彼女だって思春期の女の子です。
Act 1. 彼の好みのタイプを知りましょう
ずっと仲の良い友達でも、幾多の困難を一緒に乗り越えてきた仲間でも、疎外感を感じることは必ずあると思う。
テストの点数とか、バンドの推しメンとか、彼氏彼女がいるとか。
はたから見れば大したことじゃないかもしれないけど、自分にとっては一大事。誰でも1つはそういうの持ってるもんでしょ?
まぁ、ウチも例に漏れず、あんまり人に言えないことがあって。
だから、もしかしてと思える相手が突然現れたもんだから。
「……………………………レア」
「?なんでしょう?」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………スリーサイズ教えて」
「はい?」
現在地点、女子更衣室。
今日会ったばかりのクラスメイトに真顔で尋ねられて不思議そうに、でも律儀に教えてくれた編入生に、耳郎響香は同士を得たと思わず涙ぐんでしまった。
◇◇◇
「あっはははははは!耳郎かわいい!!」
「うっさい……」
けらけら笑う芦戸をじとりと睨む。けど迫力は無いんだろう。絶対今顔赤いし。
雄英ヒーロー科の女子は、なぜか胸がやたら発達してる奴が多い……というかほとんど全員そうだ。ウチより背が低い梅雨ちゃんやB組の小森ですら、服の上からはっきり分かるくらいある。
そんな中で、唯一ウチの胸はまだ……まだ!発展途上で。別にめちゃくちゃ欲しい訳じゃないけど、峰田とかにヤオモモたちといちいち比べられたら、ちょっとは気にする。
だから超スレンダーなレアが来た時は、失礼だけど、仲間ができたみたいで少し嬉しかった。実際ウチとそんなに変わらなかったし(まぁ胸以外もめちゃくちゃ細かったんだけど)。
感極まった結果が、さっきのアレだ。そのせいで芦戸たちにも気にしてたことがバレて、最後はなぜか、ウチのかわいいと思う所を力説されるハメになった。なんでだ。恥ずかしい。
遠回しにつるぺたと言われたはずのレアは、とっくに着替え終えて芦戸たちとのやり取りを微笑ましげな目で見ている。
「レアは気になんないの?」
「何がです?」
「男子の視線とか。ウチのクラスで下心見え見えなのは峰田くらいだけど」
ちなみに件のブドウ頭は、朝の告白事件の後、性懲りもなく「おっぱいはあれだが……脚……太腿……ハァ……ハァ………」とレアの足元に行こうとしたので、ジャックを目に刺してやった。その後、他の常識ある男子(尾白や砂藤)がガードしてくれたから、午前は実に平和だったけど。
「むしろ邪な空気を出してくれた方が迎撃しやすいですね!あと個人的に、胸はあんまり大きくしたくないです。動く時重そうだし引っかかりそうなんで」
「胸を障害物扱いしたよこの子」
思わずツッコミながら、彼女の姿を改めて眺める。
胸元に幾何学模様のような刺繍がしてある、黒いダイビングスーツっぽいデザイン。同じ色のウェストポーチに、片腕にはバングルを嵌めている。改造ゴーグルみたいなものを額にかけ、髪はポニテだ。ぱっと見て、個性強化のアイテムとかも特に無さそう。
全体的に梅雨ちゃんに似てるなと思っていると、突然レアがハッと深刻な顔をしたので、何事かと身構える。
「でも……
「一瞬でも心配したウチが馬鹿だったわ」
「まだ1日も経っとらんけど、慣れてきたね」
「ケロケロ……そろそろ行きましょうか」
「…………モモは創造系の個性でしたよね?」
「そうですが……え、ちょ、レアさん、そんな満面の笑みで近寄らないでください……!バストは創れませんわ!!」
ヤオモモをちょっと犠牲にしつつ、グラウンドβに向かう。1年生最初の訓練もそこだったなぁと思い出しながら、今までどんな授業をしてたのか皆でレアに話していると、梅雨ちゃんがそういえば、と口火を切った。
「レアちゃんの『個性』って、どういうものなのかしら?」
「それ!気になってた!!」
聞きたい聞きたい!と葉隠が(正確には着けてるグローブと靴だけだが)、ぴょんぴょん動く。なんやかんや聞けてなかったから、皆興味津々って感じ。
だけどレアは、あー……と言葉を濁して、ちょっと困った顔をした。
