死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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なろうでオリジナル描き始めました(●ꉺωꉺ●)
興味ある人挙手!!

《ホロゥハウス〜FPSアカウントで異世界IN〜》
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《死ぬ振り》第25話と同時投稿!!


25話 「戦う女の子」

 

 

 それは《機械神》討伐からしばらくしたある日のこと、メイプルを連れて街の露店を回っていたキリトは信じられないものを目にした。

 

「メイプルちゃーん!」

 

「わぁー! アスナ! 副団長のお仕事はもう平気なの?」

 

 なんてことはないはずのやり取りに 、ストレージをいじって購入したアイテムの整理をしていた手が止まる。

 街中で声をかけるなり駆け寄ってきたアスナは現実の年頃の女子同士がそうするように、メイプルの手に指を絡ませてはしゃいだ。メイプル自身もとくに驚くことでもない様子で同じくきゃっきゃと跳ねている。

 

「......」

 

 それを隣で見ていたキリトは言葉を失った。そこには攻略の鬼とまで呼ばれたアスナが見せる、あのレイピアのような鋭い態度は微塵も感じなかったのだ。

 

「なあ二人とも、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

 

 メイプル単体で見ればこの天真爛漫さはむしろ平常運行と言えたが、アスナに関しては初対面の段階でボス戦参加の話を交えていたこともあり、闘技場ではずいぶんと厳しい態度を取っていた印象だった。

 

「はい? 私たちは初めから仲良しですよ?」

 

(いやそんな馬鹿なっ!)

 

 そんなツッコミを口には出さず、心の中に留めるキリト。

 

「今日は一緒にレベル上げするって約束なんだよね~」

 

「ね~」

 

 そう言って、さも当然のようにメイプルを連れて立ち去るアスナをキリトは黙って見届けることしかできなかった。

 

「女の子って...わからないなぁ」

 

 

 

 

 

 

 散発的にポップするモンスターを相手にしながらフィールドを探索するメイプルとアスナ。レベル上げと言っても階層はメイプルのレベルに合わせて行っているのだから、アスナにとってはほとんど素材集めにしかならない。

 とはいえ、おそらく歳の近い同性プレイヤーとパーティを組んだのも久しぶりであろうアスナにしてみれば、そんなことは些細な問題だった。

 

「アスナっ! スイッチ!」

 

「了解!」

 

 ゴブリンジェネラルのソードスキルを弾いて後退したメイプルの脇を白い影が風を切ってすり抜けていく。闘技場で幾度となく見たアスナの《リニアー》がモンスターの喉元に炸裂すると無数のポリゴンになって散った。

 もちろんメイプルはNWOのスキルを一切使わない。大盾使いの基本的なスキルである《シールドアタック》ですら、この世界では異質なスキルなのだから、攻撃は完全にアスナに任せっきりになっていた。

 そうでなくても前衛特化のメイプルステータスでは自然とこうなっていたであろうが。

 

「ふぅー。やっぱりアスナの攻撃は早いなぁ。わたしはアジリティゼロだから足も遅くって」

 

「その分メイプルちゃんには高い防御力があるじゃない。むしろ守りに徹してくれた方が私も後衛としてある程度自由に動けるから、やりやすいよ」

 

 亜人系モンスターが多く生息している草原。階層が上がったせいか、第一層ではクエストボスにまでなっていたモンスターも普通にポップするが、それに怯んでいたのも最初の一戦だけだ。今はメイプルを壁役にスイッチしてアスナがソードスキルで仕留める。

 この一連の流れを繰り返してひたすらモンスターを狩っていた。

 

「ここら一帯はあらかた狩り尽くしちゃったかな。そろそろ安全地帯でお昼にしない?」

 

「賛成!」

 

 安全地帯とはフィールドの各所に設定されているモンスターの発生しない空間のことだ。

 アスナの視線の先には等間隔で設置された青い炎の松明が正方形を描くように点灯している。キリトとのレベル上げの途中で同じような区画で休息を取ったことのあるメイプルはそこがアスナの言う安全地帯だろうと理解した。

 それはちょうど大樹の下に位置していて、地面から伸びでた木の根っこが座るのにちょうどいい高さに伸びている。アスナは先に腰掛けたメイプルに並ぶようにして腰を下ろすと、昼食をストレージから取り出す。

 

