幼女極東戦記   作:信濃氷海

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ギリセーフ!よかったよかった

では(幕間だけど)どうぞ!!


幕間 辺境左遷録ジョウボウⅠ

統一暦1926年2月10日

皇国領北方植民地北西部 フルンボイル国境監視所

 

 

 寒風吹きすさぶ北方の荒野に、彼は居た。

 

「さ、寒い………………灯油が切れた…………」

 

 ボロいあばら屋に、一人座り込む。こんな所で生きていくには、酒を飲むしかない。そのため、彼はほぼ常に泥酔状態だった。

 

「くそがぁ……………なんでこんな目に…………」

 

 腐るほどある高粱の粥を、白い高粱酒で胃に流し込む。本当に、他は色々枯渇していてもこれだけは山のようにある。だが、気を付けないとビタミン不足で“ペラグラ”と呼ばれる恐ろしい病に罹る。そのため、十分な量の副食を摂らねばならないが………………

 

 弾丸や、燃料すらも輸送が滞るこの環境で、そんな事は到底不可能である。それ故祈るぐらいしか無い。何せこの寒さ、病だ何だと言う前に食べねば死ぬのだ………………

 

「…………………に、しても最近来ねえなぁ連邦の野郎。…………………これで体も動かさなかったら死ぬぞマジで」

 

 “平和”のはずの国境。だがその実態は、連日の如く起こる連邦との小競り合いだ。例え上に報告しても握り潰されるそれは、しかし前線兵にとってはむしろありがたい事だった。

 

 この極寒では、むしろ動かない方が危険なのだ。無論戦闘が安全なわけでは決して無いが、しかしもし万が一負傷すれば、それでこの地におさらばできる。もはや刑罰と化しているこの国境監視任務は、それ程までにキツく、辛いものだった。

 

 ………………が、ここ数日は、連邦は不気味なほどの沈黙を保っている。一人の兵士も、一発の銃砲弾すらも飛来してこない。

 

「………ふーむ臭うな」

 

 冷え切った高粱酒を飲み干し、彼は立ち上が…………れずに足をもたらさせぶっ倒れた。どう見ても完全な酔っ払いである。が、彼は何とか立ち上がろうともがく。

 

「………………何しているんです?()()()()?」

 

 と、芋虫と化している彼——上坊弘道陸軍中尉に、心底軽蔑しきった声がかけられる。対し上坊は、呂律の回らぬ舌で何やら喚く。

 

「いってくんだよぉー!おれは、見てくんだバーカ。ちょ、ちょっくら散歩になぁー」

 

「さ、散歩?何を訳のわからな………って、ちょ!何しているんですか!」

 

 また戯言かと、彼の部下はため息をつく。しかし次の瞬間とんでもない行動に出た上坊に、思わず目を剥く。

 

 なんと、立ち上がらぬ事に苛立った彼は、懐の宝珠に魔力を注入。そのまま危なっかしげに浮かび上がり、

 

 あたり構わずぶつけ、なぎ倒して小屋を出て行った。

 

「おーれはじゆうだぁーあー!!連邦のアホめ、なーに企んでんだよーお!!」

 

 

 

 

 「………………………はっ!いかんすぐに追いかけろ!何しでかすかわからんぞ!!」

 

 我に帰った部下は、数少ない監視所の人員をかき集め始める。まったく、これだから酔っ払いのクソバカは……………

 

 もっとも、見殺しにされないあたり彼もまだ多少は慕われている、のかもしれない………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

同年同日

ハルハ河皇国—連邦国境線上空 

 

 

「やっぱ空はいいなぁ…………心が洗われる」

 

 どうも彼は、上空では酒が抜けるらしい。先程までの危なっかしさは消え、顔つきもしっかりしたものになっている。

 

「さーてさてさて、なんでこんな平和なんだ?………………っと、おい、ありゃあなんだ……………?」

 

 独り言を言いながら、彼は連邦領の方を見た。そこには

 

 とんでもない光景があった。

 

「中尉!待ってくださ—————「静かにッ!」?!」

 

