幼女極東戦記   作:信濃氷海

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はやめにできたです。合掌。


それではほんぺんどうぞ


第二十四話 窮鼠猫を燃やす

統一暦1926年6月10日 午後

皇都東京 麹町 石渡邸

 

 

「—————おお、そうか!分かってくれるか!!」

 

 やはり君は真の軍人である、とか、最初から君に積極的に近づいておけばよかった等々……………だが、無邪気に喜んでいる石渡には悪いが、しかしターニャの真意は全くそんなものではない。

 

 単純に、もうこうなるとターニャ個人ではどうにもならないからだ。今日、皇都に来た理由もこの事について山野と協議するためであったが、しかしあまり有意義なものではなかった。相手が全くの第三国である以上、あくまで帝国の外交官でしかないターニャにできる事などほぼ無いと言って良い。

 

 故にターニャは選択する。自らの意見を強く持つことは大事だが、それに固執しすぎるのは無能のやることだ。素早い取捨選択は社会人の基本…………!

 

 この辺りは、まさに彼女が軍人の道を選んだ時に酷似している。ターニャにとっては至極論理的なものであったが、周囲にとってはあまりに突飛なものであり、故に帝国時代は様々な誤解を招くこととなったが…………

 

 しかし、ともかくも彼女は決意した。不意打ちで流され、戦争に巻き込まれるよりも、自らの意思で主導権を握ってやる、と。

 

 ただし、その為には絶対必要な前提条件があった。

 

「ですが、いくつかの条件があります」

 

「…………おや、なんだね?」

 

「まず一つ、戦争目的の明確化です。古来より、目的なくして勝利し得た例は存在致しません」

 

 そう、前世では、日本は致命的な事にそれを持たずに戦争を突入したのだった。“短期決戦”という手段は上から下まで共通して一致していたが、しかしならばどうすれば勝利なのか、については終始あやふやなままであった。

 

 それで勝てるわけが無い。少なくとも、どの段階で、どの程度の条件により講和するのかを決めておかねば、戦争をしたところでその行末は“敗北”に固定されたままだ。

 

 ターニャの問いに、しかし()()()にも石渡はすらすらと答えた。

 

「うむ、実に的確な指摘だ。無論考えてあるとも。まず基本的には、例の三条件及び通商条約破棄の撤回。だが、それが全て可能になるほど合州国を追い詰められるとは、私とて考えておらん」

 

 そのため、実際には一定程度———皇国本土の市場開放、関税率低下交渉の実施等———の譲歩をした上での講和打診となるだろう。

 

 そして、そのために必要なのが………………

 

「一撃をもって合州国戦意を撃滅すること、これだ」

 

 即ち、開戦と同時に合州国の主要拠点を奇襲殲滅し、合州国世論に「皇国侮り難し」と言わせれば、

 

 さしものデラヴェルト(合州国大統領)も、講和に応じざるを得なくなる。

 

 ………………ターニャも、概ねそれに賛成であった。と、言うより全てに劣る皇国の、唯一の活路がそれな訳だ。しかし、一点のみ気を付けねばならない事がある。

 

「ええ、それが良いでしょう。ただ、一つご忠告申し上げたいのが——————絶対に、宣戦布告が遅れてはなりませんぞ」

 

 宣戦布告前の奇襲、それは単なる逆効果にしかならない。“リメンバー・パールハーバー”なぞ、今世では断固として御免であった。

 

「無論。だが、言うは易しだ。それについても、じっくりと考えていかねば、な……………」

 

 …………………石渡とターニャ。二人の傑物は、かくして試行錯誤を始める。軍事的に、いかにして()()()()()()にするかについてを……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————————そして、運命の

 

 

 

 

 

 半年後が、やってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

統一暦1926年12月7日 早朝

フィラデルフィア合州国 首都ワシントン ホワイトハウス

 

 

「実に、素晴らしい!諸君、朗報だ。哀れな皇国が遂に動くらしい」

 

 巨大な会議室。その奥で、車椅子に座り一通の書簡を読んでいたデラヴェルトはそう言って笑った。

 

 書簡は、国務省から送られてきたものであり、その内容は

 

 

 ————皇国、対合州国宣戦せり

 

 

 という、()()調()()のものであった。まぁ、国務省は多少動揺していたが、しかしデラヴェルトに驚きはなく、むしろ安堵感すら感じていた。

 

 そして、デラヴェルト同様()()を待ち望んでいた閣僚らも口々に喜び合う。

 

「いやぁ、思っていたより粘りましたな。しかし、猿が律儀に国際法を守るとは全く驚きです」

 

「そうですなぁ。まぁ、立派に芸をしたのだから、褒美の餌程度はやらねばなりませんな。どうです?戦後の扱いを多少良くしてやっては?」

 

「ふむ、確かにそうだな。その方が合州国の評判的にも良かろう。何せ、我々は帝国とか言う悪魔とは違うのだからな」

 

 彼らの様子を見ながら、デラヴェルトはにっこり考える。少し早いが、チャーブル(連合王国首相)への良いクリスマスプレゼントになった。何せ、これを口実として連合王国への支援を加速できる。そしてその見返りとして、合州国は戦後彼らのアジア植民地を頂く、という訳だ。まさにWIN-WIN!

