爆豪勝己のお嫁さん(予定)   作:海底のくじら

2 / 9
満場一致でOKをもらったので続きがログインしました。思ったより早く書けた。


恋はするものではなく、落ちるものです

「え、レアちゃんも、もう仮免持ってるん?」

「はい。セミプロになることが編入の条件でもあったので」

 

驚く麗日さんに、熱々の山かけうどんを冷ましながら交埜さんが答えている。

 

現在時刻、昼。午前の授業に勤しんだ生徒の楽しみ、ランチタイムである。

 

朝の事件(あれは多分ラブイベントにカウントしてはいけない)を経て、僕たち2-Aの面々(一部を除く)は食堂に来ていた。というのも、交埜さんがクックヒーロー・ランチラッシュのご飯を食べてみたいと言ったからだ。まだまだお話ししたい女子と、アメリカのヒーローについてとか、彼女に聞いてみたいことがある男子もお供することになった。

 

かっちゃん?午前最後の授業が終わった瞬間、交埜さんが口を開く前に、風のように教室を出ていきました。何を言っても彼女が堪えないから、物理的に距離を取ることにしたらしい。

 

でも、今になっては確かに賢明だったと思う。

朝の衝撃で忘れていたけど、交埜さんはとても美人なのだ。モデルかと思うくらいの。

 

そんな人が、生徒がごった返すピーク時の食堂に来たらどうなるか。

 

そりゃあもう、人目をバカみたいに集めるに決まってる。しかも去年から何やかんや話題になっているA組の新しいメンバーだと知れれば、突き刺さる視線の数が尋常じゃない。食堂に来るまでも、すれ違う人皆が振り返っていたし。針山になる気分ってこんな感じなのかな……。

 

でも女子は予想してたのか、周りの様子なんて知らないとばかりに交埜さんとおしゃべりしている。いや、これは彼女が気にしないようにあえてそうしてるんだろうか?相澤先生もフォローしてやれと言っていたし、皆気遣い上手だから。

 

定食のサラダをつついていた耳郎さんが、眉を寄せた。

 

「編入条件が仮免必須って、難易度高すぎない?」

「2年生以上に編入する場合に限って、今年から追加されたらしいです。私は、B組とのバランスの関係で全員仮免持ち(A組)に入ることが決まってたので、特にですね」

「アメリカのヒーロー科って、皆レベル高いイメージあるよね!1年生からセミプロになるのが当たり前な感じ?」

 

葉隠さんがグイッと身を乗り出す。本場のヒーロー科。皆気になっていたことだ。

ちょっと考えた後、学校にもよりますけど、と交埜さんは続けた。

 

「私の高校は、クラスの半分くらいは仮免持ちでした。アメリカは他の国より試験の頻度が多いので、学科を一定水準合格した人が、取れる時に取るスタイルです」

「クラスまとめて試験を受ける訳じゃないんだ?」

「はい。自衛と早く経験を積む意味も兼ねて、単身で活動できる人をできるだけ増やすためですね」

 

そういえば、前にオールマイトがヒーロー基礎学で話していたことがある。アメリカは国土が広く人口が多いのに比例して、敵の数も他国よりダントツに多い。ヒーローの数も多いけど、怪我による休業や引退も結構あって、常に経験豊富なプロの数が足りないって。

 

プロの穴を埋める役割を考えると、同じ仮免試験でもやっぱりアメリカの方が難しそうだなぁ。そう思っていると、ふと人影が落ちた。

 

「……緑谷。隣いいか?」

「!心操くん。うん、もちろんどうぞ!」

サンキュ、とお礼を言って、空いていたテーブルの端に心操くんが座る。よっす心操、と声をかける他の男子にも軽く頷き返して、彼は鯖の味噌煮に手をつけた。

 

「なんか今日異常に混んでてさ。席見つからなかったから助かった」

「…………それ、多分僕たちのせいかも」

「?」

 

不思議そうな顔をする彼に、目線でそっと交埜さんを指す。促されるままに彼女を見た心操くんは、「……ぉ」と一瞬固まった。交埜さんが入り口に背を向ける形で座っていたから、今初めて気づいたらしい。周りの野次馬もどきにも。

 

無言で席を立とうとした心操くんだったけど、当然彼に気づいた交埜さんと、結局自己紹介することになった。朝のようにニッコリ笑った(あの時の肉食みはない)彼女に、ザワッとする野次馬もどき。こんな衆人環視で美女に笑みを向けられて、ちょっとプルプルしている心操くん。ごめんね、ここに来たのが運の尽きだと思って耐えてください。

 

「シンソウくん……あ、去年唯一、ヒーロー科に転科した人ですか?」

「……俺のこと知ってるのか?」

「編入の説明の時に、アイザワ先生から少し聞きました。()()()()()って」

 

……それってどういう意味だろう?

