死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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つい最近ですが、死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思いますのプロモーションビデオが完成しました!!!
(*ノ゚Д゚)八(*゚Д゚*)八(゚Д゚*)ノィェーィ!

Twitterに載せてるのでどうぞご覧頂きたい!
@Prz6sOqffybKM7t




55話「エンゼルトランペット」

 たった一人で10人以上のプレイヤーを倒す。そう宣言したメイプルはゆっくりと、《タイタンズ・ハンド》のメンバーに向かって歩きだす。

 

「やっつけるだって? ずいぶんと甘く見られたもんじゃない。そんな足でまとい抱えながら一人で勝てると思ってるわけ?」

 

 その言葉に、シリカはびくりと身体を震わせる。

 

「ここに着くまであんたたちのこと見てたけど、レベルの低いシリカを庇って、モンスターを倒せるようお膳立てしながら進んでって具合でさ。あんた一人の方がまだ早くここまで来れたんじゃない? まあ、わざわざカモがネギしょってくれてんだからこっちは万々歳だけどねぇ」

 

「どうかな? 意外と簡単に勝てちゃうかも知れないよ? それに今のはちょっと聞き捨てならないしね」

 

「......なんだって?」

 

 ロザリアの眉間が寄る。苛立ちを交えた声をものともせずにメイプルは言葉を続けた。

 

「シリカちゃんは足でまといなんかじゃないよ!」

 

 そう力強く言うと、メイプルは腰に下げた短剣《新月》を引き抜いて構えた。

 全一〇〇階層から成るアインクラッド。その最前線で戦う攻略組の間で、畏怖と敬意を集める一人の女性プレイヤーがいた。

 いわく、猛毒を持った三つ首の竜を使役していることから、毒竜使い。

 いわく、どんな攻撃も跳ね除ける圧倒的なバイタリティから、要塞。

 いわく、五〇層ボス攻略戦において単騎でボスを圧倒したその戦いぶりから、機械仕掛けの女神。

 そんないくつもの通り名で知られているメイプルだったが、普段の攻略でも好んで使うスキル、《ヒドラ》と《身捧ぐ慈愛》が同じく攻略に勤しむ多くのプレイヤーの目を引き、広くこう呼ばれるようになった。

 

「《エンゼルトランペット》と呼ばれたこのわたしに、勝てるかな?」

 

 いつか言ってみたいと、ひそかに考えていた決め台詞をドヤ顔で言ってのける。

 

「...誰よ? 聞いたこともないんだけど」

 

「ぬぐぅっ...!」

 

 しかしボス攻略戦からまだ一週間、得意げに名乗りを上げるにはメイプルの知名度は低かった。

 堅牢なバイタリティを貫通して、メイプルの精神が大ダメージを負う。

 

「め、メイプルさん...?」

 

「だ、大丈夫! わたしが皆やっつけるから!」

 

 気を取り直して剣を構えるメイプル。

 

「死なないように手加減してあげるから、みんなまとめてかかっておいでよ!」

 

 その言葉を合図にしたかのように《タイタンズ・ハンド》のメンバーはそれぞれが持つ武器を構えて斬りかかる。対してメイプルは自身の持つ短剣、《新月》を頭上に掲げた。

 

「《ヒドラ》!」

 

 ボイスコマンドに呼応して《新月》の刃から紫色の毒流の首が三つ、咆哮をあげて空に伸びる。それが山なりに軌道を変えて目の前にいたオレンジプレイヤーに頭から突っ込んだ。

 衝突と同時に視界いっぱいに紫色の濁流と瘴気が広がっていく。

 

「こ、この攻撃...毒がっ!」

 

 継続的に減っていくHPに気づいた一人がそんな声を上げた。しかも毒の状態異常効果のある瘴気は今もなおオレンジプレイヤーたちの周囲を完全に覆っていて一定の時間が過ぎて自動的に毒の状態が消えようと、結晶アイテムで解毒しても、治ったそばから再び毒の状態異常を受ける。

 

「やめろ! まだ死にたくない!」

 

「《身捧ぐ慈愛》」

 

 ほとんどのプレイヤーのHPがレッドゾーンに陥ったとき、メイプルは《身捧ぐ慈愛》を発動してオレンジプレイヤーのHPを回復させる。

 

「大人しく捕まってくれる人はこのまま回復してあげるけど、そうじゃない悪い子にはしてあげないよ!」

 

 それは、まさしく天使と悪魔だ。

 オレンジプレイヤーたちの戦意が削がれようとしたとき、ロザリアの怒鳴り声がつんざいた。

 

「怯むんじゃないよ! あの女の近くなら毒の効果はないだろ! 死にたくなきゃとっとと突っ込みな!」

 

