フットボールフロンティア地区予選決勝。
俺はフィールドに呆然と立ち尽くしていた。自分の無力さを自覚した試合は今までも何回も経験したが、今回の試合はそれらの経験を全て忘れさせるほどの衝撃だった。
相手は木戸川清修中。フットボールフロンティア全校大会の常連校で、そのほとんどの大会で帝国学園に敗れるも、準優勝を飾っている。決して、ビデオでの研究を怠っていたわけでは無い。
しかし、実際に見る
味方DFを鮮やかなパス回しで躱していくのは武方三兄弟。三つ子の連携は伊達ではなく、味方はあっという間に突破される。
「豪炎寺っ」
俺がこれからの人生で一生忘れることのできない男の名が呼ばれた。
武方三兄弟の長男が放ったパスは上空に蹴り上げられる。あの
足に炎を纏って、回転しながら奴は跳躍する。完璧なタイミングで渡ったボールを空中を蹴り落とす直前で奴は叫んだ。
「ファイア、トルネード!!」
俺のチームのGKが思わず逃げ出した。炎を纏った奴の足で蹴り落とされたボールは火球へと変化して美しい放物線を描きながら、誰もいないゴールに突き刺さる。
その瞬間、審判のホイッスルの音がフィールドに響く。スコアボードには6ー0というあまりにも圧倒的な差のスコアが描かれていた。そのスコアボードを見た瞬間、脳内で俺の心がポッキリと折れた音がした。
豪炎寺修也、俺はこの男を一生忘れない。
◇
◇
河川敷でほぼ惰性的に練習をこなす。一年経ってもあの日の光景が脳裏に焼き付いて離れない。
監督やチームメイトは敗北した試合の後のミーティングで涙を流していたが、俺はどうにも泣く気にはなれなかった。俺は豪炎寺に負けたその日の内にサッカー部を退部した。
幼い頃、プロサッカー選手に憧れていた。いつか、自分もTVに出て来るような豪快な必殺技を放ち、チームの勝利を決めるエースストライカーになると夢見ていたが、どうやら夢は夢で終わってしまいそうだ。
帰り道を歩いていると、小さな公園でサッカーをしている子供達が目に入った。もしも、自分の才能に早々に見切りをつけて、サッカーを真剣にやるのではなく、遊びでやっていたら、俺はこんなに苦しむこともなかったのだろうかとふと考える。
「ゔあぁぁあぁあぁ!!」
俺は思わずその場で叫びだした。公園にいた子供達が俺を見て蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
そんなわけ無い。余りにもそれでは惨すぎるでは無いか。たとえ、俺に才能がなかったとしても、それでも俺は…
「あの試合に……勝ちたかった………」
家に帰ると、母親が既に夕飯を作って待っていた。
「お帰りなさい。日本フットボールフロンティア連合って所からあんた宛に手紙が届いていたわよ。」
その言葉を聞いた俺は、ひったくるように母親の手から手紙を取ると、自室に駆け込んだ。
「ちょっと、ご飯はどうするの〜!」
母親の声は耳に届かなかった。乱雑にその封筒の封を切ると、そこには日本フットボールフロンティア連合から俺への強化指定選手の招集の連絡が書いてあった。
「なんで、俺が……」
戸惑いの気持ちもあったが、それ以上に俺は今まで、感じたことが無いほどの胸の高鳴りを感じていた。