それではどうぞ本編です!!
統一暦1927年6月5日 05時20分
皇国第一航空艦隊旗艦 空母『赤城』
「し、真珠湾が空襲された?!それに五航戦が…………?な、何故………」
ぐらり、とよろめく南斗中将。他の幕僚も衝撃の受け具合は似たり寄ったりであった。眼前の海域にいるはずの敵機動部隊が、何故真珠湾に…………潜水艦の偵察情報は一体…………………
…………………真相は、そもそもその偵察情報自体が間違いだったという事であった。いや、不正確であったと言う方が正しいか。
緊急電を送った潜水艦は、確かに6月4日夕方に合州国本土から来航して来た機動部隊を目撃している。……………が、即座に発見され凄まじい対潜攻撃を受けた。そして開戦以降の潜水艦の酷使による疲労の蓄積と、この執拗な攻撃が人的ミスを頻発させ
座標を打電する際、本来ならば『北緯三十度、西経百五十二度』と打つべき所を『北緯三十度、西経百”六”十二度』と誤って打電してしまったのだ。経度にしてたった10度の違いであるが、地図で見ればそれは1000キロ近いズレとなる。さらに『空母三隻』という報せも、以前述べた通り“沈没したサラトガではない即ち三隻目はエンタープライズという事は合流地点であったとしてもそこまで矛盾の無いこの座標は正しい”とごく自然に解釈され、結果一航艦は今の今までその誤情報に振り回され続けていたという事になる。
「…………全艦反転、真珠湾へ帰投する。それから戦闘機を直ちに発艦させ先にへ向かわせろ」
もっとも、もはや事ここに至っては真相の解明はさほど重要ではない。今やるべき事は後手に回ったとは言え対応策を迅速に取ることであり、気絶しかかっていた南斗も気力を振り絞って決断した。
「お待ち下さい長官、真珠湾ではなく五航戦へ先に救援を向かわせるべきです」
が、それを聞いた草津参謀長が血相を変えて進言する。
「だが参謀長、もし敵が昨年のハワイ作戦と同じことをして来たらどうする」
「陸軍の田中司令官の能力や統率に問題はなく、兵力面から言っても十分対応可能です。それでも敵が占領に成功するならば、例え一航艦が僅かな援軍を送ったとて無意味でしょう」
「…………うむ…………」
時間のなさを痛感する草津は、極めて早口にそう反駁した。だが…………
「しかし参謀長閣下、五航戦との距離は1300キロ近くあり、速度の遅い爆撃機や攻撃機では到達は早くても4時間後ですぞ」
“距離”を懸念して、五航戦の方とて援軍は無意味ではと訝る一人の参謀。それに続いて、他の幕僚らも口々に消極的な発言を繰り返す。しかし、そこへポツリと口を挟んだ南斗の一言が
「——————ならば、戦闘機に爆弾を積めば良いのではないか?」
戦局を、変えた。
「せ、戦闘機………零戦を爆装する、と……………」
航空畑の人間からしたら荒唐無稽な話であり、彼らの常識では決して有り得ないことであった。………これはひとえに、元々水雷畑であり、航空の常識に囚われていない南斗だからこそ思いつけた案だったと言えよう。
「た、確かに設計上は零戦の翼面に30キロ及び60キロ爆弾を搭載可能とは言うが……………」
「いや待て、確か零戦の増槽タンクは250キロ爆弾とほぼ同じ重量だ。増槽タンクは投下可能だから、付け替えるだけで運用できる………かもしれない」
喧々轟々と言い合う幕僚たち。皆意見は言うがそれが正しいという確信も持てず、声量の割には覇気に欠ける論争であった。
「ともかく!!理論上出来るのならばやるべきだ!五航戦をみすみす見殺しにして良いものか!」
その空気を吹き飛ばしたのは、航空参謀
「参謀長、確かに真珠湾は大丈夫なのだな?」
「はっ、田中司令官をお信じ下さい………ご決断を」
「………………ならば、赤城の戦闘機を爆装させ、直ちに発艦させよ」
かくして、方針は決した。ひとたびそれが決まれば、幕僚らの動きも早い。直ちに格納庫に連絡が行き、急遽零戦の爆装が行われ始めた。
…………が
「ば、爆装?!…………どうやってやるんだ?」
「増槽タンクの代わりに250キロ爆弾?じゃあ増槽タンクはどうするんだ?」
「なんでも五航戦に着艦するから無くても構わんとさ」
「取り敢えず赤城の全戦闘機を爆装させろ!直掩は他の3空母に任せれば良い!」
いきなりそんな事を命じられた現場は大混乱となった。艦爆の投下装置を無理やり零戦にはめ込んだり、中にはそれすらも付けずに爆弾を直接機体に取り付けてみたりと有り体に言って支離滅裂であったが、ともかく決定から約15分後にはなんとか発艦可能となっていた。
