死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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真面目な話が終わってよーーーーやく前書きふざけられる(●ꉺωꉺ●)
長かった!
ようやくだ!
サンバ!


34話 「疾風の訪問者」

 

 

 

 誰よりも速く、誰よりも遠くへ。遍くこの世界を駆け抜けるために。

 

 

 

 サリー、本名は白峯理沙。

 彼女はNWOの世界を走り続けた。

 ステータスポイントの全てをアジリティ、素早さに極振りしてVR世界を駆け回る毎日。

 すべての階層の端から端まで探し回り途中モンスターと遭遇すれば応戦する。上級者向けのゾーンでは自分よりレベルの高いモンスターと戦うのは日常茶飯事で、それを持ち前のPSで狩って、狩られて、死に戻りすればすぐさま同じエリアに戻る。

 そんな通常のVRMMORPGだからこそ可能な無茶な探索はサリーのレベルをたちまちのうちに引き上げて、その度に割り振られるステータスポイントのほとんどすべてがアジリティに注ぎこむ。

 全てはこの世界にいるはずである親友を探し出すために。

 しかし、それがある日のことだ。

 フィールドを走っていると、目の前のフィールドグラフィックがプリントした写真に水がにじむようにして荒れだした。

 それはあたり一面を侵食して、やがて足元の地面が崩れて落ちていく。

 このとき初めて気がついた。

 探していた親友が本当はどこの世界にいるのかを。

 

 

 

 

 

 

 キリトがフィールド内を探索していると《索敵》スキルに反応があった。

 

「プレイヤーか? こっちに向かってきてるな」

 

 マップに表示された赤いマークが一直線に近づいてくる。モンスターとは考えられないほどの移動速度から、その反応がプレイヤーのものだとわかる。

 キリトはマップが示す方角を見やった。

 そこはおおよそ道と言えるようなものが見当たらずキリトの腰程の高さにまで生い茂った草木で完全に塞がれているが、体勢を低くして身を潜めているのか、それらしい姿は見えない。

 しかしその反応がキリトの立ち位置とほとんど重なるほどに近づいてきたのにも関わらず、まったく人のいる気配を感じなかったのだ。

 キリトは背中の片手直剣に手を添えて周囲を警戒する。 

 

(どこだ...? 《隠密》スキルの熟練度をコンプリートしたって完全に姿を消すのは不可能だ。絶対に目に映るどこかにいるはず......)

 

 背筋に緊張が走り、周りの景色に目を凝らす。

 そのとき、頭上から風もなく落ちてきた木の葉を目にして咄嗟に上を見た。 

 すると真上にあった太い木の枝。そこからフード付きのケープで顔を隠したプレイヤーが虫を捕食するフクロウのように物音一つ出さずにキリトの背後に降り立つと、すぐさま喉元に短剣の刃が突きつけられる。

 

「武器から手を離しなさい。さもないと首から上が吹っ飛ぶよ」

 

 それは若い女性の声だった。歳で言えばおそらくキリトとそこまで離れていないであろう声。

 キリトは無闇に後ろを振り返るようなことはせず、言われた通りに背にした剣からゆっくりと手を離す。

 わざわざ頭上のアイコンを見るまでもない。明らかに手馴れた犯罪行為、オレンジプレイヤーであることは間違いなかった。

 

「レアアイテム狙いか? 悪いけどこっちはまだフィールドに降りたばかりで大したものを持ってない」

 

「こっちも時間稼ぎに付き合っている暇はないんだよねぇ。帰ったらあんたたちのボスに伝えなさい。私は二度と関わるつもりはないってね」

 

「話が読めないな。言っておくけど、俺は一介のソロプレイヤーだ」

 

「そう? 別にどっちでもいいわ。正直疑る余裕もないから。いずれにしてもしばらくここで寝ていてもら―――」

 

 その言葉を言い終えるのを待たずして、ライトエフェクトを纏ったキリトの肘打ちが背後にいたプレイヤーの腹を穿った。

 

「い...っつ!」

 

 プレイヤーの手からキリトの首に突き刺そうとした投擲用のピックが落ちる。おそらくは麻痺かなにかのバットステータス付与の効果のあるものだろう。

 キリトは《体術》スキルによる想定外の攻撃で怯んだ隙を逃さず、すぐさま身を翻して距離を取ると、背中の片手直剣を引き抜いた。

 相手の頭上にはやはりオレンジのカーソル。

 犯罪者、オレンジプレイヤーであるならば、たとえ剣で攻撃を加えても犯罪行為とは見なされない。殺さない程度なら思う存分戦える。

 その証拠に《体術》スキルで反撃したキリトのカーソルは緑のままだ。

 

「オレンジギルドなのかソロの盗賊なのかは知らないけど、襲う相手くらいはもっと慎重に選んだほうがいいぜ」

 

