幼女極東戦記   作:信濃氷海

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日付が変わってしまった!!でもまぁ誤差ですよね誤差誤差。

それではどうぞ!本編です!!


第三十三話 蒼空の航空戦

統一暦1927年2月7日 09時00分

南シナ海 特務艦『白銀丸』

 

 

「いやぁ、電探というのは良いものですな。敵の位置が分かっているというだけでこれ程落ち着けるとは」

 

 艦橋で、実に呑気にそんな事を放言する藻塁副長。それをややジト目で睨むも、しかしターニャは特に何もいう事なく艦長席で沈黙を保った。

 

 皇国軍艦としては珍しく、この艦には竣工時より電探が搭載されていた。もっともそれは海軍製ではなく、元来よりレーダーに関心のあった陸軍のものを無理やり艦載化した代物だったが。

 

 さらに、肝心の性能面でも他列強の有するものに比べ少々劣る。だがそれでも、少なくとも従来の目視索敵に比べれば遥かにマシであり、今回も敵編隊を約50キロ程度の距離で捕捉成功。対応するには十分すぎる猶予を得たのだった。

 

「…………やはり指揮官は常に最前線に立つべきではないだろうか」

 

 そう、堪えきれない様子でターニャがポツリと呟く。今回の迎撃任務、当初は当たり前のようにターニャも自ら指揮して上空に出向くつもりだった。………………が、それを藻塁が制止。彼曰く、せっかく艦長となったのだから一度くらいは艦上で観戦してみてはどうか、と。

 

 無論ターニャは渋った。彼女にしてみれば、先頭に立ちもせず後方で安穏と指揮するなぞ無能のやる事であり、そのような評価を受けるなどターニャには真っ平御免だった。しかし、それに対し藻塁はこんな事を言ってきた。

 

「天下のエース・オブ・エースに相応しい勇猛さは称賛されるべきでしょう。しかし、多様な視点での戦闘を経験するのも又、指揮官の務めでは?」

 

「…………………今回だけだ。それと、戦況に応じて変更するかもしれん」

 

 と、そこに飛行甲板から無線通信が入ってきた。

 

『こちら第一大隊、これより発艦開始致します』

 

「了解した島風少佐。貴官が最先任だ、既に展開済みの第四大隊も併せ貴官が迎撃の指揮をとれ」

 

『了解であります大佐殿』

 

 第一大隊長、島風豊作(しまかぜとよさく)少佐にそう伝える。年齢、軍歴そして能力的にも何ら瑕疵の無い彼は、ターニャに次ぐ連隊内でナンバーツーとも言える人材であった。ターニャとしても彼に指揮を取らせるのに文句は無く、まぁ考えてみれば今後の作戦等の為に彼の指揮能力を見ておくことも必要か、とここでようやくターニャも不満を押し殺したようだった。

 

 ふわりと上空へ向かう第一大隊を、艦橋から眺める。この時第二、第三大隊は何をしているかと言うと、休息中である。今から大空襲が始まろうかと言う時に何を呑気なと思うかもしれないが、兵士に必要最低限以上の休息を取らせないとどうなるか、ターニャは嫌と言うほど分かっていた。

 

 ()()203であっても、休息は極力取らせていた。人間は………いや機械とて、連続フル稼働を続ければ早々にぶっ壊れる。確かに全隊出撃させれば数的優位はさらに大きくなるだろう。だが、そこで消耗戦に突入すれば、全員同時に消耗し最後は何も出来なくなる。

 

 それ故に、投入数は少ないながらも短時間ずつローテーションしてゆくことで、遥かに長く継戦を可能とする。これは、前世での歴史上の戦闘や、今世での経験からターニャが得た統率の基本原則であり、今回もそれに忠実に従ったまでだった。

 

 その休息中の部隊の管理は、ヴィーシャに頼んである。彼女もここで休息させておき、ターニャ以外で部隊の統率を取れる士官が0になることを防ぐと言う訳だ。それにもし緊急時となり、彼らを叩き起こす時も彼女ならばすぐに出撃可能にしてくれるだろう。

 

 そんな事を考えているうちに、敵編隊がいよいよ目視範囲内へと突入してきた。

 

「よし、機関最大戦速、高角砲座撃ち方用意!!」

 

