死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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あつい、、、
しぬ、、、しんでしまう、、、、、、
溶けてなくなる( ;∀;)


67話 「支払いは鉱石」

 この世界における武器強化というものをサリーは初めて目にした。リズベットの作業台の上にはすでにサリーの短剣が置かれている。その上から炉で溶かした鉱石アイテムを流し、専用の金鎚で叩く。手順自体はこんなもので以外と簡単なものだった。

 リズベットの手で数回叩くと作業台の上でサリーの短剣が強い光を発して、やがて収まる。

 

「終わったわ。とりあえずサリーの剣はアジリティ強化で+3まで鍛えて全部成功よ。まさかメインウェポンなのに今まで一度も強化に出してないなんてね。最近手に入れた?」

 

「まあそんなとこ。ほら、次はオレンジの番」

 

「ういうい、じゃあお願いするっすよぉ~」

 

 サリーは作業台の上の短剣を取り、代金を支払う。オレンジの強化を待つ間、サリーはさっそく試しに強化を終えて戻ってきたばかりの短剣を振ってみた。

 

(おお、お~~~~~!!)

 

 無言の歓声を上げる。

 以前より軽く、取り回しが楽になった。振るう刃が弧を描くたび、風邪を切る音が耳に心地いい。

 

「おお、お~~~~~!!」

 

 サリーが心の中で上げたそれと全く同じ歓声が聞こえた。

 その声の主は見るまでもなくわかる。オレンジだ。仕上がった槍を掲げるようにしながらぴょんぴょん跳ねている様子を見るとあちらの強化も成功したらしい。

 

「やった念願の+5! 行きつけのNPC店じゃあ成功率65%だったのに、80%とか! すごいじゃないっすかリズリズ!」

 

「普通にリズって呼んでよもう。まあ80%ってのは地味に怖い成功率だったけど、うまくいってよかったわ」

 

 鍛冶用の金鎚を肩に担ぐようにして持つと、リズベットは安心したように笑った。

 NPCより15%も高い成功率なのだから、アインクラッドの武器強化についてほとんど知識のないサリーでもリズベットの腕前は相当なものなのだろうとわかる。これならもっとお客がいてもおかしくないとも思うのだが、他の雑貨屋や飲食系の店に比べてリズベットの露店はいまいち活気がないように見えた。

 サリーはリズベットとのやり取りを思い出す。リズベットの開いている店は武器屋だったが、彼女は武器屋としてではなく鍛冶屋として腕を見込まれることを喜んでいた。しかしこれだけの腕が今まで評価されてこなかったというのも、不思議に思えた。

 

「なーんかもったいないっすね~。こんだけの腕があるのに。あたしそういうの気にしないっすけど、やっぱ鍛冶職プレイヤーの風当たりってまだ強いんすか?」

 

「そりゃご覧の通りよ。こんだけ人がいる中で店やってるのに、あんたたち以外にお客なしなんだから。まああんなことがあったんじゃあ、仕方ないっちゃ仕方ないけどねえ...」

 

「あんなことって?」

 

 そう尋ねたサリーに二人の視線が重なった。まるで知らないの?とでも言いたげな視線だ。

 

(もしかしてあたし、けっこう常識はずれなこと言っちゃったかな?)

 

 しかしSAOプレイヤーにとって当たり前のように知っている知識でも、NWOから来て間もないサリーにとっては知る由もないことだって多くある。NWOにも《鍛冶》スキルはあり、それが高いプレイヤーに依頼して武器の製作や強化をすることは珍しいことではない。それでも、鍛冶職プレイヤーの風当たりが強くなるような理由なんて想像もできなかった。

 

「ちょっと前、ってもう二ヵ月くらいになるかな。鍛冶職プレイヤーの武器強化を利用した詐欺が流行ったのよ」

 

 リズベットの話を要約すると、こういうことらしかった。

 今から二か月前、この広場に新しく店を開いた腕のいい鍛冶屋がいたらしい。鍛冶職のプレイヤーが持つ鎚はスキル熟練度に応じてアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナといったようにランクが上がっていき、武器強化や製作の成功率が上がっていく。そしてそのプレイヤーの持つ鎚はプラチナでありながら、相場を崩しかねないような安価で強化を引き受けていた。

 そのせいで連日多くのプレイヤーが強化のためにその店に訪れ、あるときNPCでは到底不可能とすら思われるようなレベルの強化を奇跡的に成功させてから、驚異的な強運とプラチナ鎚の持ち主としてその評判は爆発的に広がった。

