その後、体力テストの後は吹雪と共に毎日自主練習を行った。そんな生活が3日続いた後に翌日の朝が直ぐにやって来た。
「おい、萩原。起きろ!」
中谷の寝ている俺を起こす声が寝ぼけている頭に響く。起き上がると、俺以外の部屋の選手は全員起床して、布団を片付けていた。
「朝っぱらから何か発表があるんだってよ。それより腕に書いてあるランキング見てみろよ!」
中谷が嬉しそうな声色で腕を突き出して俺に見せている。そこには266位と書かれたランキングが表示されていた。
俺も急いで自分の腕を確認する。俺のランキングは275位に上がっていた。自分の自主練の成果が絵心に認められたのだろうか。喜びを口に出そうとすると、突然モニターに絵心の姿が映し出された。
「やぁやぁお疲れ、才能の原石共よ。
「ざけんな!楽しめるかよ!?こんなクソみてーな環境でマジでサッカー上手くなんのかぁ!?」
捻挫野郎が絵心に対して真っ先に叫んだ。部屋にいる選手も捻挫野郎に続いて続々と不満の声を上げる。
「環境がクソなのはお前らがサッカー下手クソだから当然だ。バーカ」
「あ?」
煽られた捻挫野郎が絵心を鋭い目つきで睨め付ける。しかし絵心は全く気にも留めずに話を進めた。
「…少し
「ちなみに
…成る程、つまり275位の俺は依然最下位のままだと言うことだ。そんなに都合よくは進まない。理解していたつもりだったが、こうやって実感すると精神的に辛いものがある。
「そしてランキング順にチームは分かれている。1〜11位が[B]。12〜22位が[C]。……ここまで言えば俺の言いたいことはわかるよな?」
つまり、俺たちの居るチーム[Z]は5つの棟の中でも最低ランクの「伍」号棟で、更にその中の最底辺である265位から275位でビリの俺までのランキング者が集まるチームという事だ。
ちらりと涼しい顔をしている吹雪の方を一瞥する。俺の何倍も優秀なあいつでさえ、絵心に最底辺とカテゴライズされているという事だ。
「ランキング上位者は上のランクの棟で良い飯と良いトレーニングを得てトップストライカーの為の最高位の生活を送っている…」
絵心の後ろに有るモニターに豪勢な料理の写真と、良質なトレーニングに勤しんでいるトップランカーの奴らの姿が映像として映し出される。
今の俺達の練習している環境とは天と地ほどの差があることがその映像一つで見受けられた。
「ここでは
モニター上の絵心の言葉が閑静な部屋に響き渡る。
「……それではこれより
その言葉を聞いた瞬間、部屋の中の空気が張り詰めていく。俺も含めた部屋の全員の闘志が満ち溢れる感触を俺は肌で感じていた。
「一次選考はお前らのいる[伍]号棟55名…。全5チームによる総当たりリーグ戦だ。最終戦の結果、上位2チームのみが二次選考へと勝ち上がるサバイバルマッチだ」
つまり部屋の中に居る11人で一つのチームを組んで戦うという事だ。絵心の言う事を理解はできたが…。
「…でもこの部屋にいる人達は全員FWですよ」
下鶴が俺も感じた疑問を口にする。当たり前のことだが、サッカーのポジションはFWだけでは無い。全員がFWのチームなんて常識的に考えればありえないものだ。下鶴の一言を口火に部屋の中で騒めきが生まれて、試合の時のポジションの押し付け合いが始まった。
「いいか、よく聞いて下さい。サッカーは元々点を取るスポーツです。本来は11人全員FWで当たり前なんです。お前らの中にバカみたいに刷り込まれているポジションや戦術なんてのはサッカーの進化の歴史で成立してきたただの役割であって、サッカーとは元来全員がストライカーであることから始まった」
絵心が話し出すと、部屋の中に居る選手達は一斉に静まり返った。
「その原点からサッカーをやれ。お前らの頭で0から創り直すんだよ」
…いや、違う。威圧感と形容するのは不適切だ。絵心が放つ言葉には…
「今までの常識なんて信じるな。捨てろ。新しい概念を脳みそにブチ込め。日本がFFIで世界を取るために必要なことは
「……たった一人の英雄なんだよ」
……
「一人の英雄によってサッカーは際限なく無限に進化する。そいつを止めるためにDFシステムが創造され、新たな必殺技などが生み出されていくんだ」
俺はなりたい。
「たった一人の
…俺はどんな苦しみを味わったって勝ち上がってやる…。この
「戦う準備は出来てるか?その全てが
…いつの日か
俺は絵心の言葉を聞きながら、口には出さずに俺の心の奥底で強く誓ったのであった。