もっとローレムやメリー達が元気に動いてるのを見たかったですが、ゴスペルやローレム家族が幸せになって終わってたので良かったです。
あとは湧いてきた妄想をここでぶつけるだけですね
十五夜先生、お疲れ様でした。ありがとうございました。
ローレム、メリーと再会してからしばらく。
連絡先だけ渡されても連絡手段がないということで新規に通信端末を契約したものをメリーに渡したり、アリスが海外に手を伸ばすと言ったり。
美波は特観での地盤固めにガロンやケイロンの立場を確立。
新たな魔族の受け入れに着手しようとしていた。
CATTが対魔族用に魔族を雇用しているように、管理局も魔族の気持ちにより近づけるように魔族の雇用に乗り気のようだ。
ただ、CATTと違って腕っぷしだけあればいいという訳でもないので、人選には苦労している模様である。
『自治区』の存在も魔族に認知され始め、この国の魔族で人間に不信感を抱いている者や距離を置きたいものが集まっている。
大まかに強硬派、融和派、現状維持派に派閥が分かれてきたらしい。
ケイロンはその中でも融和派の上層部の魔族との接触に成功しており、元『孤児院』のメンバーもそこを中心に各派閥に潜り込ませている。
それ以外にも『自治区』だけでなくCATTや管理局にもケイロンを支持する魔族が潜み、影響力を伸ばしていた。
「でね、未だに『女の分際で』とか言われちゃうわけよ。人間だ魔族だとかならまだわかるけど未だに男女差別的な発言って笑っちゃうわよね」
「美波、それはどういうことだ? 人間は男女でそんなに能力差が生まれるのか?」
「ああ、そうね。魔族は特性とか魔獣化で性差が出にくいものね」
それから美波による人間社会の性差別からその他の差別の教育へとシフトしていく。
管理局での日常であった。
美波とはもう三年を超える付き合いになる。
「美波も苦労しているのだな」
「そりゃあね。女だし魔族に肩入れするし生意気だしで、老害達からすれば目の上のたんこぶでしょうね」
「ふむ、それでいろいろ妨害されるわけか」
「そういうことよ。降りかかった火の粉を払ってくれることを期待してるわ」
「ふむ、当然だ。美波には指一本触れさせはしないさ」
「……あんた、そういうこと誰にでも言ってんの?」
「もちろん、自分だけでは力不足だからな。ガロン氏や警備部門の協力も得て盤石な警備体制を約束しよう」
「……もういいいわ。気にしすぎってことね」
赤くなった顔を手で覆って背もたれに身を預ける美波であった。
とある休日。ケイロンはメリーの近況確認を行っていた。
『それでお姉ちゃんったらこの前拠点にしてたところ燃やしちゃったんですよっ! あれだけ気を付けてって言ってたのにっ!』
「特性の暴走か? ローレムはまだ暴走するのか?」
『単に寝ぼけちゃっただけみたいです。お姉ちゃんの特性はちょっと間違えると大事になりやすいので。最近はすっかり安定してますね。昔はとっても大変でしたけど』
ローレム、メリー姉妹は所謂魔族領域、人間が魔族との紛争で放棄した地域に住んでおり、拠点は主に風雨を凌げる廃屋に暖をとれるものを持ち込んで住み着いていた。
暖をとれるものと言っても、ローレム自身が熱の特性で発熱ができるために冬でも衣類は最低限となっていた。
というより、冬でも夏と服が変わらず薄着なのは魔族の特性故というものだろう。
「やはりローレム程強力な特性を持っていると暴走も命の危険があったのだろう? メリーがいなければ危ない場面もあったのでは?」
『あー、そうかもですね。でもお姉ちゃんのことだから結局何とかなっちゃいそうですけどね』
「それはないだろう。暴走による限界以上の特性の行使は強度など関係なく身体を蝕むからな。メリーがいなければ今のローレムはなかっただろう」
ローレムの妹、メリーの特性は『万能細胞』である。
誰の、どのような組織の代替としても拒絶反応なく移植できる汎用性の高い細胞となっている。
人間側からすればどのような手段を使ってでも手に入れたい特性の持ち主だろう。
『……そ、そんなにストレートに褒められると困っちゃいますね……えへへ』
「それで、新しい拠点はどこに作ったんだ? 近いうちに引っ越し祝いを持って見に行こう」
