機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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最後の希望

 ZⅡとザクⅢ改が死闘を繰り広げる中、ライセイのヴェアヴォルフは流されたヘカトンケイルの最後のコンテナに向かっていた。

 あれが切り札になる。あれがなければ、クィン・マンサを倒すことは難しい。

 ライセイはスラスターを更に噴かすと、コンテナ目掛けて飛翔する。

 

 そのとき、ライセイの直感が警鐘を鳴らした。

 バーニアを噴射して軌道を逸らしたとき、高威力のビームがヴェアヴォルフの傍を抜けていく。

 視線を向けると、グワンザムより出撃したMSが2機、ライセイに向かって飛んできていた。

 

 1機はドライセンだ。そして、もう1機はバウ・エーデルであった。

 バウ・エーデルの姿を見たライセイは身構えたが、発せられているプレッシャーは前と比べると格段に低い。

 あのときのパイロットと違うのか。一瞬考えるが、敵が弱くなっているなら好都合だ。

 

 コンテナに向かえば、背後を取られかねない。

 2機を相手にするしかない。だが、やれるのか。ライセイの乗るヴェアヴォルフはグリプス戦役末期に製造されたものだ。

 プロトデルタに力負けしたのを考えると、素のヴェアヴォルフは決して強くはない。

 

 対して敵は量産機の中でも高性能の2機だ。

 圧倒的に不利。しかし、やらない訳にはいかない。

 ライセイは2丁持ちしていたビームライフルの1丁を放って、ビームサーベルを引き抜いた。

 

 どのように戦うか。敵の出方を伺うライセイに仕掛けたのは、バウ・エーデルであった。

 巨大化したスラスターを煌めかせたバウ・エーデルであったが、ライセイの知っているほどの速さではない。

 ライセイは冷静に相手の動きを見据えて、バーニアを細かく噴射した。

 

 バウ・エーデルの放つビームを避けたヴェアヴォルフはビームを2発放つ。

 発射されたビームはバウ・エーデルの左肩を貫通し、盛大な爆炎を上げる。もう一撃。

 狙いをつけようとしたライセイの勘が冴えわたる。

 

 スラスターの出力を上げて上昇すると、太いビームがヴェアヴォルフの足元を掠めた。

 射手はドライセンで、装備している大型のビームバズーカから放たれたビームである。

 バウ・エーデルはドライセンと合流すると、2機でビームを撃ち始めた。

 

 距離はまだ空いている。ライセイは注意深く敵の攻撃を見て、的確に避けた。

 敵はヴェアヴォルフを捉えられないことに苛立ちを見せると、ムキになったように更に銃撃を続ける。

 迫る銃火を巧みに回避したヴェアヴォルフが、ビームライフルで反撃をした。

 

 射出されたビームはドライセンの持つビームバズーカの銃身を溶解させる。

 ビームバズーカを捨てたドライセンは手にしていたビームアックスにビームを宿らせた。

 示し合わせたのか、バウ・エーデルがビームライフルで牽制をすると、ドライセンは左腕部にある3連装ビームキャノン撃ちかける。

 

 殺到するビームをライセイは冷静に対処した。

 ヴェアヴォルフのスラスターとバーニアを細かく調整しながら、最小限の動きでビームを避ける。

 そこにビームアックスを振りかぶったドライセンが肉薄した。

 

 振り下ろされるビームアックスをヴェアヴォルフは半身になって躱す。

 そのまま、ヴェアヴォルフはくるりと回って、ビームサーベルでドライセンの背中を斬りつけた。

 両断されたドライセンは一瞬間を置いて爆発の光を放つ。

 

 残るはバウ・エーデル1機。ライセイが敵を見据えたとき、バウ・エーデルを極大なビームが飲み込んだ。

 見覚えがあるビームの射線を辿ると、リックディアスⅡが接近してきていた。

 

「ライセイ少尉、無事か?」

 

 クラウスは辺りを警戒しながら言った。

 

「クラウス大尉、ここは任せても良いですか? このままじゃ、あいつに皆やられてしまいます」

 

「あの大型MSか。ライセイ少尉、託してばかりですまない」

 

「なら、戦いが終わったら恨み言を1つか2つ言わせてください」

 

 軽口を叩くライセイにクラウスは苦笑しつつ返す。

 

「何番目になるか分からんが良いか?」

 

「待たせてもらいます。だから、死なないでください」

 

 ヴェアヴォルフのスラスターを全開にして、コンテナの回収に急ぐライセイ。

 宇宙を漂うコンテナに接触したライセイは、クイン・マンサの元へと急行する。

 切り札となる、このコンテナ。

 

 だが、それを使ったとしても勝てるかどうか分からない。

 もう一手何かが欲しい。あの高火力では接近する前に墜とされるかもしれないのだ。

 そのとき、ライセイは温かな風が吹いた気がした。

 

 まるで春の温かな日差しの下で吹く風が、肌に優しく触れていったような感触。

 この温かさに覚えがある。ライセイは思わず笑みを零した。

 

「ネージュ、ありがとう」

 

 愛しき人の思いを受け取ったライセイは、クィン・マンサの元へと急行した。

 

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