それでは本編どうぞ!
統一暦1927年2月7日 09時30分
南シナ海 東洋艦隊旗艦『プリンス・オブ・ウェールズ』
息をつく暇もなかった。敵艦載機が去ったと思ったら、レーダーに映る大型機の機影。……………しかもその方角は
「ひ、東?!なんだそれは、なら奴らはどこから飛んで来たと言うんだ!!」
確かに東洋艦隊から200キロの地点には陸地が存在する。だがそれは西側の話であり、東側には広大な海洋が広がるのみであった。しかも、その先にある最も近い島、カリマンタン島及びパラワン諸島は未だ連合王国やその同盟国の支配下にあり、現状で皇国が支配下に置いている合衆国領ルソン島の北部からは、実に1100キロもの距離が存在した。
これほどの距離を往復し、かつ敵艦隊への攻撃も行うとなると必要な航続距離は3000キロ近くなる。まさか皇国はそのような爆撃機を既に大量生産していたというのか………?
「————クソッ!直ちに邀撃機を上げろ!!」
「はっ!」
舌打ちしつつ麾下の残存空母に伝達。だが、先の空襲での損害やダメコン作業等により、最終的に発艦させられた戦闘機は僅か9機。しかもその内2機は燃料タンク破損によりいつ墜ちてもおかしくない状態であった。
………………そして10分後。上空には、悠々と飛来する大型機の大編隊がその姿を現していた。その先頭を飛行するのは皇国の誇る陸上爆撃機、九六式陸上攻撃機と一式陸上攻撃機が計30機。………そして、なんとそれに追随するのは実に驚くべきことに—————皇国陸軍の保有する重爆撃機、九七式重爆撃機及び百式重爆撃機だった。機数は海軍機と同じく30機。双発重爆撃機による渡洋爆撃としてはおそらく世界最大規模であっただろう。
「しかも直掩戦闘機も付随しているだと…………?」
少なくとも10機以上の零戦が威嚇するように戦場を舞っている。決定的に性能が劣り、しかも数でも下回る連合王国側にとっては、はっきり言って絶望的な状況であった。
だが、それでも彼らは奮闘した。特に合州国から供与されたマートレット戦闘機は、僅か2機ながらも最初の航空魔導師攻撃以降戦い続け、圧倒的な敵機の前にも怯むことなく挑み続けていた。むろん格闘戦ではない。それが不可能なことは、未だ生きながらえていた操縦士達には重々承知であり、故に彼らは一撃離脱に徹していたのだ。…………それでも1機また1機と火を噴き墜ちていくのは止められない。
「—————邀撃隊突破されました!!敵機空母部隊へ————!!!!」
真っ先に狙われたのは空母イラストリアスだった。先の艦載機による攻撃で甚大な被害を受けていたこの艦は、ハーミーズ撃沈後攻撃を集中され今や浮かべる鉄屑と化していた。そこへ無情にも降り注ぐ800キロ爆弾と250キロ弾の雨。さしもの装甲空母も航空援護がなく、対空砲座も壊滅的な状況ではなす術がなく—————————
「っ!!イ、イラストリアス撃沈されました!!」
止めの航空魚雷2発が直撃し、轟沈。まさか皇国機が雷撃を行えるとは露程も考えていなかった東洋艦隊に動揺が走る。そしてそこから先は堰を切ったかのような有様だった。
次に攻撃を集中された空母ヴィクトリアス、フォーミダブルがそれぞれ航空魚雷3発ずつを受け大浸水を起こし、総員退艦ののち沈没。イーグルも爆弾数発が命中し右舷に4度傾斜、全電源喪失し漂流するしかなく、“浮いているだけ”としか言えない状況であった。
攻撃開始から30分後。敵編隊は全爆弾を投下し終え撤退して行った。……………残された東洋艦隊に甚大な被害を残して。だが、これで終わりではない。
「敵機来襲!!先程と同数の重爆撃機群です!!!!」
「まだ来るのか!?クソッ、全艦回避行動をとれ!!駆逐艦は煙幕だ、早くしろ!!」
自艦の上空ですら制空権を失った状態では、もはや単なる一方的な虐殺にしかならなかった。標的を空母以外の艦種にも拡大した皇国側は、逃げ惑う艦艇に爆弾を落とし、魚雷を至る所に撒いては翻弄した。そしてここから一挙に撃沈艦が急増。重巡ロンドン及びノーフォークが800キロ爆弾の直撃で轟沈すると、そこから立て続けに重巡シュロップシャー、軽巡4隻が沈没。
そして、次の瞬間
「———————!!巡洋戦艦レパルス、雷撃により撃沈されました!!」
世界で初めて、戦闘行動中の巡洋戦艦が航空攻撃により撃沈されたのだった。この他にも巡洋戦艦タイガー、クイーンメリーも同様の結末を迎え、巡洋戦艦自体が時代遅れであることを世界に知らしめた。
そしてさらに15分後、皇国の第三次攻撃隊が上空に現れた。もはやどうすることもできないフィリスは、自らもプリンス・オブ・ウェールズで逃げ惑いつつ蒼白な表情でこの惨劇を眺めていた。………眺めるしか、なかった。
