幼女極東戦記   作:信濃氷海

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ギリギリですが、しかし平均すれば多分いつもこのくらいでしょう。控えめに言ってセーフですね。

それでは!第三章ラストです本編どうぞ!!!


第二十一話 終わりの始まり

統一暦1926年5月25日 午前

青森県 酸ヶ湯温泉付近

 

 

「はっはっは!!どうしたどうした!そんな遅さでは年が暮れるぞ!」

 

 空に浮かび、からからと笑う幼女。実に年相応で可愛らしいが、

 

 

 

 

 

 ()()しながら見るとただの悪魔にしか見えない。

 

「お慈悲を!お慈悲を!!」

 

「て、天は我らを見放した!!」

 

「馬鹿ッ!大声を出すな雪崩が起こるぞ!」

 

 地面では、穴吹ら学生たちが這うようにしてなんとか行軍していた。もう5月も下旬というのに、ここ酸ヶ湯では未だ数十センチもの雪が残る。気温も零度前後と低く、少しでも気を抜けば即脱落である。脱落後?恐ろしすぎて考えたくもない…………

 

 …………だが、ターニャにしてみればこの程度ヌル過ぎてお話にならない。かつて203大隊を創設したときは、厳冬期のアルペン山脈に最低限以下の装備で放り込んだのだ。まぁ、あの時は音を上げさせてリタイアさせるのが目的だった訳だが…………

 

 それに対して、今回は別に何も懸案事項はない!ただ、彼らを程よく養成すればいいだけなのだ。必然的に待遇も良くなり、ターニャの心持ちも軽くなる。

 

 冬季ですらない、初夏!雪はまぁ()()は残ってはいるが誤差の範囲だろう。装備も十分さらに!今回は演算宝珠の使用も認めている!無論過剰な多用は“()()”案件だが。

 

 いやはや、それにしても平和とは良いものだ!

 

「少佐、予定より一時間ほど遅れていますが…………」

 

「ふーむ、多少の誤差は多めに見てやろうと思っていたが、それでは仕方あるまい。………ヴィーシャ、やるぞ」

 

 そう、副官に声をかけ、

 

 ライフルに術式を充填。しかしぶっ放す前に警告もしてやる。何という甘さ!!だが他国の貴重な士官候補生を、無意味に傷つけるわけにもいかんしな、とクールに配慮も忘れない。

 

 そして、ライフルの照準を合わせながら、ニヤリと笑い言い放つ。

 

「さて、一時間もロスした間抜け諸君。———————————ペナルティだ」

 

 

 …………………その後どうなったかは、学生たちは頑として語ろうとしない。ただ、行軍演習報告書には一言こう書かれている。

 

 

 

 “行軍は、万事成功せり”

 

 

 

 

 ………………まぁともかく、ターニャは極めて充実した教官生活を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同年同日 正午

皇都東京 水交社

 

 

「がーはっはっは!ロイヤルストレートフラッシュだ残念でしたー!!という訳でこいつは全部俺が持っていくぜ」

 

 海軍将校の集まるそこで、山野は昼間っからポーカーで士官たちの有り金全部巻き上げていた。海軍大臣になったというのに、彼の賭博狂いは治るどころかますます酷くなっていた。ある士官曰く、海軍省の職員の九割は山野に借金があると言うが…………

 

「………………お楽しみですな、大臣」

 

 と、そこにゆらり、と現れる一人の将校。海軍軍務局長、井田成吉中将だ。その姿を見るや否や山野の顔が引きつる。

 

「い、井田………いいだろお前昼休みだぞ!!……………あ、いえすみませんすぐ終わりにするんで許して下さいこのとーり!」

 

 最初は強がって追い返そうとするも、井田の鋭すぎる視線にあっさり負けてヘコヘコしだす。その後ろ姿は、とても一国の大臣に見えないほど哀しみに満ちている………………

 

 が、井田は溜息をつくと案外優しい声で言った。

 

「………別に構いませんよ。そうではなく、離任のご挨拶に参りました」

 

 それを聞くと、山野はハッと顔を上げ、しばし黙って井田の顔を見つめた。やがて、静かに、少々寂しそうに言った。

 

「そうか……………今日、か。確か次は、4F(第四艦隊)の司令長官だったか」

 