 

懸命に冷ましていたうどんを食べ始めた交埜さんに尋ねようとしたけど、彼女の背後に来た人物が視界に入り、あ、と声を上げるだけになった。

 

「あれあれあれぇぇ〜?A組の皆さんがそろって何をしているのかなぁ〜??」

 

もはやトレードマークの嫌味節。

B組のビッグマウスにして『雄英の負の面(ミリオさん調べ)』、物間寧人である。

 

彼も席を探しているのか、手にはオムライスを持っている。他のB組メンバーはいない。今日は珍しく1人らしい。

 

「こんにちは物間ちゃん。皆で仲良くランチタイム中よ」

「ふぅん、こんな大所帯で?仲良く?いつも迷惑なくらいフリーダムな君たちがねぇ?」

「ケロケロ、今日はお話ししたいことがたくさんあるの」

 

煽る物間くんを、のんびりとあす……梅雨ちゃんがスルーする。さすが梅雨ちゃん。他の皆は、フリーダムってお前が言うか!という顔をしてるもの。

 

背後をとられている交埜さんは、うどんを啜ってる途中なので、まだ彼を振り向けないでいる。……今更だけど、ナチュラルに箸を使ってるし、食べ方も綺麗なんだよね。アメリカでもよく使ってたのかな?

 

「へぇぇ、でもちょっと周りを見た方がいいんじゃない?こんな混雑してる時に大きなテーブルを占領するのは迷惑だろう?」

 

はっと嘲るように笑われた。正論だ。でも今回は混んでるところに入ったんじゃなく、先に席に着いていた僕たち、もとい交埜さんを見たいがために、生徒が詰めかけて居座ってる状態なんだよなぁ……。

 

さてどうしようかと、ちょっと困った顔をする僕たちを見て、さらに何か言おうと物間くんが口を開く。

 

その時、うどんを啜り終わった交埜さんが、申し訳なさそうな顔で振り向いた。

 

「……ごめんなさい、私がランチラッシュのご飯を食べたいって言ったから、皆ついてきてくれたんです」

「そんな遠足み………ぃ………………」

 

……ん?なんか物間くんが空気の抜けた風船みたいになったぞ。

 

「もうすぐ食べ終わるので、席替えはもう少し待ってもらえると」

「───ぃ、ぃぃいいえ!!どどどうぞゆっくり楽しんでくだひゃい!!!」

 

は???

 

その場にいた全員の心が一つになったと思う。

物間くんの顔が、かわいそうなくらい真っ赤になっていた。しかも敬語、めちゃくちゃ噛んだ。え、いきなりどうしたの。

 

「でも、えっと、モノマくん?が座れませんよね」

「ヒィ、きっ、気にしないでくださ、あっ、き、筋トレ!そう、ちょっと足の筋トレをしたかったので!!立ちっぱなしで全然大丈夫です!!!」

「そうなんですか……?」

「そうなんです!ぁあ、あああの、」

「?」

「───よっ、よろしければアナタの、ぉおおお名前を聞いてもよろしいでしょうかっ!!?」

 

ぶわっ、と僕の背中に冷や汗が流れた。唐突に今の光景によく似たものを思い出したからだ。

あれは峰田くんに嵌められて、強制的に彼のコレクションを鑑賞させられた時。

 

……童◯のウブな中学生男子が、近所のセクシーなお姉さんに一目惚れして、なんとかお近づきになろうとするシーン。

 

だんだん血の気が引いてきた僕を置いて、2人の会話は続く。

 

「今日からヒーロー科2-Aに編入しました、交埜レアです。モノマくんはB組の人ですか?」

「!?は、はぁいそうです!!」

「……もしかして、去年の体育祭で騎馬戦まで進んでました?」

「!!??しゅしゅみました!」

 