 ロザリアの言う通り、毒の瘴気はメイプルの近くまでは及んでいない。攻撃するためにメイプルに近づけば結果的に毒の瘴気を抜けることができる。

 

「シリカちゃん! 巻き込まれないようにもっと後ろに下がってて!」

 

「は、はい!」

 

 シリカはメイプルにそう言われると、できる限り後ろに下がる。横目でそれを確認したメイプルは再度襲いかかる《タイタンズ・ハンド》のプレイヤーに視線を戻した。

 毒の瘴気を抜けたプレイヤーは全方向からメイプルを取り囲むような形で位置取りをする。

 

「死ねえ!」

 

 すると真正面にいた一人が装備していたメイスを大上段からメイプルの頭頂部に向かって振り下ろした。

 しかし衝突と同時に岩でも殴ったかのように攻撃は弾かれて、メイプルの頭にはダメージエフェクトすら発生しない。それはメイス使いの攻撃だけではなかった。盾持ちの片手剣士も、曲剣使いも、全武器カテゴリでもっとも高いストレングス補正値を持つ大斧の攻撃すら全てノーダメージで弾き返していた。

 

「こいつ...! どうなってんだ?」

 

 なおも《タイタンズ・ハンド》による攻撃は続いたが、メイプルは反撃どころかまるで避けようともしない。多勢に無勢。立て続けに、それも一方的に攻撃を加えているせいか《タイタンズ・ハンド》の攻撃は徐々に単調になり、自然と攻撃の間合いも近くなっていく。

 

「これだけ近づいてくれれば届くかな? よーし! 《パラライズシャウト》!」

 

 メイプルは《新月》を一度腰の鞘に戻し、鍔を鳴らした。するとメイプルの周囲に黄色いライトエフェクトが波紋のように広がり、襲いかかってきた《タイタンズ・ハンド》全員を麻痺状態にする。

 

「かーらーのー...《アシッドレイン》!」

 

 続いて発動したスキル《アシッドレイン》により、メイプルの頭上に紫色の雲が広がった。そこから雲と同様に紫色の雨がスキルを発動したメイプルと麻痺で動けなくなった《タイタンズ・ハンド》のメンバーに振りかかった。

 しかし後方で指示していたロザリアはそれを鼻で笑う。

 

「ハッ! 馬鹿だね! 自分もろともスキルの餌食にするなんて。それじゃああんたも毒の状態異常に―――」

 

「ならないよ! わたしのスキル《毒無効》でどんな毒攻撃だって無効化できるの」

 

「《毒無効》だって? そんなスキル聞いたことも......っ!」

 

 しかし実際メイプルは《タイタンズ・ハンド》のメンバーと同様に毒効果のある雨を浴びているが状態はクリアなままだ。スキル使用者には効果がない、ということも味方斬りや自死が可能なSAOではありえない。

 

「さあ! どうするの? 大人しく捕まるなら、命までは取らないよ!」

 

 それからメイプルは《パラライズシャウト》《アシッドレイン》を繰り返し、プレイヤーのHPがレッドゾーンを迎えれば《身捧ぐ慈愛》で回復する。そして再度《パラライズシャウト》で動きを封じて《アシッドレイン》による毒の状態異常で追い詰める。

 まさに天使と悪魔の所業だ。

 そんなことを思った《タイタンズ・ハンド》のメンバーの一人が、あることを思い出す。

 

「そういえば、噂でファンタジーゲームの魔法みたいなスキルを使う女プレイヤーが《血盟騎士団》にいるって......まさかこいつ!」

 

 SAOに囚われたプレイヤーでその名前を知らないものはいない。それは《タイタンズ・ハンド》のメンバーだけでなく、シリカにとっても同様だ。Knight of blood。中規模ながら所属する団員の全てが攻略組か、あるいはそれに相当する高レベルプレイヤーで構成され、《アインクラッド解放軍》や《聖竜連合》を凌いでアインクラッド最強とまで言われたギルド、《血盟騎士団》。

 

「《血盟騎士団》......メイプルさんが...?」

 

 驚愕に見開かれたシリカの瞳に、システムウィンドウを操作するメイプルの姿が写る。装備欄からカラーリングを選択し、メインカラーを白、サブカラーを赤に設定し直すと、紫色だったメイプルの装備が白を基調とした《血盟騎士団》特有のそれに変わる。

 その姿を見た《タイタンズ・ハンド》のメンバーの誰もがどよめいた。

 続いてメイプルはアイテムストレージからあるものをオブジェクト化して取り出す。

 

「これは《回廊結晶》だよ。ホントはいつかキリトさんに返すつもりで買っておいたんだけど、ここで使っちゃうことにするよ。転移先の設定はもちろん...黒鉄宮!」

 

 

 

 

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