え?フラグ?なにそれフランスのお菓子?
さぁでは本編をどうぞッ!
統一暦1925年12月6日 深夜
陸軍航空士官学校 宿舎
「チェストォォォォォォォォッッ!!!!」
坂川の雄叫び。激しい轟音。吹き飛ぶ木材。
「や、殺ったかッッッッ?!」
もはや用済みとばかりに天井板を蹴破り、破片と共に部屋に降り立つ。そのまま戦果を確認する。すると…………
「…………いよぉぉぉぉぉぉしッ!やったぞ!俺は皇国魂をやり遂げたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁ?!」
思わず穴吹も見る。もはや残骸となったベッド。その上には
真っ二つになった、
「えええ………………おいおい、マジかよ」
そのグロテスクな光景に、ドン引きする穴吹ら。しかし、目標達成に浮かれまくる坂川は、狂ったように大騒ぎしている。
「ヒャッハー!!どうだッッ!!見たかッッ!!これが皇国男児の勇姿だッッ!!フハハ大秋津洲皇国は永遠不滅なりィィィィィィィッ!!!!」
「ふむ、そうか。いやしかし、まさか本当にやるとはな。その行動力は高く評価しよう」
坂川が、固まった。穴吹も、他の馬鹿達も、一斉に。
「そして、喜べ。先程とは違い、次は私自ら相手になってやろう。さぁ、真の教育の時間だ————————————」
幼女が、嗤う幼女が、ライフルを、向け————————————
暗転する…………………………
※
同年同日 同刻
陸軍航空士官学校 宿舎
「ふむ、こんなものか」
ベチャ、と最後の一人を投げ捨て、つまらなそうにターニャが言う。その足元には、馬鹿達が死屍累々と積み重なっている。
「く、くそ………なんでだ」
その中で、驚くべき事にまだ意識があった坂川が呻いた。それに対し、ターニャはこともなげに言う。
「何故も何も、あれほど馬鹿騒ぎしている連中に気づかんはずがなかろう。正面でダメなら搦手から、と言う発想は悪くは無いがな」
しかし、あまりに安直すぎる。現に、あっさりそれを看過したターニャは、すかさず光学術式を使用。ご丁寧に真っ二つになる像を浮かばせておき、それに引っかかったところを上空から御用!と言う訳だ。
それを聞いた坂川は
「……………ち、畜生」
と一声叫び、気絶した。全部掌の上だったという衝撃の事実は、彼の心を粉微塵にするのに十分過ぎたらしい。
「やれやれ、ようやく倒れたか。しかし……………どうするかね、これ」
そう言って、見るも無惨に破壊された宿舎を眺める。ターニャ達の部屋だったところを中心に、爆撃を受けたかのように滅茶苦茶になっている。
これは馬鹿達がやったのか、あるいは…………………
「な、なにごとですかーーーーッ!」
と、そこに副校長が駆け付けてくる。彼も寝巻きであり、どうやらこの騒ぎで叩き起こされたらしい。あの陸軍次官と言い、どうにも最近会う人物は苦労人が多い。
「——————なッ…………こ、これは。まさかっ!!」
この惨状を見て、わずか数秒で、ぶちのめされた馬鹿達を驚愕な眼差しで見つめる副校長。
「………………やれやれ、それほどまでに直ぐ分かる副校長閣下が鋭いのか、それともこいつらの馬鹿さが常軌を逸しているのか……………」
その様子を見て、ターニャがぼやいた。と、次の瞬間
「き、貴様ら—————ッ!一度ならず二度までも!!!!しかも、しゅ、宿舎まで破壊するとは!!即刻退学、除籍だ————」
「退学?いやいや、それは流石に早計すぎましょう」
大噴火した副校長を遮り、ターニャが静かに言った。突然の奇行に、ヴィーシャも、副校長も、そしてぶっ倒れていた馬鹿達も(ぽつぽつと復活していた)、驚愕で静まり返る。だが、ターニャは構わず続けた。
「確かに、この行動は許されるべきものでは無いでしょう。もし戦場でこのような不埒者がいれば、即刻銃殺した方がいい、そこまでの愚者達です」
しかし、とターニャは言う。しかしここは、あくまで“学校”だ、と。
「ここは“学校”です。その実態は、他の学校とやや、いえだいぶ異なるでしょう。しかし、学校である以上、誤った者にも再開のチャンスをやるべきなのです」
ターニャは、ここで前世の最後で遭遇した大馬鹿を思い出す。
だが、この馬鹿達は、少なくともターニャの見る限りそこまでの愚者では無い。
「もっとも、もしこれで…………なんら改善が見られなければ、その時は鉛玉をくれてやればいいでしょう。いかがですかな?閣下」
「………しかし、なんらかの罰則は無くては、この騒ぎでは………」
罰則!その程度なら、じゃんじゃんやればいい。実際、寝るところを襲撃されたターニャに、少しも憤りが無いとは言えなかったし。
だが、それでも……………
「それについては私の関与するところではありませんな。まぁそれを言うなら、退学云々に関しても、私が口を挟む合理的理由があるわけでも無いですが」
