死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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今月初の投稿だよん(●ꉺωꉺ●)




36話「ラフィン・コフィン」

 

 

 

「くっ...!」

 

 一斉に斬りかかるレッドプレイヤーにキリトは剣を構えた。反撃は最低限の牽制で致命的なダメージの及ぶものは避けて攻撃を加えていく。

 全体的なプレイヤーのレベルから考えると、この包囲を抜けてさえしまえばおそらくキリトの足に追いつけるプレイヤーはいないだろう。

 

(まだ今ならジョニー・ブラックに追いつくかもしれない。とにかくこいつらをどうにかしないとな)

 

 キリトは正面にいた壁役の一人に向かってソードスキル《ヴォーパル・ストライク》を放った。

 ノックバックしたプレイヤーを飛び越えて一点突破を試みるが、どうやら集団PKにはかなり慣れているらしい。すぐさまバックアップに入ったプレイヤーのソードスキルを防御したころには突き飛ばした壁役も体勢を立て直し、状況は振り出しに戻っていた。

 

(くそっ! こうもうまく連携を取られちゃ......)

 

 オレンジプレイヤーが相手とはいえキリトに殺しはできないであろうことも織り込み済みなのだろう。

 キリトほどのレベルのプレイヤーから連撃系のソードスキルを喰らえば、それだけでHP全損もあり得る。しかしキリトを囲むプレイヤーたちからはそれを恐れている様子は微塵もなかった。

 反撃を顧みない人数にモノを言わせた強気な攻撃だった。

 

(どう突破する? 範囲技のソードスキルでもこの数は対応しきれないぞ)

 

 キリトは視界の端を見た。

 《索敵》スキルによって拡張されたマップデータは今もジョニー・ブラックとサリーの位置を捉えているが、これ以上引き離されればキリトの索敵可能範囲を超える。仮に後から《索敵》スキルを全開にして逃げた方角に向かって走ったとしてもジョニー・ブラックの《隠密》スキルで潜伏されたら見つけることはまず不可能だろう。

 

「...っ!」

 

 その時だった。

 キリトの見ていたマップ上にジョニー・ブラックの逃げた方とは真逆の方向から複数のプレイヤーが近づいてくる。

 数は全部で二十人、四パーティを束ねたレイドだ。

 

(これは...オレンジギルドの増援か? だとしたらこの数はさすがにまずい)

 

 キリトは苦々しく奥歯を噛み締める。

 追うのを諦めて、《転移結晶》で圏内まで逃げることも判断の一つとして考え始めたとき、キリトの目に映っていたレイドの中からたった一人の反応が、まるで弓から放たれた矢のようにまっすぐと、凄まじい速度で接近してくる。

 

「せああああああっ!」

 

 白く鋭い影が、キリトの目の前を横切った。

 抜き放たれたレイピアによる突きがすぐそばにいたレッドプレイヤーの喉元を捉える。

 

「ぐああっ!」

 

 移動速度によってブーストのかかったソードスキル《リニアー》。それを繰り出したプレイヤーの姿を見てキリトは肩の力を抜いた。

 

「......お勤めご苦労様。アスナ」

 

 キリトの言葉に返事を返すことなく、アスナは一瞬だけキリトに視線を送るとすぐさま目の前のレッドプレイヤー立ちに向き直る。

 

「もうじき他の団員もここに到着するわ。全員武器を捨てて投降しなさい」

 

「くそっ! おいお前ら引くぞ!」

 

 キリトを囲んでいたうちのひとりがそう号令をかけたものの、PKの連携に比べてろくに統率が取れていないようだった。

 蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げていくレッドプレイヤーを一瞥したアスナはすっと息を吸って声を張り上げる。

 

「総員、散開して捕縛しなさい。誰ひとり逃がさないで」

 

 するとアスナの背後から続くように到着したプレイヤーが次々とそのあとを追いかける。

 全員が《血盟騎士団》を象徴する白を基調とした装備を身にまとっていて、それだけでアスナの指揮するギルドのメンバーであることがわかる。どうやらアスナがレイドを組んでここまで団員を引き連れて来たようだった。

 到着から鎮圧までは、本当にあっという間の出来事。

 

「すごいな。どのプレイヤーもアスナほどではないけど、アジリティがかなり高い。速度重視でポイントを振ってたにしても全員が攻略組の二軍でも通用するレベルだ」

 

 それだけレッドプレイヤーを追いかける団員一人一人のスピードはキリトの目から見ても卓越していた。

 単純な規模で言えば《アインクラッド解放軍》や《聖龍連合》には劣るものの、プレイヤーの質やギルドの組織力、それらを含めた総合的な力でいえばアスナの所属する《血盟騎士団》は間違いなくアインクラッド最強のギルドだ。

 アスナたちによって瞬く間にレッドプレイヤーが捕縛、拘束されていく。おそらくこのあとは第一層にある黒鉄宮へと連行するのだろう。

 その一連の様子を眺めていたキリトにアスナは口を開く。

 

「それにしてもキリトくん。大人数のオレンジプレイヤーとソロで大立ち回りだなんて無茶しすぎよ。いくら自分よりレベルが低い相手だからってどんな方法で攻撃してくるかもわからないのに」

 

「ま、まあそれは......」

 

 その言葉にぐうの音も出ず、キリトは目を逸らした。

 先ほど立ち去ったジョニー・ブラックが良い例で、麻痺と流血のバットステータスを駆使した戦い方はPVP戦においてそれなりのレベル差でも簡単に覆してしまうほどに脅威的なものだ。

 そういった戦い方にせよ、なんにせよ、普通のプレイヤーには想像もつかないような方法でオレンジプレイヤーは攻めてくる。それはキリトも重々承知していることだった。

 

「そ、それはそうと、《血盟騎士団》の面々がこんなところにどうしたんだ? 迷宮区のあるエリアからはずいぶん外れた場所だし、レベリングの最中ってわけでもないんだろ?」

 

 到着してからの手際の良さもさる事ながら、団員が都合よく拘束用のロープを持って来ていたことからも、ここでキリトとレッドプレイヤーが戦闘をしているところに偶然アスナたちが遭遇したのだとも思えない。

 

「ここには《ラフィン・コフィン》の情報を得て来たのよ。つい今朝に創立を宣言したオレンジギルドなんだけど、宣言したメンバーが転移結晶で移動するとき、このエリアをコマンドしているところを聞きつけたプレイヤーがいてね。捕縛するためにアジリティ型の団員を連れて先見に来たところに、どこかの誰かさんが集団PKを受けてるのを見つけたの」




サリー登場の反響が予想以上すぎたw
そうかみんなそんなにサリー好きか
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