超次元の青い監獄   作:門崎タッタ

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第十一話

 「萩原、お前MFに転向してみる気は無いか?」

 

「…何度も言いますが、俺はFW以外のポジションをやるつもりはありません」

 

 練習前に監督にいきなり呼び出されたかと思ったら、またこの話か。この無駄なやりとりをサッカー部に入って何回繰り返しただろうか。まったくもって生産性の無い会話であることを監督にはそろそろ自覚してほしい。

 

「…お前がどう感じようと俺は何度でも言うが、お前の足下の技術は本当に一流だよ。それは俺も認める。しかしな、お前はゴール前の決定力が無さすぎる。サッカーというスポーツは個人競技じゃない、チームでやるものなんだよ。…チーム全体の成長のためだと思ってここは、な?少しだけ大人な判断を下さないか?」

 

「話はこれで終わりですか。それなら俺はここで失礼します」

 

 生意気な態度を取る俺が監督に軽く頭を下げて、足早にその場を去ろうとすると、後ろから大きな溜息が聞こえてくる。

 チームの事情なんて知ったことじゃない。自分の能力的にMFの方が向いていることなど俺自身が嫌になるくらい自覚している。

 それでも、俺にとってFW以外のポジションをやる事は一切の価値が無い。全体に合わせて他のポジションをやるくらいならいっそサッカーを辞めた方が何倍もマシだ…。

 

 

 

  ◇

 

 

      

 

 

 

   

 

 

 

 

 

  ◇

 

「「「トライアングルZ!!」」」

 

 3人で組体操の決めポーズを決めた武方三兄弟が放つ強力な必殺技がゴールネットを突き破る勢いで放たれる。

 

 モニターに映されているスコアボードを見ると、そこには5ー0という俺達の敗北を知らせる数字が無情にも表示されていた。

 俺達もこんな点差になるまで勿論、ただ指を咥えて見てたわけでもない。しかし、どんなに連携を試みようとも、圧倒的な1()を持つチームXと焦って陣形が崩壊しているチームZとは地力の差が如実(にょじつ)に現れていた。

 

 点差がつけばつくほどチームXの皆は個人の得点しか考えないし、焦燥感に駆られたチームXの選手には個人技で0()から1()になれる奴は誰もいない。

 それと反比例する様に相手チームは武方三兄弟を中心にどんどん結束を固めてゆく。

 

 惰性的に只々時間だけが過ぎてゆく。この絶望的な状況からは絶対に逆転は不可能だろう。この試合は確実に俺達の負けだ…でも…。

 

「僕達のチームがあと3分で5点を取り返すのは無理だろうね」

 

 疲れ切った表情を浮かべる中谷がセンターサークルにボールを設置している姿を見ていると不意に吹雪が話しかけてきた。

 

「でも、一点なら取れるかもしれない。僕の作戦に萩原君が協力してくれれば。だけど」

 

「俺が…協力?」

 

「そう、相手も既に完勝の余韻に浸っている選手もちらほらいるし…。ノーマークの一回切りしかチャンスは無いと思うけど…、やる?」

 

「やるよ。俺にもう選択肢は無いからな」

 

 こちらの答えなど分かりきっていると言わんばかりの笑みを浮かべる吹雪の提案に俺は即座に乗る。

 

「それなら良かった。それで肝心の作戦なんだけど………」

 

 吹雪との作戦会議を終えると、ピッとスピーカーから試合再開を告げるホイッスルが鳴る。吹雪の提案した作戦は既に頭に入っていた。

 

 中谷はボールを俺と吹雪のどっちでもない味方MFに出した。俺はそのパスを物凄い勢いで追ってカットする。

 

「おい!何やってんだ萩原ぁ!」

 

 突発的に行われた俺の奇行に対して捻挫野郎の怒声が響き渡るが、その耳障りな声を無視して直ぐに意識の外に追いやりとにかく目の前のボールをゴール前に運ぶ事だけに自分の全集中を注ぐ。

 

「さっき言ったばかりだろ?俺達は誰にも止められないって。もう無駄な抵抗は辞めて諦めるんだな」

 

 武方三兄弟の3人が余裕の表情を浮かべながら俺の前に立ち塞がる。

俺はドリブルを一旦止めたのちに相手の立ち位置を確認すると、勢い良く敵の方へ切り込んでいった。

 

「疾風ダッシュ!」

 

 目の前に立ち塞がる三兄弟の間にある僅かな隙間を俺は超スピードで駆け抜ける。その勢いを保ったまま俺は敵のディフェンスラインに突っ込んでいった。

 

「だ、誰かそいつを止めろぉ!」

 

 武方三兄弟の内の誰かが発した声に反応した敵選手がかなり前進してきて俺にドリブル必殺技を撃たせない様に即座にポジショニングする。これを突破するのは至難の技だろう。さっきは敵の慢心もあって抜き去ることができたが、本来俺はこれを一人で超えられる1()では決して無い。

 

 …しかし、俺一人で1()になれなくても、俺と吹雪の二人ならば1()になれるはずだ。

 今までの俺達は確かに0()だった。しかし、それは武方三兄弟も同じ筈だ。武方三兄弟は個人技ではなく、三つ子ならではの3人での連携プレーにより元々0()だったものをを1()に変えた。それならば、俺達もその理論に準ずるだけのこと。

 今の俺は甘んじてストライカーでは無く、ドリブラーとしての役割を受け入れよう。ここで生き残るためならば俺は以前まで持っていた安っぽいプライドなんか、犬にでも食わせてやる。

 

 …ゴールを決めるフィニッシャーは俺では無く、吹雪だ。

 

「吹雪!」

 

 俺は予め作戦の位置についていた吹雪にバックパスをする。

 

「良いパスだぜ!萩原ぁ!」

 

 俺のパスを受け取った瞬間、普段の吹雪とは別人と思わせるような異質な雰囲気を見に纏う彼の周りを冷気が取り囲む。

 吹雪と容姿をはじめとした姿形は同じだが、どこかまったくの別人と感じさせられる彼が放つオーラに俺は圧倒されていた。

 

「吹き荒れろ……」

 

 彼がそう呟くと、周りにあった冷気が急速にボールに集中する。どんな原理か分からないが冷気を纏ったボールが宙に浮き上がった。

 

「エターナルブリザード!」

 

 彼はゆっくりと回転しながら空中に浮いた氷の塊と化したサッカーボールをゴールに向かってシュートした。

 

 美しい放物線を描きながら彼の必殺技はゴールに突き刺さる。その必殺技の余りの美しさに俺は見惚れてしまった。いや、俺だけでは無い。恐らく、その場にいた全員が()()()()というたったひとりで痛烈な存在感を放つ1()に対し、感嘆の意を示して息を飲んでいたと俺は確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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