「くっ...!」

 

 素顔を知られるわけにはいかないのか、オレンジプレイヤーは戦闘で外れかけたフードを目深に引っ張ると短剣を構え直す。

 奇襲が失敗したからといって逃げるつもりはないようだった。

 

「はあああーっ!」

 

 オレンジプレイヤーは短剣を逆手に構えてキリトに斬りかかった。それに応じたキリトは一定の距離を保ちながら正面に剣を構える。

 

(攻撃速度じゃあ勝てないだろうけど、こっちのほうがリーチが長い。懐にさえ潜り込ませなければ―――)

 

 短剣のリーチの外からキリトは剣を振るう。

 大上段から振り下ろした一撃をオレンジプレイヤーは逆手に構えた短剣で防いだ。

 ただ防いだのではない。キリトの斬撃に対して鈍角に構えて攻撃の軌道そのものを自分から逸らす。いわゆる〝流し〟と呼ばれる技術だった。

 金属の擦れる嫌な音が一瞬響き渡り、片手直剣が虚しく空を切った。

 腕を振りきって体勢の崩れたキリトにオレンジプレイヤーは手首のスナップを効かせたコンパクトな攻撃で切り結んでいく。

 

「くっ...!」

 

 キリトは初撃を身体を反らせて躱し、二擊目からは剣を使ってガードする。

 短剣のアジリティ補正を活かした手数重視の攻撃。時折フェイントを織り交ぜながらクリティカル判定にブーストのかかる頭や喉、胴体に向けて的確に攻撃を加えていく。しかし、攻撃が加える度に下へと落とされる視線にすぐさまキリトは気がついた。

 

(こっちの右手を見すぎだ。武器落とし狙いが目線でバレバレだぜ...!)

 

 案の定、連撃の最中に片手直剣を持った右手にめがけて短剣が振り下ろされる。それを弾き返そうとキリトはカウンターで攻撃を合わせるが突如、短剣を握った手が手首を反すことで瞬時にその軌道を変えた。

 目の前で一転した刃がキリトの額に迫る。

 

「はぁっ!」

 

(なっ...!)

 

 反射的に攻撃を止めて仰け反るように避けるキリト。

 それにワンテンポ遅れてキリトの右手に向けられていたままだった視線が、命中の是非を確認するように顔に向けられる。

 よそ見斬り。自身の視線すら利用したフェイントだ。

 

「っ...せああああっ!」

 

 仰け反った身体を捻ってキリトは斜めに剣を振るう。

 ソードスキル《スラント》。その軌道がキリトの意識によって標準よりわずかに下に下がる。その動きからキリトの狙いを察したのか、オレンジプレイヤーの少女は飛び退くようにバックステップで距離をとった。

 

「くっ...!」

 

 武器破壊を狙ったキリトのソードスキルが、短剣を握った腕をわずかに掠めた。装備されたグローブを切り裂き、顕になった素手に刻まれたマークがキリトの目に映った。

 ペイントアイテムで塗ったのか、棺のような黒いシルエットに白く不気味な笑みを浮かべたタトゥー。それがどこのギルドのものなのかキリトにはわからなかったが、おそらくはどこかのオレンジギルドのエンブレムなのだろう。 

 

「あの攻撃を初見で避けたのは君が初めてだよ。まさか、あいつらの中にこんな凄腕のプレイヤーがいただなんてね」

 

「あいつら...? おい、さっきからなんの話をしているんだ?」

 

「とぼけたって無駄だよ!」

 

 話がいまひとつ読めないでいたキリトに構わず、オレンジプレイヤーは地面を蹴った。

 イナズマのように左右に身体を振って接近してくる相手に、キリトは拒むように一定の距離を保ちながら剣を振るう。

 しかしそんなキリトの立ち回りを読んで先回りするようにオレンジプレイヤーはサイドの移動を織り交ぜながら猛スピードで切り込んでくる。

 キリトはたまらずバックステップで距離を取ろうとした。

 

「っ...!」

 

 しかし、バックステップをしたキリトの背中がフィールドオブジェクトである木の幹にぶつかる。

 すぐさま逃げ道を失ったキリトの眼球をめがけて短剣の先端が迫る。あまりにタイミングが良すぎる攻撃。明らかに狙って追い詰められていた。

 キリトは握っていた片手直剣を放ると、突き出された短剣の鍔を強引に掴んで攻撃を止める。静止した刃の先端がキリトの目と鼻の先で鋭く光る。

 そのまま膠着した状況でキリトは口を開いた。

 

「何人殺した...?」

 

「......?」

 

「このデスゲームでそれだけの対人戦のテクニックを...いったい何人殺して手に入れた...?」

 

 

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