死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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この作品書き終わったらですけど、
サリーヒロインでもう一作SAO のクロス書くのもありかな~と思う今日この頃

読みたい?(●ꉺωꉺ●)


39話「めいぷるどりーみん」

 

 

 

 通常、ゲーム内の店というのはNPC、システムに沿って動くノンプレイヤーキャラクターが運営するものがほとんどだが、中には一部生産系のスキルを活用してプレイヤーが独自にテナントを購入して運営する場合もある。

 アイテム雑貨屋や武具店、中には料理スキルを生かしたレストランや露店商といったものもプレイヤーが運営できる。

 そして第五十層のアルケードの町に新たな境地を開拓した新進気鋭のプレイヤーショップが開店した。

 名を、《めいぷるどりーみん》

 

「いらっしゃいませー!」

 

 メイプルは来店のベルを耳にすると、素早く笑顔で応対する。

 身に纏う防具はいつもの《黒薔薇ノ鎧》ではない。フリルがふんだんにあしらわれたエプロンに丈の短い濃紺のワンピーススカート。そして何より目を引くのは頭の上で時折ピクピクと動く猫の耳。

 西洋の伝統的なそれとは一線を画す、東洋の島国でサブカルチャーの波により独自進化を遂げたメイドがそこにいた。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 訪れたプレイヤーはその光景を目にして誰もがこう思った。

 ビックリするほどユートピアと。

 

「はい、ご注文承りましたにゃん♪」

 

 それはビックリするほどユートピア。

 アインクラッド初のメイド喫茶が開店したという情報は、瞬く間に第一層から店を構える第五十層に至るまで遍く轟き渡った。

 これまでにもその手の店をオープンさせようという試みがなかったわけではないが、SAOでは女性プレイヤー自体が極端に少ない。そこでさらに需要を満たせるほどのルックスを持っているプレイヤーとなれば数はさらに限られる。

 結果、肝心のメイドが思うように集まらず頓挫してきたわけではあるが、ここに一人、光明とも言える女性プレイヤーが現れた。

 

「オムライスお待たせしましたー!」

 

 慌ただしく注文をさばいていくメイプル。

 NPCも仕事に加わっているが一定のシステムに従った行動しかできない以上接客の主力はメイプルだ。そうでなくとも大多数の入店客はメイプルを目当てに来店している様子で、店内を行き来するたびにあちこちから視線が集まってくる。

 そしてメイプルがこの店に勤め始めてから一週間が過ぎるころ、開店時間直前にはすでに店の全テーブルが埋まるほどのプレイヤーが店の前で列を成していることもしばしば。

 

(うう......これけっこう恥ずかしいなぁ。でも一人でフィールドに出るより全然稼げるし、あと何日かだけ頑張ったらせめて《転移結晶》だけでもちゃんと返そう!《回廊結晶》については.....ちょっと気長に待っててもらうとして、今回は《転移結晶》の分だけ。あわよくばクリスマスプレゼントにも予算を回せれば......)

 

 そんなことを考えながらメイプルはぐっと拳を握りしめた。そうこうしている間にまた新たな来店者が店のドアを開ける。

 

「いらっしゃいませー! 空いてる席へ...どう......ぞ?」

 

 メイプルの手からトレーごと運んでいたパフェが床に落ちる。

 その視線の先にいたキリトはいたたまれない様子でスッと手を挙げると、やけにこわばった表情に無理やり笑顔を浮かべた。

 

「よ、よお。メイプル」

 

 ガチャリと扉の閉まる音が妙に大きく響いたあと、二人の間に流れた若干の沈黙を破るようにキリトは口を開いた。

 言われた通り適当に窓際の空席を見繕ってとりあえず腰を落ち着けるキリト。そこへマニュアルに従ってメイプルが水の入ったコップを持ってくる。

 

「......お水、どうぞ」

 

「ああ......さんきゅ」

 