「教えたいんですが……アイザワ先生に止められてるんですよ」
「え?」
「先生に?なんで?」
「理由は私も分からないんですけど……とにかく、今日の授業で使うまでは伏せてろって」
えええ、と残念そうな声が上がる。口止めするなんて、ますます気になってしょうがない。相澤先生のことだから、何か『合理的』な理由があるんだろうけど。
「じゃあじゃあ、ヒーローネームは!?さすがにそれは聞いてもいいでしょ」
「特に何も言われてないので、大丈夫だと思います……『トレーディ』、これが私のヒーローネームです」
「トレーディ……なんかかわいい!」
「由来は?個性に関係してるん?」
「一応関係してますね」
「んんん、じゃあまだ聞くのはあかんかぁ」
「まぁ見ればすぐ分かっちゃうので、お楽しみに。あ、皆のヒーローネームも知りたいです!」
そこからは訓練場に着くまで、クラス全員のヒーローネーム公開ショーになった。
◇◇◇
「ヒョアアァァ、ヒロスのカツキもかっこいい……!ツーショットお願いしていいですか!?」
「誰が許すか名前を呼ぶな速やかに距離を取れ殺すぞ……!」
「あと予想はしてましたけど……
「やっぱりって何の話だ痴女が!!??ただの大胸筋だろうが盛大に死ね!!!!!」
「そこの2人、黙って並ばんと除籍するぞ」
相澤先生の鶴の一言で、スマフォを構えてじりじり距離を測ってたレアと、今にも彼女を噛み殺しそうな形相で威嚇してた爆豪が大人しくなる。
文字通りの『美女と野獣』なのに、ロマンチックさがまったくない。ほら、事情を知らないオールマイトが超戸惑ってるじゃん。
「……相澤くん、彼女は交埜少女だよね……?編入前の顔合わせの時とだいぶ雰囲気が違うんだけど……あの2人は一体」
「オールマイトさん、教師も時として静観が必要です。蛇どころか鬼が出る藪をわざわざ突つくことはありません。い い で す ね ?」
「ハイ」
真顔でオールマイトを黙らせると、相澤先生はモニターに映るビル群を指差した。
「今日は初心にかえって、AからJまでの10チームに分けた2対2、または2対3の屋内戦闘訓練を行う。もちろん1年の時とは条件が違う」
「今回は、ビルのどこかにある『機密物』を探し、確保してもらうよ。制限時間は20分、最初の5分は作戦タイムだ。機密物の数は全部で7つ。敵チームが先に入り、5分後にヒーローチームが突入。タイムアップまでに、すべての機密物を持っていることがクリア条件だよ。相手チームを全員行動不能にしても構わないけど、機密物を手に入れない限り終わらない。ただし集め終わっても、ビルから出てはいけないよ」
オールマイトの説明を聞きながら、立ち並ぶビルを見る。
1年の頃にやった核兵器争奪戦に似てるけど、設定はより複雑だ。
「ヒーロー側は実質10分しか時間がないってことかぁ」
「しかも対象は複数……うまく探さないと最悪見つけ終わらずに時間切れになるな」
「先生。その『機密物』とは、どのようなものでしょうか?」
「『繊細なもの』とだけ言っておく。見れば分かるように目印をつけてあるが、材質や重さなどの詳細は教えない。実戦では情報が十分でなかったり、不確定であることなんてざらにあるからな。少ない確定情報から対象を想像し、戦い方を考えろ」
「訓練の様子は、ビルの中に設置してあるカメラで確認するよ。終了後に皆で講評し合うからね」
さあ、チーム決めをしよう!とオールマイトがクジを持って回る。ウチはDだった。
「全員引き終わったね?それじゃ、最初はAチームがヒーロー、Dチームが敵だ!」
相澤先生が操作すると、モニターに対戦表が浮かぶ。
───Aチーム(轟・爆豪)vs Dチーム(耳郎・交埜)
「あ、キョウカと一緒ですね!よろしくお願いします!」
「いやいやいや、待って嘘でしょ!!??」
レアがウチの手を両手で掴んでブンブン振ってくるけど、思わず叫んでしまった。
初訓練のレアと組むのは別にいい。プロの現場じゃ即席のチームアップなんて当たり前だから。
でもさ、相手がクラスのツートップとか、どんな確率?ウチ何かした!!?
