幼女極東戦記   作:信濃氷海

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早く書けました!

それではどうぞ本編です!!


第三十二話 セカンド・アタック

統一暦1927年2月7日 08時45分

南シナ海 東洋艦隊旗艦『プリンス・オブ・ウェールズ』

 

 

 しかし、敵空母発見後、直ちに発艦させる事は出来なかった。航空魔導師による精密爆撃は、予想以上に甚大な被害を空母部隊に与えていたのだ。それでも発見から15分後の午前8時45分には攻撃隊が発艦。敵空母は100キロ先であり、攻撃隊の巡航速度はおおよそ200km/hであるため到達まで約30分だ。

 

「70機以上の爆撃機による空爆です。小型空母二隻程度であれば容易に撃破可能でしょう」

 

「…………だが、偵察機の報告では一隻という事だが」

 

「偵察機は複葉の鈍足機ですからな、そこまで近づいての確認はできなかったのでは?」

 

 そうか…………とフィリスは難しい顔のまま黙り込んだ。確かに幕僚の言う通り、基本的に偵察機の信憑性はあまり高くない。高速の専用偵察機ならともかく、旧式爆撃機を転用した機体では敵艦隊に近づきすぎる事は死を意味するからだ。

 

 だが、一応納得はしたものの、それでも彼の脳裏には小さい疑念がこびり付いていた。………先程の航空魔導師、そして彼らの謎の空母限定攻撃。これらはただの偶然なのだろうか…………それとも…………………

 

 と、丁度攻撃隊の姿が見えなくなった時

 

「!対空レーダーに感あり!!距離80キロ、方位…………方位……」

 

 またか。兵士の質も問題だなと露骨に顔に出ている幕僚が、うんざりしたように怒鳴った。

 

「だ、か、ら!報告ははっきりと簡潔に——————」

 

西()()()()()西()()()()()()()()()()

 

 ?————————!?西だと…………ッ?!瞬時に艦橋内を困惑と動揺が支配した。空母は北にいる筈なのに………………

 

「て、偵察情報が間違っていたのか?!」

 

「ならば直ちに引き返させなければ…………」

 

「馬鹿を言え!そんな事をすれば着艦作業と敵の攻撃がかち合うぞ!!」

 

「しかし何もない場所へ無意味な飛行をさせるのは…………」

 

 喧々轟々と幕僚らが口々に言い合う。だが、反対賛成そのどちらもが、自身の意見にまるで自信がないと言う点で一致していた。

 

「…………そこまでだ、まず第一に邀撃戦闘機を発艦させろ。そして攻撃機については、敵空襲が収まり次第帰投させろ」

 

 言い合いが不毛さを増してきたと感じたフィリスは、司令官として決断。その確固とした命令に、浮き足立っていた幕僚らはひとまず落ち着いた。………無論フィリスとて絶対の自信があるわけでは決してなかったが、混乱が広がるのだけは避けたかったのだ。

 

 

 

 …………が、その指示に従い幕僚らが動き始めた時、再び入ってきた偵察情報が不安定な平穏をかき乱す。

 

「…………『敵空母見ゆ、方位北、距離106キロ、単艦で南東方向へ直進中』…………これは、同じ機体からの報告か?」

 

「いえ、別の偵察機です。その為かなり信憑性は高くなったものと思われます」

 

「うむ……………」

 

 では今まさにここに押し寄せて来ようとしている敵機は何なのだ?

 

「…………偵察情報が正しいとすると、考えられるのは……………陽動か、陸上発進か、あるいは」

 

「ああ…………残り一隻の空母が西にいるかだ」

 

 このうち陸上発進については、どの幕僚もあまり信じてはいなかった。航空魔導師ならばゲリラ的に沿岸から発進できるかもしれないが、航空機の編隊ではそれはかなり厳しいだろう。先述した通り南方植民地ヴィエットは状況が著しく混乱した状態ではあるが、航空機の基地などという代物を作ればすぐに分かるだろうからだ。無論そういった事前情報は無く、そんな荒唐無稽な可能性よりかは敵の陽動、あるいは未知の敵空母の存在の方がよほどあり得る話だった。

 

「……いずれにせよ西方向については偵察機の続報を待つとして、北方向の空母については…………」

 

「こうなると、話は変わってくる。———————攻撃続行だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日 09時00分

南シナ海 東洋艦隊旗艦『プリンス・オブ・ウェールズ』

 

 

決定から数分後、艦隊の見張員が西方向より飛来する敵編隊を発見。だが、この時点で邀撃機は展開済みであり、状況的には圧倒的に連合王国側が有利であった。……………が、戦争でそんなうまい話はない事を、見張員達の悲鳴が告げてくる。

 

「馬鹿な…………軽空母一隻なら精々20機程度が限界のはず………なのに」

 

 ————————46機。それが、目の前に現れた敵航空機の総数だった。

 

 …………もっとも、だとしてもこちらの邀撃機は30機。総数では下回るものの、戦闘機の数では30対16と倍近い。

 

 さらに、事前の報告………そして連合王国側にとっての“常識”として『皇国軍の航空機性能は列強中最弱』と本気で信じられており、性能差と数量差により驚きはしても“負ける”と思った者は皆無だっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………それが幻想であると知るまでに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———————くっ、空母『ハーミーズ』大炎じょ…………………轟沈、しました……………………」

 

「空母『イラストリアス』多数被弾!!飛行甲板使用不能!!」

 

