死ぬのが嫌なので防御力に極振りしたいと思います   作:くぼさちや

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雪の中お花見なう←どうでもいい


09話 「迷い込んだモンスター」

 

 地上から足が離れ、なす術なく徐々にHPが減っていくメイプルにキリトは焦りの表情を浮かべる。

 

(攻撃パターンが変わった...!? くそっ!)

 

 スタン効果のあるソードスキルを使っても、破壊不能を示す文章が表示されるだけ。

 そしてそんなキリトをなぎ払うようにヒドラは口から毒液のブレスを吐いてくる。さきほどの攻撃といい、ここにきて今までとは全く違った攻撃パターンに一変していた。

 

「き、キリトさん!」

 

 メイプルのHPがヒドラ同様にイエローゾーンまで減るとキリトは回復結晶でメイプルを回復させる。

 しかしそれも、ヒドラの拘束を解かない限り穴の空いた船からバケツで水を汲み出すようなものだ。そこから抜け出さなければいずれキリトの持っている回復結晶が底を尽く。

 

「メイプル! どうにかしてそこから抜け出すんだ!」

 

「そ、そんなこと言われても〜!」

 

 パラライズシャウトを使えば抜け出せるには抜け出せるが、巻き付かれているせいで腰の短剣に手が届かない。

 

「クソッ!」

 

 キリトはヒドラの胴体に切り込んでいき、次々にソードスキルを繰り出す。攻撃は怒涛とも闇雲ともいえたが、それはメイプルを死なせまいというキリトの思いの現れだった。

 

(ぶ、武器が使えないよ......こうなったら!)

 

 意を決したように大きく口を開ける。

 子犬のようなメイプルの八重歯が松明の明かりに照らされて光った。

 

「かぶうっ!」

 

 それは単なる悪あがきだったのかもしれない。しかし現実にはそんなメイプルの攻撃を受けてヒドラは確実にダメージを受けていた。それだけではない。メイプルによって食いちぎられたヒドラの肉片がポリゴンとなって散ったのだ。

 

「ううっ...あんまりおいしくなーい!」

 

「.........え?」

 

 言葉を失うキリト。

 まるでネズミかなにかのようにヒドラに噛み付くメイプルの姿がはたしてキリトの目にどう写ったのか。拘束から解放されるなり、端から順にモグモグとヒドラを食らう女性プレイヤー。

 その度にヒドラは悲鳴のような咆哮を上げて、荒れ狂うように首を振っている。

 やがてそのHPがゼロを迎えた。

 

「や、やった〜! 勝った! 勝ちましたよキリトさん!」

 

「お、おう。そうだな...」

 

 勝利を称えるCongratulationの文字が二人の頭上に映る。

 同時に獲得したアイテム、経験値がそれぞれの手元にパネルの形で表示された。メイプルにはそれらの他に一気に14までのレベルアップと新たに習得したスキル、ラストアタックボーナスが別のタブで表示されたが、強敵を倒して緊張の糸が切れたのか、座り込んでウンウン唸っている。

 

「大丈夫か? メイプル」

 

「大丈夫ですけど...あはは、疲れちゃいました」

 

「今なら転移結晶も使えるだろう。今日は直ぐに帰って休んだほうがいいな」

 

「私もそうしたいです。ここからまた来たフィールドを戻るのは大変そうで」

 

 頭を掻いて笑うメイプル。それに釣られてキリトも笑った。

 当然だ。なにせ突発的なボス級モンスターとの戦いで命を危険にさらしたのだから。自身の攻撃が通じなかったときはさすがのキリトも全滅を覚悟したし、メイプル本人もこれまでにないほど死を予感したことだろう。

 

「それにしても、なんだったんだろうな。あのモンスター。今まであんなボス見たことないし、ましてこんなところで高レベルモンスターが出るような情報なんてなかったはずだけど」

 

 ここはゴブリンの住処。ヒドラのような大型モンスターが隠れているような場所ではないし、今まで何度も他のプレイヤーがゴブリンジェネラル討伐のクエストで訪れているような言わずと知れた場所だ。

 そしてなにより、ヒドラが現れる直前に発生した不可解なグラフィックの荒れ。

 

「もしかして......」

 

 ひとつの懸念がキリトの思考に立ち上がった。

 

「メイプル、君のメニューを開いて見せてくれないか?」

 

「メニューですか? 大丈夫ですけど」

 

 メイプルが右手を虚空でスライドさせるように動かすと、SAOのそれとは異なる、NWOのメニューが開かれた。

 つかさずキリトがその右手を掴む。

 

「ひゃっ!」

 

「ちょっと失礼」

 

 メイプルの手を拝借してメニューを操作するキリト。

 初めて操作するレイアウトのメニュー画面のはずなのに、ゲーム経験の差なのかメイプル以上に手馴れた様子で次々と設定やらステータスやらが表示されるウィンドウをタッチしていく。

そうするうちに、やがて《ヘルプ》と書かれた項目をタッチするとキリトは目を細めた。

 

「見つけた」

 

「は、はいっ? なにをですかぁ!?」

 

 半ば裏返ったようなメイプルの声。

 キリトがようやく手を止めると、そこにはモンスター図鑑と書かれた画面があった。

 これは遭遇したモンスターの基本情報が自動で更新され、記される情報画面だ。

 もっとも、ここはニューワールドオンラインの世界ではなかったためこれまでずっと空白のままだったのだが、そこにたった一項目、記されているモンスターの情報があった。

 

「ヒドラ...さっき戦ったモンスターだ」

 

「え...? どういうことですか?」

 

 北欧神話風にデフォルメされた挿絵は間違いなく先ほど戦ったモンスターと同じもので、毒系の攻撃を主とするなど書かれている内容も合致するものだった。

 状況がいまいち飲み込めていないメイプルを置き去りにキリトはどんどん仮説を組み立てていく。

 

「これは俺の予想なんだけど、さっき戦ったヒドラはメイプルのいた仮想世界のモンスターじゃないのかな。おそらく君のデータログによって二つの仮想世界がつながったのか、一方的にデータが流入しているのか、どちらにしてもあのモンスターはメイプルと同じようになんらかの理由でこの世界に迷いこんだ」

 

 

 




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