それでは!幕間どうぞ!!
統一暦1926年4月3日 午前
皇都東京 上野 高級雀荘『清一色』
……………いつになく深刻な表情の山野。その向かいには、完全に無表情のヴィーシャが座っていた。
二人の注視する先、そこには———————
「…………“是れやこの、行くも————」
「獲ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
バシィッッ!!!!
「くっ、ぐぬぬ……………」
「なぁ…………これ「早よ次ィィィッッ!!」……………わが庵は、都の—————」
「はいっ!!」
バシィッ!!!!
「ぐあぁッッッッ!!」
「いやこれなんか違くない?!?!」
堀内、ついに我慢できずに叫んだ。だって、だってこれは……………
「百人一首じゃねぇか!!博打じゃねぇだろこれは!!」
魂からの叫び。しかし、ヴィーシャと山野は何言ってんだこいつとばかりに首を傾げる。
「……………は?いやいやお前の目は節穴か??これは博打ですええ勿論」
「嘘つけぇぇぇ!!百人一首で博打なんぞ聞いたことないわ!!」
だが、山野は真顔で堂々とのたまう。
「カードを使えば全て博打」
「とんでもねぇこと言い出しやがったよこいつ?!
そこへ、更にヴィーシャが加わりまさに混沌。
「そうですよー、今は片腕一本ずつ賭けてるので、早く次読んでください!」
「重くない?!なにそれ闇深すぎだろ!!」
…………………と
「おまっせしぁったー、一番個室ヴィーシャ様ー、ご注文のビフテキ、牛丼、炒飯、鍋焼きうどんっすー」
「あ!ありがとうございまーす!」
なんか、とんでもないものが運ばれてきた。一瞬にして山野と堀内の目が点になる。
「……………あの、ヴィーシャ、サン?」
「?どうしたんですかー?」
割り箸を綺麗に割り、実に器用な手つきでそれを持って、さぁ食べよう!としているヴィーシャがこてん、と首を傾げた。そのあまりに堂々とした態度に、山野らの声も尻つぼみになる。
「い、いや…………よく、食べるんスね」
「いやー、全然ですよー。203………いえ以前はこの倍は食べてましたから」
「「ばっ、倍?!」」
それじゃ、いただきまーすと嬉しそうに食べ始めるヴィーシャ。それを、何か恐ろしい怪物でも見るかのように眺める男二人。が、結局
「……………俺たちも、食うか」
「ああ…………」
……………量はともかくとして、二人も腹が減ったらしい。
※
同年同日 昼過ぎ
同場所
「いやー、ここの料理すっごく美味しいですよねー!」
「あ、ああ確かにそうだな」
満足満足、とにっこり笑顔のヴィーシャ。それを、未だ恐々とチラ見する山野。側から見ると実に珍妙な光景であった。
「……………あ、そうか。ヴィーシャ、いいか」
「?…………!はい」
この時、堀内はちょうどこの場にいなかった。彼はよせば良いのにヴィーシャに張り合い、結果食い過ぎで(以下検閲済)
………………まぁ、お手洗いである。そのため、ここには山野とヴィーシャの二人しかいなかった。
その隙に、山野が
「………いつもの通りだ。必ず、これをデグレチャフに………」
「ええ…………勿論です」
そう言って頷くヴィーシャ。だが、その表情はどこか浮かない。
「……………不満か?」
それを見て、何かを察した山野。彼も、職責上こういう表情はよく見てきていたのだ。
故に、助言できる。
「いえ!そんな、私は別に不満なんて……………」
即座に否定するヴィーシャ。そう、確かに明確な“不満”はないだろう。だが……………
複雑なのだ、彼女は。
無論ヴィーシャも納得している。これは、極めて重大なことだから、自分に知らされるはずがないと。
ただ、それですんなり割り切れるならこの世界はもっと簡単になっているだろう。山野は煙草を咥えながらぼんやり思った。彼女の気持ちは実によくわかるし、恐らく彼女の立場なら、山野もそう感じただろう。実に、当たり前の悩みだった。
それでも、言わなくてはならない。問題の一端にいる者として、これだけは、せめて。
「……………許してやれよ」
その一言に、思わずヴィーシャは顔を上げ、山野を見た。彼は、どこか諭すように、どこか詫びるように続けた。
「別に、上司とか上官だから、ってことじゃない。…………………
タバコに火を付ける。やれやれ、こんな臭いことを言うようになるとは………堀内が聞けば爆笑するだろう。だが………
「でも、な。お前たちは“戦友”だろ?俺は欧州で何があったのか、断片的な情報でしか知らないが、それだけは分かる。だから、今は汲んでやれ。………お前さんも、部下を持てば分かる」
まぁ、分からない方が人間としてはずっと良いのだろうが………紫煙を吐き、自嘲する。
そして、絶妙な助言を得たヴィーシャは————————
「……………いえ、そうではなく。私は少佐殿が山野閣下と密通している、という事に不信感を………………」
「あ、そっち?!」
いやまぁそりゃそうだ!自分の知り合いが、他国の如何わしいおっさんとこそこそ文書のやり取りしてるとか怪しすぎィッ!!不倫?禁断の恋??スパイ行為???全部アウトだ馬鹿もん!!
………………結局、どうにか堀内がトイレから生還するまでには、山野はヴィーシャを(まだ微妙ながら)納得させることに成功した。だが、最後に
「もし少佐殿に変なことしたら……………
にっこりと、実に可愛らしい笑みを浮かべ、親指で首を掻っ切る仕草。山野はただ、顔を青くしてカクカク頷く他なかった…………………
「………なんだなんだ?修羅場か??」
「う、うるせぇゲ◯野郎!!」
※
同年同日 夜
陸軍航空士官学校 宿舎 ターニャ寝室
「……うむ、確かに受け取った」
そう言って、ターニャは封筒を受け取る。一仕事終え、ヴィーシャもほっと一息だった。
それではおやすみなさい……とターニャの部屋を辞そうとすると、ああ、ちょっと待てとターニャに呼び止められる。
「??どうされましたか?」
「ああ…………確か、ヴィーシャ。君は今日——————誕生日だったな?」
ドキ、とする。いや、確かにそうではあるが……………まさか
「まぁ、つまらん物だが…………
そう言って、渡されたのは…………………………
「こ、これは…………………麻雀牌セット?」
「ああ……………この前欲しいと言っていただろう?」
確かに、言った。だが……………
まさかターニャが、ヴィーシャの誕生日を覚えていて、しかもプレゼントまでくれるとは!!ヴィーシャは驚き、そして感服した。
……………ああ、少佐殿と“戦友”で良かった。彼女は心底そう思った。故に…………
(付いていきます……………どこまでも!)
副官として、戦友として———————————!
「…………あれ?これ、もしかして——————ガラス?」
「そんな訳ないだろう。オーダーメイドの、天然水晶だ」
「……………………あの、相手からも見えちゃいません?」
「?…………………以前山野閣下と打った時は何故か違ったが、しかし普通の麻雀は、そういうものだろう??」
「「????」」
ターニャ…………相手の血液抜いて廻る気かい?
ともかく、これにて第三章完結です!!次回からはいよいよお待ちかね第四章スタート!!いよいよ、“アレ”が、始まる…………ッ!!
次話は………明日の夕方ですねこれは多分間違いない
《追記》
書き忘れてましたが、今話でヴィーシャを捏造しちまいました。原作公式じゃないですよ間違えないでね!でもこの小説ではヴィーシャは4月3日生まれということで……
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