幼女極東戦記   作:信濃氷海

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新章突入!!

それではどうぞ本編です!!


第六章 MI作戦
第三十七話 ヤンキー魂、襲来


統一暦1927年4月18日 昼

秋津洲皇国上空 合州国陸軍爆撃機B25機内

 

 

「はーっはっはっは!間抜けな皇国市民どもご機嫌よう!以前皇王陛下より賜った勲章を返上しに参ったぞ受け取れぃ!!」

 

 機内で呵呵大笑しつつ親指を下に向ける合州国陸軍中佐ジェームズ・ドゥーリトゥール中佐。彼の眼下では、“未開の野蛮国”から“憎むべき危険な敵国”へランクアップ(?)した秋津洲皇国皇都の街並みが高速で流れていっていた。その美しい木造の大都市へ、ドゥーリトゥールが持っていた皇国勲章付きの無数の爆弾が墜ちていく。

 

 その軌跡を満足そうに見下ろしつつ、ドゥーリトゥールは薄く呟いた。

 

「……一つの爆撃として見た場合これはまことに小さな、微細極まりないものだろう。が、一つの戦いとして見た場合は——————大勝利の為の、実に巨大な一歩だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日同刻

皇国 横須賀海軍工廠上空

 

 

「狙え!狙え!高高度へ逃げられる前に仕留めるのだ!!」

 

 悔しさを押し殺しながら、ターニャは敵爆撃機の迎撃に奮闘していた。彼女には分かっていたことだった。…………だが、現実は無情だ。危険性を把握し、しかもそれを陸海軍のトップに伝達していても、結局防げなかった。

 

 ………これが、歴史の修正力というものなのか?柄にもなくそんな事が頭をよぎるターニャ。だがすぐにその悪い思考を振り払う————修正力?何を馬鹿な、そんなものは所詮存在Xの戯言並に信用できない代物だ。

 

「——————フォイアッッッ!!」

 

 狙撃術式を敵機のケツに叩き込む。合州国機に相応しい耐久性を見せていたB25も、数十人の航空魔導師による集中砲火を受けついに火を噴いた。これで、ようやく一機撃墜。しかし

 

「………………他の襲撃機はどうなった」

 

「ほ、本土の防衛体制は未だ整備途上ですので………………」

 

 つまり、迎撃は失敗ということか。分かり切っていたことだが、事実として突きつけられるとやはり悔しさは残る。………そもそも、後手後手に回ったこの状況で、たまたま横須賀に停泊していて、かつ部隊の数割程度が艦に残存していたという偶然が無ければ、一機だって撃墜できたか怪しい。

 

 ギリ、と奥歯を噛みしめターニャは心中で悪態をついた。——————第一何故、

 

 

 

 

 未だ戦争が続いているんだ?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

統一暦1927年3月10日

皇国 東京 外務省大臣室

 

 

 別に、外務省が講話のために何もしていないとか、軍部の不穏な輩が邪魔をしているとかそういう事は一切なかった。ただ

 

 ………………何かが、致命的に食い違っていた。

 

「——————この講話条件を作ったのは誰だあっ!!」

 

 外務大臣室の扉を蹴破り、一人の男が突入してきた。血走った目で、肩を怒らせその男——山野はそのまま松坂外相に詰め寄り、口角泡を飛ばして怒鳴り散らす。

 

「一体外務省は何を考えているんだ!!こんなゴミで本当に合州国を動かせると思っているのか?!」

 

「ゴミとは心外ですな山野大臣。軍人だからとそのような侮辱的行為が許されるとお思いか?」

 

 だが、対する松坂は極めて冷静に、山野を蔑んだ目で見つつ素早く切り返した。その様子に、更に怒りをヒートアップさせた山野は青筋を浮かべ一つの文書を机に叩きつける。それは、数日前にイルドアに向け通達した最終講話条件が記された書類であった。

 

「……『①フィリピンの割譲、②シンガポール及び香港の99カ年租借、③インドシナ連邦の割譲、④ハワイ諸島全島の99カ年租借』?!これがゴミでなくてなんだと言うんだ!!冗談じゃない、火に油どころか爆弾を放り込むようなものだと何故分からん!!」

 

