死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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あ、やばい
過去編五話くらいで終わらせるつもりだったのに絶対終わんないこれ
ヨミが甘すぎた......


緋く染まる二つの刃 〜其の3〜

 

 

 

 私は弾丸さながらにモンスターに向かって一直線に飛び出すと、すれ違いざまに一撃、左右二本のダガーで胴体を切り結んだ。

 

「はあっ!!」

 

 踏み込んだ片足を軸に身体を一回転させて遠心力で振るった攻撃はモンスターの胴体に二本の赤い軌跡を刻み込み、HPを削る。

 

「速ええ...なんだよ今の攻撃。というか短剣の二本持ちなんて聞いたことねえぞ? どうやって装備してんだありゃ」

 

 シゲルの唖然とした声が身を翻す私の耳に届いた。

 

「いや、できないことはないよ。持っている片手武器とは反対の手に盾と同じ要領でもう一つ片手武器を装備することはできる。けどそうするとソードスキルは使えなくなるし、武器を二つ扱うこと自体が難しくて誰もやらないのだけど......」

 

「しかも見ましたあの持ち方、スタイリッシュに二本とも逆手に構えてましたよ? 構え方もめっちゃサマになってるし」

 

 やっば、もしかして私やらかした? 魔法さえ使わなければ平気かと思ってたけど、ツインダガーの逆手持ちってSAOじゃそんなに珍しいの?

 この世界の戦い方がよくわからないうちはあんまりしゃしゃり出ない方が良かったかなと、今になって思いはした。けどまだ攻めきれる場面で後退するのも不自然だ。とりあえず私はツインダガーの通常攻撃と持ち前のアジリティ、この二つ以外の手の内は見せない方向で戦いに参加することに決めた。

 

「スイッチいくぞ!」

 

 フレッドがモンスターの刀に向かって真一文字に片手剣を振るうと刀身同士が衝突した瞬間、お互いの剣が弾かれてモンスターの体勢が崩れる。

 

「どらっ!」

 

 つかさずフレッドの脇をすり抜けるように前衛に躍り出たシゲルがメイスを振り上げる。紫色のライトエフェクトが鉄塊に灯り、それが大上段からモンスターの頭に叩きつけられるとHPバーの上に星が散ったようなアイコンが表示される。

 多分、スタンとか混乱とかのバットステータスを表したものなんだろうと勝手に想像した。事実目の前のモンスターはふらついたようなおぼつかない足取りで後ずさっていて、シゲルに対して反撃してくる様子は感じない。

 けれど、シゲルはそれ以上追撃を仕掛けることなくモンスターの正面から避ける。そのすぐ後ろではオレンジがソードスキルのモーションを取って待ち構えていたのだ。

 

「よっしゃ今だ! かませオレンジ!」

 

「おっけいオレンジちゃんの快進撃ーっ!」

 

 眩しいくらいに強く、大きく槍の先端が光ると、それが一直線に吸い込まれるようにモンスターの胸元を貫いた。

 しかし食らったモンスターもかなりタフみたいで、これだけの攻撃を受けてもまだHPは半分近く残っている。それどころか槍による攻撃がなまじ強かったせいで後衛であるオレンジにモンスターのタゲが向いてしまっていた。

 

「せああああっ!」

 

 フレッドもそれには気がついていたらしい。つかさず片手剣のソードスキル《ソニックリープ》で一気に距離を詰めて攻撃を仕掛ける。私もそれに続いてモンスターの背後を取って攻撃を加えた。

 

「サリー、このまま二人でモンスターの注意を引き受ける。けど敵が攻撃モーションに入ったら無理に受け止めようとはせずに刀の届かない位置まで下がるんだ」

 

「わかったわ」

 

 モンスターから目線を外すことなく答えて、私は左右の短剣を縦横無尽に振るった。けど猛攻も本当に束の間で、一瞬にしてモンスターの目が鋭さを増したように見えた。

 ぞわりと、私の背筋に逆なでするような感覚が走った。嫌な予感がする。

 

「ソードスキルが来る。下がって!」

 

「っ!」

 

 フレッドは剣の刀身に手を添えて防御姿勢を取りながらバックステップ、私もそれに応じてモンスターから距離を取った。

 すると範囲技のソードスキルなのだろう。私たちが下がってからほとんど間を置かず、モンスターを中心に円を描くように刀身が振り抜かれ、そこからプラスアルファでライトエフェクトが僅かに広がった。多分モンスターの刀はもちろん、あのエフェクトにもダメージの当たり判定があるのかな?