五航戦救援部隊の編成は、まず爆装零戦9機と直掩の零戦3機が先行。これらは全て赤城所属であり、その後加賀、飛龍、蒼龍の機体を中心とした通常の攻撃隊が後を追うとされた。
先行隊が赤城のみからの抽出であったのは、赤城搭乗員が最も練度が高いため不慮の事態に比較的対応可能である事、そして“爆装零戦”というややこしい命令を他空母へ電信や手旗信号等で伝達した場合さらなる混乱が生じるためといった理由からであった。
………ただ、極めて混乱した状況ながらも、先行隊の士気は非常に高いものだった。爆装などという意味不明な状況だが、彼ら一航戦にとって五航戦は出来の悪い弟のような存在である。その弟が、今まさに敵の攻撃でやられかけている————ならば、
奇跡を、起こしたのかもしれない。
3時間後、ようやくノースカロライナ上空に到達した先行隊は各機バラバラに突入を開始。不慣れさが目立つそれは、しかしこの時合州国側のあらゆる注目が前方の五航戦のみに向けられていたことで相殺され、08時30分すぎに先頭の爆装零戦が250キロ爆弾を投下した。凄まじい急角度で落とされたそれは、艦爆隊の急降下爆撃にすら匹敵する高精度で落下していき
ノースカロライナの5インチ砲塔に直撃したのだった。さらに、この一撃は砲塔の天蓋装甲を貫き内部で爆発。その衝撃で周囲の5インチ砲弾が誘爆し、結果としてノースカロライナは全電源を喪失。主砲塔も発射直前で動かなくなり、すべてを掴むはずだった彼らは一瞬にしてすべてを失ったのだった。
それを知ったハストビアは、生気の抜けた顔でその場に崩れ落ちた。08時35分、攻撃手段を失った合州国側は撤退を決定。180度反転し、次々と襲いかかってくる一航艦の先行隊の攻撃を避けつつ北上を始めた。
そして、最後の最後で五航戦を死から救った先行隊は、乗組員たちの歓声に迎えられ瑞鶴へ着艦した。彼らの歓喜の声が示す通り、南斗の偶然の閃きにより実行されたこの爆装零戦は大成功に終わった。
……………と、言うわけでもない。確かに危機的状況を救ったのは確かだが、それは完全に奇跡の領域であり、この作戦には問題が山のようにあった。
まず、大前提として零戦は機体強度不足のため本来であれば急降下爆撃は御法度なのである。また標準装備の射爆照準器では水平爆撃は不可能な為、緩行下爆撃という特殊な攻撃態勢を取らねばならないのだが…………
それについて詳しく説明を受ける時間のなかった零戦搭乗員達はいつも援護しつつ横目に見る艦爆隊の動きを見様見真似で行ったのだった。結果、攻撃に唯一成功した1番機を含む3機が投下後の引き起こしに失敗し海面に激突。
しかも、それ以外の6機は急ごしらえの投下装置の不具合によりそもそも爆弾を投下することもできず、2機が対空砲により墜とされ帰還できたのは4機のみ。それも、爆弾をつけたままでの着艦はできないためパラシュートで脱出後、五航戦の駆逐艦に救助された。
それでも戦局を変えた一発は、その後皇国軍上層部の意向で喧伝された。……………それが後の
「…………嫌な予感がするな」
そして、おそらく世界で唯一その未来をほぼ正確に推察していたターニャは眉をひそめ小さく呟いた。………この予想が的中する前に、講和を結ばねばならない——————そう、決意を固くした。
が
悪夢は未だ、終わっていなかった。—————五航戦ではなく、
「————————ッ!!敵機直上、急降下!!!!」
……………空母赤城の見張員がそう叫んだ時
———————ミッドウェー海戦二つ目の、
爆装……と言うと、今日ではどうしても特攻と混同されがちですが、元々戦闘機を爆撃機にしようという動きは戦前からあったようです。ただ、単座だとどうしても爆撃精度や洋上行動能力が専用の爆撃機に劣るため実戦投入はかなり遅くなり、大規模投入されたマリアナ沖海戦では壊滅的被害を出して惨敗してしまいましたが……………
あと、零戦だと急降下が苦手なのでその点で各国の戦闘爆撃機に一歩劣る感は否めませんね。
さて次話は、攻撃隊を出撃させ一息ついている一航艦の状況です。何やら不吉すぎる言葉がチョロっと聞こえていますが、一体どうなるのか……?
前書きにも書きましたがアンケート御協力有難うございます!何時でもいいという方が最も多いのですが、次点で現状と同じ19時投稿派が多かったためこのまま19時投稿で行こうと思います。今後ともなにとぞよろしくお願い致します!!
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