幼女極東戦記   作:信濃氷海

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だいぶ早く仕上がりました!いやったぁー!!

それでは本編どうぞ!!


第十五話 奇策成就し、歴史は動く

統一暦1926年4月9日 午前

陸軍航空士官学校

 

 

「…………くくく、くはは、あーはっはっは!」

 

 朝っぱらから、幼女は大笑いしていた。廊下で出くわす学生がそれを見て、思わずギョッとする。

 

「た、楽しそうですね教官!」

 

 例の如く幼女の跡をつけ回す学生、穴吹がドン引きしながら尋ねる。と、ターニャは実にいい笑顔で返した。

 

「はははっ!無論だ穴吹。ついに我が祖国が、クソッタレのコミー共を叩き潰すのだからな!」

 

 あらかじめ考えていた()の理由を言う。が、しかしそれが本心であることは確かだ。

 

「そ、そうですか…………」

 

「ああ、死んだコミュニストだけが良いコミュニストだ」

 

 冗談でもなんでもなく、真顔でそう言うターニャ。何せ彼女の共産主義嫌いは、前世からの筋金入りだ。

 

 ………………まぁ今回は、更に嬉しい事があったからなわけだが。

 

(くくく…………ザマァみろ“北方派”!つじーんもどきなんぞに好きにさせてたまるか!)

 

 心中で、先制パンチを浴びせてやった間抜け共を思い浮かべる。それだけで、あと一週間は笑い続けられそうだった。

 

 …………ターニャがやった事、それは南方進駐情報の帝国本土への伝達。それだけだ。

 

 が、なんとも嫌な事に、そんな簡単な事すら“デグレチャフ武官”には出来ない。何故なら、帝国大使館の通信は全て大使オットーにより監視されているからだ。………今のところ彼がターニャを疑っているようには見えないが、しかしこんな機密を送信すれば一発でアウトだ。最悪スパイとしてその場で銃殺されかねない。

 

(…………まぁしかし、実は本当に()()()な訳だが)

 

 ではどうするか?そもそも何故彼女はそんな最重要機密を知っているのか?ここで登場するのが、先日彼女と手を組んだ海軍次官、山野四六中将だ。

 

 最初に南方進駐作戦を聞いたのは、彼であった。三月の終わりに、突如陸海軍の合同会議が行われた。海軍側は次官クラスしか臨席を許されなかったそこで、彼はいきなりこの作戦を陸軍から知らされたのだ。

 

 一応抗議はした。が、既に決定事項として陸軍側は聞く耳を持たず。

 

 それ故に、彼は決めた。これをなんとしても阻止すると。

 

 だが……………“山野次官”にも情報のリークは不可能だった。“陸軍の番犬”、憲兵が至る所で彼を監視しており、電報など即バレる。そこで、山野とターニャが考えついたのは

 

 全く架空の人物を、発信者にする事だった。

 

 架空の人物。それはこのリークのためだけに、山野が密かに作らせた虚偽の海軍士官の事である。名を出暮谷阿(でぐれたにあ)と言い、階級は少佐。彼に、電報を打たせたわけである。山野ら海軍高官……将官あたりには憲兵がどっさり張り付いているだろうが、佐官程度では付くはずもない。そもそも実態がないから調べようも無い。

 

 要は、この人物を隠れ蓑に、ターニャが電報を打ったのだった。

 

 ターニャにも、憲兵の監視は無い。人員不足もさることながら、もしバレたら国際問題になるからだ。そこを、突いた。ターニャ本人名義では直ぐにオットーの耳に入るだろうが、出暮少佐なる人物であれば問題はない。

 

 後は、彼女が年相応の幼女のふりをして、さも父か、その友人あたりの電報をお使いで打ちに来たと思わせれば完璧。なのでターニャはそうした。凄まじい嫌悪感を押し殺して……………

 

 これこそが、山野とターニャの奇策であった。が、最後に一つだけ、解決しなければならない事があった。

 

 それは……………

 

「………あ!少佐殿おはようございます!」

 

 ターニャが教官となった関係で、宿舎の部屋も別れてしまったヴィーシャが、出会ってすぐにそう声をかけてくる。ターニャも挨拶を返しつつ、そういえばと回想する。

 

(………しかし結局、賭博については聞けずじまいだったな。だがアレのおかげで山野次官とのコネと貴重な亡命の約束を得る事ができ——————はッ!まさか!!)

