それでは本編スタートッッ!!
統一暦1926年4月20日 午前
皇都東京 参謀本部
「このままでは終わらん………………我らの悲願はッ!」
目を血走らせ、髪をかきむしり辻本は叫んだ。あの後どうにか作戦を“無かったこと”にする事に成功したが、辻本にとってはそんな事は何の慰めにもならなかった。
…………だが、まだ何とかなる。聞けば、連邦軍は当初は順調に侵攻していたものの、体勢を立て直した帝国軍の大反攻により壊滅状態に陥りつつあるという。そこへ、皇国が奴らの脆弱な背後を突ければ…………
「………………ならば、南方はもはや捨て置く。陽動なぞ要らんわ直ちにッ!攻撃をすべきだ!!」
辻本はそう言って立ち上がり、すぐに次長室へと向かう。何、そもそも本命は対連邦戦だ。既に奇襲作戦の概要は作られており、その気になれば今月中にも作戦開始できるだろう………………
が、彼の決断は、とんでもない凶報によりまたも頓挫する。
「—————辻本参謀殿!!き、緊急事態ですッッ!!」
部屋を出ようとしたその瞬間、扉を蹴破るようにして入ってきた部下。何事かと辻本は苛立たしげに言う。が、震えながら渡された電報に、彼の表情は
真っ白に漂白される。
「……………………………な、なんだ、これは。これは何だッッッッ!!!!」
彼の怒声は、部屋のガラスをも震わせるほど強烈なものだった。だが、彼の驚愕はそれすらも遥かに凌駕していた。
「“………南方派遣軍ハ対共和国奇襲作戦ヲ敢行シ、目下快進撃中ナリ。敵主力兵力ハ壊滅。既二我軍ヲ妨グル物皆無デアル”………………ど、どこの誰だこんな、こんなたちの悪い悪戯をした大馬鹿はッッ!!」
「そ、それが…………」
頼むから悪戯か何かであってくれ。辻本の願いはしかし、次から次へと入ってくる続報に、無残にも打ち砕かれる……………
「ど、どうして……………こうなった………………………?」
※
同年同日 同刻
フランソワ共和国南方植民地ヴィエット 首都ユエ
「くはははは!はははははは!!痛快、痛快!皇軍は世界最強なりィィィィィィィィィッッ!!」
かっぱらった植民地総督専用車に乗り、ふんぞり帰りながら全ての元凶は笑う。そこへ、実に優秀なる彼の部下の車が近づく。
「田口閣下!本国との通信が復旧いたしました」
「おおっ!そうかそうかよくやった、よぉーし、では英雄の凱旋といこうか!!」
……………………一体何をどうやって、彼らは50倍の大軍相手に完璧な勝利を得たのか?
彼らの正式名称は、『南方派遣軍』。彼らが一年前の8月、つまり共和国との間での条約締結後直ぐに編成され、ヴィエットに送り込まれた部隊であるとは先に述べた。
が、その実態はとても『軍』などと言って威張れるような代物ではない。総兵力はたった1000人ほどであり、連隊にすら及ばない。
…………しかし非常な幸運により、属する全ての兵が、士官が長年続く『北方紛争』を経験した古参兵であり、かつ体面を保つため装備はほとんど最新鋭のものを、しかも豊富に———過剰とすら呼べるほど、身につけていた。
さらに……………参謀長岩倉秀雄大佐という傑物を抱えていたことも大きい。彼は皇国陸軍きっての秘密工作のスペシャリストであり、奇襲前後に共和国軍に対する工作を開始。そもそも共和国軍、といっても彼らの殆どはヴィエット人たちである。フランソワ人の多くは対帝国戦に駆り出され、残っている僅かな兵も実戦など経験したこともない二線級の凡夫ばかり。
彼のやった事は単純明快。ヴィエット人の離反誘発である。彼は着任時より有事に備えヴィエット人に近づき、甘い毒を垂れ流していた。————もし、この状況が嫌なら皇国に味方せよ。同じ人種のよしみで諸君のための独立国を作ってやる、と。
結果奇襲開始後すぐにヴィエット人兵士らは離反。さらに反共和国一斉蜂起も多発し、僅か二週間足らずでヴィエット全土は皇国軍の手に落ちた。
後にこの事件は、“東南事変”と呼ばれることとなる。
彼らは勝った。しかしこの勝利が、田口にとって、そして皇国にとって良いものだったかは
誰にも、分からない。
※
統一暦1926年4月30日
陸軍航空士官学校 練兵場
「………………ふむ、かなり良いぞ諸君!これならば203でも補充としてなら役立つだろう!」
何故か、実戦訓練すらも受け持つ事になったターニャが、空中で怒鳴る。その眼下では、死にかけの学生らが最後の力を振り絞り懸命に逃げ惑っていた。
「いやいやいや!ちょっと待ってくださいよ教官ッッ!それ
あまりの厳しさに、学生の一人が叫んだ。が、たちまち彼の周りにターニャのぶっ放した魔力弾が飛来。
「ハハハ諸君らにはこれが実弾に見えるか!なーに安心したまえ、203の時ならいざ知らず、今は無論演習弾だとも。…………………まぁ当たっても無事とは言わんが」
あまりの理不尽さに、もはや言葉もなくただ阿鼻叫喚に逃げる学生。だが、じきにブチ抜かれるのは容易に想像できる。
な、何か起きろ!アクシデント!!
………………………と、
「あーはっはっ……………………ん?あれは……………」
地面で、何かを叫ぶ人の姿。見るとそれは
「ヴィーシャか?どうした!なにがあった?!」
演習を中止(学生ら歓喜で墜落)し、地面近くまで降りる。すると副官は慌てたように言った。
「それが……大使館から緊急の連絡が入りまして……………」
「なに?……………これは」
ヴィーシャが差し出したそれは、
「…………分かった。………一同、傾注!!」
ぶっ倒れていた学生らが、その声で飛び上がる。そのまま刷り込みか何かのように整列し、直立不動になった。
「すまんが、急用ができた。そこで………………」
「演習中止でありますか!!それは、良か———————」
「無論、
思わず叫んだ学生を、実にいい笑顔で見て、ターニャは告げる。
「———————喜べ、雪辱戦だ。ヴィーシャ、後は頼む」
「え、は、はい!」
絶望……………ッッ!!顔が死んでいく学生らを、可笑しそうにに眺めた後
ターニャは征く、彼女の新たな
そして、全ての役者が揃い、今
謀略合戦は、クライマックスを迎える—————————
田口将軍…………すげぇ豪運。1対50の戦力比で勝利した近代戦って、あるのか??一応満州事変は1対45だった気がするが………………
そして学生たちの雪辱戦(雪辱できるとは言っていない)!が、学生たちは勝てるのか?!
さて、次話でついに“北方派”と“避戦派”の直接対決です!もっとも、議題は彼らの想定外の事ですけど………
で、どうもシナリオ考えていくと、第三章はこれまでに比べやや…………いやかなり、話数が多くなりそうです。まぁ、だからなんだという話ではありますが………
それでもなんとかだらけないように考えていきますので、今後もよろしくお願いします!
次話は………
定期投稿の時間調査(投稿してほしい時間に投票してね)
-
00時00分(夜中)
-
12時00分(昼)
-
19時00分
-
その他の時間
-
何時でもいい