と、言いつついくつか変更点があります。詳細は後書きで……
第一話 左遷、或いは栄転
統一暦1925年7月某日
帝都ベルン 参謀本部内応接室
「……………辞令、ですか?」
薄暗い参謀本部。そのとある一室に、ターニャはいた。柔らかいソファに、しかし背をつける事なく緊張した面持ちで座っている。
「ああ。そうだ」
向かいに座るは、ターニャの直属の上官たる戦務参謀次長ゼートゥーア。彼はいつも通りの無表情で、一枚の紙を机に置き、ターニャの方へと滑らせた。
「……………拝見いたします。…………………これは」
「読んでの通りだ。貴様には、本日付で秋津洲皇国大使館附武官を命じる」
辞令。新しい職責。それはつまり
「………では、203大隊長は引き継ぎですか?」
ターニャはごく自然に言った。実際自身が設立から育成まで行なったこともあり、幾分の寂寥感もあるが、しかし組織にある以上、それは仕方なのない事だ。第一
(……………ククク、クハハハ、アーッハッハッ!どうだ存在X参ったか!!駐在武官だぞしかも戦場の地球の裏にある中立国に!!ついに!ようやく!!後方での文化的な生活を満喫できるヤッター万歳!!)
戦場を離脱できて万々歳だった。
「いや、引き継ぎは無い。………極めて残念ながら、検討の結果、第203航空魔道大隊は解隊されることとなった」
が、ゼートゥーアの一言でターニャの動きは固まった。か、解隊??
「もともと実験部隊的な面が強かったものでな。私やルーデルドルフは無論反対したが………」
しかし、
「まぁ、彼らの言いたい事はわかる。あまりにスタンドプレイすぎたからな?少佐」
多少非難のこもった口調で言われるが、しかしターニャは猛反論する。
「お言葉ですが閣下、あそこでド=ルーゴ将軍を叩いておかねば重大な禍根となりましたでしょう。小官は僭越ながらそれを危惧し、あえて独断で実行したので……………」
「分かっている分かっている。確かにあそこで彼らを取り逃していたら多少面倒なことになっていただろうな。少なくともあの時分かっていたのは貴様だけだったから、そうはならずに済んだが…………」
しかし、ダメなものはダメだ。特に問題視されたのが
「参謀本部直属である事?ですがそれは………」
「ああ、柔軟な運用の為には必要不可欠なものだ。が、最高統帥会議の間抜けどもは全く別のことをお考えなのだ。—————参謀本部の、クーデターを」
開戦以降、
「203大隊は、参謀本部が一人で使うには余りに強力すぎる
しかしそれは、あまりに侮辱が過ぎる。
「今は、従おう。共和国は倒れ、既に残るは海軍以外に見るべきものの無い連合王国のみだ。彼らの言う通り203魔道大隊は無用の長物となったのかも知れん。だが」
—————いずれ必ず、再編する。何故ならば、いずれ必ず、必要になるからだ。
「………些細了解であります」
「うむ、辞令の詳細は後日連絡されるだろう。では、行ってきたまえ少佐」
ゼートゥーアはそう言い、静かに葉巻を吸った。その表情は、いつもの無表情だ。だが、ターニャにはどこか…………
「…………どうした」
「いえ、何でもありません。それでは小官はこれにて失礼させていただきます。…………いずれ、また」
静かに頷くゼートゥーア。敬礼し、ターニャは踵を返す。そのまま参謀本部を出て、行かねばならぬ場所へと赴く。
「…………と、言った手前アレですが、出来れば二度と、少なくともこの戦争が終わるまでは、帰ってきたくないな」
よーし待っていろ日本、もとい秋津洲皇国!
