死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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早くキリトとメイプル引っ付けたい......
ホントは戦闘描写よりラブラブしてるとこ書くほうが得意やねん
でもさ、引っ付いたあとだと書けないシーンてあるやん?



20話 「パワーレベリング」

 

 

 第三十層迷宮区。

 キリトとメイプルはレベリングの帰り道をほとんど無言のまま歩いていた。

 つい最近、それこそものの数日前まで第一層の街近くのフィールドでモンスターを狩っていたことを考えれば驚くほどの踏破速度。SAO史上これほどのペースでレベルを上げたプレイヤーはまずいないことだろう。それを可能にするのはメイプルが持つ圧倒的なVIT値というより、トッププレイヤーであるキリトのアシストによるところが大きかった。 

 

「索敵スキルに反応だ。この先でモンスターが一体」

 

「...はいっ」

 

 裏返ったような声で返事をするメイプル。

 やがて通路を道なりに進むと、少し離れた場所で曲剣とバックラーを装備したリザードマンがキリトたちに背を向けていた。 

 どうやらこちらには気づいていない様子で、キリトは剣を抜くとソードスキル《スラント》を発動して背中目掛けて斬りかかる。

 

「......っ!」

 

 右肩から左の脇腹を繋ぐようにダメージエフェクトが入る。真紅に近い切り口の色が背面攻撃によるクリティカルヒットを示していた。

 そのままリザードマンは短くうめき声を上げて光を散らせる。

 

「......」

 

 無言のまま剣を鞘に納めるキリト。敵の数や、フィールドの状況に違いはあれど、似たような会話内容を繰り返しながら半日近く迷宮区に潜り続けていた。

 

「......」

 

 一連の索敵、戦闘をこれまたうつむき加減に見届けるメイプル。

 パーティ設定で得た経験値を自動均等割にすれば、たとえ戦闘に参加せずひたすら守りに徹していても、同パーティのキリトがモンスターを倒す度にメイプルにも経験値が振り分けられる。

 いわゆる、“パワーレベリング”と呼ばれる方法だ。

 レベル14だったメイプルに対して敵モンスターのレベルは軽く40を超える。本来ならメイプルと同レベルのプレイヤーがフルレイド四十八人で挑んでも敵わない相手だが、キリトからすればソードスキル一撃で事足りてしまう。

 これによって通常の攻略ではありえないほどの経験値がメイプルに注ぎ込まれ、戦闘の度にレベルアップを伝えるシステムメッセージがまさに雨あられ。

 そして迷宮区最上階のボス部屋の前まで到達する頃にはメイプルのレベルは35にまでなっていた。

 

「......」

 

「......」

 

 しかし、それほどの急成長を遂げてもキリトの表情は曇っていた。それはレベルが上がった本人であるメイプルも同様で、どこかこれまでにはなかった余所余所しさがある。

 その原因は簡単。昨晩のやりとりが尾を引いていたのである。しかし二人の思うところにはある種の食い違いがあった。

 

(どうする? インナー装備の件、やっぱ謝ったほうがいいのか? でも本人が話題に出さない限り話を蒸し返すのもよくないよなぁ......)

 

 と、考えるキリト。

 

(ゲームの中とはいえ、男の人の部屋に居座っちゃったり。アルゴさんに言われて気がついたけど...ううっ、恥ずかしいよぉ) 

 

 と、考えるメイプル。

 どうやらキリトの言葉で装備設定にミスがあったことには気がついたが、インナー未装備=防具破壊で下着姿。という図式にまでは思考が至らなかったようだ。

 ただし、去り際にアルゴの残した言葉にはなかなか堪えるものがあったのだろう。キリトとは全く違った理由でメイプルは身を縮めていた。

 

「なあ、メイプル」

 

「ひゃぃ...コホン、はい」

 

「その、俺が言うのもなんだけどさ。さすがにここまで距離感があるとレベリングに差し支えるというか、ボス戦も近いことだし―――」

 

 その瞬間だった。突然メイプルの背後でコボルトが複数体リポップすると、ほとんど反応するまもなく奇襲されたのだ。

 急にキリトに話しかけられた直後で固くなっていたせいか、それともこれまでになかった形で唐突に始まった戦闘でパニックだったのだろう。気が付けばメイプルは闇雲に《新月》を抜き放って叫んでいた。

 

「《ヒドラ》!」

 

「待て! こんな狭いところでそれを使ったら」

 

 状態異常ではなく精神的な意味で混乱していたメイプル。

 その思考回路を反映したように三つの首はうねり荒くれて、迷宮区の天井や壁に頭を衝突させては周囲に毒液を撒き散らした。

 ここが仮にスペースの広い草原や樹海などのフィールドであればさしあたって問題はなかったのかもしれないが、ここは迷宮区。縦に伸びた道は狭く、流れ出た毒液は左右の壁に挟まれてあっという間に通路を毒色に染め上げた。

 

「言わんこっちゃない。メイプルっ! こっちに手を伸ばすんだ!」

 

「うわわっ...!」

 

 膝に近い高さまで水位がせり上がり、流れていくさまはちょっとした川のようだった。

 メイプルは《新月》を納刀してキリトに向かって伸ばしたが、紫色の水流に足を取られるとその手をそのまま通路の壁に付いた。その瞬間、壁に掘られていた幾何学的な模様の溝に光が灯ると、岩を引きずるような音を立てて道が開く。

 

「ええっ! 急に開いた!?」

 

 メイプルが声を上げる。通路に満ち満ちていた毒液が突如として現れた空洞へと向かってメイプルもろとも流れ込んでいった。

 

「す、ストレングスが足りなくて流れに逆らえないよぉ〜っ。キリトさん助けてぇぇ!」

 

「助けるもなにも自分のスキルだろ。解除できないのか?」

 

「《ヒドラ》の本体は操れるんですけど、吐いた毒液は自由に消したりできないんです〜!」

 

 キリトは床に片手直剣を突き刺して踏ん張る一方で、メイプルは毒液の川に流されてどんどんキリトから遠ざかってしまっている。たとえバイタリティが卓越していても、その他のステータスは正真正銘ゼロなのだ。

 

「くっ...こんな状況で《転移結晶》を使えなんて言ってもメイプルは対応できないよな」

 

 キリトは覚悟を決めると、突き立てていた刃を引き抜いて隠し通路に飛び込んだ。

 そう、キリトは覚悟を決めたのだ。

 ここから先はまったくの未知の領域。そこへ足を踏み入れることはこれまでメイプルと行ってきたレベリング探索の域を超えた紛れもない迷宮攻略なのだ。どんな罠があるのかもわからず、またどんなモンスターがいるのかもわからない。

 そんな場所であろうと、必ずメイプルを守る覚悟を。

 




評価、感想等
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