 次々と旗艦に入ってくる凶報。それらが紛れもない事実である事は、艦橋のガラスに映る悲惨な光景が証明していた。

 

「クソッ!!弾幕薄いぞ何をやっとる!!!!」

 

 思わず幕僚の一人が怒鳴った。が、それへの返答は非情なものだった。

 

「だ、ダメです!先程の航空魔導師による攻撃の際対空砲座の故障が頻発し、これが限界です!!」

 

 対空砲の故障……………以前より、王立海軍艦艇に搭載されている対空砲は信頼性に問題があり、長時間の射撃は困難と断言されてきた代物だった。その対策を怠ったツケが回ってきたのだ。

 

 さらに、早急な復旧作業はあくまで表面的なものでしかなく、航空魔導師による攻撃は空母のあらゆる箇所に深い傷を残していた。それが合わさり、艦隊の反撃・回避行動はどんどん鈍いものになっていく。

 

「……………小癪な真似を…………だが何故また空母だけを狙う?!」

 

 ここにきて、フィリスはこの疑念が偶然ではなく、作為的なものと確信した。奴らは意図的に空母のみを排除するつもりだ…………だが何故?

 

 しかし、今はそのことについて考えている暇はない。彼はともかく対空砲火と回避行動の強化を指示した。…………が、もはや彼にはそれ以上の事は何も出来なかった。

 

 ……………やがて、大嵐は去っていった。爆弾の雨を降らせた皇国航空隊は実に鮮やかに退いていく。

 

「つっ、追撃しろ!このままで終わらせるか!!!!」

 

「……………不可能です、邀撃隊の被害甚大で、再編成すらも困難です!」

 

 そう、母艦そのものも酷い有様だったが、その艦載機はさらに悲惨な状態であった。

 

 邀撃機30機の内、被撃墜9機、被撃破16機という空前の大損害。この最大の要因は、30機の内大多数を占めた主力のフルマー戦闘機が、実際には皇国の零式艦上戦闘機に遥かに及ばない旧式機であり、この程度の数量差であればあっさり覆されるという事だった。

 

 このため、邀撃隊は敵戦闘機を抑える(というより嬲られる)のに手一杯で、肝心の母艦防衛はとてもではないが不可能だった。さらに連合王国側を驚かせたのは皇国爆撃機による水平爆撃の高い精度だった。なんと命中率が低いのが常識である水平爆撃で、彼らは実に3割近い命中弾をあげてみせたのだ。

 

 これは、先述した通りそもそも連合王国側が疲弊しきっていた為、ほぼ無防備と同様な状態であったから…………という要因もあるが、結局つまるところ戦闘機にせよなんにせよ、連合王国が秋津洲皇国をあまりに過小評価しすぎていたためと言える。

 

 ——————そしてその代償は非常に高くついた。先ほど述べた通り邀撃隊は8割以上の損害を出し壊滅し、母艦も第一波(航空魔導師)から十分に復旧しきれていなかったハーミーズが直撃弾3発を受け轟沈。それ以外にもイラストリアスが大破し、イーグル、フォーミダブル、ヴィクトリアスもそれぞれ少なくない損害を被った。対し皇国側に与えた損害は零戦1機及び九七艦攻3機撃墜、九七艦攻8機撃破という、こちらの損害と比べればはっきり言って取るに足らない小さなものだった。

 

「…………損害の確認と復旧急げ!……だが、なんとか凌ぎきったな。これで、我が方の攻撃隊が敵空母を撃破してくれれば—————」

 

 ギリ、と奥歯を噛みしめ悔しさを押し殺す。なるほどこちらが間違っていた。皇国侮りがたし、だ。だがそれでも、作戦目的さえ完遂すれば…………

 

 フィリスはただそれのみを求め、あくまで進撃続行を命ずる。そう、大損害を出したものの、どうにか攻撃を耐え抜いたのだ。なぜか空母のみへの攻撃、という疑念は依然残るが、主力艦さえ無事ならどうとでもなる。彼はそう考え、信じきっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———————っ!!!!レーダーに反応!……………方位東、距離40キロ………………()()()()()()()()!!!!」

 

「………………な……………………なん、だと…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、遙か4000キロ彼方で、一人の男が嗤った。

 

「はっはっは………………()()()()()()終わるわけないだろう。未だ序幕だよ————————紳士諸君(ジョンブルども)

 

 嬉しそうな、実に嬉しそうな笑い声が、大臣室に響き渡り————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———————作戦第二段階、完遂。続けて

 

 

 

 

 

 

 

 

            作戦第三段階、開始せり

 

 

 

 




ハーミーズ撃沈!!でも他はまぁ………イーグルはともかく、イラストリアスとかは一応装甲空母だし…………でも250キロ爆弾の水平爆撃なら貫通できる気がしないでも無いが…………当たりさえすれば……………

さて次話は、北に向かった100機の大編隊。だがそこにいたのは全く艦載機を持たない代わりに何やら怪しげな雰囲気の軽空母(らしきモノ)、いったいこれはなんだ??そしてそこから飛び出してきたのは一体?!………という感じです。乞うご期待!!

あ、この海戦の位置関係とか知りたいって方はグー○ルマップさんの検索欄に 11°N111°E と入れて、出てきた場所が東洋艦隊の現在地です。そこから真北100キロ先に謎の単独空母がいます。

感想&お気に入り登録ありがとうございます!感謝感激雨霰ですいやホントに。

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