 しかしときに失敗することもあった。それは決まって攻略組クラスのプレイヤーがメインウェポンに使うようなレア度の高い武器を強化するのとき。それは決まって武器損失という最悪な形で起こっていた。

 これだけなら持ち込んだプレイヤーの運が悪かったというだけの話で終わるのだが、ある日その男が近くの雑貨屋で攻略組が使うようなレベルのレア武器を、それこそ個人が所有しているとは思えないほど山のように売却していったという噂と、売却したとされる日の翌日から男がこのマーケットに現れることはなかったという。

 

「そんなことがあったからね。まあみんながみんなってわけじゃあないんだろうけど、やっぱプレイヤーに強化を依頼するのは危ないって風潮ができちゃってるみたい。そのせいで店を畳む同業者も多かったし、あたしも鍛冶屋から自分の作った武器を売ることをメインにした武具屋に鞍替えしたしね。それこそ今日だって強化の依頼を受けたのすごい久しぶりだったくらいよ」

 

 頬を搔きながら笑うリズベット。

 これだけの腕前を持ったプレイヤーが小さな露天商の店主に収まっている訳にも、鍛冶屋として腕を見込まれたことにあれほどまで喜んだことにも納得がいった。

 

「.........」

 

 サリーは店先に並んでいた短剣の一つを手に取る。店に来たとき最初にリズベットがサリーに勧めた一振りだ。

 ステータスを見るが、あまり強いとは言えない。そもそも素材にしている鉱石アイテムの質が良くないのだろう。

 経営がひっ迫してしまえば素材確保もままならない、という事情がこの剣からうかがえるようだった。リズベットの実力ならもっと強力な武器が打てるはずだとサリーは思う。

 

「ねえオレンジ、これ見てどう思う?」

 

「どうって、うーん。まあ職人の技術に素材が追い付いてない感マジパないっすね」

 

(そっか、オレンジが見てもそう思うかぁ。だったらやることは決まりかな)

 

 サリーは商品である短剣を店の革布の上に戻すと、その場から立ち上がった。

 

「ありがとうリズ。おかげであたしの武器だいぶ強くなったよ。サービスしてずいぶん値引きしてくれたみたいだけど、やっぱその分もちゃんと払うね」

 

「いいっていいって! そこはサービスされときなって。あたしも久しぶりに武器強化の仕事ができて楽しかったしさ」

 

「そうはいかないよ。あんな話聞いちゃったからには払わせて。ただし、」

 

 言葉を区切って、サリーはリズベットに背を向けて歩き出した。その瞳は静かに闘志を称えている。

 

「支払いは鉱石で」

 

 

 

 

「別にオレンジまでついてくることなかったのに」

 

「なーに言ってんすか。あたしだって出血大サービスで強化してもらっちゃってるんっすから、サリーがあんなこと言っちゃったらそりゃーどこまでもついて行くっすよ」

 

 隣を歩いていたオレンジが少し前に出ると、後ろを歩いていたサリーに計算し尽くされたキメ顔で振り返る。

 

「支払いは鉱石で、ね」

 

「真似すんなぁーっ!」

 

「にひひ。でもあんときのサリー、カッコよかったっすよ~」

 

 茶化すオレンジを追いかけつつ、サリーはダンジョンの奥へと向かって進んでいく。ここにポップするモンスターはスライムの他、リザードマン。そして最深部のフロアにはゴーレムが出現する。二人の目当てはこのゴーレムだ。全身が石でできているゴーレムは倒すことで鉱石アイテムをドロップすることがある。それでもそこそこレア度の高いものが手に入るが、ダンジョンボスである《ガーディアン・オブ・ブラックアゲート》というゴーレムからドロップする鉱石はそのさらに上をいく。

 

「さてさて、そろそろゴーレムがポップするエリアっすね。というかサリー大丈夫っすか?」

 

「うん? 大丈夫って、なにが?」

 

「ゴーレム系ってけっこうバイタリティ高いじゃないっすかぁ、ストレングス低めアジリティマシマシのサリーには相性悪くないっすか?」

 

「どうだろ、戦ったことないからわかんないけど」

 

 そこまで言ったところで二人の目の前でモンスターがポップした。人の形をした岩石の巨人、ゴーレムだ。

 腰の短剣を抜き、サリーは左右に構える。オレンジもそれに続いて槍の矛先を現れたゴーレムに向けた。

 

「さすがに100回斬りつければ、倒せるんじゃない?」

 

「にひひ。サリーのそーゆーとこ、あたし嫌いじゃないっすっよ」

 


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