他人の目からは左遷でも、幼女にとっては紛れもなく栄転であった。
※
同年同日
帝都ベルン郊外駐屯地
解隊式は、恙無く進行した。この後直ちに出発しなくてはならないターニャにとっては、実にありがたいことだ。
もっとも、これは流石に予想外だったが………
「大隊長ォォォォォォォ!!どうかお達者でッッッッ!!」
「実に短い……思えば呆気ないものでしたな………」
「ウウッ、グス………ヒック」
「「「少佐殿、万歳!大隊長、万歳!!」」」
ヴァイスが、ケーニッヒが、グランツが、203航空魔道大隊のあらゆる男たちが、叫び、泣き、大騒ぎしていた。
いや、お前たちそんなキャラだっけ?と思わずターニャが口走りそうになる程、少々妙な光景だった。泣き喚く部下たちと話し、何故か皆に胴上げされ……………
結局、ターニャがその場を去ったのは、式自体が終わってからだいぶ経った後だった。もみくちゃにされた軍服の乱れを直しつつ、付き従うヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉にボヤく。
「いやはや………こう言ってはなんだが、そこまで大騒ぎする話か?組織にいる以上異動なんて腐るほどあるだろうに」
するとヴィーシャは一瞬驚いたようにターニャを見て、そして苦笑いした。
「あはは………まぁ、凄い所でしたからね…………一年と少しでしたけど、凄い濃い日々でした」
「いつも最前線だったからな。しかし、それだとむしろ解隊されて喜ぶんじゃないか?」
が、ヴィーシャはその問いに首を振った。彼らはそもそもそう言う人種ではない。
「“わずかな報酬、剣林弾雨の暗い日々、耐えざる危険、生還の保証なし、生還の暁には名誉と賞賛を得る”………彼らはそれを望んできたんですよ?しかも、共和国の撃滅という至上の名誉を得られた訳ですし」
それは建前だろ……?となおもターニャは半信半疑だったが、しかし当のヴィーシャ自身がそう信じている様だったので、特に何も言わなかった。それより、彼女には言っておかねばならぬことがある。
「…………ところで少尉、済まなかったな。だが、もう変えられん。恨むなら……まぁ軍隊を恨め、というところだな」
「あはは……いえ、大丈夫ですよ。なにより少佐にそこまで信任していただけるとは光栄です」
特になんとも思っていないようだ。思わずターニャは安堵のため息をつく。もし彼女が本気で拒否してきたら、流石に変えるつもりだった。なにしろ
「それにしても、秋津洲皇国ですかー。どんな所なんですかね?」
彼女を副官として、遥々地球の裏まで連れていく、と言っている訳なのだから。
「列強なのだから、文明国ではあるだろうよ。なにより戦場ではあるまい……着くまでは、どうか分からんがな」
「あ………そうでしたねー」
そう。唯一の懸念、それは…………
一抹の不安を抱えたまま、二人は出発地たる旧フランソワ共和国軍港、ブレストを目指す。
※
同年7月某日
旧フランソワ共和国西部 ブレスト軍港
一ヶ月前にも“訪れた”そこは、すっかり様変わりしていた。
「あれは………Uボートブンカーか。友軍ながら仕事が早いものだ………」
港湾の至る所を埋め尽くす分厚いコンクリートの塊。帝国海軍の切り札たる、
やがて、無数のドックのうちの一つにたどり着く。そこには、一人の男が立って待っていた。
「ようこそ、デグレチャフ少佐。御噂はかねがね聞いておりますよ」
ヨレヨレの海軍将校服に身を纏い、深いクマのある瞳、顎を覆う無精髭。それはまるで………
(『Uボート』の艦長か!うーん、前乗った艦はそんなでもなかったんだがなぁ)
「いえ、我々も日々潜水艦部隊の勇猛さを聞き及んでおります。えー……」
「ハインリヒ・レマーン少佐です。なに、皇国まですぐにお届けしますよ」
その後、挨拶もそこそこにターニャらは艦長に先導され、ドックに眠るUボートへと入っていく。艦の名は『U69』。いよいよ完全に映画Uボートの世界である。
ターニャはこれまでも何回か潜水艦に乗っている。が、それは全て帝国近海を、しかも百戦錬磨の203の部下たちと一緒であった。が、今回は違う。
「…………大丈夫ですかね、こんな長距離を単独で移動するなんて………」
ヴィーシャが不安そうに言う。が、ターニャにだってどうすることもできない。すると、どうやら聞こえていたらしい艦長が、苦笑いしつつ言う。
「ハハハ……まぁそれは神のみぞ知る、と言うやつですな。なんだったら祈ってみては?」
祈る!冗談じゃない!!ターニャは思わず口をへの字にする。隣のヴィーシャも似たような顔だ。さりとて、どうにかなるわけでもないが………
そして、二人を乗せた潜水艦は出発する。目指すは遥か彼方、極東は秋津洲皇国。そこには長年夢見た平和な後方生活が待っている!
まぁ、辿り着けたらの話だが…………………
《原作からの変更点》
・ブレスト軍港襲撃
原作ではあと一歩のところで止められた襲撃作戦ですが、このSSでは成功しています。それにより共和国軍残党はほぼ壊滅し、南方大陸に逃げた兵力も微々たるものになっています。ド=ルーゴ将軍?さぁ、死んだんじゃないですかね?
・第203航空魔道大隊
解隊されてしまいました。理由は本文中の通りです。解隊後は、各地の部隊にバラバラに編入されます。彼らはそこでエースオブエースになっていただきましょう………
こんな感じですかね?なんか疑問点等あれば感想欄にでも書いてくださいな。出来る限り対応する方向で調整し検討いたします……
次話も今日中に……投稿できたら…………いいな…………………
定期投稿の時間調査(投稿してほしい時間に投票してね)
-
00時00分(夜中)
-
12時00分(昼)
-
19時00分
-
その他の時間
-
何時でもいい