超次元の青い監獄   作:門崎タッタ

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 豪炎寺は雷門中には転校してこなかった設定です。




第二話

 

  俺は今、日本フットボールフロンティア連合と呼ばれるビルの前に立っている。正直に言って、何故俺が強化指定選手に選ばれたのはわからない。しかし、一度心が折れた身とは言えど、自分の努力を、誰かが認めてくれたと思うと嬉しかった。

 

 ビルの中に入ると、そこには俺とほぼ同学年と思われる少年達が集まっていた。見知った顔がいない俺はやる事もなくその場に佇む。その時、誰かにおもむろに肩を叩かれた。

 

「お前も強化選手に選ばれた奴か?俺は 中谷真之(なかたにまさし)。奈良第三中のエースストライカーって言えばわかるかな?」

 

「すまん、全く分からない。誰だ?お前」

 

「えぇ!知らねぇのかよ!奈良最強のあびせげりの中谷だぜ!」

 

 緑色の髪をしていて、黒い瞳の吊り目。 顔は整っているが、妙に痛々しい奴に話しかけられる。俺の中のフットボールフロンティアについての情報は豪炎寺が木戸川清修中を辞めたと知った時から止まっているし、県外の選手のことなんて調べてはいなかった。

 

「くっそー、知り合いが居ないからと言って、変なことしなきゃ良かったぜ。こ、これじゃただの痛い奴じゃねーかっ」

 

「安心しろって、お前は痛い奴じゃなくて、自意識過剰な痛い奴だから」

 

「ひどいっ!お前の名前を教えろ!このままじゃ、俺の絡み損じゃねえか!」

 

 大袈裟な仕草をしながら少々吃りながらもそう言い放つ中谷に絡みやすい奴と判断した俺はそうツッコミを入れる。

 

「俺か?俺の名前は萩原走(はぎわらかける)。これからよろしくな中谷」

 

「あぁ、こちらこそよろしくな萩原!」

 

 そんな会話を中谷と交わしていると部屋の電気が突然消灯し、部屋の前方にあるステージにスポットライトが当たる。そこには、長身痩躯のおかっぱ頭の男性が立っていた。マイクの調子を確認したのち、俺たちに語りかける。

 

「おめでとう。才能の原石共よ。お前らは俺の独断と偏見で選ばれた優秀な中学生のストライカー3()0()0()名です。そして俺は絵心 甚八(えごじんぱち)。日本をFFI優勝に導くために雇われた人間だ」

 

「FFI?ってなんだ?」

 

「お前、そんなんも知らねーのかよ!FFIはな、フットボールフロンティアの国際大会のことだよ!」

 

 俺が疑問を口にすると、中谷が驚いた顔をして小声で呟く。絵心と名乗る男は抑揚の無い声で話を続ける。

 

単刀直入(シンプル)に言おう。日本サッカーが世界一になるために必要なのはただひとつ…。革命的なストライカーの誕生です。俺はここにいる300人の中から世界一のストライカーを創る()()をする」

 

 絵心が大袈裟な仕草をしながら、ギョロギョロした目を見開きながら説明を続ける。どこか異様な雰囲気がその場に流れた。

 

「見ろ。これがこのための施設…。青い監獄(ブルーロック)。お前らは今日からここで共同生活を行い、俺が考えた特殊なトップトレーニングをこなしてもらう。家には帰れないし今までのサッカー生活とは決別してもらう。でも断言する。この青い監獄(ブルーロック)でのサバイバルに勝ち抜き299名を蹴散らして、最後に残る一人の人間は世界一のストライカーになれる。……説明は以上、よろしく」

 

 ステージ後方のモニターに施設情報などが掲載される。あまりの展開の速さに多くの人がついてこれていないのか、所々から困惑の声が聞こえてくる。中谷の方を向くと、どこか惚けた面構えをしていた。

 

 部屋の明かりが点灯される。すると、帝国学園のジャージを着た中性的な顔立ちで、やや浅黒い肌。薄水色の肩近くまで伸びた髪にオレンジ色の目、右目の眼帯が特徴的な少年が声を上げた。

 

「どういう事だ!今の説明では納得できない!俺たちにはそれぞれ大事なチームがある!フットボールフロンティアの全国大会を控えている選手もいるんだぞ!お前が言うようなワケのわからない場所に俺は参加しない!」

 

 ステージに立つ絵心に向かってそう力強く言い放った。すると、同じ帝国学園のジャージを着た茶髪のドレッドヘアーの男を始めとして、その場に抗議の声が上がる。

 

「何なんだよ、いきなりマジ意味わかんねぇ。なあ、そうだろ萩原。萩原?」

 

 中谷が俺を呼ぶ声が聞こえる。しかし、その声は俺には届かない。俺はつい先ほどステージのすぐ側に見つけた、白い髪を逆立てた男の姿を凝視していた。

 

 絵心と眼帯が激しい口論を交わすがその声も耳には入らない。

 

 

「豪炎寺…修也…」

 

 

 俺がぼそっと私怨が篭った声で凝視している男の名前を口ずさむと、その瞬間、絵心の言葉が耳に入る。

 

「世界一のエゴイストでなければ世界一のストライカーにはなれない。俺はこの国に俺はそんな人間を誕生させたい。この299名の屍の上に立つ、たった一人の英雄を」

 

 俺は一度サッカーを捨てた人間だ。豪炎寺修也(圧倒的な才能)に心を砕かれて。そんな俺が再起を願うなど自分の才能に分相応だろう。

 

 しかし、絵心は言った。世界一のエゴイストでなければ世界一のストライカーにはなれない。と。豪炎寺は俺のことなど全く覚えていないだろう。俺はそんな程度のちっぽけな脇役だ。

 

 絵心の後方にある扉が開かれる。恐らく、あの先が青い監獄へと続く扉なのだろう。

 

「もう一度言い改めよう。ピッチの上ではお前以外の人間は全て脇役だと思え。常識を捨てろ。ピッチの上ではお前が()()だ」

 

 絵心の言葉が俺の激しく胸を打つ。豪炎寺に敗北した時に忘れたはずの熱い気持ちが胸に湧き上がるのを感じた。もう一度、もしもう一度だけ俺にチャンスが与えられるのならば…。

 

「己のゴール(勝利)を何よりの喜びとし、その瞬間のためだけに生きろ。……それが()()()()()()だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺は豪炎寺修也に勝ちたい。俺は()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「待てよ!萩原!」

 

 

 中谷の静止の声も耳に入らない。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる豪炎寺を一瞥した後、俺はその場にいる人の中で真っ先にステージ後方の扉に向かって走っていった。

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

  …誰もいなくなった会場でゴゥンという扉の閉まる音が鳴り響く。

 

「…300名、全員参加っと…」

 

そう独り言ちると、自分の後方からヒールの足音が聞こえてくる。

 

「…これでもう後戻りはできない。これから私はあなたのいう通りに動きますので。…日本サッカーとあの300名の未来、よろしくお願いします絵心さん」

 

「…多分、299名の人生はグチャグチャになる…。そして一人のストライカー(エゴイスト)が誕生する。それが青い監獄(ブルーロック)だ」

 

 俺の言葉に神妙な顔つきで、話しかけてきたヒールの女はゆっくりと頷く。

 

 

 

 

 

 

「…始めようか。世界で一番、フットボールの熱い場所を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ……ある者は言った。フットボールの世界において、一流のGKやDF、MFは育てることができるがストライカーだけはその類では無い。

 

 一流のストライカーという生き物は…その時最もフットボールの熱い場所に突如として出現する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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