死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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総合評価567、あざまる(●ꉺωꉺ●)


10話 「魔法ダメ、絶対」

 

 

「ええっと、すみません。難しいこと全然わからなくて...そういうことってよくあるんですか?」

 

「まさか、普通なら考えられないよ。でも事実メイプルはこの世界に来てしまっているわけだし」

 

 キリトは改めてメイプルを見た。

 SAOとは全く違ったシステムを持ちながら、SAOに降り立った少女。本来であればこの世界にとってプレイヤーとしてすら認識されないはずのデータは、しかし間違いなくひとつのアバターとして成立している。

 

「実際俺の攻撃は全く通らなかったのにメイプルの攻撃だけが通るのもおかしい。でも、あのヒドラそのものがNWOのシステムで動いているのだとしたら、同じシステムを持つメイプルにしか倒せなかったのも納得できるんだ」

 

 SAOのモンスターであればプレイヤーが武器も使わず噛み付いたところでダメージを与えることはできない。しかしSAOではない、全く別のゲームの仕様がそのままこの世界で成立するのであればどうか。

 

(もしかして、今後もメイプルの前でこんなふうにNWOのモンスターが出現する可能性があるのか?)

 

 もしそうだとすると、第一層くらいでなら死なない程度にレベルを上げる。というだけでは不足かもしれない。

 それどころかいきなりレベル20のモンスターと遭遇することを考えると、どれだけレベルを上げても安心はできない。今は一緒にいるキリトがサポートできるがダメージを与えることができるのは同じシステムを持つメイプルだけなのだ。

 結局はそれに対抗できる力をメイプル自身が持たなければならない。

 

「とにかく転移結晶ではじまりの街に戻るぞ。今日手に入れたアイテムやスキルを確認したいし」

 

 

 

 

 

 

 そしてヒドラを倒した翌日、はじまりの街の酒場にて。

 

「キリトさん...? あのぉ、大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫。ただちょっと頭痛がさ...」

 

 キリトは今一度、メイプルの装備欄を見た。装備されているのはキリトがプレゼントした店売りのものではなく、ヒドラを倒した事で得た報酬装備だ。まず防具は黒い金属に深紅の薔薇の彫刻があつらわれたフル装備の《黒薔薇ノ鎧》。大盾の《闇夜ノ写》。短剣は《新月》。

 現在の攻略組の装備と比べてしまえば基礎能力は遠く及ばない装備だった。しかしそれら三つの装備は共通して武器防具の耐久値がゼロになって壊れると、武器の能力が底上げされて元の形状に戻る《破壊成長》というエクストラ効果を持っている。

 そしてなにより、装備に必要なストレングス値が設定されておらず、今のメイプルでも問題なく装備できたことが大きい。

 

(この装備自体は耐久値さえ削られなければいくらでも隠し通せる。問題なのは......)

 

 問題はあの戦いでヒドラを倒したことで得た新スキル。それはキリトが危惧していたMPを消費して使う魔法スキルだった。

 ヒドラと戦ったその翌日、獲得したスキルや装備を確認しに一旦フィールドに出て試しに発動してみたのだが、索敵スキルで周囲にプレイヤーがいないことを確認したのは正解だっただろう。

 

「まさか、剣からいきなりあんなのが飛び出してくるなんてな」

 

 新しく習得した魔法スキル《毒竜喰らい》。それを発動した瞬間、メイプルの短剣から三つ首の毒龍、ヒドラが伸び、毒液をまき散らしながら正面にいたパワーボアに食らいついたのだからキリトも空いた口がふさがらない。

 スキルの概要を読んだところ、《毒竜喰らい》とはMPを消費してモンスターであるヒドラの能力を意のままに扱うことができるというものだった。

 

「つまり毒状態付与の広範囲技と中距離への三段攻撃、毒麻痺の無効化、おまけに魔法スキルだからMPが残っている限り、リキャスト時間もなく連続して使えるわけだけど」

 

「あ、あはは〜。やっぱりこの世界であんなスキル持ってるのはさすがに目立っちゃいますよね」

 

「目立つ、というかなんというか。そもそもこの世界にMPの概念がないからな。その代わりにあるのがSP、ソードスキルポイントなわけだけど、さすがにあれをソードスキルって言い張るのは無理があるよ」

 

「...?」

 

 キリトの言わんとしていることが理解できないでいるメイプル。

 せっかくまともな攻撃手段を手に入れたメイプルには気の毒かもしれないが、それでも告げなければいけないことがキリトにはある。

 

「まあその、簡潔に言えば......使用厳禁?」

 

「そ、そんなぁ...」

 

 ガックリと肩を落とすメイプル。

 しかしこればかりは仕方がなかった。強いスキルを持っているプレイヤーといえども、それが初心者では嫉妬の対象にしかならない。

 それこそこのゲームが始まったばかりの頃は他のプレイヤーより情報力で優っているというだけでβテスターに対する風当たりは強かったのだ。

 それが魔法スキルともなれば、メイプルが他のプレイヤーからどんな視線を受けるのかは火を見るより明らか。

 だがしかし。

 

「.........」

 

「.........」

 

 肩を落としてしょんぼりとするメイプル。

 別に怒っているわけでもなければ恨みがましくキリトを睨んでいるわけでもない。ただただ、しょげた様子でテーブルの上にある豆の入った皿をフォークでつついている。

 

「...うぐっ」

 

 ただそれだけの小動物のような様子が、まるでヒドラの毒かなにかようにジリジリと頑ななキリトの決定を蝕んでいた。

 “残念です”と、メイプルの顔がそう言っている。“使いたかったです”と、落ち込んだ表情が訴えかけている。そんな様子でため息をつかれると、ついにはキリトの態度が折れた。

 

「わかった。あのスキルは周りに俺とメイプル以外のプレイヤーがいない時か、いよいよ命が危ない時に限る。それでいいか?」

 

「...! はいっ!」

 

 ひまわりを思わせるような笑顔でメイプルは返事を返した。

 山の天気のように、表情の喜怒哀楽がコロコロと移り変わるメイプル。

 

(なんていうか、女の子にこういう顔されると弱いな。俺)

 

 頭を掻きながら、キリトはテーブルに置いてあったフォークを手に取ると皿に盛られた豆に突き刺した。

 

 

 

 




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次回予告・機械神でラフコフ殲滅(嘘)

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