『やったー! えっとー、ごはんと服と洗剤系をたっぷりお願いします! 特にご飯は多めに! お姉ちゃんたらもう節約せずに食べちゃって……』
「ああ、了解した。ローレムはどうだ? 依頼した仕事はこなしてくれているだろうか」
『ご安心を! 人間に悪いことしそうな魔族の取り締まりはお姉ちゃんに合ってたみたいで、それはもう楽しそうにやってくれてます』
「そうか。それはよかった」
『ところでけーさん、人間社会の事もっと教えてもらってもいいですか? 私もいつかそっちに行ってみたくて』3
メリーは人間社会に興味があるのか、機会があればケイロンに人間社会のことを聞いてくる。
もはや世界は人間中心で、魔族はそれに順応して生きるしかないということが分かっているのだろう。
人間社会に牙を剥いたところで、数と物量で押されては種族的に優れている魔族であっても未来はないと理解しているのだろう。
「ああ、わかった。といっても自分も未だ勉強中の身だ、鵜呑みにせずに聞いてほしい。では、前回言っていた貨幣制度の話をしようか」
『いえーい、まってましたー』
ケイロンの言葉に、合いの手をうってケイロンの話しやすい環境を整えるメリー。
こうしてケイロンは次期管理局局員候補の教育を。メリーは人間社会に入るための教育をケイロンから受ける。
ローレムとメリー姉妹の特性は有用で、美波からは何としても逃がすなと言われている。
衣食の支援や旧知のケイロンとの連絡手段の確立もその一環であり、実は美波経由で管理局が用意していた。
美波に至っては、メリーの特性については慎重に秘匿する必要はあるが、ローレムの熱特性は単純故に隠す必要がなく、発電などの社会貢献に活用できるよう計画を考えていた。
アリスから連絡があった。
話があるから場を設けろとの短い内容で、ケイロンは管理局ではなく魔族領域での待ち合わせをした。
魔族領域で待ち合わせを設定した理由としては、アリスからの短いメッセージに焦りや人間には聞かせたくないようなニュアンスを感じ取ったためだ。
ただの直感ではあるが、ケイロンは基本的に直感には従うようにしていた。
アリスから聞いた現在地が魔族領域側だったのも理由の一つではあったが。
ケイロンが特性で安全を確保したところに、二つの気配を探知する。
時間としてもアリスに間違いが無さそうではあるが、二人で来るというのはどういうことだろうか。
特性を集中させて、些細な特徴も読み取ろうと試みる。
凶悪な角に背格好から一人はアリスで間違いなさそうである。
もう一つは魔族の女で、髪は短く角が一対上へと伸びており、尻尾はあるが翼はない。
アリスよりも身長が低く、響く足音から裸足であることもよみとれる。
しばらくして、二つの気配はケイロンの前へと現れる。
「よう、すまねえな。こんなとこまで」
「ああ、問題ない。大事なビジネスパートナーの頼みだからな」
「ああそうかい。で、さっそく本題に入るんだが」
そう言ってもう一人の人物を紹介しようと前に出す。
「この子はテレサで……なんて言えばいいのか、拾ったというか買ったというか……」
ごにょごにょと口ごもるアリス。
個人主義が多い魔族と言っても、人間社会ではそうも言ってられないと学んだアリスは魔族でも珍しく他人に相談するということができる。
ケイロンはその相談相手に選ばれたことに、今までの関係強化の行動の成果を感じた。
「えーっと、詳しく話せばウチの立場がまずいことになっちまうから話したくはないんだが、この子はその仕事やってるときに見つけて……」
アリスは悩んでいたが、ついに意を決したように口を開く。
「魔族を密輸して売ろうとしてた野郎から買った!」
「そうか。では魔族管理局において魔族在留許可証の発行手続きを行おう。密輸ということは海外から来たのだろうが、魔族には元々戸籍は無いからな。バレる心配もないだろう」
「あ、ああ。そうだろうが、いいのか? 管理局の人間が悪事すれすれのことに首突っ込んで……」
まさかここまで何事もなく手続きをしてもらえるとは思っていなかったのだろうアリスは、思わずケイロンに相談してしまう。
「ふむ。魔族を買うことは確かに犯罪行為であるが、売買の証拠はあるのか?」
「……ないが」
「なら証言次第だろう。……だが、自分も君の共犯者になるのだ。条件がある」
