ごめんなさい土下座
それでは本編っす…………
統一暦1926年12月9日
皇都東京 連合王国大使館
「国交断絶につき、諸兄の身柄を拘束させて頂く。交換船が出るまで、箱根でゆっくりされよ」
そう言って、外務省の職員が背後に控える憲兵隊に指示する。それに対し、肩を竦め大人しくする大使たち。……………だが、その直後外務職員が異変に気付いた。
「…………?!ウィンゲート武官は何処に——————まさかっ!!!!」
に、逃げられた……………だが、どうやって?!キッと大使クレスリーを見るが、彼は慇懃無礼に笑うのみ。
「く、くそっ…………何としても吐いてもらいますぞッ!!!!」
「ふふふ、無論どうぞ。……………まぁ、たとえ我々が何かを“
………………その丁寧なしかし容赦無い煽りに、職員の男は最早言葉とすら呼べない叫び声を上げ、その場にぶっ倒れた………………
そのころ、伊豆諸島沖数百キロの海上………………
「ぶえっくしょん!!!!」
「うわぁ?!…………ど、どうされたんで、ウィンゲート大佐」
乗組員総出での厳重な見張り。それは無論、“客人”とて例外では無い。艦長の横で私物の望遠鏡を覗いていたウィンゲートであったが、突然馬鹿でかいくしゃみを一発ブチかます。
「い、いや申し訳ない…………風邪かな?」
「そりゃヤバイですよ、ドレイク局長がまたぞろ嫌味言ってきますよ」
そりゃあ困るなぁ………………
「ッ!哨戒船だッ、急速潜航総員退避!!」
慌てて全速力で艦内に飛び込む。ハッチが閉じられ、海中へと間一髪逃げ込むことに成功した。
…………こんな敵の目と鼻の先をうろうろするなど正気の沙汰では無い。そう考えると、皇国がやってのけた事が如何にイカれているか分かる。
そしてそれ以上に恐ろしいのが、その膨大なリスクすら霞むほどの戦果!まったく、誰が想像したであろうか。
“極東の猿”が、あの巨大な合州国の、植民地を制し本土すらも汚されるとは!!彼らの企ては、完璧に成功したのだ。
ただ……………
(…………………確かに、今の合州国の世論ならば、講和を容認するだろう。そりゃあこれだけやられれば、怒りすら湧かず恐怖するのみだろう……………しかし———————)
——————どうも、信じられなかった。あの反皇国強硬派たるデラヴェルトが、それに甘んじるとは………………到底思えなかった。
「く、駆逐艦です!!爆雷きます!!!!」
「衝撃に備えろ!!」
………まぁ今は、俺が生き延びる事が先決だが!
※
統一暦1926年12月29日
合州国 首都ワシントン ホワイトハウス
「講和を受け入れるべきだ!何も奴らは無理難題を言っているわけじゃない!」
「だがそれを翻さない保証はあるのか!!」
「そうだ!!何よりそれでは敗北だ!敗戦だぞ、敗戦!!」
「しかしこれ以上長引けば本土にも上陸されるぞ!!陸軍の試算ではロッキー山脈はおろかアパラチア山脈まで侵される公算大と出ているぞ!!」
「過大評価だ!皇国如きにそんな力はない!!」
「これが過大評価なら何で奴らはハワイを占領し、西海岸まで火の海に出来たんだ!!」
…………会議室は完全な混沌、カオスであった。床や机の至る所に散らばる書類には、尽く悲観的かつ消極的な事ばかりが書かれている。
そして閣僚らも、その多くが講和派であった。それに反論する者たちの声にもまるで覇気がない時点で、最早どうしようもない状況であった。
確かに、先制攻撃はさせるつもりであった。そうすれば大義は勝手にこちらの物になるから………………!いや、実際そうなったのだが…………
しかしこれほどの大損害を許容した覚えは無い!!
「大統領閣下、最早決断すべきです。国民の半数以上も継戦には懐疑的なのですぞ!!」
痺れを切らした一人の閣僚が、デラヴェルトに決断を迫る。その迫力と、この悲惨な状況に、ついにデラヴェルトすらも、覚悟を決め————————
「お待ち下さい!!!!まだ、まだ合州国は終わりではありません!!!!」
………………天使だ。デラヴェルトは咄嗟にそう思った。突如彼の目前の窓を破り現れたのは一人の少女。慌てて閣僚らもそちらを向き、驚愕する。
「なっ!?き、君は、一体………………」
「その軍服は、まさか義勇兵の?!し、しかし何故ここに……………………」
だが、
「大統領閣下。確かに、敵は恐ろしい存在です。しかし!私たちはそれに立ち向かわなくてはならない!!それが、主の思し召しです!!」
うら若き少女の健気な、そして誠に敬虔なその訴えに、デラヴェルトは——————
「………………ああ、そうだ。そうだとも!貴女のお陰で目の前の霧が全て払われた!!そうだ私は誓ったではないか!就任式で、主に固く誓った!!故にその使命を果たさねばならない!!」
うつろだった瞳は、今や爛々と輝き、全身全てに力が漲っている。そうだ、駆逐しなくてはならない……………異教徒の蛮族を!そして主の御加護をあの地にも、分け与えてやらねば!!