 

 それに、とデラヴェルトはコーヒーカップに口を付けつつ思う。軍事独裁に苦しみ、又野蛮国家になりつつある皇国を、救ってやらなくてはならないからな、と。

 

 …………石渡は、概ね合州国の思惑を見抜いていたが、しかし一つだけ見抜けなかったことがある。それが、この合州国独特の“正義感”である。

 

 かつて、皇国が“武士”とか言う時代錯誤の封建制度に支配されていた頃、合州国はそれを哀れに思い“文明”を与えてやった。その結果、皇国は飛躍的に成長し、実に良く“文明化”された。が、ここ最近再び“野蛮”になりつつある。それを、“正義の国”合州国が止め、苦しむ民衆を助けてやらなくてはならないのだ———————皇国から見れば余計なお世話以外の何物でもないが、しかし合州国では、驚くべき事にそれをすっかり信じ込んでいる者が実に多くいた。

 

 更に、それに拍車をかけたのが駐皇国大使グルースの密書だった。彼は、“合州国きっての親皇国派”と自称し、実際にも多くの皇国人の友がいた。が、その多くは“避戦派”と呼ばれ、かつその中でも積極性の欠けた日和見的な人々であった。

 

 ………彼らは、グルースに日頃の鬱憤とばかりに陸軍……及びその“北方派”についての悪口を言い、吹き込んでいた。それに加え、先日の『東南事変対策会議』である。臨席していたグルースは、そこで“北方派”の軍国主義的思想に恐怖し、そしてそれ以上に彼等すらも即座に平伏し従属する“皇王”という存在を、極めて危険視したのだった。

 

 ————もし、皇王が戦争を望めばすぐにでもそうなるだろう。この国は、合州国にとって害悪である。

 

 グルースはそう断じ、早期の“対処”をデラヴェルトに迫ったのであった。無論デラヴェルトも常日頃より皇国を疎んでいた為、一も二もなくそれに飛びついたのだった。

 

 こうして、遂に皇国を暴発させる事に成功した合州国。世論も、以前より行っていた誘導工作により概ね開戦を支持する声が多数を占めている。皇国は、小賢しくもそれを変えようとなんとか頑張っていたようだが、考えが浅い。もっと莫大なカネを、あらゆるマスコミに、継続的にばら撒き続けてようやく世論は誘導できる。もっとも選挙戦をそれで勝ち抜いたデラヴェルトにとっては朝飯前の些事であったが。

 

「さて、ここからの仕事はスチーム(陸軍長官)ノークス(海軍長官)、君たちの手に移った。私は君たちが、帝国の如き圧倒的な勝利を得られると信じているよ」

 

 デラヴェルトは臨席する二人の長官に笑いかける。このあたり、どうも大層ないつくもの理由以前に、デラヴェルトはただ帝国軍のような軍事行動を真似したいだけのようにも見えるが……………

 

「はっ、無論です大統領閣下」

 

「ええ、年越しは皇王の城を貸切で祝いましょうや」

 

 自信満々に答える長官二人。この瞬間、すべての閣僚の中で、合衆国軍が弱いなどと考えているものは一人もいなかった。皆、ノークスの冗談を笑いつつも、それが実現不可能であるとは微塵も考えていなかった。

 

 皇国など、劣等人種の小国だと信じ切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————そのツケが、暴風の如く彼等に襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「——————きっ、緊急事態ですッッッッ!!!!」

 

 突然、会議室に一人の将校が入ってくる。談笑していた閣僚らは、その不躾な男を冷ややかに見た。

 

「なんだね、騒々し————「そ、それどころではありません!!皇国が、太平洋全域で軍事作戦を開始しました!!」————そりゃあ、そうだろう。分不相応にも宣戦布告してきたからな」

 

 言葉を遮られた閣僚が、憮然として言った。だが、大統領としての勘か、デラヴェルトはポツリと聞いた。

 

「—————待て、今、太平洋()()と言ったか?」

 

 それは、おかしい。事前に流出した情報では、彼らはフィリピンあたりか、シンガポール要塞辺りを攻める事になっていた筈だが……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———はい!その中でも、()()()()()()()()と、()()西()()()において被害甚大との事です!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 過小評価の酷い代償が

 

 

 

 

 襲いかかってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同年同日 同刻

合州国西海岸 サンフランシスコ上空

 

 

「全く、結局はこうなるのか…………」

 

 至る所で炎上し、全ての軍事施設を吹き飛ばした後、ターニャはポツリとそう呟いた。

 

「いやったぞ!!ハハハ腐れヤンキーめ、思い知ったか!!」

 

「ゴールデンゲートブリッジ崩壊!崩れ落ちていくぞ!!万歳!」

 

「「「万歳!万歳!万歳!!」」」

 

 その周囲では、臨時に率いることとなった部下———皇国海軍陸戦隊の魔導師たち———が狂喜乱舞し、繰り返し繰り返し万歳を叫んでいた。

 

 そこへ、別働隊を率いていたヴィーシャがやってくる。

 

「しょ………ゴホン、()()()()!」

 

「おお、ヴィー………もとい()()()()、首尾はどうかね?」

 

 ………慣れない()()に苛立ちながらも、ターニャは戦果を尋ねる。すると、苦笑いしつつヴィーシャは答えた。

 

「万事完璧です。オークランド方面の軍事施設も概ね殲滅完了しました」

 

 ならば良し。ターニャはこれを作戦の完遂と捉え、部下たちに撤退を指示する。

 

「では諸君、もはや用は済んだ。帰って祝杯とでもいこうではないか」

 

「「「了解であります、大佐殿!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 欧州だけの戦争は、こうして世界に飛び火し、ついに

 

 

 名実ともに、世界大戦が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【速報】ついに開戦

はい、これでよーやく、よーーーーーやく“戦記”の始まりです。長い、長すぎる。まぁでも、これまでも議論という戦争とか麻雀という戦争とかしてたから多少はね?

次話からはちょっと時間を巻き戻し、ではどんな具合に開戦に行ったのか、皇国視点のものをお送りします。おたのしみに

次話?前回も行った通り、明日ですねこれは。おそらく、めいびー

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