死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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40話投稿した瞬間に結婚おめでとうという趣旨のメッセージが感想欄に殺到しました。
みんな、前書き最後までちゃんと読もうぜ(汗)
これからもちゃんと頑張りますって


緋く染まる二つの刃 〜其の1〜

 

 

 

 あの日、目を覚ました私は一人、森の中にいた。

 生い茂った木々、その枝葉の隙間からこぼれる陽の光が目に差し込んでくる。私は横たわった身体を起こして辺りを見渡した。

 

「なにこれ? 来たことない場所っぽいけど、突発クエストのトリガーでもうっかり引いちゃったかな?」

 

 今まで行ったどの階層でも見たことのない景色。

 このときの私は未踏破のエリアか、何らかのクエスト専用のフィールドに強制転移させられたのだと思っていた。

 とりあえずマッピングしないことには始まらないと、システムウィンドウからマップ画面を呼び出して現在位置を確認したところで、ようやく自分の置かれた状況の異常性に気がついた。

 

「に、二十八層〜〜〜!?」

 

 バグにしても限度がある。

 さっきまで私がいたのは第二層、まして今現在NWOで解放されているエリアは全部で四層までだったはずだ。それがどんな訳かいきなり二十八層。月に一回のペースで新エリアのアップデートがされたとしても、解放されるのは数年先になるであろうエリアだ。

 そんなフィールドを運営が今の段階で用意してるなんて思えない。

 

「っていうことは、やっぱなんかの不具合だよねーこれ。運営に連絡とってどうにかなるかなぁ」

 

 私はショートメッセージで運営にメールを送ってみる。すぐに対応とはいかないだろうから、今は気長に待つとして、とりあえず辺りを散策してみることにした。

 散策といってしまえば聞こえはのんびりとしているけど、私の散策は超効率思考、極振りに限りなく近いステ振りで鍛えたアジリティと、それをさらに加速させるスキルを使ったランナーズスタイル。

 

「《超加速》......」

 

 ボイスコマンドとともに身体にまとったライトエフェクトが小刻みに空気を振動させる。ゆっくりと息を吐き、前傾姿勢で前足に体重を乗せた。

 

「位置について......よーい、ドン!」

 

 地面を蹴るとともに空気が裂けるような音が聞こえたかと思えば、それが一瞬にして遥か後方に置き去りになる。全身を風が切り、目の前の景色が瞬く間に移り変わっていく。

 使うたびに三十分という膨大なリキャストタイムが必要なスキル《超加速》。でも、一度使ってしまえば一分間自分のアジリティの1.5倍の速度でフィールドを駆け抜けることができる。まずはこれで付近をマッピングを一気に済ませてしまおうという考えだ。

 森を抜け、草原に差し掛かり、そこからはさっきまでいた森の周りをぐるりと一周するようなコースで走る。

 進行方向にモンスターがポップすればクリティカル判定の出る首や心臓付近の急所に一撃入れてそのまま通り過ぎる。

 どれもこれまでのエリアでは見たこともなかったモンスターだけど、設定されているHP自体はかなり低めなのか、その一撃離脱で全損するようなものがほとんどだった。

 

「なんか...随分モンスターのレベル低いわね。ここが二十八層っていう割には手応えがないけど、それ以前にやっぱ違和感あるんだよなぁ」

 

 モンスターのデザインやマップの作りがどこかこれまでのNWOのフィールドと統一感がないというか、根本的に違う気がする。

 まるでまったく別のファンタジーRPGをプレイしているような、そんな違和感が拭えないまま私は再び森の中へと足を運んだ。

 それからほどなくして《超加速》の効果時間も切れて、走る速度も平常時のAGI値相応に落ち着く。 そんなとき、視界の端でミニマップに表示されていたアイコンから私はいくつかのプレイヤーの存在を認めた。数人のプレイヤーを囲むように一定の距離をあけて大勢のプレイヤーが等間隔で輪を作っている。

 長くMMORPGをプレイしていれば、こういう陣形の取り方にも多少なりとも心当たりがある。

 

「集団PKの真っ最中、ってところかなこれは」

 

 プレイヤーの配置からそう察した私はアイコンが示す方角に進路を変えた。

 それはこの不明瞭な状況下で自分以外のプレイヤーがすぐ近くにいる、というのも理由の一つだけど、多勢に無勢でプレイヤーを襲うような連中に茶々入れでもしてやろうなんていうちょっとした気まぐれでもあった。

 木々の間を縫うように駆け抜け、進んでいった先に緑色のフードマントが私の目に映る。

 

「見えた! まずは挨拶がわりに―――」

 

 ステータス上の限界まで速度を上げ、その場で地面を蹴って飛び上がると、突き出した膝がフードを被ったプレイヤーの背中を捉えた。

 

「せいあっ!」

 

「ぐあっ...!」

 

 二転三転と地面を転がり、吹き飛んでいくプレイヤーにその場の誰もが視線を向けた。それに続けて私に視線が移ると腰に掛けていたツインダガーを抜き放つ。

 PKをしていたと思われるプレイヤーは全部で八人、全員揃ってフードで顔を隠している。

 それに対して囲まれていたのはたった三人、パーティメンバーの上限にすらわずかに届かない小数人だ。

 ぱっと見でもどっちが襲われている側なのか、一瞬でわかる。

 

「こういう時にかっこいいセリフがパッと出てくればいいんだろうけどさ、まあいいや。とりあえずこんな大人数でPKやってるような奴らなら逆に殺られる覚悟くらいできてるでしょ?」

 

「君、僕らを助けてくれるのかい?」

 

 囲まれていたプレイヤーの一人、分厚いプレートアーマーに片手剣を携えた重剣士が口を開いた。

 

「こんなの見過ごせないよ。協力してあげるからあなたたちも手を貸してくれる?」

 

 サリーの言葉に重戦士は静かに口角を上げて笑いかけた。

 

「もちろんさ。最悪僕一人を囮にみんなを逃がすくらいのことはするつもりだったけど、君が来たお陰で気が変わった」

 

 これがギルド《月と盾の紋章旗》のリーダー、フレッドとの出会いだった。それはSAOの世界で初めてできた友達で、ともに戦った仲間で、そして後に私がこの手で殺めてしまったプレイヤーだ。

 




サリー過去編突入ということで、どすか?
ではまた次回〜
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