 伝声管に告げる藻塁。上空に目をやると、右舷の彼方から芥子粒のような黒点が次第に近づいてくるのが分かる。……………しかしやはり、艦橋内は少々見えづらいな。ターニャは場所替えの為艦長席を立った。

 

「……副長、引き続き操艦を頼む。私は飛行甲板を見に行く」

 

「了解です艦長、ただ甲板は高角砲で少々煩いですが」

 

 …………全く、誰に向かってそんな事を言っているのか。ターニャは心中で苦笑し、藻塁に言葉を返す。

 

「ハッ!この程度の砲声など私にとっては心地良い音楽とすら言えるさ。…………では、任せたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日同刻 

『白銀丸』 飛行甲板

 

 

 なるほどこれは壮観だ、と感心したようにターニャは呟いた。彼女の頭上360度に広がるのは、百戦錬磨の彼女をして“壮観”と言わしめるほどの

 

 

 

 

 

 大空戦だった。

 

 

 

 

 

「………スピットファイア…………?いや違うな、フルマーか」

 

 一瞬、連合王国の誇る最新鋭機かと思ったが、時期的にそんな訳はない。時代遅れ旧式機フルマーを見間違えただけであった。そう言えば前世でも日本が初戦の英軍戦闘機をあらかた纏めて新鋭機と誤認していたな、と思い出す。まぁターニャは帝国本土での戦闘やら前世の知識やらで分かりはしたものの、初見であれば確かに誤認しやすそうな見た目ではある。

 

 だが、見た目とは裏腹に、フルマーは旧式機の末路に相応しく今や惨めに追い回される的でしかなかった。

 

「ふむ…………やはり小回りとそこそこの火力を併せ持つ航空魔導師の敵ではないな。重装甲とはいってもその程度の機動力ではどうにもならん」

 

 戦闘機とは思えぬ程に大重量なフルマーは、機動力に致命的な欠陥を抱えている。高機動、(航空機よりは)高火力な航空魔導師の敵ではない。………そしてそもそもターニャの関心はそんなロートル機ではなく、比較的新鋭のシー・ハリケーンである。

 

 ライン戦線でも、機動性に優れる共和国の新鋭戦闘機はかなりの脅威だった。未だ自らの連隊の練度が完璧なもの(少なくとも203並み)では決してない事を痛感していたターニャにとって、準新鋭機とも呼べる機体が20機以上も出現した事は十分な懸念材料であった。飛行甲板に来たのも、本気でヤバそうなら即休息中の他大隊を叩き起こし加勢する為でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………もっとも、見ている限りその必要は全く無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「————————大佐殿!」

 

 と、上空を鋭く眺めていたターニャに親愛なる副官が話しかけてくる。

 

「おや大尉、休息はもういいのか?」

 

「はい、他の隊員も出撃可能との事です!」

 

 ………それはあまり宜しくない。たとえ間近で戦闘中だろうと、休息中であれば休む必要があるのだ。休める時休めなければ、永遠に休めなくなることも十分あり得るのだから………………

 

 まぁ、しかしその教育は作戦後にすれば良いか。ターニャは軽く嘆息すると、ヴィーシャに新たな指示を出した。

 

「よかろう。では第二、第三大隊は10分後に飛行甲板に集結せよと伝達せよ」

 

「了解であります!」

 

 それは、状況がすっかり変わった事を示していた——————実に最良の方向へと。

 

 ………………そして10分後、装備を整えたターニャは先ほど眺めていた上空へとやって来ていた。

 

「おや、連隊長殿休憩は終わりで?」

 

「状況が状況だ。座視しているのは隊員の精神衛生上あまり宜しくない。………………それでは始めようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          残敵掃討だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 100機以上の大編隊であった東洋艦隊攻撃隊は、今や見るも無惨な有様となっていた。

 

「——————敵雷撃隊、殲滅しました!」

 

 複葉鈍足という時代錯誤甚だしい連合王国主力雷撃機、ソードフィッシュはフルマー以上に惨憺たる有り様だった。いくら運動性能が優れていても、航空魔導師には到底敵わない。そして最高速度が航空魔導師とほぼ同じか、優れた魔導師が相手であれば抜かされるほどに遅いため逃げることも出来ないという悪夢。

 

 結果として、雷撃隊36機中34機が撃墜されるという空前の大損害を出し事実上全滅。残った2機も小さくない損傷を受け、内1機帰投中にが墜落したため、最終的に生き残ったのはたった1機だけだった。