 そして、山野は井田の手を取り固く握り、餞別の檄を飛ばす。その表情は、二人ともすっかり爽やかなものになっていた。

 

「貴様にこんな事を言うのは無用だろうが、達者でやれよ井田!」

 

「ええ、大臣もどうか頑張ってください。まだ、陸軍の一部に不穏な動きが残っておりますし」

 

 ……………そして、二人は、幾千の修羅場を乗り越えて来た()()は、一度分かれる。無論、(井田)にはいずれ必ず中央に戻ってきて貰うつもりだが………

 

 山野にとって、井田はいわば懐刀のような存在だった。いや、それどころか巨大な太刀か、あるいはそもそも自分の方が、彼に使われる小刀程度だったのかもしれないが。

 

 “北方派”やらマスコミやらは、山野こそが“避戦派”の首魁、ボスだとでも思っていたようだが、実は全く違う。山野に言わせれば、軍務局長であった井田こそがその最も強硬な中心人物であり、自分は彼の戦略に沿って動いていたに過ぎない。もっとも、彼は表に出たがる人ではないのでそれを知る者は海軍内の一部しか知らないが……………

 

(まぁ、もう大丈夫だろう。井田も中央勤務が長引いていたからな、たまには潮風を浴びてきた方がいい)

 

 山野は、再びポーカーに興じながら考える。そう、既に皇国の方針は決した。もはや“北方派”が何を画策しようと南方進駐は、どんな形であれ不可能になり、田口将軍麾下の南方派遣軍も順次撤退を始めつつある。

 

 対連邦戦も、今ではそれを唱える者は殆ど居なくなった。この一連の事件の後、皇国全体はあらゆる軍事行動に対し消極的になっていたのだ。

 

 まぁ、それでもごく一部で依然強硬論を主張し続ける人々も居ることは居るが、山野としてはそこまで徹底的に槍玉にあげるつもりはない。彼は(色々言いたいことはあるが)基本的に民主主義者であり、これ以上は言論統制になりかねないと考えていたのだ。

 

 第一、こちらが戦争を望まなければ、戦争など起こる筈もないだろうに!

 

「だ、大臣それ………………」

 

「…………ん?!かかか、なんとなんとまたもロイヤルストレートフラッシュじゃあ!!俺の博打力って、すげー」

 

 ………再び賭博に熱中する彼は、最早戦争についてなんら危機感を抱いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 彼と、ターニャの考えは完全に一致している。領土問題も、その他の係争も無く、しかも自分たちが戦争を望まないなら、それはすなわち“平和”である、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………本当に、そうなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「号外!号外!!」

 

 

 

 

 それは、一週間後の事であった。

 

 

 

 

「合州国が緊急声明!!とんでもないことが起きたぞ!!」

 

 

 

 

 駅前で、ばら撒かれる号外新聞。

 

 

 

 

 そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『—————————合州国、皇国との通商条約破棄を通達』

 

 

 

 彼女ら(ターニャ)には理解不能な事が、書かれていた………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隣人を愛しても、隣人が汝を愛するとは限らない—————

 

 

 第三章 完

 

 

 

 

 

 

第四章予告

 

 

 かくして

 

 

「…………こんな交渉に意味なんてあるか!!」

 

 

 幼女は

 

 

「狂ってるよ、こんな事は」

 

 

 ついに

 

 

「………………もはや、これまでだ」

 

 

 覚悟を

 

 

「総員準備完了!いつでも、征けます!!」

 

 

 ——————————決める

 

 

 第四章、近日開始

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………臨時ニュースを申し上げます、臨時ニュースを申し上げます。皇国海軍は————————』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい第三章終了ッッ!!いやーこの章はなかなか書いていて楽しかったです。次章もそうだといいな………

勝利したと思ったら斜め上のどんでん返し!!ターニャもつくづくツイて無いというか、呪われているというか………

あ、あと改めて言っておくとこの作品では、あくまで“モチーフ”程度なので史実とは人事・階級等かなり変えています。そこは御容赦下さいお願いしますこのとーり土下座

次は、前も言ったように幕間ですよ、幕間!!その次も、次の次も幕間ですあいあいあーい!(意味不明)

次話もとい次の幕間は、明日の夕方までにはら必ず…………ッ!!

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