機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
1つのコンテナを残したヴェアヴォルフは、グワンザムからぬっと姿を見せたクィン・マンサに向けてビームを放った。
一直線にクィン・マンサに突き進んだビームが直撃寸前で消え去る。
クィン・マンサは肩にあるバインダーを前面に出していた。
「くっ。Iフィールドか」
ライセイは苦々しい表情で言うと、ゆっくりと宇宙に飛び上がったクィン・マンサに向けビームライフルを連射した。
全てのビームがクィン・マンサの肩のバインダーが発するIフィールドによって消失してしまう。
宙に浮かぶクィン・マンサの頭部、胸部、腕部にビーム光が宿るのを見たライセイは、スラスターとバーニアを噴射させた。
クィン・マンサより一気に放出された拡散メガ粒子砲からのビームの嵐がヴェアヴォルフに襲いかかる。
咄嗟の判断でビームの回避に成功したライセイは、スラスターを更に噴射させて距離を詰めた。
ビームサーベルであればIフィールドの効果範囲の内側に入ることができるからだ。
接近戦であれば勝機が見えてくる。
次のビームが放たれる前にカタをつけようとしたライセイは、クィン・マンサから射出された小さな光を見て急制動を掛けた。
その刹那、ヴェアヴォルフの前を複数のビームが行き交う。
「ファンネル!?」
バーニアを細かく操作し、ビームの雨を縫うように避ける。
宇宙空間を自由に飛び交う移動砲台のファンネルから、次々とビームが放たれた。
「くっ!?」
スラスター部を一筋のビームが貫いた。
爆炎が上がると、ライセイはコンソールを操作して、ヘカトンケイルを切り離す。
爆散するヘカトンケイルから放り出された最後のコンテナ。
ライセイはコンテナを目指すが、その行く手をファンネルのビームが遮る。
周りを取り囲むファンネルが着実にヴェアヴォルフを捉え始めた。
追い詰められるライセイ。ファンネルが作り出した牢獄に足を踏み入れたことに気づいたが、すでにビームがチャージされていた。
ビームの光を灯したファンネルの1基を鋭いビームが射抜く。
爆発したファンネルが作り出した牢獄の隙間をライセイは突き抜けると、ビームの射線を辿った。
そこにはダークグレーの塗装を施したザクⅢ改の姿があった。
◇
ヴェアヴォルフとクィンマンサが戦闘に入ったとき、ハイドラに警報が鳴り響いていた。
「全機出撃しろ! 識別信号は変更しておけよ! 撃たれたらかなわんからな」
ハイドラのMS隊に指示を出したヘックスは、グワンザムから現れた大型MSを注視した。
これがローマンの言っていた山場なのだろうか。
ディクセルはとんでもない隠し玉を持っていたという訳だ。
ズームした画像が映し出すのはヴェアヴォルフが必死にビームを躱すところであった。
クィン・マンサより放たれたメガ粒子砲。巡洋艦の主砲に匹敵するであろう出力にヘックスは度肝を抜かさた。
あんなのと、どう戦えば良いと言うのだろうか。
流石のローマンでも危険なのでは。
嫌な想像が頭を過ぎる中、真っ先に飛び出したのはローマンの乗るザクⅢ改であった。
慌ててローマンに通信を入れる。
「ローマン、とんでもないのが出てきたぞ。下手にやり合うのは危険だ。契約通り、アヴァロンの撤退の手伝いを優先だ」
「何言ってんのさ。あれを倒さなきゃ、おちおち逃げることもできないって」
「それは」
ローマンの言葉は正しかった。
全速力で逃げたとしても、あの火力で後ろから襲われたら一溜りもない。
だが、ここでローマンを失う訳にもいかないのだ。ヘックス達を引っ張るのはローマンなのだから。
「アヴァロンと繋げ!」
オペレーターに指示を飛ばすと、モニターにカイムが映し出された。
「おい! そっちのMS隊を出撃させろ! こっちだけじゃ手に負えん」
「承知している。こちらも間もなく出撃準備が整う」
「早くしてくれよ! まだグワンザムには戦力があるはずだ! 数で負ける訳にはいかん」
「分かっている。こちらのMS隊は4機だ。そちらは?」
「6機だが、1機はあの化け物の所に行ってしまった」
焦るヘックス。グワンザムには10機のMSが搭載できたはずだ。
今、出たクィン・マンサを含めれば、残りは9機である。
ハイドラとアヴァロンのMS隊が出撃すれば、数としては負けない。
同じように考えたのか、カイムが頷いた。
「数ならば同等だな」
「数ではな。腕前なら、こっちの方が場数を踏んでる分、上だぞ」
「頼もしいな。味方になってくれて助かる」
「はっ! 礼ならスペクターに言っときな。こっちは金で雇われただけだ」
つっけんどんな返しをしたヘックスに、カイムが苦笑する。
例え金を積まれたとしても、この艦隊を相手に裏切るのは難しい。
ヘックス達にスペクターから依頼されたのは、アヴァロンの撤退を支援するもので、もしMS隊を出して戦えばボーナスがつくというものだった。
金に目が眩んだと言えば、それまでだが、ローマンはここまで見越していたのではないかとヘックスは思っている。
どう見ても無謀な賭けだったのが、じわりじわりと優位な方に傾いている。
だが、クィン・マンサが出てきたことによって、また不利な方に勝負の針が向いたのではないだろうか。
「アヴァロンが落とされれば、全てがおじゃんだ。さっさとMS隊を出してくれ」
「ああ。不思議なものだな。エゥーゴとネオジオンが手を組むのは」
「もうネオジオンじゃない。生き延びたら、気楽な宇宙海賊に逆戻りだ」
微かに笑ったヘックスは通信を切ると、発進するMS隊のスラスター光を見る。
この内、どれだけ生き残ることができるのか。
仲間の無事を祈ることしかできない自分が恨めしくなった。
◇
警報が鳴り響くアヴァロンのMSデッキでは、今まさに出撃の時を迎えていた。
クラウスは、まだ事態を飲み込めていない新入りの3人に言い聞かせる。
「識別信号だけは気をつけろ。ネオジオンのMSでも味方がいるからな」
「クラウス隊長。よろしいですか?」
シンリーが困惑しながら問いかけた。
「我々はエゥーゴとして、ネオジオンと戦えば良いのですよね?」
「そうだ。ライセイ少尉だけに任せる訳にはいかんからな」
「ライセイ少尉が……。分かりました。ネオジオンと戦います」
迷いを吹っ切ったシンリーのジムⅢはカタパルトデッキへと向かう。
同じくクラウスのリックディアスⅡも出撃態勢に入った。
「クラウス・リーバー。リックディアスⅡ、出るぞ」
「シンリー・ラウ。ジムⅢ、行きます」
同時にカタパルトから射出された2機の前方を飛ぶガザD。
識別信号は味方のものを示していることをクラウスは確認した。
そのとき、グワンザムから次々と光点が離れていく。
MS隊のお出ましである。
「各機、俺が前面に出る。後方からの支援は頼んだぞ」
そう言うと、迫る光点に向け2連装メガビームガンを発射した。
宇宙の闇を払うような一撃が、光点の1つに直撃する。
爆発の光が輝くと、クラウスはスラスターを噴かして加速した。
ディクセル艦隊との戦闘は大詰めを迎えようとしていた。