 あまりに傲慢、あまりに過剰—————山野はそう言って即時撤回とより現実に即したものへの変更を迫る。しかし、眼前の松坂はそもそも山野が何を言っているのか理解できていないようだった。

 

「…………山野さん、どうもあなたは気に入らないようだが、これは以前の戦争における講話内容等を参考にした、国際法に完全に則った完璧な講話案だ。賠償金ではなく領土のみを求める…………それが基本だそうだろう?」

 

「?!………………あ、あんたそれ本気で言っているのか?」

 

 無論だと頷いた松坂に、怒りすらも忘れて絶句する山野。この衝撃的な発言に、もはや激する気力も無くしたのか彼はふらふらと外務省を出ていった。

 

 …………勝利は猛毒である。少なくとも、国力に見合わない事をしている内は。

 

「何故だ…………何故分からん!!」

 

 結局のところ、皇国内でそれを真に理解している者は実際の所ほぼ皆無だったと言う事だろう。————即ち、どれ程の大勝利を重ねようと、どんなに敵の艦隊を殲滅しようと、所詮皇国はひたすらに慈悲を乞うだけの立場でしかないと言う事を。

 

 戦争が、国力というチップを賭けて死闘する総力戦となった今、最初から手持ちのチップが少ない国に用意された道は二つしかない。“名誉ある地獄”か“屈辱的な天国”のどちらかである。山野が目指したのは、あくまで“屈辱的な天国”を多少マシな天国にするための戦争である。決して“名誉ある地獄”などという自殺ではない————————しかし、外務省はそれを全く分かっていなかった。

 

 たしかに、あれほど苦戦を重ね、ようやく勝利できたかつての対ルーシー帝国戦役ですら、賠償金は無理でもかなりの領土割譲を認めさせたという前例があるのだ。それに対し今戦争では苦戦どころか連戦連勝!なのに何故こちらが譲歩しなければならないのか?おそらく彼らの言い分はこんな所だろう。

 

 —————皇国を取り巻く状況が、決定的に異なるというのに。

 

 しかし結局、怒りとは裏腹に山野は大した有効策を取れなかった。それは彼が自らに課す“軍人が必要以上に政治に口出しすべきではない”という信条をついぞ破れなかったことや、そもそも講話仲介を担うイルドアやら連邦やらのやる気が薄く、不誠実極まりなかった為どんどん日にちかが経過していったこと等が組み合わさった結果ではあったが、しかし一つ言える事は

 

 皇国は、講話成立の最高の時期を逸したという事だった。まぁ、例えイルドアが誠実な相手だったとしても、非公式で流出したこの講話条件を聞いた合州国ではその瞬間対皇国避戦派が一挙に減少したというからお察しではあるが。

 

 そして、その最中に起きた今回のドゥーリトゥール空襲。これを受けて山野は講和案の改正及び早期講和実現を断念。外務省の説得がダメなら、せめて合州国の戦意を少しでも削ぎ、講話のテーブルにつかせるための最後の切り札を得るべくある作戦の断行を決定した。

 

 

 

 

————————その作戦の名は、『MI作戦』

 

 

 

 

 かくして、講和のための決戦を望む皇国と、反攻という夜明けを欲する合州国、二つの思惑が太平洋の小さな小島——ミッドウェー島で激突する。どちらが勝ち、どちらが負けても

 

 

 

 

 

 この戦争の、一大分水嶺となるだろう。

 

 

 

 

 




ヤンキー魂恐るべし。世界広しと言えども陸上の大型爆撃機をいきなり空母に乗せて実戦に放り込み、しかも大成功させる国は米帝もとい合州国ぐらいしかいないでしょう。

史実では結局一機も撃墜できませんでしたが、今作ではなんとかターニャの奮闘により、横須賀に襲来した第13号機の撃墜に成功しました。まぁ全体的な結果はほぼ変わってませんが。

そして、ついに最後の抵抗地たるミッドウェー島の攻略作戦が本格的に開始されます。史実だと実にしょうもない大敗北でしたが、今作では果たして………?次話からどんどんMI作戦進めていきますのでお楽しみに!


あ、ところで以前言っていた、前章の戦艦主砲弾云々の話ですが、読者様の御協力により改稿することが出来ました!感謝感激雨霰です!!今後も、こうした御指摘等ありましたら遠慮なく感想欄でお知らせ下さい。

よろしくお願い致します!

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