機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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兵士崩れの宇宙海賊

 クィン・マンサの射出したファンネルを1基撃墜した、ザクⅢ改。

 戦場の視線は自然とザクⅢ改へと向いた。

 

「ローマン! どういうつもりだ!?」

 

 ディクセルの怒号が飛んだ。

 怒りを向けられたローマンは、片側の口角を吊る。

 

「見たまんまだよぉ。今日限りでネオジオンとは、おさらば、ってこと」

 

「貴様っ! 拾ってやった恩を忘れたというのか!?」

 

「悪いけど拾われたつもりはないよ。来て欲しいって言われたから行っただけ。なら、抜けるのも自由でしょ?」

 

「ふざけるな! 殺れ!」

 

「はい、マスター」

 

 抑揚のない声で答えたギルロードは、ファンネルを操ってローマンの乗るザクⅢ改に集中砲火を浴びせる。

 だが、それもMSとして桁違いの推力を持つザクⅢ改を捉えることはできなかった。

 ファンネルのビームを華麗に避けたザクⅢ改はビームライフルの銃口をクィン・マンサに向ける。

 

 射出されたビームはクィン・マンサの肩のバインダーが生み出すIフィールドによって消失した。

 

「ありゃ? Iフィールドかぁ。これまた厄介なものを積んでるねぇ」

 

 射撃態勢から素早く姿勢を変えると、一気に加速した。

 一筋縄では行かないと判断したローマンは無線をオープンチャンネルにする。

 

「弟くんだよね? 1機じゃ苦が重すぎるから、手伝ってくんない?」

 

 通信を受けたライセイは戸惑いながら言う。

 

「あの? 味方なんですか?」

 

「そ。今日だけはね。色々と思うところはあるだろうけどさぁ、ちょっとだけ忘れてくんないかなぁ?」

 

 会話をしながらもファンネルの追撃を避け続けるローマン。

 クィン・マンサはファンネルを呼び戻すと、今度は複数の拡散メガ粒子砲をザクⅢ改へと向けて発射した。

 逃げ場のないビームの暴風をザクⅢ改はスラスターを全開にして避ける。

 

 体が圧縮されそうなGを受けてなお、ローマンはまだ笑みを失っていなかった。

 こんな化け物と戦う機会はそうない。だが、心が踊らないのは、パイロットからの熱量が伝わらないからか。

 ディクセルがMSを動かせるとは思えない。他の誰かの存在を確認すべく問いかける。

 

「ねぇ、ディクセル様。ギルちゃんはどうしたの?」

 

「ふんっ! ギルロードならば、私の前にいる」

 

「へぇ。ギルちゃんにしては、大人しい攻め方だね。感情が伝わって来ないよ」

 

 ローマンの言葉に、ディクセルは得意気に低く笑った。

 

「そうだ。ギルロードは、私に尽くしてくれる人形となったのだ。もう不安定な強化人間ではない」

 

 高々と笑うディクセルに、ローマンは珍しく嫌悪感を覚えた。

 人それぞれ信念はあるだろう。それを否定する気は毛頭なかった。

 だが、ディクセルは人を犠牲にすることを厭わない外道である。

 

 険しい表情でローマンが言う。

 

「やっぱり、あんたの元から去ったのは間違ってなかったねぇ」

 

「今更、戻ると言っても聞かぬぞ? お前はここで死ぬのだ、ローマン」

 

「そうやって、あんたは部下を殺してきたんだろう? 元ザビ家親衛隊隊長さん」

 

 ローマンはスペクターから聞いた話を思い出す。

 ディクセルの過去に行った非道の数々。権力を振りかざして、弱者をいたぶってきた者の情報を聞かされた。

 スペクターはローマンの信念を知っているかのように話すと、それでもディクセルの元にいるのか。と問われた。

 

 ローマンは戦場で共に戦った仲間を家族と同じように思っている。

 部下でも、それは変わらない。

 だからこそ、ディクセルの行いが許せなかった。何人もの部下の死骸で積み上げてきた玉座に座る男。

 

 裏切りの決定打となった者のことを語る。

 

「ブライアンだっけ? フォルスト艦長の息子さんを仲間になぶり殺しにさせたのは」

 

「お前もその名を呼ぶか! たかが、新兵の1人が死んだくらいでガタガタと」

 

「つくづく分かり合えないねぇ、あんたとは」

 

「宇宙海賊上がりが偉そうなことを! ギルロード! ローマンから先に殺せ!」

 

 クィン・マンサから放出されたファンネルが、ザクⅢ改に殺到する。

 多方面からの一斉射に流石のローマンも冷や汗をかく。

 

「こいつはちょっとヤバいかもね」

 

 苦笑するローマンはライセイに通信を入れる。

 

「弟くん、なんか策があるんじゃないの?」

 

 ローマンは直感でものを言った。

 それはヴェアヴォルフが宇宙を漂うコンテナを目指していたからだ。

 ライセイには、何か策があるのではと踏んでのことだった。

 

「あります」

 

「なら、時間を稼ぐから、よろしく頼むよ」

 

「分かりました。でも、僕はあなたのことを許した訳じゃありませんから」

 

 会話を切り上げたライセイに聞こえないように、ローマンは呟く。

 

「恨みってのは怖いねぇ、本当に」

 

 迫るファンネルの1基をビームライフルから発射したビームで撃墜する。

 だが、まだまだファンネルは宙を舞っていた。

 残りのファンネルは28基。まともにやり合うには数が多すぎる。

 

 愚痴が零れそうになったとき、クィン・マンサの腕部と胸部の拡散メガ粒子砲に光が収束した。

 

「やばっ!」

 

 ローマンはバーニアを駆使して飛来するビームを避ける。

 だが、その動きが不味かった。ビームの隙間を縫ってファンネルが接近してきたのだ。

 ファンネルの存在に気づいたローマンだが、拡散されたビームも飛ぶ中で回避するための選択肢は多くなかった。

 

 ビーム光が輝くファンネルからビームが発射される。

 射線上にはビームを必死で避けるザクⅢ改。

 撃ち出されたファンネルのビームがザクⅢ改の装甲を焼き切った。

 

 爆炎が上がったが、それでもザクⅢ改は態勢を崩すことなく、ビームを避けきる。

 一先ず、クィン・マンサからローマンは距離を置いた。

 機体の損傷をモニターが表示する。

 

 だが、まだ戦える。致命傷にはなっていない。

 もし、拡散メガ粒子砲のビームを受けていたら、こうはいかない。

 損傷を最小限に食い止めるため、ファンネルのビームの幾つかを敢えて受けることにしたのだ。

 

 余裕のない表情となったローマンに、ディクセルの高笑いが響く。

 

「どうした、ローマン!? その程度か!?」

 

「随分と強気じゃないの? そういうのって、足元をすくわれがちなんだよね」

 

「ならば、やってみせるがいい! ギルロード!」

 

 再び、拡散メガ粒子砲に光が宿る。

 ファンネルも合わせたかのように飛び始めた。

 次は避けられるか。自問をしたとき、クィン・マンサの肩部が爆発をおこした。

 

「なんだ!?」

 

 驚きの声をあげたディクセル。

 クィン・マンサの視線の先には、ZⅡとガンダムMk-Ⅲの姿があった。

 

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