とあるオタク女の受難(刃牙シリーズ編)。   作:SUN'S

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第6話

∩月З日

 

十二時を過ぎた頃だろうか?

 

赤い髪の毛を逆立てるオッサンがバーガーショップの前に立ち、なにか好きなものを見付けたのか。すんごい満面の笑みを浮かべていた。残り少なくなったバニラシェイクを飲み干し、外回りの続きを始める。

 

はあ、同僚の応援したいのに……。

 

そんなことを思いながらも返済期限も返金も滞納している顧客のひとりを注意しようとした瞬間、私と顧客を両断するように放たれた蹴りと言っていいのか、そんな分類不明の技が飛んできた。

 

ビックリした、ビックリした、いきなり蹴ってくるとか可笑しいんじゃないの?なんて考えていると赤い髪の毛を逆立てるオッサンが「人通りは少ない路地、喰すにはうってつけだ」とか言い始めた。

 

次の瞬間、思いっきり上着を引き裂いてムキムキの上半身を見せ付けてきた。まあ、後ろは行き止まりで目の前には筋肉の怪物が立っている。

 

もう、逃げ道なんて大空(うえ)しかないよね。

 

∩月`日

 

あのオッサンもお爺さんの知り合いかな?

 

そんなことを考えていると範馬君と無精髭を携えたオジサンが訪ねてきた。たぶん、なにか重要な話を同僚に持ってきたんだろうけど。

 

今は神心会空手総本部にいるよ?

 

二人には帰ってくるまで部屋の中で待つ?と聞いても直ぐに帰るとマンションの通路で話すことになった。一応、録音機は用意してるけど。範馬君と本部以蔵さんは愚地さんの宿敵について話すために来たらしい。

 

宿敵の情報を要約すると「あらゆる武術を吸収しながら蹂躙する化け物のような男」らしい。

 

なんだか漫画やアニメのラスボスのような人だな。なんて思いながらも範馬君と本部さんの真剣な表情は嘘を言っているようには見えない。

 

ただ、私を引き込むのはやめてほしい。

 

私は一般人なんだよね。

 

武道家ではないし、武術経験者って訳でもない。ふつうのOLだからね?そういう殺伐とした世界には浸かりたくないんですけど。

 

∩月▼日

 

唯一、その怪物の戦闘記録を残したビデオテープを持つ人物から借り受けたという範馬君と外人さんが神心会空手総本部へ行こうと言ってきた。

 

まあ、ちょうどお弁当を届けに行こうと思ってたから良いんだけどさ。みんな、私を引きずり込んで楽しいのかな?

 

暴れ狂う猛獣のような戦い方、それなのに繊細な武術を巧みに操っている。そして、なにより私を追い回していた人とそっくりなんだけど。

 

これ、言ってもいいのかな?

 

まあ、いいや。

 

この人の動き方や技の仕掛けるタイミングは天性の才能としか思えないものばかりだ。いきなり変則的な角度から放つ攻撃を避けるのは不可能としか答えようがない。

 

愚地さんの仕合まで日数は残ってる。

 

うん、頑張ってみようかな。この人の戦い方は無形みたいだし、自己催眠を行えば「滅堂の牙」ぐらいには働けるはずだといいけど。

 

愚地さんとの組手は個人的なモノだからね。人に見られるのは恥ずかしいと言いますか、いつもの自分とは解離しているところを見られたくない。

 

水の溜まった浴槽の中へ沈む感覚、意図的な意識の切換行為は危険だと医学書にも書いてあったけど。愚地さんみたいな怪物と戦うには割り切るしかない。

 

一手は「黒木玄斎」の空手の極致を「特注」した技法を使い、二手は「今井コスモ」の柔術の絞め技を「特注」して迎え撃ち、三手は「十鬼蛇王馬」の性能を極限まで「特注」した野性を押し付ける。

 

たぶん、これでもビデオテープの人には追い付いていないんだろうけど。愚地さんに少しだけ役立ったと思うことにした。

 

 

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