「分かってくれましたか!閣下の素晴らしき献身は、主も誠にお喜びのことでしょう!」
「無論だ!では早速行かねば。彼奴らに……あの悪魔どもに汚された地を、清め語りかけに!」
…………唖然とする閣僚らを置いて、そのままデラヴェルトはその少女と共に部屋を出ていく。それを見て、ようやくハッとしたように慌てて止めに動くが、しかしそれを副大統領が押し留める。
「まぁしかし、一度様子を見られては?見た感じはイカれていますが、しかしその行動自体は放置しておいてもまぁ問題ないでしょう」
「何でそんな事がわかる!今にも自ら戦闘機に乗って自爆攻撃しそうだったじゃないか!!」
すると、彼は一つの紙切れを見せた。それは……………
『最後の好機、私は明日サンフランシスコで演説する。それで判断されたし』
…………どうやらデラヴェルトは、この“主の御意向”騒ぎを利用して最後の足掻きをするつもりらしい。なるほどやはりあの老人は敬虔な信徒なぞではなく、唯の薄汚い政治家だったらしい。
ただ…………
「そ、それはまぁ分かったが、しかしあの少女はいったい…………?」
「義勇兵の服装だったが、しかし今はまだ帰還途中で大西洋のど真ん中のはずだが…………?」
それに、この合州国では珍しくあれほど“主”に心酔し切って、事もあろうかホワイトハウスに突っ込んでくるとは…………
「皇国の事もあるし、警備は本当にすぐに何とかしたほうがいいな……」
…………まぁ、こんな風に「魔導師って、すげー」という教訓を得られただけで、彼らにとって有意義なものだったのかもしれない…が……………?
※
統一暦1926年12月30日 午後
合州国 サンフランシスコ
もっとも、閣僚らはその“演説”とやらには、全くと言って良いほど期待していなかった。それは彼らが独断で講和交渉を進めていたことからも分かる。まぁ、あれほど演説なりスピーチなりが好きなお人なんだ。
…………が、彼らは………というか、当のデラヴェルトですら分かっていなかったのだ。“世論”とやらが如何に複雑怪奇なものかを…………
『…………我々は、敗北した———————
この一言で始まった彼の演説は、後に彼自身すらも恐怖するほどの熱狂をもたらした。
『だがそれは、明日の敗北を意味しない
背景には崩れ落ちた金門橋を、自らの背後には“天使”を。そして彼は言う。語りかける。奮い立たせる。
『例え崩れ落ちても、橋はまた作り直せる。過去よりずっと偉大なものを
『それは、国もまた同様である!!
…………結局のところ、ターニャは致命的なまでに“それ”を分かっていなかった。分かるはずもない。何故ならそれは、彼女が切り捨て無能の象徴であると断じた物なのだから。それは………
『この敗北は、しかし遥かに巨大な勝利を作り出す!故に—————
“感情”である。時として民衆は理性よりも何よりも、それを優先する。例えいかなる強大な敵でも、いかなる大損害を受けても、民衆は憎悪と憤怒のみで戦える。戦いを、望む。
アンクルサムよ立ち上がれ。我らは未だ死んでおらず、故に————
『戦えッッ!!それを主は望み、我ら自身が最も望んでいるッッ!!
……………翌月初め、合州国全土で継戦支持が不支持を逆転。そして三月、ついに継戦支持率は80%を突破。彼らは、自ら戦争を望み始めてしまった。
———————
第四章、完
《第五章予告》
理性は、戦争を止められなかった。
「狂ってる……何故これで手打ちに出来ない!腐れヤンキーめ!!」
前世の知識は、所詮“知識”でしかない。
「………………長期戦、か」
何かが狂ってしまったその先は、
「敵は大軍此方は寡兵。全く、これでは帝国の時と変わらんではないかッ」
もはや誰にも
「父の…………仇ィィィィィィィィッッッ!!」
「んなッ、何だこの狂った大出力は!こいつ本当に人間か?!」
わからない——————————
講和失敗………まぁ残当ですね。ターニャは「皇国軍侮り難し」と思わせる、いわゆる抑止論的な思考でこの作戦を考えたのでしょうが、ちょっと感情を軽視し過ぎて無理でしたねー。
あと、これが果たして存在なんたらの仕業なのか違うのか…………メアリーちゃんは確定ですがそれ以外の事象は?私はなんか違う気がするんだがなー。まぁでも異教徒滅ぼせて彼も満足でしょうええきっと。
さてさて、これで第四章終わりです。が、例によって次しばらくは幕間でーすごめんちゃい。
次話は、うーんどうも毎日投稿すら怪しくなってきたが………まだ諦めんぞ!!今日中には必ず!!!!
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