死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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もーみんなサリー好きすぎかよ(●ꉺωꉺ●)
出すしかないやんあんだけ感想で言われたら〜
というわけでサリー出します。決定。


22話 「ガラクタの神様」

 

 

「半時前のことだ。俺たちはこの迷宮の最上階にいる魔物に挑み、あっけなく敗れた。そのとき、しんがりに隊員を二人、最奥の部屋に置いてきてしまったんだ。頼む! 今ならまだ間に合うかも知れない! 俺の代わりにあいつらを助けてやって欲しい!」

 

 そう言うと、男の頭上で《!》マークが《?》マークに切り替わり、視界にクエスト受領ログが流れた。

 どうやらすぐさま戦闘、というわけではなかったらしい。そっと息を吐くキリトの服の裾をメイプルは軽く引っ張った。

 

「最奥にいる魔物って...この階層のフロアボスのことでしょうか?」

 

「話を聞く分にはそうだ。もっともこの層の攻略はとっくに終わって、ボス部屋に行ってもモンスターのポップはないけどな」

 

 SAOにおけるフロアボスというのは雑魚モンスターと違い、時間経過でリポップすることはない。一度倒されて次の層へのアクティベートが済めばその時点でボス部屋は永久にもぬけの殻だ。

 ということはフロアボスを倒されてクエストのクリア条件が満たされた今、もう一度話しかければ成功報酬を得られるかと思ったが、どうやらそう簡単なことでもないようだ。

 

「残してきた隊員は二人だ。頼む! あいつらを助けてやってくれ!」

 

 再度話しかけたとき男が言ったこの言葉から考えると、どうやらクエストは今なお進行中ということだ。

 

「もしかしたらボス部屋でこいつらの残してきた隊員と合流して、ここに連れてくるまでがクエストなのか?」

 

 顎に手を当てて考え込むような仕草でキリトは迷宮の天井を仰いだ。

 だとしたらそんなに面倒なクエストじゃない。ボスは既に倒されているのだから戦闘になることはないだろうし、ボス部屋もここから一つ上の階だ。来た道を逆戻りすることにはなるが、ちょっとしたおつかい系クエストだと考えれば大してロスもない。

 

「とりあえず、上の階のボス部屋まで行ってみませんか? そしたらなにかわかるかも」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 レジスタンスの野営地を後にした二人は最上階に続く階段を登っていた。一度通った道ということもあって、スムーズに進行は進み、やがてボス部屋の前へとたどり着く。

 

「ここですね〜。ええーっと中は......」

 

「っ!? 待てメイプル!」

 

 キリトはボス部屋に手をかけようとしたメイプルの首根っこを掴んで引き寄せた。

 驚くメイプルに構わず、キリトはある一点に視線を向けていた。それに釣られてメイプルもキリトの視線の先を見やる。そこには門を照らす燭台があるだけで特に変わった様子もない。しかしそれこそがキリトの感じた異常だった。

 

「見てくれ。門の左右にある燭台に火がついてる。ここの火はボスモンスターが討伐されると消えるんだ。つまり」

 

 メイプルはゴクリと息を呑んだ。

 それはつまり、倒したはずのボスモンスターがこの先にいるということだ。

 

(三十層とはいえ、フロアボス...今まで戦ってきたモンスターとは違う)

 

 大盾を握る手に力がこもった。

 しかし次に戦うフロアボスはここより遥か上層だ。当然こことは比べ物にならないほど強力な相手。だとしたら、三十層のボスモンスター相手に尻込みしてはいられない。

 

「...行きましょう! 」

 

 そういうメイプルにキリトは躊躇いながらも頷いた。

 本来はレイド、複数のパーティが合同でチームを組んで挑むことが前提になっているため、ボスモンスターはその層にいる他のモンスターとは比べ物にならないほどのステータス設定がなされている。

 最大限安全策を取るなら十二パーティ、計四十八人のフルレイドで挑むのが当然の相手で、少なくともワンパーティの上限にすら届かないキリトとメイプルの二人で戦うようなモンスターではなかった。

 

(けど、メイプルのVIT値は当時の攻略組よりも圧倒的に高いし、俺もいる。万が一の時は俺がタゲ取りしてメイプルが転移するまでの時間を稼げばいいだけだ。よし!)

 

 キリトは大きく息を吸うと、メイプルを見る。

 

「行こうぜ! 四十九層ボス戦の前練習だ」

 

 そう言ってキリトはボス部屋に通じる扉に手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 攻略後はフロア全体が見渡せるほどに明るく照らされていたこの部屋も、主が戻ったことで今は薄闇が部屋全体をくまなく覆っている。

 プレイヤーの存在を察知して左右の壁にくくりつけられていた粗雑な松明が、ぼうっと音を立てて火を灯し、次々と部屋の奥に向かってその数を増やしていく。

 

(ボス戦独特のこの演出、やっぱりフロアボスが復活しているのか...)

 

 やがて部屋の奥の玉座までもが松明の明かりに照らされると、そこに座すボスモンスターの姿が顕になった。

 金色が鈍く濁ったような古びた金属の身体に、腹部には半透明の球体が上半身と下半身を繋げるように埋め込まれている。

 

「我ハ王...カツテノ王、淘汰サレタモノ......」

 

 ノイズの混じった機械音声でそれだけを告げると、ボスはフリーズした。

 

「すごい...! フロアボスってしゃべるんだ。頭良いんですね」

 

「いや、演出として咆えるようなことはあっても人の言葉を話すモンスターなんていない。というか、こんなボス見たことないぞ?」

 

「え?」

 

 キリトの語気には明らかな焦りの色が滲んでいた。

 

「この層のボスはカタナカテゴリのソードスキルを使うサムライ系のモンスターだったはずだ。俺も攻略に加わっていたから間違いない。なのにこいつは......」

 

 一度動きを止めたかに思えたが、それも数秒のことだった。再び瞳に電子的な光を取り戻したボスモンスターは再起動すると同時にコアと思われる球体の部品から青く強い光を放つ。すると周囲に散らばっていたネジやら歯車やらが同じように青い光はまとったかと思うと、ボスのコアに吸い寄せられていった。

 

「我ハガラクタノ王...ゴミノ中デ眠ルモノ。夢モ奇跡モ、ガラクタニ」

 

 そんな音声を発すると重たげに持ち上げられた腕の先がメイプルの方に向いた。

 

(まずい!)

 

 その行動は状況から判断したというより、ゲーマーとしてのキリトの直感によるものだった。

 メイプルの目の前に素早く立ったキリトは片手剣を抜き放ちソードスキルを発動する。それとほぼ時を同じくしてボスの拳からビーム状の光が一直線に放たれた。

 

「はぁあああああっ!」

 

 防御系ソードスキル《スピニングシールド》。

 ライトエフェクトを発したキリトの剣にビームが衝突すると、その点を軸にビームがY字に裂けて後方へ通り過ぎていく。高温の熱線にえぐられた床のタイルがアイスのように溶けた。

 

 

 




くぼさちやのTwitter
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