ところで、我々の新たな寝床はありますかなと、ターニャが尋ねる。それに、詰まりながらも副校長が空いている予備の寝室の場所を教えた。
「それでは、我々はこれで。行くぞ、ヴィーシャ」
「はい」
踵を返し、歩き出す。と、
「———————————デグレチャフ少佐殿ぉ!!」
ふらつきながらも、坂川が立ち上がって、叫んだ。そして、それに続きぶっ倒れていた馬鹿達が血を滴らせながらも立ち上がる。
「「「「「総員、敬礼ィィィィィィィッッ!!!!」」」」」
彼らの目から流れるのは、血か、それとも…………………
「………………フッ」
振り返ったターニャも、それを見て答礼する。その後、再び向きを変え、歩いて行く。
彼女たちを見送る馬鹿達は、見えなくなるまで、見えなくなっても、直立不動で敬礼をし続けたのだった………………………
※
同年同日 同刻
陸軍航空士官学校 宿舎
「いやー、いろいろありすぎて疲れちゃいましたね」
蛍光灯に照らされた廊下を歩き、代理の寝室へと向かう。その道中、すっかり疲れ切った声のヴィーシャが、うんざりしたように言った。
「……………………ま、夜間迎撃訓練とでも思えばいいさ。それに、突然物が喋り出すより、ずっとマシさ」
「?はい?」
いや、何でもないさとターニャは誤魔化した。その表情は、ヴィーシャが思っていたよりも、何だか……………
「でも、少佐も変わられましたねー。もっと“教育”しなくてよかったんですか?」
「ふふふ、そう言うヴィーシャは、どんどん物騒になっていくな」
え?!そ、そうですか??と慌て出すヴィーシャを可笑しそうに見る。………………変わった、か。
「別に変わってなどいないさ。ただ、ここは帝国ではない。彼らは伝統的友好国の人間で、私はその上官でもなんでもない。同じ組織にいるわけでもない。そりゃあ、祖国を侮辱されたり、寝しなを襲撃されたら“対処”するが………」
そう、つまりはそこなのだ。もし、彼らが二号生で、ターニャが一号生ならば、かつての帝国の士官学校での時のようにしただろう。だが、そうではない。あくまで自分は他国の士官学校を見学しに来た外交官で、相手は他国の兵士。抗命だの序列だのと言うのは筋違いも甚だしい。
「………それは、たしかにそうですね。でも、じゃあ何で庇ったんですか?」
「庇った、か。いや、そこまでの事をしたつもりは無いさ。合理性だよ、ヴィーシャ」
合理性。理性と並び、ターニャの信奉するものの一つである。理由なんぞ先程副校長に語って見せたのが全てだが、しかしあえて付け加えるなら………………
「アレらには才能があった。荒削りで、他人から教わったものにすぎんが、それでも多少磨けば実戦で十分使えるだろう。それを、そんな“原石”を、たかがこの程度で潰すのは実に不合理だろう?無論、だからと言って増長させるのなど論外だがね」
まぁ、それこそ他国の兵士相手にやった所で、筋違いだし、無意味に過ぎるだろうが。
(………………………つまりは、先輩風を吹かせたくなったのか?私が??ううむ、それこそ実に不合理では無いのだろうか…………)
語りつつも、自問自答を続ける。それがターニャの、生きる術なのだから…………………
※
統一暦1925年12月7日 早朝
陸軍航空士官学校 宿舎
「「「「「「「おはようございますッッッッ!!デグレチャフ少佐殿!!」」」」」
……………………なんじゃこりゃ
「…………………なんの、御用かな?」
顔が引きつるが、どうにか抑え込んで尋ねる。ああ、頭が痛い………
「無論、ボランティーアと言う奴ですよ、少佐!さぁさぁ、何かご入用の物はありますでしょうか!食事は既にセレブリャコーフ少尉殿の分も含めて運ばせております!!あっ!お着替えを、お手伝いいたしま———————「帰れッッッッッッッ!!!!」
限界だった。宝珠を使って吹っ飛ばし、荒々しくドアを閉める。念のため鍵を閉め、扉を背に崩れ落ちる。
「な、なんだアレは………………………」
しょうさどのー、いかがされましたかーと鈍感にも聞き続けてくる馬鹿達。あまりの意味不明さに、ヴィーシャは先ほどから毛布を被ったまま震えている。
「……………………………ど、どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁ?!?!」
かすれた、しかし心の底からの叫び声は、
冬の空に、虚しく消えていった……………………………
祝、本編初どうしてこうなった。やったねターニャちゃん、これからもどんどん言えるよ!よかったなぁ羨ましいよ!
つーかそれより………思ってたのより随分とギャグっぽくなってしまったぞ??何故だ?どうしてこうなった??
????
次話は、多分今後固定されるな明日の昼ごろ!!また次回!!
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