「すごい! アスナのお弁当美味しそう!」

 

 メイプルはアスナの取り出したバスケットの中身を見るなり、感嘆の声を上げる。

 入っていたのは色鮮やかな具がたっぷりと挟まれたサンドイッチだった。

 SAOで取れる食材アイテムを使用しているせいか、見たこともないような極彩色の野菜や変わった形の肉を挟んである。

 現実とは見た目からして違うゲーム内の食事にまだ馴染みのないメイプルだったが、それでも素直に美味しそうだと思えるような見事な出来栄えだった

 

「ある程度《料理スキル》を上げていくと作れるようになるよ。今度一緒にレベル上げするときはメイプルちゃんの分も作ってきてあげようか?」

 

「ホントに? やったぁ!」

 

 対してメイプルが取り出したのは一個10コルの最安値の黒パン。苦味の中にうっすら小麦の甘みがしないでもないような微妙な代物は、はっきり言って美味しく食べられたものではない。だがメイプルはこれをスイーツの域にまで昇華させる術を知っている。

 

「それ、安いけどあんまり美味しくないでしょ。私もこのゲームが始まってすぐの頃はそればっかり食べてたけど」

 

「ふっふっふ〜。じゃじゃん!」

 

 メイプルはストレージから小さな素焼きの壷を取り出しすと、指先でタップ。淡い光がメイプルの人差し指に灯り、それを手元の黒パンに線を引くように擦りつけると濃厚なクリームが垂れ出た。

 そこから香る嗅覚再生エンジンの産物にアスナはどこか懐かしく思いを馳せた。

 

「それ...第一層の《逆襲の雌牛》?」

 

「そう! そこのクエスト報酬。このまえキリトさんと一緒に受けに行ったんだぁ。アスナも知ってたんだね!」

 

「私も初心者だった頃、キリトくんに教えてもらったのよ。他にもスイッチとかの必須技術もそうだし、泊まる場所の探し方なんかも。あのときはネットゲームなんて今までケータイのアプリをちょっと弄ったくらいしか経験なかったから、何をするにも要領が悪くていろいろ苦労してね」

 

「えっ!? アスナってここに来るまでゲームの経験なかったの?」

 

「そうだよ。そのせいでホントに大変だったんだから」

 

 アスナはそう言ってバスケットからサンドイッチを取り出すと口に頬張る。

 キリトのようにβテスターとしてVRの経験があったわけでもなく、ましてやMMOはおろかこれまでの人生でゲームというのもに無縁の人生を送ってきた。それがちょっとした気まぐれで兄の持っていたナーブギアを頭に装着して《リンクスタート》のボイスコマンドを口にしてしまったがために、アスナは今、ここにいる。

 

「最初の一ヶ月はがむしゃらというか、半分自暴自棄になって戦ってた。三、四日ずっとダンジョンに潜りっぱなしだったことも珍しくなかったし、回復系ポーションを持てるだけ持って、武器の耐久値がなくなったらストックしてる同じレイピアに持ち替えたりしながらずっと戦って」

 

 第一層の迷宮区攻略中、アスナは初期装備のアイアンレイピアを耐久値が限界を迎えるたびに使い捨てにしながらレベリングを続け、習得した細剣ソードスキル《リニアー》と自身の腕だけを頼りに、当時まだ誰も到達したことがない迷宮区の奥地までソロで到達した。

 初めてキリトに出会ったのもそのときだ。

 

「何日もダンジョンに...寝るときはどうしてたの?」

 

「安全地帯で寝てはいたよ? 熟睡はできなかったけど、街と迷宮区を行ったり来たりしてたら時間がかかっちゃうからね」 

 

「安全地帯って、ここみたいな?」 

 

 メイプルは改めて今自分がいる場所を見渡した。

 安全地帯から一歩外に出れば、そこは紛れもなくモンスターが闊歩する死と隣り合わせのフィールドだ。それこそ安全地帯に入ってこないだけで目の届く程度の距離にはモンスターがポップして時折鳴き声が聞こえてくる。今のようなちょっとした休憩ならまだしも、とても生活の拠点にできるような場所ではない。

 そんな環境で何日も自分を磨き続けていたのだ。

 

「......どうしてそんな無茶なことを?」

 

「あのときは、このゲームは絶対クリアできないって思ってたからよ」

 

 




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