まぁ幕間だし多少はね!!
それではどうぞ!
統一暦1925年10月20日
皇都東京 上野
暇である。ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉は、ついに心の中で叫んだ。
拝啓、エーリャへ。私は今、極東にいます。すっごく、暇です。
何しろやることが無いのだ。ついて早々、オットー大使より「武官の仕事は少ない」と身もふたもないことを言われて以降、上司のターニャより“長期休暇”を申し付けられていたのだ。
最初の数日は良かった。203やら潜水艦やら、酷い目にあった分楽しもうと、皇都東京の観光名所を廻り続けた。が
「ううう、言葉は通じないし、知り合いは誰もいないし…………203がなつかしいよぉ」
ついには、あの地獄の戦場が懐かしいとのたまう始末。ああ、行きの戦艦の中は良かった。ほとんどの相手が帝国語、ないしは連合王国語が通じるからだ。………あの麻雀は楽しかったなぁ………
………………麻雀?そういえば
「………………確かここに来る時も、そんなような場所があったような………」
そして、あたりを捜索すること十分ほど。ついに、
「あ、あった!」
そこは、お世辞にも小綺麗な場所とは言えない所だった。入り口には『雀荘』とハゲかけの文字が書かれており…………
どうもヴィーシャは、ただそんなような雰囲気、と言うだけで「あった」と言ったらしい。クソ度胸なのか無鉄砲なのか………
さすがは第203航空魔導大隊出身者である、としておこう。
「えーっと、こ、こんにちはー?」
潜水艦から戦艦の中に至るまで、必死こいてなんとか覚えた基本の皇国語で、中に呼びかけてみる。と、
「うわーはっはっは!いよぉーしまた俺の方だなありがとよ!」
そこでは、小柄な坊主頭の男が、下品にゲラゲラ笑いながら、麻雀を打っていた。
………いやこれは、打ち終わっていた、か?
「かー、やっぱりつまらねぇな麻雀なんてよ。お前ら男ならブリッジやれブリッジ!面白いぞぉ?…………ん?来客か珍しい。このクソ雀荘にまだ来る物好きがいたとは……………っておお?!」
偉そうに語りながら、男はゆっくりと振り向いた。そして、見た。
…………………おいおいおい
「あー、見た感じ帝国語か?
「あの!それはもしかして、麻雀ですか?!」
「つっても俺も分から………あ?何?今なんて言った??」
「それ、麻雀やってるんですか?」
静まり返る雀荘。あまりの急展開に、皆困惑して顔を見合わせている。
が、ただ一人彼の男だけは
「……………ああ、そうだぜお嬢ちゃん。なんだ、あんた麻雀に興味あんのかい?」
何かを、感じ取ったように、彼はニヤリと笑う。もし、彼のいつもの賭博仲間がこれを見れば、こう言っただろう。
やつは、本気だ。と。
「はい!すっごく楽しいですよねー!」
それに対して、ヴィーシャも実に嬉しそうに言う。その表情は、先程までの退屈したものでは無い。
「そうか………なぁ嬢ちゃん。どうだい、俺と一席、打たないか?」
※
同年同日
皇都東京 上野 雀荘『いろりや』
「……………」
「……………」
場を、沈黙が支配していた。内2人は恐れの、そしてもう2人は、
歓喜の
「………………ポン」
…………………?観衆がざわめく。そして、同じく怪訝そうにヴィーシャを見る男。
「…………………ここでそれか?フーム、なんだ、この感じは…………?」
嫌な、予感だった。普通の奴なら、この場面で
だが、男はこの感覚を知っていた。そして、これに従うべきだと、直感で感じていた。
「…………悪いな、先に抜けさせてもらうぜ」
ここから、男は方針を切り替える。点数度外視で、より速く上がれるように—————
だが
「………………………あ、来た」
ポツリと、彼女が言う。刹那、彼は悟った。もう、手遅れであったことを。
「カン!えーっと、王牌から一枚……っハクシュ!…………うーん、風邪ですかねー?」
