死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います 作:くぼさちや
Twitterで公開してるので気になる人は見てちょ(●ꉺωꉺ●)
@Prz6sOqffybKM7t
見渡す限り視界を遮るものが一切ない草原フィールド。
障害物が何もないのでちょっとした勾配ではるか彼方まで見通すことができる。
さほど距離の離れていない場所では青い毛並みの猪型モンスター、パワーボアが草を食んでいるのが見える。数は一匹とメイプルに任せるのにちょうどいい。
「よし、メイプル。あれを狙ってみよう」
「ええっと、あのブタさん...目が怖いんですけど、まっしろで。なんか角みたいなの生えてますしもうちょっと弱めのモンスターでも......」
「大丈夫、ああ見えてこのSAOではスライムみたいなものだから。メイプルのバイタリティならまともに攻撃を食らっても大したダメージにならないよ」
それでもおっかなびっくりといった様子で大盾の影に隠れて、ひょっこりと顔をのぞかせているメイプル。
(そんなに警戒する必要もないんだけどなぁ。仕方ない。ちょっと可哀想だけど......)
見かねたキリトは手近にあった石を拾い上げると野球の投手のように手を振りかぶった。石からスキル発動を示すライトエフェクトが発せられると、そのままパワーボアに向かって一直線に投げられる。
「ちょっ!?」
それを見て焦ったような声を上げたのはメイプル。
こちらの存在に気づいたパワーボアが地面と後ろ足の蹄を擦りつけるような動作をする。突進攻撃のモーションだ。
「こっちに突っ込んで来るぞ。盾を構えて攻撃に備えるんだ」
「...っ! えい!」
メイプルは短剣も抜かず、両手で盾を押し付けるように構える。腰が引けている上に目もつぶってしまっているのだが、あくまでここは仮想世界。システム上、そういう些細な体勢の違いはそこまで関係ない。
「よしいいぞ。そのままガードが決まれば盾に設定されてる攻撃力分のダメージがモンスターに通る」
「......やっぱり怖いです〜〜っ!!」
そのまま攻撃を受け止めれば良かったものを、あろうことかメイプルはそのまま真後ろに走って逃げた。
そこへめがけてパワーボアが追いかけるように突進していく。
「ま、まずい...! メイプル! 盾を構えて応戦するんだ! 背後攻撃はクリティカルが確定する。そのまま攻撃を受けたらダメージが倍になるぞ!」
「そ、そんなこと言われても〜っ!!」
なおも逃げ続けるメイプル。しかしAGIゼロのプレイヤーよりも足の遅いモンスターなど、まずいない。すぐさまパワーボアの二本角がメイプルの背中に迫った。
「危ない!」
キリトがそう叫んだ時にはすでにパワーボアの突進が炸裂していた。炸裂して、逆に固い岩にでもぶつかったように弾き返された。
「.........へ?」
「あれ? 今なにかがぶつかったような?」
メイプルは足を止めて振り返る。
するとすぐさまパワーボアが追撃を仕掛けた。体勢をかがめて、角を下から突き上げるような攻撃。それがメイプルのみぞおち付近に命中する。しかし上がったのは悲鳴ではなく、むしろ感嘆の声だった。
「すごい! 全然痛くない!」
そのまま仁王立ちのような姿勢で一方的にパワーボアの攻撃を受け続ける。キリトもメイプルのHPバーを確認しながら傍観に徹していたが、ダメージを受けている様子もない。
(ああ、そうなのか...レベル1でもバイタリティにスキルポイントを極振りにすれば一切ダメージは通らないのか。知らなかった)
今度機会があったら小話程度に情報屋のアルゴにでも教えてやろう、とキリトは内心思った。もっとも正式サービスが始まって一年、SAOプレイヤーの中でもレベル1なのはメイプルくらいなものだが。
「ほらほらこっち! ぶたさんこっちだよー!」
それからもメイプルとパワーボアの“遊び”は続いた。
楽しそうに草原を駆け回るメイプルと突進を繰り返すパワーボア。ヒットが背後だろうと正面からだろうと関係ない。メイプルのHPは一向に減ることはなく、パワーボアもシステムに従ってひたすら攻撃を繰り返す。
そこには命をかけたデスゲームという緊張感はどこへやら。
(なんだこの光景、まるで正月に親戚の大型犬と直葉がじゃれてるのをそばで眺めてるような......)
キリトは縁側でお茶をすするような気分で芝生に腰を下ろす。
さっきまであんなに怖がっていたというのに、今ではすっかりペット感覚でパワーボアと戯れているメイプル。
いつからここは牧場を舞台にした育成ゲームになったのだろうと、キリトは気の抜け切った顔でそれを見ていた。しかしそれが三十分、一時間と続くと、暇つぶしにアイテムストレージを整理し終えたキリトもさすがに辛抱が続かなくなってくる。
「おーい! 慣れてきたならそろそろレベル上げを始めないか?」
「まあまあそう言わずに。キリトさんもよかったら一緒に───」
楽しそうに振り返り、キリトに話しかけたときの体の角度が良くなかった。手に持っていた盾が偶然パワーボアの突進攻撃の進路を遮り、盾と角が衝突する。
瞬間、パワーボアが無数のポリゴンになって散っていった。
「ぶ、ぶたさんが...!」
ガクリと膝をつく半泣きのメイプル、そしてその様子を半笑いで見るキリト。
「ぶたさあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
だだっ広い草原に、メイプルの悲痛な叫びが響き渡った。
そのとき、ピコン、という効果音とともにメイプルの目の前でシステムメッセージが開かれた。
《絶対防御を取得しました》
評価、感想お待ちしておりやす(●ꉺωꉺ●)
ではまた次回〜
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