 

 と、ターニャはそこで思い至る。彼女が、何故賭博などに手を出したのかについて!!

 

(まさか、この為だったのか?!賭博キチガイの山野に近づく為に、あえて自ら泥を被ったのか!!)

 

「ハクシュッッ!!うう………妙な時にくしゃみが出るんですよ」

 

 ヴィーシャの唐突なくしゃみ。だがターニャは上の空で大丈夫かと声をかけるのみ。その脳みそではしきりにヴィーシャの驚異の奉職精神に感心していた。

 

(な、なんという素晴らしい部下だ………皇国語の時と言い、何故そこまで献身的なんだろうか)

 

 あまりに凄過ぎて、思わずターニャは彼女を()()()()()()()()()()()()()()を、申し訳なく思った。………が、平和の為には必要な事だったのだ。

 

 最後の問題点、それは、いかにして山野から機密情報をターニャに伝えるか、というものだった。流石に、憲兵らも帝国大使館の武官の顔くらいは覚えている。その武官と、山野が接近すれば馬鹿でも何かある、と分かるだろう。

 

 ……………そこで、ヴィーシャだ。極めて幸運な事に、ヴィーシャと山野は年が明ける前から麻雀を打ち合う仲だった。流石に憲兵も、武官本人は知っていてもその副官は、分からない。と言うか、そもそもヴィーシャは着任してからほとんど公の場に顔を出していない。

 

 一度だけ晩餐会に出たものの、その場には下っ端の憲兵はいなかった。何より、上坊大尉(昇進した)の件でそれどころではなくなったし……………

 

 週末の、定例の麻雀。そこで、さり気なく機密の書類を受け渡す……………あとは、それをヴィーシャからターニャに渡すのみ。

 

 件の高級雀荘は、山野を含め政・財・軍の有力者が多く出入りする。そのため憲兵が入れるはずもなく、入店者を調べたとしてもヴィーシャは昨年から出入りするそこそこの古株だ。

 

 憲兵隊も、神ではない。それを、証明して見せたわけだ。

 

 で、そこまでして発信したそれの、宛名はどこか?無論帝国本土である。もっともその道中で“()()”盗み読みされようと知ったことでは無い。

 

 そう、誰に読まれようとも………………

 

 そして、今日。外務省に各国大使らが殺到していると言う噂話を聞きつけ、ターニャはほくそ笑んでいた、と言うわけである。

 

 まずは、こちらの白星だ。ターニャは心の中で言い放ち、そのままヴィーシャや穴吹らと共に食堂へと歩いていった………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………初の直接対決は、“北方派”を完全に欺いての山野ら“避戦派”の完全勝利であった。列強の“忠告”と、何より情報漏洩の警戒により、参謀本部は急遽作戦の無期限延期を決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………が、歴史は時として難解な謀略ではなく、一人の考えなしにより動かされる。

 

 

「………作戦中止、だと?!ふざけるなそんなことができるかッッ!!」

 

 件の共和国領南方植民地、ヴィエット半島。そこに、それ以前より派遣されていた小部隊があった。共和国との条約締結後直ちに送られたそれは、とてもでは無いが単独の軍事行動など取れそうも無いほど小さかった。しかし

 

「………………いいだろう、ならば私一人で!!作戦を完遂してやろうではないか!!!!」

 

 彼————田口廉介少将は本気だった。本気で、彼と、彼の率いる僅か千人弱で共和国軍五万を打ち倒そうとしていた………………

 

 

 

 ここに、“北方派”も“避戦派”の思惑も越え、事態は制御不能の方向へ向かいつつあるのだった……………

 

 




解答編、みたいな?ざまぁつじーん回でしたー。

またと勘違いされるヴィーシャ。ちがうんですしょうさだからってそんなふかいことはとくにかんがえていないです…………

そして、最後に出てくるヤバげな奴!こいつは一体、何をやらかしてしまうのかァァァ!?続きは次回!!

次話は…………明日の日中に、出来たら………少なくとも今日よりは早くしたいな……………

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