死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います 作:くぼさちや
って感想貰います。
実際どうなんですかね? クロスオーバーだから原作二つあるし、どっちでもいいかなぁーと思ったらそうでもないのかなぁーって感じだったんですが、はい。
─────“ダメでした”─────
メイプルはスキルの説明を確認しながらキリトに聞いた。
「やっぱりどれもSAOにはないスキルなんですか?」
「そうだな。状態異常を軽減するスキルとかはあるけど、完全な無効化となると俺も聞いたことがない。それこそ《絶対防御》みたいに常時ステータスが倍加するようなスキルもそうだ。たしか大斧のスキルで近いのがあるけど、あれも一定時間ストレングスが倍になる代わりにバイタリティは半減するっていうものだし」
やはりSAOプレイヤーがそれぞれ持つスキルとは全く違ったシステムで成長しているようだった。
スキルもスキルスロットを消費する類のものとは別で、常時毒の状態異常を無効化する。バイタリティが四倍になる。麻痺の状態異常が確定で付与できる。
(メイプルにとってはいい意味でSAOのゲームバランスに合わないスキルだ。こんなふうに簡単にステータスが二倍、三倍になってたら実際のレベルがいくつかなんてさほど関係ない。装備武器や持っているスキルで大きく差がつくゲームなのか?)
「どうしたんですか? キリトさん、難しい顔してます」
「ああ、いや。ちょっと考え事だよ。メイプルがログインしたゲームってどんなゲームだったのかなってさ」
「そうですね。ちゃんとプレイする前にここに来ちゃったからわからないですけど、雰囲気はSAOとよく似てる感じですよ。ファンタジーな世界でモンスターと戦ったり、アイテムや武器を集めたりです。あと、ボス? みたいなモンスターもステージごとにいるみたいでした」
「なるほど、じゃあ勝手はそれなりに同じだな」
森林を進んでいくとやがて巨大な岩肌が隆起した崖につき当たった。そこにはダンジョンの入口なのか洞窟がある。人二人が横に両手を伸ばしたくらいの幅で、それなりに奥行きがあるように見える。
「よし、この先にクエスト《統率者の帰還》の目標がいる。ゴブリンジェネラルはこれまでのモンスターと違ってメイス系のソードスキルを使って攻撃してくるから、しっかりガードを固めるんだ」
「わ、わかりました...!」
盾を握る手に一段と力の入るメイプル。
入口から差す陽の光が届かなくなっても、洞窟の中はところどころに散りばめられた光る結晶のようなもので薄く照らされていた。
そのまままっすぐ続いている一本道を進んでいくと、キリトの索敵スキルがモンスターの居場所を知らせてきた。
「そろそろ洞窟の奥に着くみたいだ」
「もうですか? 着くまでいっぱいゴブリンとの戦闘があると思ってたんですけど」
「ここの辺りはクエストが集中していてプレイヤーが多いからな。モンスターのリポップに必要なリソースが極端に少ないんだろう。特にゲーム開始直後は一万人のプレイヤーが草原フィールドからこの周辺にかけて溢れていた。俺はすぐ遠くの街に拠点を移したから実際には見てないけど、すぐモンスターを狩り尽くしてレベリングどころじゃなかったらしいし」
やがて洞窟の最奥にたどり着くと、メイプルの目にもモンスターの姿が確認できた。
鎮座された玉座の上にプレイヤーのように武器と防具で武装した、これまで戦ったものよりひときわ大きなゴブリンがいる。
右手にはメイス、左手にはバックラー。色味の鈍ったプレートアーマーを全身に装備し、ヘルムの奥では醜悪な表情と紅い瞳がキリトとメイプルに向けられている。
「それじゃあこれまでの戦闘のおさらいだ。といっても作戦通りに動けば問題ないよ」
「わかりました!」
メイプルは力強く答えた。
少しずつ様子を伺いながらゴブリンジェネラルに近づくと、戦闘イベントが発生するエリアにまで足を踏み入れた。
洞窟内の松明が次々に灯り、フィールド全体が明るくなるとゴブリンジェネラルが立ち上がり、メイプルに向かって吠える。
「...っ」
一瞬臆したように足を止めるメイプル。しかし、後ろで見守るキリトの存在が意識の片隅から背中を押した。
大盾を正面に構えて、鞘に納めたダガーにメイプルは手を添える。
「さあ、どこからでもかかっておいでよ!」
その一声を合図にしたかのように、ゴブリンジェネラルはメイスを振り上げてメイプルに迫った。
これまでのゴブリンにはなかった素早い立ち上がり、しかしメイプルは一歩も引かずに受けて立った。
「ゴォオオオオ!」
「せいやー!」
メイスと大盾が衝突する。すぐさまメイプルは自分のHPバーを確認した。
(大丈夫、全然減ってない)
全身を攻撃から守れるようにしっかりと大盾の影に身を潜め、それでいて僅かに盾から顔を覗かせてゴブリンジェネラルの動きを見る。攻撃一つ一つから目を離さず、振り上げるメイスの角度に合わせるようにして大盾を構えてやり過ごす。
やがてゴブリンジェネラルのAIがメイプルから反撃がないことを読み取ったのか、バックステップで距離を取るとソードスキルのモーションに入り、メイスが紫色の光を発した。
(よしよし、キリトさんの作戦通りだね)
メイプルは防御姿勢のまま腰のダガーに手を伸ばした。
そしてゴブリンジェネラルが一気に距離を縮めてソードスキル、《パワー・ストライク》を繰り出す。衝突の瞬間、これまでになかったほどゴブリンジェネラルが間近に迫った。
「パラライズシャウト!」
わずかに抜いた刀身をすぐさま鞘に納めて鍔を鳴らす。するとメイプルを中心に半径1メートルほどの範囲に黄色いライトエフェクトが波紋のように広がった。
途端にゴブリンジェネラルの攻撃が止まる。麻痺の状態異常によって動けないのだ。
「やった! このままっ!」
メイプルはガードを解くと素早くゴブリンジェネラルの背後に回り込む。
(背後からの攻撃は......クリティカルヒットが確定!)
勢いよく振り下ろしたダガーがゴブリンの背中を切りつけた。赤いダメージエフェクトが切断面に走り、そのまま二擊、三擊と攻撃を繰り返す。
「いっくぞーっ!」
そのときだった。
メイプルの視界が一瞬にしてポリゴンで染まった。メイプルだけではない。それを離れた場所で見ていたキリトの目にもメイプルが落ちてきた時と同じようなグラフィックの荒れ、不自然なポリゴンの拡散が認められた。
「なんだこれは...?」
驚いたような声を上げたのはキリト。
ゴブリンジェネラルもフリーズしたように動かない。かと思えば、ぐらりと歪むようにゴブリンジェネラルの姿が消えた。それは通常時にモンスターを倒した時とも違う、突然モンスターのグラフィックそのものが消えたのだ。
その代わりに、目の前に現れた巨大なグラフィックの荒れからにじみ出るようにして、三つの首を持った巨大な蛇のようなモンスターが現れる。
「ヒドラ......レベル20だと?」
第一層ではまずありえないほどの高レベルのモンスターに、キリトは状況も把握できないまま素早く片手直剣を抜き放った。
ではまた次回〜
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