 

 しかも、哀れなことに彼らのうち魚雷投下に成功したのはたった6機。そしてそれらも投下後皇国の誇る最優秀高角砲たる九八式十糎高角砲の集中砲火を受け海中に没し、先述の2機のみ脱出した。が、その投下した6本の魚雷も藻塁副長の的確な操艦により全て回避され戦果0だった。

 

「しかし驚くほどドンガメですなぁ複葉機は」

 

「あれで急降下爆撃もやるんだからな。歴史への挑戦だろあそこまでくると」

 

 …………爆撃隊の方も酷さはどっこいどっこいだった。爆撃隊の主力はソードフィッシュの後継機、アルバコアであるが、正直言ってどう違うのかまるで分からないほどに何の進歩もない。そもそも依然として複葉機な時点で何もかもお察しであったが………………

 

 彼らの方は35機中20機が撃墜され、8機が撃破。残りの7機は爆撃前に全てを悟って逃げ出しており、この攻撃隊で数少ない無傷帰還機となった。実に賢明な判断であろうとターニャは心中で嗤った。彼らの戦果は、8機投下成功で命中0、至近弾2であり、まぁ雷撃隊よりはマシだが…………というものだった。

 

「そっち行ったぞ!」

 

「オーケー任せとけ、爆裂術式で吹っ飛ばしてやる!!」

 

 で、最後に戦闘機部隊であるが………先ほども述べた通りフルマー戦闘機はもはや的当てか何かのように叩き落とされていく有様。一方の期待の新鋭機ハリケーンは…………

 

「………これは、拍子抜けというかなんと言うか…………」

 

「ええ………そこまでではないですね」

 

 敵機のケツをとりつつぼやくターニャとヴィーシャ。なるほど確かに優秀な機体ではある。が、それはあくまで“フルマー(旧式機)と比べたら”の話であり、総勢400人(一個大隊100名×4個大隊)の航空魔導師連隊の相手ではなかった。しかも新鋭機ということで慢心しているのか、緒戦で相手の方から格闘戦を挑んできたためあっさり叩き潰せたのだ。

 

 最終的に、フルマー21機中14機撃墜、4機撃破。ハリケーン25機中10機撃墜、12機撃破とこちらも大損害を出す結果となった。対し皇国側は被撃墜0、被弾9名とほぼ完封勝利を得ることに成功。

 

 かくして、9時15分前後に開始された航空戦は、25分ほどの激戦の末連合王国側が壊滅。116機もの大編隊は、撤退時には38機にまで激減。しかも帰投中に損傷した機体がいくつも落伍し、結局母艦に帰投できたのは30機に満たなかったという。

 

 満足げに彼らの逃げ帰っていった水平線から目を離し、腕時計を見やる。………時刻は9時40分。計画通りであれば、今頃————————

 

「……………フィナーレは、近い」

 

 そう呟き、ターニャはくるりと振り返り、はるか南の彼方を見やる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の視線、その先には———————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完封勝利達成。やはり複葉機ではダメだったよ…………

さて、次回は再び視点を東洋艦隊に変えます。東から迫りくる正体不明の大型機。いったいその正体は——————?!乞うご期待!!


さて、ちょくちょく感想欄を見ていて質問とかあったので出来るだけ回答しておきますー。

・なんで1910年代に空母いるの?
→確かにこの世界では最初の世界大戦ですので、それを史実に当てはめると1910年代ということになります。が、戦車やらなんやらが登場(アニメだと確かⅢ号戦車だった?)してますし、航空機も単葉全金属製らしきものが確認できたので、私の考えではこの世界は事実で言う『第一次世界大戦の起こらなかった1940年代』だと考えます。今作はそれを反映し、兵器等もそれに準じております。

・800キロ爆弾使えばイラストリアスでも一撃では?
→確かにその通りです。しかし、800キロ爆弾搭載の場合九七式艦攻は一機につき一発ずつしか搭載できません。今回の場合軽空母二隻かそこらしか投入できないため、どうしても機体の絶対数が足りず、そこに一機一発の制約だとどうしても効果が限定されてしまいます。一方250キロ爆弾であれば一機で二発搭載可能ですので、その懸念も多少は無くすことが出来るのではと愚考し、本作ではこのようにさせていただきました。

今後も感想、お気に入り登録、評価お待ちしておりますどうぞ宜しくお願い致します!

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