 キリトは渡された水の入ったコップに口をつける。それは喉が渇いていたというよりも、そうする以外にどうすればいいのかわからなかったという逃避に近いものだった。

 

「なんというか...うん、まさか本当に働いてるとはな」

 

 つぶやくようにボソリと言ったキリトからメイプルはあからさまに視線を逸らす。

 その空気感は、以前宿屋でキリトがうっかりメイプルの防具を破壊してしまった日の翌日に似ていた。違いがあるとするなら今回は立場がまったく逆ということ。

 

「まあ、いろいろ事情があったと言いますか......そう言うキリトこそどうしてここに?」

 

「メイプルが働いてるって聞いてきてさ」

 

「それはアルゴから聞いたのかな? それとも昨日来たクラインさんからかなぁ?」

 

「ああ、うん、まあ確かにクラインからも聞いたけど、それより前から知ってたよ。あれだけ街中で噂になってたし.....」

 

 その言葉にメイプルの瞳からハイライトが消える。ヘッド装備の猫耳が胸中をそのまま写したかのように力なくしおれていた。

 

「そうなんだ...ふぅん...ま、街中のうわさに......」

 

 正直、メイプル自身もここまで話題になるだなんて想像もしていなかった。

 広場に面した店の窓がいい塩梅に全開だったこともあって、言葉にならないこの気持ちをただの叫び声にして吐露してしまえばさぞかし気持ちがいいことだろうとメイプルは思った。

 

(いっそホントにやってしまおうか......) 

 

 そんな思いがふと脳裏をよぎったとき、どう声をかけたものか決めあぐねていたキリトが口を開いた。

 

「その......似合ってるよ。メイド服もネコ耳も。可愛いと思う」

 

「あ、ありがとうございます......」

 

 メイプルは照れたようにうつむくが、そのまま会話が途切れる。

 

(うう〜っ。この格好で接客するだけだって恥ずかしいのに、知り合いに、それもキリトに見られるなんて......恥辱の極みだよ! もうわたしくっころだよ!)

 

 どういうわけか捕らわれた女騎士をイメージするメイプル。

 

「とりあえずオーダー頼むよ。なにかおすすめはあるか?」

 

「はい! 当店はメイドがケチャップでお絵描きする《萌え萌えオムライス》がおすすめですにゃん!」

 

「にゃ...にゃん?」

 

「..........ッッッ!! いやっ、あの! これは...!」

 

 ト耳まで赤くなってしまった顔をトレーで隠したままその場にしゃがみこんでしまうメイプル。

 連日に渡ってほとんど一人で大勢の客を相手に対応していたせいか、メイプルの中で最適化されつつあった接客マニュアルがここにきて裏目に出た。

 

「おい...メイプル? 大丈夫か?」

 

「.........」

 

 メイプルはなにも答えずにしゃがみこんだままだった。

 

「おい、あの黒ずくめの男。メイプルちゃんになにをしたんだ?」

 

「まさかあいつ...やっぱりそうだ、ビーターの!」

 

「例の初心者の防具を剥いだってやつか...?」

 

 周囲の視線にいち早く気がついたキリトのこめかみに冷たく、ねばついた汗が浮かんだ。

 

(まずい......この手の悪評はビーターとかそういうのとは違う次元でまずいぞ!)

 

 キリトは慌てて、それでいて努めて優しく、いまだうずくまったままのメイプルに言った。

 

「メイプル、俺のことは気にしないでいいから。食事が終わったらすぐに帰るし、その.....オムライスとかも無理しないでいいから」

 

「ううん......大丈夫だよ」

 

 トレーの向こうから鼻をすするような音が聞こえた。

 

「だって......」

 

 涙のせいか、赤らんだ瞳で笑顔を浮かべると、メイプルは立ち上がる。

 

「私、メイドだからっ!」

 

(なんだその謎のプライドは!?)

 

 

 




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ではまた次回〜
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