Counter of the earth   作:坂下 千陰

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書こう書こうと思いつつ、なかなか筆が進まずに試行錯誤を繰り返してどうにか投稿までこぎつけた次第です。元々考えていたベースが先に原作に登場しちゃったので大幅に改稿し、さらに新たなベースを考えましたがこいつも二番煎じになりそうで……苦労しました。

さぁ、始まるよ!




第一話 First contact

  西暦にして2619年。アメリカ合衆国ワシントンDCに存在する国連航空宇宙局(U-NASA)敷地内病棟のとある1室から、1人の青年がドアを開けて出て来た。身につけているタンクトップから覗く腕には発達した筋肉、全体的に均整の取れた身体は相当に鍛えこまれてきているのが一目で分かる。

 

「じゃあね、膝丸(ひざまる)さん。訓練がんばって!」

 

  中からは、声変わりもまだ済んでいない少年の声が聞こえた。その声に膝丸と呼ばれた青年は笑みを浮かべて、

 

  「おうよ! 桜人(さくらと)もがんばって体治せな。元気になったら特別に奥義教えてやるからよ!」

 

  「ホントに!?」

 

  「あぁ、約束する」

 

  ドンッと拳で胸を叩いて青年は笑う。しかし、同時に不安も抱いていた。突如現れた火星由来の脅威。AE(エイリアンエンジン)ウイルス。致死率100%の死神に桜人は罹患している。ワクチンを作るには、火星に行って近縁種もしくはそれに準ずる物を持ち帰る必要がある上に、ワクチンが無事作られてさらに間に合うという保証もない。

 

 正直な話、桜人はいつ死んだとしてもおかしくない。それでも、希望は捨てない。目の前の少年を必ず助ける。もう二度と誰も失いたくはない、と青年膝丸燈(ひざまるあかり)は改めて決意し覚悟する。

 

「……よし」

 

 訓練に戻ろうと桜人の病室から背を向けて俯き加減で歩き出した瞬間、

 

「ごめん、ちょっと良いかな?」

 

 前方から声を掛けられた。驚いて目をあげるとそこには1人の男が立っていた。茶色に染めた長めの髪をヘアピンで留めた顔付きは恐らく10代の後半。身長は高く、177cmある燈と同じか少し上か。

 

「…………?」

 

 燈の訝しむような視線に気付いたのかその少年は表情を緩ませ、

 

「あぁ、いやいや怪しい者じゃないよ。ちょっと道を聞きたくてさ。実は俺、ここに今朝着いたばかりで右も左も分からないんだ。ここは病棟で良いんだよね? これから訓練施設に用があるんだけど場所分かる? 」

 

  単に道を聞いてきただけの青年には、特に警戒すべき点も見当たらない。

 

「なんだ、それなら今から俺もそこに用があるから連れて行ってやるよ。ところでお前始めて見る顔だけど補充兵(クルー)の1人か? 」

 

  訓練施設へと歩を進めながら、適当に燈は青年に話しかける。

 

「うん。とはいっても先週手術を受けて運良く成功しただけの新参者だけどね。しかも最初っから戦力外通告ときたもんだ。まぁ、ベースがベースだししょうがないっちゃしょうがないんだけどさ。それでも、こっちは命かけたのになーんか割に合わないんだよな」

 

「まぁよ、それならアイツらと()り合う必要も無いんだぜ? 」

 

「ははっ、その点に関しては運が良かったのかな?」

 

  施設までの数分間で、青年に関する情報は大体分かった。

 

  名は、黒峰与一(くろみねよいち)。年齢は19歳で比較的燈と近いこともあってか2人が打ち解けるのにそう長い時間はかからなかった。

 

「着いたぜ与一。多分中には他の補充兵(クルー)達もいると思うから紹介してやろうか? 」

 

「そうだね、頼むよ。どうやら今回の任務は協調性が要るみたいだからさ」

 

  訓練施設のドアが開くと同時に、多数の視線が2人に集まった。手術後のリハビリをしている者や、機器を使ってトレーニングに励む者などが一様に見やる。訝しげな視線もあるが、多くは好奇に満ちたものだった。

 

