死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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コロナになるのは嫌なので自宅にひきこもりたいと思います。


15話 「成長する装備」

 

 

「これで一気に終わりにするわ。ちょっと痛いだろうけど、死ぬことはないから安心して」

 

 ビクリ、という音が聞こえてきそうなほどに身を震わせるメイプル。

 それに構うことなく、アスナは紅くひときわ鋭い光とともに接近、目にも止まらない八連撃が大盾に炸裂する。

 

「うわぁあぁあぁあぁ〜〜!」

 

 五連擊、六連擊目と攻撃を続けてついに七連擊目に差し掛かった瞬間、《闇夜ノ写》の耐久値がゼロを迎えた。大盾が砕けたガラス細工のように飛び散り、ガラ空きになったメイプルの胴体に向けてアスナの最後の一撃が貫いた。かのように見えた。

 

「これは...なにが?」

 

 あるはずのないそれに攻撃を遮られ、アスナは驚愕に目を見開いた。

 破壊され、飛び散ったライトエフェクトがメイプルの手に収束するようにして集まったのだ。それがアスナの攻撃を弾いたかと思うと、元の《闇夜ノ写》に姿を変える。

 

「武器が再生したの...!?」

 

 アスナは瞬時に距離を取った。

 破壊したはずのメイプルの大盾は確かに元通りの形を成して、その手に握られている。

 メイプルもなにがなんだかわからないといった様子で自身の盾を見つめていたが、やがてそれらの装備が持つエクストラ効果がどのようなものであったのかを思い出した。

 

(そうだ! 《破壊成長》!)

 

 耐久値がなくなり、装備が破壊されると元のステータスにVIT値が加算された状態で瞬時に再生する能力。さらに視覚的には破壊エフェクトが働いているように見えても、破損時の数値上の影響はない。それはつまり、破壊から再生までの僅かな隙を突かれても、盾としての役割は変わらず果たされるということだ。

 そして、メイプルは閃いた。

 

(もしかして、これって安全に武器を強くするチャンスなんじゃ...?)

 

 アスナの攻撃は絶対にメイプルのHPを全損させることはない。しかし武器や防具の耐久値はその限りではなく、今のように攻撃を受け続ければ破壊される。そして破壊されればその装備はより強力になって戻ってくる。

 

「......」

 

 アスナは油断のない眼差しでメイプルを見た。

 確実にメイプルの防御を抜いたと思った。しかし破壊した大盾は一瞬にして修復され、結果的にアスナの攻撃をすべて受けきってみせたのだ。

 

「キリトくんが教えるくらいだから、ただの初心者じゃないんだろうとは思っていたのだけどね。でもこれは予想以上だったかな。それが武器の効果だろうとあなたのスキルだろうと、話に聞いた毒の無効化を含めてあなたの力は普通じゃないわ」

 

「いえいえいえ普通です! 私普通のプレイヤーですよ!」

 

 メイプルの異質さに少なからず気づき始めたアスナ。それに対してメイプルは焦ったように首をブンブンと振った。アスナはそれ以上なにか聞くことはしなかったが、それはメイプルの言い分に納得したからではなく、詳しく話せない事情があることをすぐに理解したからだろう。

 アスナは今一度レイピアを構え直す。

  

「少し攻撃のギアを上げるね」

 

 その言葉と同時にアスナは真っ直ぐにメイプルに向かって駆けた。それに対応して反射的に取ったメイプルの防御姿勢に構うことなく攻撃を加えていく。

 

「はああああっ!」

 

 目にも止まらない速さで繰り出される通常攻撃の突きと、その攻撃の合間を繋ぐように織り交ぜられたソードスキルが隙なくメイプルを追い詰めた。

 

「ううっ!」

 

 瞬く間に《闇夜ノ写》の耐久値が削りきられた。破壊されてもすぐに再生されるがその間もアスナの猛攻は続いている。

 本来であればアスナの戦い方はその時々で自分に有利な間合いを瞬時に作り出し、相手のモーションの隙を逃さず突くことに重点を置いたスピード重視のスタイル。しかし今はその余りあるアジリティをすべてメイプルの防御を抜くことだけに注いでいた。

 雨のような連撃だ。

 一段と増えた手数に変わらず圧倒されているメイプルだが、それでもこれまでの戦いである程度の慣れが出てきたのか、視線はアスナを捉えたまま絶対に離さない。何度大盾が砕けても狼狽えない。

 

(手数だけじゃ攻撃は通らない。ならもう一度!)

 

 レイピアの刀身がライトエフェクトを発して煌めいた。

 それは開幕と同時に放った攻撃とまったく同じ挙動と光。アスナが初撃に放ったソードスキル《リニアー》。単発攻撃でありながら一撃でメイプルをノックバックさせた攻撃だ。

 

「でも、今の私ならーっ!」

 

 メイプルは大盾を構えた。幾度となく大盾を破壊され、その度にVIT値が加算された今のメイプルはすでに決闘開始時とは比べ物にならない数値に達していた。

 なによりこれまでとは違い、守りながらも常に相手から視線を外さずに反撃のチャンスを狙える姿勢。受けて立つという意志の現れがそこにあった。

 

「せああああっ!」

 

 ソードスキル発動の瞬間、メイプルの視界からアスナの姿が消えた。それとほぼ同時に《リニアー》による閃光が目の前を埋め尽くすと、大盾からこれまでになかったほどの衝撃がメイプルの腕を伝った。今にも弾き飛ばされそうな大盾を必死になって押さえ込む。

 

「ううっ...くぅ...っ!」

 

 わずかに開いたメイプルの瞳にアスナの姿が映る。今なお、アスナの《リニアー》が大盾を削るように炸裂している。

 

「うーにゃああああーーっ!!」

 

 メイプルは気声とも叫び声とも取れるような声を上げると、そのまま耐えて、耐えて、やがてアスナのレイピアからソードスキルによるライトエフェクトが消えた。初撃のようなノックバックも起こらない。

 

「受け止めたの!?」

 

「スキありー!」

 

 そして耐えきった瞬間、メイプルは短剣である《新月》を引き抜いた。攻撃後の硬直を狙ったカウンター。僅かに開いたレイピアの間合いから一歩距離を縮めれば、そこはもうメイプルの間合いだ。しかし、

 

「...っ!」

 

「あれれ?」

 

 届く。そうメイプルが確信したとき、決闘終了を知らせるブザーが無慈悲に響き渡った。

 

 

 

 




感想くれてもええんやで?
目指せ評価値7!!
ではまた次回〜

くぼさちやのTwitter
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