のガザCがガザDに触れる。

 

「お頭、さすがです」

 

「ま、こんなもんでしょ。この子と、あっちに浮いているジムⅡを持って帰ってよ」

 

「はい。了解です」

 

「はいは~い。お疲れ様」

 

 ガザCは、別のガザCに指示を出すと、捕獲したジムⅡと無力化したジムⅡをハイドラへと連れ帰り始めた。

 その様子を確認したローマンは次なる獲物がないかモニターを舐めるように眺めたが、他に敵影は見えない。

 

「隠れてんのかな? まあ、良いや。もっと稼がせてもらうとしようかな」

 

 ローマンはフットペダルに力を込め、スラスターを調整してコロニーへと向かう。

 サイド2がネオジオンによって占拠されるのは、大して時間は掛からなかった。

 

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