周りからも「うっわぁ」「耳郎運悪すぎ」「ご愁傷様……」って同情する声が聞こえる。そう思うなら代わってよ……と項垂れていると、なぜか爆豪と轟が近づいてきた。
「おいキチガイ女」
「カツキ、初戦で当たるなんて運命的ですね!よろしくお願いします!」
握手を求める手をガン無視して、爆豪は彼女を挑発的に睨みつける。
「てめぇ、俺と勝負しろや」
「勝負?」
「この訓練でこっちが勝ったら、名前も妙な呼び方もやめろ。そして金輪際俺に近づくんじゃねぇ」
圧倒的にウチらの分が悪い気がするんだけど。まぁどんな組み合わせでも、この男に限って負ける気なんて微塵もないだろうが。
「こちらが勝った場合の条件は?」
「カツキでも旦那でも好きに呼べや」
「……言いましたね?絶対ですよ?」
「俺に二言はねぇ。喜んで返事してやらぁ」
ニッコリ笑うレアに、フン、と鼻を鳴らして爆豪がモニタールームを出て行く。残された轟は、自分も2人の賭けに巻き込まれた側だろうに、ちょっとバツが悪そうに見えた。
「……交埜、いいのか?もしかしたら、これからずっと爆豪と話せなくなるかもしれねぇぞ」
「でも、またとないチャンスなので!トドロキくんも、お相手よろしくお願いします」
「お、よろしくな。……耳郎は大丈夫か」
「切実に痴話喧嘩には巻き込まないでほしいけど、まぁ大丈夫」
レアと握手しながらこちらを見る轟に苦笑を返す。
強敵だけどさ、ウチだって始めから負ける気はないよ。
◇◇◇
モニター越しに、最初の2チームが所定の位置につくのが見える。
かっちゃんと交埜さんの話は、僕たちにも聞こえていた。クリア条件が『すべての機密物を持っていること』だから、戦闘はほぼ必須。
交埜さんの個性は分からないけど、耳郎さんは索敵が得意な後方支援型。オールラウンダーなかっちゃんと、シンプルにめちゃくちゃ強い、中距離攻撃・捕縛も可能な個性持ちの轟くんを相手にするのは、どう考えても分が悪い。
「1戦目を始める前に、お前らに言っておくことがある」
Dチームはどうするのか考えていると、相澤先生が突然そう言った。
首を傾げる僕たちに、オールマイトがニコッと笑う。
「爆豪少年と交埜少女の対戦カードは、ぶっちゃけ私たちが仕組みました!」
「ま、2人の相棒やヒーロー、敵の組み合わせは完全に偶然だがな」
「「「…………はい!?」」」
あまりにも堂々とした不正発言に、皆愕然とする。
飯田くんが異議あり!と言わんばかりに口を開こうとするのを、相澤先生が目で制した。
「交埜が仮免を既に取得しているのは知っているか」
「はい。本人から聞いています」
「編入の条件が仮免を取得することだと仰っていましたわ」
「確かにそうだ。だが、交埜は編入試験のために仮免を取得したわけじゃない」
「アメリカでは、15歳以上かつ学力が一定水準を満たし、ヒーロー科の学校もしくはプロヒーローの推薦状があれば、仮免試験を受けることができる。───交埜が試験に合格したのは
「「「!?」」」
「お前らも知っての通り、爆豪は性格はあれだが、実力は自他ともに認める高レベル。応用がきく強個性で、攻撃の方が得意だが基本的にはオールラウンダーだ。だから交埜の実力を計るために、対戦相手として組ませてもらった。もちろん本人たちには秘密でだ」
驚く僕たちを見渡して、誰よりも現場を知る伝説のヒーローが続ける。
「わずか半年の差と思うなかれ。交埜少女がいたのは
───彼女の戦い方から、君たちに必要なものを存分に学んでくれたまえ。
じろちゃんカワイイ。スレンダーハスキーボイスのクーデレとかカワイイ。ハートビートファズされたい。
かっちゃんのお胸は、冬コス初登場時に絶対皆同じこと思ったよね?あれBはあるよ絶対。(最低)
◆プロフィール
交埜レア 「個性:???」
はよ個性出せや、と作者が1番思ってる。
想い人からの呼び名(痴女)が増えたよ!やったね!
本人いわく「脚なら自信あります!」とのこと。
ヒーローネームは『トレーディ』。つるつる。
耳郎響香 「個性:イヤホンジャック」
本日の不運な人。朝の星座占いは11位だった。がんばれ。
まだ発展途上なお胸を気にしていたけど、ひんぬー仲間ができて嬉しい。実は誰より女の子してる。
ヒーローネームは『イヤホン=ジャック』。ぺたぺた。
爆豪勝己 「個性:爆破」
▶︎ツートップの カツキが しょうぶを しかけてきた!
ツートップの結局振り回されてる方。言わずと知れたダイナマイトボディ。冬コスがめっちゃ……好みです。(作者コメント)
この話でのヒーローネームは『爆心地』。BOM。
轟焦凍 「個性:半冷半燃」
▶︎ツートップの ショートが しょうぶを しかけてきた?
ツートップの無自覚に振り回す方。王子様フェイスから想像できないくらい、良い筋肉してそう。ほら、お父さんがあれだから。
ヒーローネームは『ショート』。ガッチリ。
レアの経歴に「ん?」と思った人。とりあえず、アメリカと日本の義務教育は違うから、とだけ。訓練編後にまとめて説明するかも。