「!!敵機突入してきます!!回避、回避ィィィィィィ!!!!」
ついに旗艦を目標に定めた敵機が次々と接近し、攻撃を敢行してくる。合計4本が的確に投下される…………が、ここはリーチ艦長の鋭い操艦によりなんとか回避に成功。しかし、その直後並走していた同型艦デューク・オブ・ヨークに魚雷が命中。たった一発で大損傷を負ったデューク・オブ・ヨークは舵を故障して落伍。単艦になったところを集中攻撃されあえなく轟沈していった。
————————12時00分、敵第三次攻撃隊帰投。およそ二時間半に渡った蹂躙は、かくして終結した。
振り返れば、もはや東洋艦隊は壊滅と言っても良い状況であった。戦艦バーラム、巡洋戦艦ロドニー及びレナウン、重巡デヴォンシャー及びサセックスといった大型艦から軽巡、駆逐艦といった小型艦艇まで、この第三次攻撃だけで27隻が沈没。
3回全てを合わせると実に40隻という途方もない数を失ってしまった。
そう、巡洋戦艦だけではない。最早戦艦ですら、どれほど進化を遂げようと航空機には到底敵しえないという事が証明されたのだ。恐らくこの事は後世の歴史家達により永遠に喧伝されていく事だろう。
……………が、後世の評価はともかく、フィリス提督自身は未だ諦めてはいなかった。確かに航空攻撃は凄まじかった。だが、未だ我が方の戦艦8隻、巡洋戦艦3隻が健在なのである。
「—————凌ぎ切った、凌ぎ切ったぞ!!ならばここからは我々連合王国の時間だ!!全偵察機を出せ、後は戦艦2隻を叩き潰せばそれで終わる!」
「ですが提督!北部、西部両方向に依然敵空母が存在します。それに再び陸上機の攻撃があるやも知れませんぞ!」
「再度?200機以上の機体を投入し、それに加えて再度の攻撃が出来るだけの国力は皇国に………いや全世界のどの国家にすら存在しない!敵空母の方は再出撃できるかもしれんが、たかが40機程度の爆撃ではこの艦隊を止められんよ!」
先程の空襲も、目標を空母に絞ったが故の大損害……しかも結局艦載機により沈んだのはハーミーズだけであった。そして相応の打撃力を持つ重爆撃機については、しかし幾度もの反復攻撃を実施するだけの国力を備えた国が存在しない事を考えれば考慮に値しない。
認めよう、素晴らしい多段攻撃作戦であった。王立海軍史上ここまで一方的に嬲られ、戦力を削ぎ落とされたのは史上初であった。例の後世の歴史家どもも、この海戦の戦術的勝者は皇国だと断ずるだろう。……………が、それでも戦略的勝利は連合王国が貰う。我々こそが第二の黒船となり、思い上がった皇国を掣肘するのだ!!
——————そして12時20分、偵察機より入電。
『——————敵艦隊見ゆ。戦艦1、巡洋艦2、空母1。方位北北東、距離50キロ』
「結構、ならば主導権を取り戻しにいくぞ。—————全艦対艦戦闘用意!………それから空母インドミタブル及びイーグルに伝えろ、残存機体をかき集めて攻撃せよ、と」
今や完全に自信を取り戻した彼は、そう言って眼前の大海原を見る。栄光は、もう直ぐそこに——————————
「—————————いいや、違うな」
不意に、悪寒がした。フィリスは反射的に周囲を見た。何も異常は無い。だが、なんだこれは。一体、この寒気は
ズドドドォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
瞬間、近くの海原に大轟音と共に立ち上がるいくつもの水柱。敵機————?いや、レーダーには何もいない。第一この晴天で、見つからないはずがない。なら、これは………………………………
「…………敵艦隊の現在地は」
「ほ、北北東距離推定………42000メートルです」
馬鹿な、そんな距離を飛ばせる艦砲など存在しない。少なくとも18インチクラスの砲を搭載していなければ………………………
……………………………まさか。彼の脳裏に蘇る、出港前のある懸念。『“——————— 全長260m以上、推定排水量7万t、搭載主砲—————————18インチ級”』。
いるのか、ソレが。来て、しまったのか—————————
「……………
———————作戦第三段階、完遂。
NEXT : VS “YAMATO”
真打登場。
航空攻撃はあくまで前座。この為だったんですね。さぁ次回は戦艦VS戦艦の大砲撃戦です一体結末は?!
………本文中で『200機以上の〜』と書きましたが、正直他のどの国も無理だとしても合州国は出来そうで怖い。いや、実際史実で似たような事(独、日本土空襲)やってたし……………
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