それでは本編ですどうぞ!!
統一暦1927年2月7日 07時15分
南シナ海 連合王国東洋艦隊
東洋艦隊は、概ね順調に航海を続けていた。
「提督、やはりこの速度では駆逐艦がもちません。あと5ノット(約9km/h)ほど落とした方がよろしいかと……………」
「いや、このままでいい。あくまで主力艦が皇国に突入できればいいのだ。無理そうなら支那帝国の連合王国領へ離脱させろ」
懸念顔の幕僚に、フィリスは無表情で告げた。
現在の艦隊速度は20ノット(約36km/h)超。これは艦隊の巡航速度よりかなり高速であり、戦艦や空母はともかく機関部に余裕のない駆逐艦などにとってはかなり厳しい速度であった。
そうでなくとも、凌波性が十分でない駆逐艦の長距離航海は悲惨である。技術の進展により改良されてきたとは言え、それでもキツいものはキツい。……が、フィリスの言う通り作戦の目的はあくまで主力艦たる戦艦が、皇国首都をその巨砲により恫喝するというものなのだ。駆逐艦は究極的にはついて来れなくても構わないし、もし落伍したとしても“連合王国の庭”たる支那帝国に点在する租借地の何処かに行けば良い。感情はともかくとしても、フィリスはそう考えていた。
「ですが、占領はされていないとしても租借地周囲に待ち伏せがある可能性が非常に高いですぞ。その場合駆逐艦単独ではむしろ危険な恐れが」
「…………かもしれん。が、犠牲なき戦争は存在しない。考慮と懸念はすべきだがな」
それに、作戦が成功すれば戦争は終わる。それ故に、フィリスは小型艦艇に対しもしもの際は速やかに降伏すべしと伝えるという異例の措置を取っていた。撃沈されてしまったらそこまでだが、降伏という一時の恥さえ凌げれば、戦後すぐに解放できるだろう。
それより目下のフィリスの心配事は未だ索敵に引っかからない2隻の敵空母だった。事前の偵察情報より、この時点で皇国が南方に向けられる主要艦艇は空母2隻と戦艦2隻と判明している。戦艦についてはいくらなんでも互いに目視状態でなければ有効な射撃は出来ないため置いておくにしても、空母は問題だった。
「『龍驤』及び『祥鳳』…………事前情報では1万トンクラスの小型空母と聞いているが、だとしても放置しておくと厄介だ。早急に発見し攻撃隊を送り込め」
フィリスが眉をひそめつつ部下に指示する。たった2隻では戦局をひっくり返すことはできないだろうが、それでも主力艦を数隻ほど道連れにされる危険は十分考えられる。
「はっ!了解であります提督」
幕僚がそう返答し、空母各艦に伝達しようとした
その時
ビィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!
突然、艦橋内に大音量の警報が鳴り響く。いきなりの事に幕僚や、艦橋の兵士たちは泡を食ったように慌てて何事かと計器類を見やった。
「一体何だ!」
「はっ!…………んなっ、そんな馬鹿な?!」
「報告はハッキリとしろ!!」
とある計器に示された、信じ難い数値を目にした兵士が動揺したように呟いた。間髪入れず苛立った艦の副長が怒鳴りつけると、かの兵士はしどろもどろになりながらも
「だ、大出力魔導反応ですッ!!数およそ…………数百に上ります!!!!」
「?!な、何ぃ?!そんな、そんなことがありえるか!!沿岸まで数百キロはあるというの——————」
………………幕僚の裏返った怒鳴り声は、最後まで続かなかった。いや、実際には言っていたのかもしれないが、いずれにせよある音に阻まれ、他者の耳には届かなかった。
ズドォォォォォォォォォォ!!!!!!