男の目が、釘付けになる。くしゃみで落とした牌。それは、まさか、もしや—————————
「お、お嬢ちゃん、それ……………」
「え?あ!!ヤッターえーっと………りんしゃん………なんでしたっけ?」
手牌が、めくれる。それは
「り、嶺上開花…………………第一局で?」
かすれる声。しかも
「…………ドラ、6?な、なんて豪運…………………」
無邪気に喜ぶその様子を、男は呆然と見つめていた。まさか、世界にはこんなやべぇ奴が居たとは。
「…………くくく、あーっはっはっは!そうか、これがそうなのか!!面白いじゃないか麻雀!!こんな衝撃はブリッジでも無かったぞ!!」
そして男はニタリと笑い、彼女に問いかける。
「君、名前は?」
対しヴィーシャも、にこやかに答えた。
「ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフです!」
「………ほう、ではセレブリャコーフ君。楽しい戦いを、続けようじゃないか」
勢いよく頷くヴィーシャ。そう、まだ戦いは、始まったばかりなのだ………………
※
同年同日
同地
「うーむ……………まさか、そう来るとは……………………」
第四局、遂に最後の一局で
「いやー、私も苦しかったです。凄く、上手いですね!!」
勝負はついた。
「くくく、嫌味かい?だが………そう言ってくれると嬉しいよ」
最後の最後、土壇場でヴィーシャが男の猛攻を凌ぎ、逆襲で満貫直撃に成功。これにより、ヴィーシャは全4局全てで上がり、ぶっちぎりトップとなった。
「いやー、良かった良かった」
「本当です!………あ、もうそろそろ時間なので帰りますね」
もうすっかり暗くなっていた。ヴィーシャはキリもいいしここで帰ろうとした。が、それを男が呼び止める。
「セレブリャコーフ君、俺はもう暫くはこのクソ雀荘に毎日来る。…………もし、君さえ良ければ、だが」
ナンパのような文言だが、しかしヴィーシャは笑顔で、答えた。
「ええ!勿論です!!次も私が勝ちますよ?」
「ハッ!言ってろ。俺はもう負けんさ」
…………………そして、一旦、二人の
「…………くくく、この雀荘に通いたいってなったのは、初めてだなァ」
「楽しかったなぁ………よーし、暇だしあそこに通い詰めるぞー!」
………………案外、早そうであった。
「…………………おや、ヴィーシャ。今日はずいぶん遅いな」
夜更ごろ、ようやく宿舎に帰ってきたヴィーシャは、そこで呆れ顔の上官と出くわした。
まぁ、二人はルームシェアしていたので、会うのは必然ではあったが…………
「え!い、いやぁあはは」
「別に何も言わんさ。休暇中の行動は個人の自由だからな。しかし………随分と、マシな顔になったな」
え!?とヴィーシャは思わず顔を触る。それを見て、慌ててターニャは付け加えた。
「ああ、いや、大層なことじゃないんだが………何か面白いことでも見つけたのか?」
「はい!」
満面の笑顔で、それに答えた。そうかそうか、とターニャは慈愛のこもった目でヴィーシャを見つめ、
言った。
「それじゃあ、明日は服を買いに行くぞ?覚悟しておけ半日は返さんからなー」
「え、ちょっと?!ど、どうしたんですか少佐!なんでそんなに…………って涙が赤いですよ?!」
「うるさいうるさい!!ええい誰か道連れにしないと気が済まんのだ!!!!」
「そ、そんなぁ……!!」
………どうやら再会は、やや遅れそうであった。
題名は気になさらずに。ただの思いつきです。
結局最後まで相手の名前出しませんでしたが、一応これもモデルがいます。良かったら考えてみてください。え?どうでもいい?(´・ω・)
さぁて次回からはいよいよ第二章!果たしたターニャはそこでどんな酷い目に遭うのか?!乞うご期待!!
次話投稿は………明日の昼かなぁ?…………出来るかなぁ
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