幼女極東戦記   作:信濃氷海

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とんでもない時間じゃあ…………これは完全に次の日やんけ………

ごめんなさい土下座

それでは本編っす…………


第二十八話 理性の敗北

統一暦1926年12月9日

皇都東京 連合王国大使館

 

 

「国交断絶につき、諸兄の身柄を拘束させて頂く。交換船が出るまで、箱根でゆっくりされよ」

 

 そう言って、外務省の職員が背後に控える憲兵隊に指示する。それに対し、肩を竦め大人しくする大使たち。……………だが、その直後外務職員が異変に気付いた。

 

「…………?!ウィンゲート武官は何処に——————まさかっ!!!!」

 

 に、逃げられた……………だが、どうやって?!キッと大使クレスリーを見るが、彼は慇懃無礼に笑うのみ。

 

「く、くそっ…………何としても吐いてもらいますぞッ!!!!」

 

「ふふふ、無論どうぞ。……………まぁ、たとえ我々が何かを“()()()”としても、無意味でしょうがね」

 

 ………………その丁寧なしかし容赦無い煽りに、職員の男は最早言葉とすら呼べない叫び声を上げ、その場にぶっ倒れた………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、伊豆諸島沖数百キロの海上………………

 

「ぶえっくしょん!!!!」

 

「うわぁ?!…………ど、どうされたんで、ウィンゲート大佐」

 

 乗組員総出での厳重な見張り。それは無論、“客人”とて例外では無い。艦長の横で私物の望遠鏡を覗いていたウィンゲートであったが、突然馬鹿でかいくしゃみを一発ブチかます。

 

「い、いや申し訳ない…………風邪かな?」

 

「そりゃヤバイですよ、ドレイク局長がまたぞろ嫌味言ってきますよ」

 

 そりゃあ困るなぁ………………()()()も結局やらずじまいだったからな…………。同期の中年男を思い浮かべて渋い顔をするウィンゲート。と、その時

 

「ッ!哨戒船だッ、急速潜航総員退避!!」

 

 慌てて全速力で艦内に飛び込む。ハッチが閉じられ、海中へと間一髪逃げ込むことに成功した。

 

 …………こんな敵の目と鼻の先をうろうろするなど正気の沙汰では無い。そう考えると、皇国がやってのけた事が如何にイカれているか分かる。

 

 そしてそれ以上に恐ろしいのが、その膨大なリスクすら霞むほどの戦果!まったく、誰が想像したであろうか。

 

 “極東の猿”が、あの巨大な合州国の、植民地を制し本土すらも汚されるとは!!彼らの企ては、完璧に成功したのだ。

 

 ただ……………

 

(…………………確かに、今の合州国の世論ならば、講和を容認するだろう。そりゃあこれだけやられれば、怒りすら湧かず恐怖するのみだろう……………しかし———————)

 

 ——————どうも、信じられなかった。あの反皇国強硬派たるデラヴェルトが、それに甘んじるとは………………到底思えなかった。

 

「く、駆逐艦です!!爆雷きます!!!!」

 

「衝撃に備えろ!!」

 

 ………まぁ今は、俺が生き延びる事が先決だが!

 

 

 

 

 

 

 

 

統一暦1926年12月29日

合州国 首都ワシントン ホワイトハウス

 

 

「講和を受け入れるべきだ!何も奴らは無理難題を言っているわけじゃない!」

 

「だがそれを翻さない保証はあるのか!!」

 

「そうだ!!何よりそれでは敗北だ!敗戦だぞ、敗戦!!」

 

「しかしこれ以上長引けば本土にも上陸されるぞ!!陸軍の試算ではロッキー山脈はおろかアパラチア山脈まで侵される公算大と出ているぞ!!」

 

「過大評価だ!皇国如きにそんな力はない!!」

 

「これが過大評価なら何で奴らはハワイを占領し、西海岸まで火の海に出来たんだ!!」

 

 …………会議室は完全な混沌、カオスであった。床や机の至る所に散らばる書類には、尽く悲観的かつ消極的な事ばかりが書かれている。

 

 そして閣僚らも、その多くが講和派であった。それに反論する者たちの声にもまるで覇気がない時点で、最早どうしようもない状況であった。

 

 確かに、先制攻撃はさせるつもりであった。そうすれば大義は勝手にこちらの物になるから………………!いや、実際そうなったのだが…………

 

 しかしこれほどの大損害を許容した覚えは無い!!

 

「大統領閣下、最早決断すべきです。国民の半数以上も継戦には懐疑的なのですぞ!!」

 

 痺れを切らした一人の閣僚が、デラヴェルトに決断を迫る。その迫力と、この悲惨な状況に、ついにデラヴェルトすらも、覚悟を決め————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ち下さい!!!!まだ、まだ合州国は終わりではありません!!!!」

 

 

 

 

 

 ………………天使だ。デラヴェルトは咄嗟にそう思った。突如彼の目前の窓を破り現れたのは一人の少女。慌てて閣僚らもそちらを向き、驚愕する。

 

「なっ!?き、君は、一体………………」

 

「その軍服は、まさか義勇兵の?!し、しかし何故ここに……………………」

 

 だが、()()はそれらの声には一切反応せず、ただデラヴェルトのみを見つめ告げた。

 

「大統領閣下。確かに、敵は恐ろしい存在です。しかし!私たちはそれに立ち向かわなくてはならない!!それが、主の思し召しです!!」

 

 うら若き少女の健気な、そして誠に敬虔なその訴えに、デラヴェルトは——————

 

「………………ああ、そうだ。そうだとも!貴女のお陰で目の前の霧が全て払われた!!そうだ私は誓ったではないか!就任式で、主に固く誓った!!故にその使命を果たさねばならない!!」

 

 うつろだった瞳は、今や爛々と輝き、全身全てに力が漲っている。そうだ、駆逐しなくてはならない……………異教徒の蛮族を!そして主の御加護をあの地にも、分け与えてやらねば!!