アリスは沈黙をもって肯定の意を示し、条件を聞こうとする。
「まず一つ。密輸組織の情報を吐いてもらい、君は
「……わかった」
「二つ目。犯罪行為と類されるような今後控えてほしい。大事なビジネスパートナーがそういうことをしていると、自分の周囲にまで要らぬ瑕疵を作ることになる」
「……ああ」
「最後に」
ケイロンはアリスのそばを離れないテレサに目を向ける。
「テレサには人間社会で生きていくための教育を受けてもらう。今後、管理局で魔族人材登用のための教育プログラム確立のためのな」
ローレムやメリーでも魔族人材登用のための教育は行っているが、警戒心の強さと特性の強度から電話による通信教育的な形となっており、他の教育パターンも確立したかったためだ。
アリスはそれを聞いて、何事かを考え始める。
それからいくつかの質問をケイロンに行う。
「その教育ってのを受けたら、管理局で仕事しなきゃなんねえのか?」
「その限りではない。もちろんそうしてもらえるのが最良ではあるが、基本的に本人の希望が優先される」
「密輸組織の情報を吐いたとして、ウチらが不利になる可能性は」
「あり得ないな。密輸組織の大事な情報提供者だ。秘密は厳守するし、安全は保障する」
それからもう一度考え、次はいくつかの条件を出す。
「条件を飲むのは吝かじゃねえが、こっちも条件がある」
「聞こう」
「教育は受けさせても、その後どうするかはテレサ次第だ」
「当然だな」
「ウチはチマチマした商売から手を洗う。だから、金を貸せ!」
どういうことかと考えていると、アリスから追加の説明がなされる。
「うちは店を開く。テレサの気が変わってなきゃあ、看板娘はこいつだ! そのために資金が要る!」
「なるほど。だが今の仕事は続けてほしい。アリスがいなくては困る魔族がいるのも事実だ」
「それについても考えてある。ウチが何人か魔族を教育して引き継ぐ。そいつらもウチの店の従業員として雇う」
「であれば問題ないだろう。魔族の店舗というのも興味がある。帰ったら美波に相談してみよう」
魔族の社会進出は管理局の掲げる『人魔共生』の理念にも合致する。
美波も前向きに検討してくれるだろうとケイロンは予想した。
魔族が人間社会で地盤を築くための支援ができるという事実にケイロンは何とも言えない気持ちになる。
このために美波の下で働いてきたといっても過言ではないためだ。
「話がわかんじゃねえか。さすが相棒だぜ」
「そう言ってもらえると光栄だ。では早速だが、三日ほど保護活動に付き合ってもらおうか」
「すぐ管理局に連れていくんじゃねえのかよ」
アリスとしてはまだ幼いテレサを連れて、ケイロンがいるとはいえ危険がある保護活動に同道させたくはないのだろう。
早速アリスが過保護なまでの親心を発揮している。
「自分もそうしたいが、保護活動と言って出ているのでな。多少は活動をして帰らねばならない」
「ったく真面目だな、お前は。だがテレサは魔族だが特性がない。肌が青くて多少丈夫な程度だぞ」
「問題ない。移動時は自分かアリスが抱えればいいし、何かあれば自分が対応する。万が一にも危険はない」
「ったく、その自信はどこから出てくるんだよ」
だが、アリスはケイロンが苦戦するところを想像できないのも事実ではある。
あの"殲滅の狂炎"のローレムの時でさえ攻撃を受けても無傷で乗り切ったのだ。そこらの有象無象がいくら来たところで問題にもならないのだろう。
今活動している世代の誰が来たところで、ローレム以上の実力者は想像もできない。
万が一ケイロンが苦戦することがあっても戦っている間にケイロンを囮にして逃げればいいのだ。
そこまで考えたところで、アリスはため息を吐く。
「わかったよ。お前の近くが安全なのも事実だしな。しっかりとテレサとウチを守れよ」
「約束しよう」
ケイロンと付き合ってきて気付いたことだが、この男は意外と意見を曲げない性格をしている。
相手のためになると判断したことについては、本人が多少嫌がる程度では無理にでも押し付けてくる嫌いがある。
ケイロンの性格についてもそれなりにわかってきたとアリスはにやりと笑みを浮かべ、前を歩いていたケイロンの背中を一つ叩いて追い抜くのだった