 だとしたら見た目のインパクト以上に攻撃にリーチがありそうだけど、大丈夫。今見たので癖のようなものは掴めた。

 

「...っ!? サリー! タゲはそっちに向いてる。もう一撃気をつけて!」

 

 私は無言のまま剣を構えた。フレッドの言葉に答えなかったのはモンスターのモーションを見極める上で返事をするだけの余裕がなかったからだ。

 一度刀を鞘に収めたモンスターは重心を前に、前傾姿勢を取る。

 

「...来る!」

 

 一瞬にして距離を詰められ、ライトエフェクトを纏った刀身が抜刀され、間近に迫る。

 やっぱり真正面から見ると通常攻撃とは比べ物にならないくらい速い。これがソードスキル。けど!

 

「避けられなくは、ないんだよねっ!」

 

 身を翻して私は太刀による一閃を躱すと、そこからさらに距離を詰めて極至近距離、短剣の間合いまで一気に肉薄した。

 左右の短剣で三回、四回、五回と攻撃を加えたところでモンスターの攻撃モーションが始まり、もう一度距離を取る。

 

「いいぞ! サリーはそのまま下がっていてくれ!」

 

 そう叫んだフレッドの方に視線を向けると、モンスターの背後で大きく振りかぶられた片手剣が瞬くようなライトエフェクトを帯びていた。

 それは片手剣の上位ソードスキル《ノヴァ・アセンション》。

 システムアシストによって動きの設定された攻撃モーション、フレッドの流れるような十連撃の一つ一つが重くモンスターの背中に叩きつけられると、ようやくモンスターのHPはゼロを迎えた。

 

「ふう......ようやく勝てたわね」

 

 私は砕け散ったポリゴンが跡形もなく消えていくのを見届けると、肩からすっと力を抜いてツインダガーを腰の鞘に納めた。

 

「さて、と......」

 

 さて、本番はここからだ。

 私はこわばった表情をできるだけ柔らかく見えるように意識しながら三人の方を見た。さっきの反応からして私の戦い方はみんなの目にはずいぶん異質に見えたらしい。そもそもプレイしていたゲームがSAOとは違うのだから当然だけど、これってどうやって説明したもんかなぁ......

 

「速い! てかめちゃ強い!」

 

 そんな風に悩む私の手を取ったのはオレンジだった。それに続いてシゲルも駆け寄って来る。

 

「あのソードスキルをあっさり避けるなんてどういう反射神経してんだよ! ありゃ刀カテゴリの中でも一番速いソードスキルなんだぜ? まったくとんでもねえな!」

 

 お、おう。よかった。思ってた以上に皆あっさりと受け入れてくれてるみたい。

 フレッドが言っていたけど、私の戦い方自体は強いかどうかは別として再現不可能ではないらしい。そうするとソードスキルが使えなくなってしまうというデメリットもあるみたいだけど、そもそもスキル欄にソードスキルという項目のない私にとってはむしろ好都合だ。

 

 

 

 

 

 

 それからも私はフレッドたち《月と盾の紋章旗》のメンバーとして楓を探しながらいろいろな層でいろいろなフィールドを回った。

 アインクラッドの世界はNWOなんて比じゃないくらいに広大で、巨大な木々に囲まれた樹海、熱射の降り注ぐ砂漠、壁や地面から覗かせる光る石が僅かに道を照らすだけの薄暗い洞窟、この世界のどこへ行っても私はこのギルドの仲間たちとの冒険を心から楽しんでいた。

 それでも本来の目的は忘れていない。

 ある程度この世界でのお金が溜まってからは情報屋を使って生存している女性プレイヤーをリスト化。それを頼りに私は本格的な楓の捜索を始めた。

 この世界のプレイヤーのほとんどが男性だとはいっても、リストにある女性プレイヤーを一人ずつしらみつぶしに探していくのはなかなか根気のいる作業。でも少しずつでも着実に楓のもとに近づいていると思えば自然と苦には思わなかった。

 そうやっているうちに、ここへ来てからいつの間にか一ヶ月が過ぎ、みんなとレベルを上げながら、暇さえあれば楓を探し続ける。

 そういうこの世界で生きていく上でのリズムのようなものができ始めた頃、私はリストの制作を頼んだ情報屋のアルゴからの呼び出しを受けた。

 

 

 

 

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