 

「分かってくれましたか!閣下の素晴らしき献身は、主も誠にお喜びのことでしょう!」

 

「無論だ!では早速行かねば。彼奴らに……あの悪魔どもに汚された地を、清め語りかけに!」

 

 …………唖然とする閣僚らを置いて、そのままデラヴェルトはその少女と共に部屋を出ていく。それを見て、ようやくハッとしたように慌てて止めに動くが、しかしそれを副大統領が押し留める。

 

「まぁしかし、一度様子を見られては?見た感じはイカれていますが、しかしその行動自体は放置しておいてもまぁ問題ないでしょう」

 

「何でそんな事がわかる!今にも自ら戦闘機に乗って自爆攻撃しそうだったじゃないか!!」

 

 すると、彼は一つの紙切れを見せた。それは……………

 

『最後の好機、私は明日サンフランシスコで演説する。それで判断されたし』

 

 …………どうやらデラヴェルトは、この“主の御意向”騒ぎを利用して最後の足掻きをするつもりらしい。なるほどやはりあの老人は敬虔な信徒なぞではなく、唯の薄汚い政治家だったらしい。

 

 ただ…………

 

「そ、それはまぁ分かったが、しかしあの少女はいったい…………?」

 

「義勇兵の服装だったが、しかし今はまだ帰還途中で大西洋のど真ん中のはずだが…………?」

 

 それに、この合州国では珍しくあれほど“主”に心酔し切って、事もあろうかホワイトハウスに突っ込んでくるとは…………

 

「皇国の事もあるし、警備は本当にすぐに何とかしたほうがいいな……」

 

 …………まぁ、こんな風に「魔導師って、すげー」という教訓を得られただけで、彼らにとって有意義なものだったのかもしれない…が……………?

 

 

 

 

 

 

 

 

統一暦1926年12月30日 午後

合州国 サンフランシスコ

 

 

 もっとも、閣僚らはその“演説”とやらには、全くと言って良いほど期待していなかった。それは彼らが独断で講和交渉を進めていたことからも分かる。まぁ、あれほど演説なりスピーチなりが好きなお人なんだ。()()くらい好きにさせておこう………と、恐らくこれで政治生命終了の上司を気遣っていただけであったのだ。

 

 …………が、彼らは………というか、当のデラヴェルトですら分かっていなかったのだ。“世論”とやらが如何に複雑怪奇なものかを…………

 

 

 

 

『…………我々は、敗北した———————

 

 

 この一言で始まった彼の演説は、後に彼自身すらも恐怖するほどの熱狂をもたらした。

 

 

『だがそれは、明日の敗北を意味しない

 

 

 背景には崩れ落ちた金門橋を、自らの背後には“天使”を。そして彼は言う。語りかける。奮い立たせる。

 

 

『例え崩れ落ちても、橋はまた作り直せる。過去よりずっと偉大なものを

 

 

『それは、国もまた同様である!!

 

 

 …………結局のところ、ターニャは致命的なまでに“それ”を分かっていなかった。分かるはずもない。何故ならそれは、彼女が切り捨て無能の象徴であると断じた物なのだから。それは………

 

 

『この敗北は、しかし遥かに巨大な勝利を作り出す!故に—————

 

 

 “感情”である。時として民衆は理性よりも何よりも、それを優先する。例えいかなる強大な敵でも、いかなる大損害を受けても、民衆は憎悪と憤怒のみで戦える。戦いを、望む。

 

 

 アンクルサムよ立ち上がれ。我らは未だ死んでおらず、故に————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦えッッ!!それを主は望み、我ら自身が最も望んでいるッッ!!

 

 

 

 

 

 

 ……………翌月初め、合州国全土で継戦支持が不支持を逆転。そして三月、ついに継戦支持率は80%を突破。彼らは、自ら戦争を望み始めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———————総力戦(憎しみ)は、終わらない。どちらか一方を滅ぼすまで…………

 

 

 第四章、完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《第五章予告》

 

 

 理性は、戦争を止められなかった。

 

 

「狂ってる……何故これで手打ちに出来ない!腐れヤンキーめ!!」

 

 

 前世の知識は、所詮“知識”でしかない。

 

 

「………………長期戦、か」

 

 

 何かが狂ってしまったその先は、

 

 

「敵は大軍此方は寡兵。全く、これでは帝国の時と変わらんではないかッ」

 

 

 もはや誰にも

 

 

「父の…………仇ィィィィィィィィッッッ!!」

 

「んなッ、何だこの狂った大出力は!こいつ本当に人間か?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わからない——————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




講和失敗………まぁ残当ですね。ターニャは「皇国軍侮り難し」と思わせる、いわゆる抑止論的な思考でこの作戦を考えたのでしょうが、ちょっと感情を軽視し過ぎて無理でしたねー。

あと、これが果たして存在なんたらの仕業なのか違うのか…………メアリーちゃんは確定ですがそれ以外の事象は?私はなんか違う気がするんだがなー。まぁでも異教徒滅ぼせて彼も満足でしょうええきっと。

さてさて、これで第四章終わりです。が、例によって次しばらくは幕間でーすごめんちゃい。

次話は、うーんどうも毎日投稿すら怪しくなってきたが………まだ諦めんぞ!!今日中には必ず!!!!

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