「おぅ、燈。……そちらの茶髪はどちらさん? 初めて見る顔だな」

 

  ドアから一番近い場所にいた不良然としている逆立った金髪の少年が燈に気付いた。同時に、見慣れない人間がいることにも。

 

「あぁ、ちょうどいいや。与一、こいつはマルコス。年齢は16で、お前より下だから容赦無くパシッて良いぜ」

 

「そうか、じゃあマルコス。コーヒー買って来い」

 

「なんだその紹介は! つーかお前も乗っかってんじゃねえよ!? 」

 

「ふっ、いいか金髪ヤンキー、日本には年功序列って言葉があるんだぜ? 年下は年上には逆らえないんだよ」

 

「そうかよ、だがなぁ生憎と俺はメキシコ人で、ここはアメリカだ。ジャパニーズの風習に従う必要はねえ」

 

「お前の好きな物も買ってきて良いぞ」

 

「行きます! 」

 

「簡単に引っかかってんじゃないわよ」

 

  そんな声とともに、マルコスの頭をはたきながら彼の後ろから深緑色の瞳を持つ少女が現れる。

 

「んだよシーラ、別に良いだろ。労働に対価が支払われるんだぜ? お互いにイーブンだろ」

 

「はぁ……、だからあんたは単純なのよ」

 

「よお、シーラ。こいつは与一ってんだ。新しい補充兵(クルー)さ」

 

  燈がシーラと呼ばれた少女に与一を紹介し始めた。

 

「やぁ、どうもどうも。俺は黒峰与一。先週手術を受けたばかりの新参者だけど宜しくな」

 

「与一君ね、私はシーラ。そしてそこのヤンキーがマルコス、もう1人アレックスって言うのとセットで一応私の幼馴染。後は、エヴァって言う女の子がいるんだけど……」

 

 与一の自己紹介に微笑みながら、シーラも返す。

 

「おぉ、どうしたどうした。見かけねえ顔がいるな? 」

 

「多分新しい人だと思うよ」

 

「噂をすればって奴ね、紹介するわ与一君。この黒髪がアレックス、そしてその後ろにいる色白の女の子がエヴァよ」

 

  黒髪で長身の少年と、色白で小柄な少女がシーラ達に気付いて近付いてきた。

 

「ふぅん、燈にマルコス、シーラ、アレックス、そしてエヴァね。オーケー覚えた。それじゃ改めて俺は黒峰与一。出身は日本で年齢は19。後、強いて言うなら特技は弓を少々かじってるかな、これから宜しく。あぁ、それと……マルコス手を出して」

 

 そう声をかけて、与一は反射的に出したマルコスの手に財布を放る。

 

「早く飲み物買ってきてくれ。ただし、今度は6人分な。因みに俺はコーヒー、皆は何が良い? 」

 

 にやりと笑って、他の5人を見回す。

 

「よっしゃァ! じゃあ俺はコーラ」

 

 いち早く与一の考えを察したアレックスが一番に注文する。

 

「あぁ、そういうことか。ありがと与一君。じゃあ私はミルクティーで。エヴァは何にする?」

 

「え? 」

 

「だから、与一君は私達に飲み物を奢ってくれるって言ってるのよ」

 

「あ、じゃあ……私もシーラちゃんと同じものが良い、です……」

 

 ようやく合点がいったように、おどおどしながらエヴァも注文した。

 

「俺もコーラ! マルコスよろー! 」

 

「結局俺が行くのかよ! 」

 

「いいかマルコス、日本には……」

 

「ネンコウジョレツって言葉があるって言うんだろ! 分かったよ行けばいいんだろ畜生!! 」

 

「その通り!」

 

 そして与一は笑う。

 

「その変わりマルコス、釣りはお前にやるよ。仕事料だ」

 

「マルコス、行きます! 」

 

 颯爽と駆け出す彼の後ろ姿を見ながら、皆も笑い出した。基本的に彼らは善人だ。与一をすっかり受け入れた。アネックス計画の定員は既に埋まっているというのに。このタイミングで新たな人員を補充する必要は無いはずだというのにーー

 

 

 ーー火星出発まで残り1ヶ月

 

 

 

 

 

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