死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います 作:くぼさちや
あと一人で評価者80人行くねん!
ばじるしゅ!!
「気をつけろ...来るぞ!」
開戦直後と同じ、腕から発した光がビームとなってメイプルに放たれる。つかさずキリトは《スピニングシールド》で弾き返そうとしたが、その手応えに驚愕した。
(最初の一撃よりも...重い!)
受け止めきれずにノックバックしたキリトは背後にいたメイプルを巻き込んで転倒した。
「あいたた...大丈夫ですか?」
「ああ、だけど今までとパワーが段違いだ。この様子じゃあ防御力だけはそのまま、なんて期待はできないだろうな。当然そっちも上がってる」
ただでさえ、コア以外の装甲への攻撃ではまるで効果が無かったのだ。その弱点がなくなっただけでも、正直打つ手はない。しかしそれでも、いや、だからこそだろうか。この理不尽なステータス設定にキリトはある可能性のひとつを疑った。
「ここまで無茶苦茶な防御力となると普通に戦う以外になにか討伐のキーになるアイテムがあることを疑うレベルだけど......っ! メイプル、さっきの歯車はどうなった?」
「は、はい。あのあとすぐに新しいスキルが解放したみたいでした」
そのとき、《機械神》の手から青い光がほとばしった。
その攻撃を防御しきれないことはさっき自身の剣で直接受けてみてわかっていた。キリトはメイプルを抱えると横っ飛びに退いた。
さっきまで二人がいた空間を極太のレーザーが通りすぎていき、飛び散った床の破片を雨のように受けながら二人は柱の物陰に転がり込む。
「スキル開放のタイミングを考えると、鍵はそれだ。おそらくあのボスモンスターのステータスはそのスキルを使って戦うことを前提に設定されているんだ! 普通じゃあり得ないような防御力もそれで説明がつく!」
「でもこれ......説明読んでみると、今までのスキルなんかよりよっぽど強力みたいですよ。使っちゃっても大丈夫なんですか?」
「そもそも、それだけ強力なスキルじゃないと倒せない相手だってことだ。どのみちあいつにダメージを与えることができるのはメイプルしかいない。俺もそばでサポートする。使ってくれ!」
「...っ! わかりました!」
メイプルは胸にそっと手を当てて、念じるように叫んだ。
瞬間、胸元に歯車が浮かび上がると、ライトエフェクトがメイプルを包み込んだ。
「《機械神》!」
歯車から発せられた真紅の光はボス部屋の天と地を結ぶ柱のように伸び、広がった波紋が砂埃を巻き上げて地面を撫でる。
光の中では黒い機械的な装甲が次々とメイプルを包み込み、胸元のフロントアーマーには防具と同じ、薔薇の装飾が施された装甲板。そこから腹部にかけて大小様々な歯車が回転している。
背部のメイン推進エンジンを内蔵したウィングユニットからは左右二門のキャノン砲がメイプルの頭を挟み込むように砲身を伸ばし、隣接したエアダクトからは排気と同時に真紅のプラズマが散っていた。
そして光の中を切り裂くように黒い刀身の一薙ぎと突き出された巨大な砲身が周囲に纏っていたライトエフェクトを霧散させ、メイプルの纏った《機械神》の装甲、武装のすべてが顕になる。
「って......なんなのこれぇぇぇぇーっ!」
メイプルが自分の全身にまとわったそれに驚愕していると、構うことなくボスの《機械神》が砲撃を開始する。
「うわわわーっ!」
どうにかして避けようと背部のウィングユニットに意識を集中させると、内蔵された小型スラスター群が火を噴き、稼働した左右三対の翼が飛行方向に合わせて自動で角度を調節。そのままスクリュー状に旋回しながら天井近くまで上昇すると、脚部の装甲と一体となった姿勢維持用のバーニアスラスターに切り替わり、上空で停止した。
「嘘だろ...これがスキルなのか?」
そんな言葉がキリトの口からこぼれる。
メイプルの話によればNWOとはSAOに似たよくあるファンタジー系のゲームだったはずだが、メイプルが身に纏う機械的な装備はSF系のゲームで目にするようなパワードスーツとしか言えないようなものだった。
《機械神》は飛翔したメイプルを追撃するように飛び上がり、再び手の平で青いプラズマが光る。それはこれまでの横長のビームではなく、球体の形を模した攻撃。それが計八発、メイプルに向かって投げつけるように発射される。
「......にひひ〜」
メイプルの頬に笑みが浮かんだ。同時にプラズマ球が全弾メイプルに命中する。
爆炎とスパークが一瞬、その機体を包み込むが、晴れた煙のその奥では無傷のメイプルが悠然と飛行を続けていた。
「効かないよーだ!」
メイプルは左右の武装を《機械神》に向けた。
上空でメイプルの全砲門から赤い光が走ったかと思うと雷のような轟音とともにプラズマ砲が《機械神》に照射される。
それを打ち消さんばかりに《機械神》の両手の平からも、これまでの比にならないほどのプラズマがメイプルに向かって走った。
衝突した赤と青の稲妻は拮抗し、大気中の塵を焦がしながら蛇のようにうねりをあげる。
「いっけええええええ!!」
メイプルの声とともに各武装の後部では排熱のためのラジエーターフィンが勢いよく回転を始め、プレイヤーの運動命令に呼応するように口径は広く、またプラズマの光は強くなっていく。
やがて紅い雷光は《機械神》の全身を包み込み、跡形もなく消し去った。
「ふう〜勝ったぁ......」
メイプルはゆっくりと高度を下げて地面に降り立つと辺りを見渡した。その目の動きに合わせて照準用のバイザーがヘッドセットに収納される。
ボス部屋一帯は激戦によってあちこちの壁に亀裂が走り、今にも崩れ落ちそうなほど損壊していた。高温のプラズマの余波によって所々から火の手が上がって、飛び散ったスパークが床や壁にまで届いたのか、ジグザグの焦げたような跡がくっきりと残っている。
そんな有様を砕けた柱の影に身を潜めて見ていたキリトはたった一言。
「チートだろこんなん......」
かつてベータのチーターと呼ばれたキリトの口が、はっきりとそう口にしたのだった。
機動要塞デストロメイプルの誕生である......
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