大規模魔力反応。噴き上がる火焔。艦隊全てに響き渡る爆発音。それら全てが、ある一つの事実を指し示していた。
「———————く、空母『ハーミーズ』被弾、炎上中!!!」
敵襲、そして—————————交戦開始。
※
同日同刻
同所上空 皇国軍第一特務航空魔導連隊
「ははははは!どうしたどうしたロイヤルネイビー!!想定の甘さは致命的だと思い出させてやろう!!」
悪魔のような笑みを浮かべ、ターニャは眼下の艦隊を見下ろした。曳航弾が飛び交い、至る所で爆発が起きるそこはさながら地獄か何かのようだが、彼女は一切動じない。
「大佐!」
と、彼女の近くに親愛なる副官が馳せ参じた。戦場を飛び回り、方針伝達等をキビキビこなしてきた古くからの戦友ヴィーシャに対しては、ターニャもどこか表情や声色が優しげになる。……が、その内容は実に酷薄なものだった。
「やぁ大尉、見たまえこの醜態を!やはり連合王国はもはや斜陽だな、この程度の
心底失望したように、軽蔑しきったように敵を嘲笑う。この苛烈な対空砲火を“この程度の歓迎”と評するとは流石デグレチャフ少佐殿!…………とは思わなかった。だって、ヴィーシャもまさにそう感じていたのだから。
「確かにライン戦線の時に比べれば対空砲火は遥かに貧弱ですね。………帝国海軍との合同訓練の時とほとんど同じくらいに感じます」
「確かに似ているな。そしてあの時も突入は実に容易だった。………敵が学習を怠る無能であるのは歓迎すべき事だが、ここまで酷いとそれが伝染しそうで恐ろしいなまったく」
何せ、この貧弱な砲火が数年後には筆舌に尽くし難いハリネズミになるのだから。これに慣らされてしまうと非常に困る。流石に近接信管をもってこいとは言わんが……………
「それで、状況は?」
「はっ!敵空母『ハーミーズ』中破、『イラストリアス』『フォーミダブル』『イーグル』小破です!」
中々の戦果と言える。個人的には装甲空母たるイラストリアス級はともかく、ハーミーズ辺りの小型空母であれば撃沈可能と考えていたのだが……………やはり最大出力の貫通術式であっても主力艦の撃沈は不可能のようだ。どうやらこれが、航空魔導師の攻撃力の限界であるらしかった。
これ以上が欲しければあの
それに………………
「………ふむ、ならばこの辺りが潮時だろう。デザートに一斉突撃を喰らわせてやった後帰投する、総員高度を上げろ!!」
隊をまとめ上昇。そして必死になって鉛玉をばら撒く間抜け紳士どもを冷たく見下ろしながら
吶喊
ズドドドドッッッッガァァァァァ!!!!
海上に立ち並ぶ大火焔の列を背景に、ターニャ達は悠々と離脱する。去り際に、彼女は嘲笑いつつ
「確かにこれだけならただの
————————作戦第一段階、完了せり。
※
同日 08時00分
南シナ海 東洋艦隊旗艦『プリンス・オブ・ウェールズ』
「………以上が損害となります。特にハーミーズにつきましては、被害甚大のため復旧までやや時間が掛かるものと思われます」
「そうか…………わかった、ご苦労」
フィリスはそう言って部下を労い嘆息した。まったく…………先ほどの攻撃は一体何だったのだろうか。
「航空魔導師が対空レーダーに映らないと言うのは盲点でした。そもそも絶海で航空魔導師の奇襲を受けると言うのはおそらく世界初でしょうし、今後こうした事態への対策案をまとめねばなりませんな」
幕僚の一人が呆れと感心の入り混じった声で言った。直前とはいえ発見できたのは、プリンス・オブ・ウェールズにのみ搭載されていた魔力探知機のおかげである。が、発見と攻撃の時間差が短すぎるため全く実用的ではないのも事実。
そもそも航空魔導師という兵科自体航空機以上に誕生して間もなく、対抗技術の整備も進んでいないのだ。その現状を嘲笑うかのような今回の事態は、今後の戦争のあり方を一変させる歴史の大転換点と言えるのかもしれない。
「確かに、な。この事は本国にも早急に伝達すべきだろう。
……………フィリスがそう考えたのも、この時点での戦争の常識からすれば仕方なかったのかもしれない。艦隊の現位置から一番近い沿岸まで約200キロ程度。そしてその距離は、極めて厳しいが航空魔導師が無補給飛行した前例が存在する。また、発進地となったであろう共和国領南方植民地は、本国の動乱やゲリラ化した皇国軍残留部隊等で混沌状態にあり、その詳細は連合王国にもよく分かっていなかったため、「もしかしたらそこに急造基地を作ったのかもしれない」と思わせるには十分な状況であった。
—————————だがそれは、あまりにも
「っ!空母偵察機より通信!!『敵空母見ゆ』…………本艦より北方向、距離100キロ!!」
「!よくやった、無傷の空母は直ちに攻撃隊を発艦!残りも応急対応を終え次第すぐに出せ!!」
————————致命的だった。
(……………そう言えば、なぜ奴らは
…………彼が全てに気づく時、それは果たして—————————
まぁどんなにターニャ達が強力とて、流石に主力艦の撃沈はちょっと厳しいでしょう。駆逐艦やら軽巡洋艦ならいけそうな気もしますが。
それに第一段階と言ってるわけですから、ここからまだいくつもの策謀があるんですよこれが!乞うご期待!
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次回も海戦の続きですな、一体フィリス提督はどんな目に遭うのか?本当に100隻撃滅できるのか?!
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