普段の弁舌はどこに消えたと思うくらい噛みっ噛みの物間くん。もう首まで赤一色でヤバそうだ。

そんな彼に、交埜さんは無邪気にトドメを刺した(笑った)

 

「やっぱり!よく(カツキを)見てたので(未来の旦那様と直接対決した相手として)覚えてます。これからよろしくお願いしますね!」

 

「…………は、」

「?葉??」

「はっ、は、ははは旗!!ォオオムライスに旗を立て忘れたので僕行きますねではまたさようならっ!!!」

 

そう捨て台詞を叫んで、物間くんは猛然と走り去っていった。

 

いや旗って何?そのデミグラスソースかけのオシャレなオムライスをお子様ランチにする気??君そんなキャラじゃないだろ???

 

待て違う、問題はそこじゃない。

 

ポカンと物間くんを見送っている交埜さんの横を見る。芦戸さんたちが「これはまさかの……」「三つ巴?三つ巴?修羅場きちゃう??」「でも爆豪の矢印がまだどこにも行ってないよね」ってボソボソ言ってるのが聞こえる……!

 

あああああ、やっぱりそういうこと!?なんでよりにもよって!よりにも、よって!!かっちゃんにぞっこんな交埜さんなの!??絶対面倒くさくなる気しかしない……!

 

キリキリしてきた胃の辺りを押さえていると、女子のやり取りを聞いていた心操くんが怪訝な顔で尋ねてきた。

 

「なあ、物間がそういう意味で交埜を好きになると、なんで爆豪が出てくるんだ」

「交埜さんは…………かっちゃんのお嫁さんになる予定なんだ」

「は??????????」

 

今日最多のハテナマークを浮かべた心操くんが、僕を二度見して、そっと飯田くんと轟くんに事情を聞きに行った。多分僕の目が死んでいたからだと思う。

 

そうして嵐のような昼休みを終え、心操くんに哀れみの目で見送られた僕たちは、午後のヒーロー基礎学のために更衣室へ向かった。

休み時間なのに疲労がたまるってどういうこと……。

 

 

 

後日、僕の最後のセリフが野次馬もどきに拾われて、2年のヒーロー科以外の生徒に「あの爆豪勝己には、手を出したら爆殺される、超絶美人な許嫁がいる」と勘違いされていることが発覚し、幼馴染に炙りわかめにされる未来が来ることを、僕はまだ知らない。




ちょろっと伏線張ってすぐ訓練しようとしてたのに、気づいたら物間が高笑いしてた。
いや、自分は物間のキャラ好きですよ。だからこそ、あれだけ弁舌で頭のキレる男子が好きな子の前でだけポンコツになったら、もっと良くないですか?自分だけ?

◆プロフィール

交埜レア 「個性:???」
立てば芍薬座れば牡丹、口を開けば嵐を呼ぶ女子。
仮免取得済み。今のところA組以外の生徒には「ハーフの美人才女」と思われている。多分爆豪が一緒に来てたら、180°違うイメージになってた。

物間寧人 「個性:コピー」
見つめ合うと流暢におしゃべりできない系男子。
レアの見た目と声がドストライクすぎて一目惚れ。
でも失恋が確定しているので、ある意味この作品で1番かわいそうな人かもしれない。南無。

心操人使 「個性:洗脳」
公開羞恥プレイを強行された人。
B組で唯一レアのヤバさを知ってるけど、心優しいので物間には真実を言えない。でも物間より早くレアと友達になりそう。

緑谷出久 「個性:OFA」
まさかの今回最大の戦犯。胃痛持ちになりそう。
発覚した時、廊下でOFAフルカウル・スライディング土下座をした。許されなかった。

爆豪勝己 「個性:爆破」
本人の預かり知らぬところで修羅場に巻き込まれる。解せぬ。
やらかしたわかめを炙った後、『僕は妄言癖のクソナードわかめです。』という貼り紙を付けさせ、校門に吊るそうとしたけど、全員に止められた。

アンケートは1週間くらいで締め切ります。

次から戦闘訓練編。どっちがいい?

  • 更新スピード重視 小分けして投稿
  • 一気読みできる 1話にまとめて投稿
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。