 追いかけてきた部下らに、鋭く注意する上坊。そして、驚く彼等にある一点を指さした。

 

「…………………!!あ、あれは」

 

 いつまであれば、国境線にひしめく要塞線。それが、もぬけの殻だった。

 

 あれほど連邦兵でごった返していたはずなのに、である。

 

「………………撤退した?しかし、何故………………?」

 

 混乱する部下たち。しかし、上坊はさらに決定的なものを見せる。

 

「あれを見ろ。…………あそこだ、あの山の麓。…………駅があるだろ?」

 

 そこでは、なんと

 

「………………膨大な数の兵士が、汽車に乗せられている……………?」

 

 ひっきりなしに発車する列車。その中には無数の兵士たちが押し込められていた。そして、見る限り来る列車には、誰も乗っていない。

 

「……………兵士の移送?だが、どこへ…………まさか!!」

 

 ここで、上坊は思い至る。ある一つの可能性に。だが、まだ確定ではない。

 

「…………戻るぞ、おれは確認せにゃならん。他の国境線の状況を…………!」

 

 もし、そうなら……………これはとんでもない重要情報である。

 

 彼は、そして再び部下を置き去りにして帰って行った………………

 

 その、数日後。

 

「やはりだ!どの監視所でも紛争が減っている、いや、無くなっている!!と、するとやはりこれは………………」

 

 かれは決意する。今すぐに、陸軍中央へ伝えねば—————————

 

 上坊弘道。彼は一階級降格の上辺境へと左遷されながらも、

 

 やるときはやる、そんな男だった……………………

 

 

 が

 

 

 

 

 

 

 

 

統一暦1926年2月17日

皇都東京 参謀本部 総務課

 

 

「…………なに?上坊大……もとい中尉から?」

 

「はい、緊急電とのことでしたが……………」

 

 慌しく人が行き交い、書類が幾つも宙を舞う参謀本部。いつも以上に混乱しているそこに、一つの電報が届けられた。

 

 それはすぐに、電報班により解読され、上司たる総務課長へと持ち込まれる。

 

「…………………これは、本当か?にわかには信じがたいが」

 

 発信者は、北方植民地駐留軍、国境警備隊の上坊弘道陸軍中尉。彼については、課長の男もよく知っていた。というか、実際に“現場”を目撃している。

 

 ところが、と言うべきか、それ故、と言うべきか…………

 

「連邦軍が、西方へと兵力の大規模移送?しかもその目的は、帝国と戦争するためだ??………………突拍子もないな」

 

「しかし、現地の将校が言っていることですし……………」

 

 そう、普通なら、そうだ。だが、これは…………()()上坊中尉なのだ。

 

 大酒飲みで、泥酔しやすく、しかも陰謀論を好む。航空魔導師としては優秀なのだろうが…………

 

 …………………悩んだ末、総務課長は結論を下した。これは、信用できない。故に、上に報告はしない。

 

「よ、よろしいのですか?」

 

 電報を取り次いだ副官が、思わず尋ねる。が、総務課長はかぶりを振った。

 

「ああ、第一今は、例の“計画”でどこの部もてんやわんやだ。それをこんな曖昧な情報で煩わせるわけにはいかん」

 

 ………………哀れ上坊弘道。日頃の信用のなさ故のこの決定は、しかし皮肉なことに、上坊自身はなんら実害を被る事はない。

 

 ………………彼等がそれに気づいたのは、その一ヶ月後。帝国の、悲鳴のような発表によってだった。

 

 

 

 

 

じんぶつれぽーと

上坊弘道 大尉→中尉(降格)

  所属 陸軍航空士官学校→北方国境警備隊(左遷)

 

 未だ、左遷中…………………ッ!




上坊弘道、無念…………………ッ!

ついにやってしまった。今回原作キャラ一人も出てきてねぇよ…………誰得

次話からはいよいよ!お待ちかね第三章の始まりです!ついに蠢く陰謀に自ら突っ込むターニャ!どうなるターニャ、どうするターニャ!頑張って開戦を回避するんだ!!

次話は………明日の夕方までには、必ず…………多分…………

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