ね?
それではッ!どうぞッッ!!
第七話 洗礼、教育
統一暦1925年12月6日
埼玉県 修武台 陸軍航空士官学校
この日、学校内は上から下への大騒ぎ、大変なバタつきようであった。
「一号候補生は全員講堂へ急げ!!もたもたするな!!」
教官の怒鳴り声、学生らの走り回る足音。それらはやがて少しずつ一つの方向へと向いていき
「……………ったく、いきなり何だってんだ。せっかくの休みによぉ」
講堂の硬い椅子にふんぞり返り、学生の一人がぶつくさ文句を言う。周りの者も皆それに同調し、講堂内の雰囲気は最悪であった。
「静粛にせんかッッ!!じきに重要な来賓が来る!!貴様らくれぐれも非礼の無いようにしろ!」
壇上で、額に青筋浮かべた副校長が怒鳴り散らす。が、それを眺める学生の顔は冷め切っている。
「………副校長閣下よぉ、トイレ行ってきていいか?」
「駄目に決まっとるだろなんでさっき行っとかんのだ!!」
「来賓って誰だよ写真撮るわ」
「
国際問題ぃ?知るか俺たちゃ天下の皇国士官様だぞ。すっかり興味をなくした彼らは、副校長の怒声などまるで気にせずくっちゃべる。
「………そういや聞いたか?上坊教官が憲兵に取っ捕まってボコボコにされたらしいぜ」
「はぁ?!あのおっさん
すると、トクダネを持ってきた学生がニヤリと笑う。
「なんとあの人、陸相主催の晩餐会で泥酔して大暴れしたらしい」
あまりに斜め上のその情報に、思わず聞いていた学生らがどよめく。本当か、と咳き込んで尋ねると、確かに本当だと言う。
「しかもだ、その時絡んで暴言吐いた相手は、よりにもよってその時の主賓、帝国の駐在武官だ!」
「マジかよ………と言うか、なんで上層部のアホどもは
「そりゃお前…………あの人は皇国唯一の“撃墜王”だぞ?呼ぶしか無いだろ…………天才ったってどこか致命的な欠点は有るもんだなぁ」
と、壇上がざわつきだす。どうやら、その“来賓”とやらがきたらしい。
……………………カツ
カツ、カツ、カツ、カツ……………………
…………………誰に言われるでもなく、学生たちの喋りが止まる。ざわめきが小さくなり
「…………ご紹介させていただく。当校の視察に来ていただいた、プルッツェン帝国駐皇国大使館附駐在陸軍武官の、ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐殿並びに、その副官、ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉殿だ」
やや、困惑したように副校長が紹介する。と、その瞬間
「…………アハハハハ!駐在武官?
それに、追随するように、学生たちの嘲笑が漏れ出す。慌てて副校長が止めようと怒鳴るが、全く効果はない。
………………しかし、何故かターニャにとっては、これは特に不快なものではなかった。実際、こういう風に直接的に言われる方が遥かにマシなのだ。無理矢理戸惑いや不快感を押し殺し、表面だけ友好的にされるより、よほど。
むしろ、新鮮ですらある。あの、懐かしき帝国の士官学校を思い出す…………
なるほど、無いと思っていたが……………しかし、これは職務上仕方のないことだ。ターニャは、そして
「…………私個人は、別にどうだって良いんだがな。しかし、職責上、それは看過できん。帝国を、侮辱することは許さん」
エレニウム九七式、作動。魔力を込め、
跳躍する。
「?!うごガッッッッッ!!!!」
周囲の目には、一瞬にして彼が消えたように見えただろう。……………いや、
「う、ぎぎぎ……………て、てめぇ」
「おや、まだ喋れるのか。驚いた、皇国軍人も中々やるではないか。まぁ安心しろ、別に命まではとらんさ。————慣れているしな」
さぁ、教育の時間だ———————そして、ターニャはどこからともなく出したナイフを振り下ろ—————————
「………………………ほう、防殻術式か」
振り下ろされたはずの刃は、透明な、
「………………貴様、魔導師か。………………そうか、そうか!ああなるほど、確かにここは
そして、くるりと後ろを振り向き、唖然としていた副校長に尋ねる。
「副校長閣下。ここには、何人の魔導師がいるのですかな?」
「はい?!え、ええと………24名ですが…………………」
そうか、そうか。なら、こうしよう
「連帯責任だ。ここにいる魔導師諸君、この馬鹿の尻拭いをしたまえ。………………我々と、貴様たちでの、模擬戦だ」
そう宣言したターニャの顔は、幼女と呼ぶには、余りに凶悪な……………
※
同年同日
埼玉県 陸軍航空士官学校 練兵場
「申し訳ありませんな、勝手に決めてしまって」
ターニャが言う。が、副校長はさらに汗だくになったのみ。何故だろう?ターニャは実に不思議だった。
彼女たちの見る先では、二つの勢力が睨み合っていた。
一方は、怒りと屈辱に燃える秋津洲皇国の士官候補生たち。その数、24名。
そして、もう一方は……………
「ほ、本当に、あれでよろしかったのですか?」
「無論。あまり、私の副官を見くびらないでいただきたい」
当然だと言わんばかりに、ターニャがピシャリと言う。当初、候補生たちはてっきりターニャ自身が戦うのだと思い込んでいた。だが、蓋を開けてみれば………
「ヴィーシャ、行けるか?」
「勿論です少佐!」
の二言で、相手はセレブリャコーフ少尉ただ一人となった。
が、ターニャはかけらも心配していなかった。この程度のヒヨッコなど……………
「……………そ、それでは、只今より模擬戦を開始いたします!」
審判を押し付けられた教官が、声を裏返しながら叫び、ピストルを頭上へと撃った。
全員の宝珠が煌めき、その身体は宙へと舞い上がる。
戦闘が、始まった——————!
先に動いたのは、候補生たちだった。数の差を生かし、ヴィーシャを押しつぶすように突撃。そして、小銃を一斉に構え
十字砲火を浴びせかける。が、
「……………?!くそっ!あれはデコイだッッ!散開、散開—————っ!」
「いや、遅い」
ターニャが呟く。刹那、無数の銃声とともに、複数の候補生たちが呻き、墜ちていった。
「………っ!んなっ、なんだあの高度……………っに、人間かよ」
上空からの急降下。集団は切り裂かれ、一人また一人と堕とされていく。まさに、セレブリャコーフ少尉は圧倒的だった。が、皇国側もまだ、諦めてはいなかった。
「くそっ、もうあと16人か…………機動をやめるなッ!おっさんの言ったことを徹底的に守れッ!」
…………………数分後
「……………ふむ、これは」
候補生側の残存数、9名。しかし、その残りの9名は、中々にしぶとく、中々に上手い。
「……………ほう、そう行くか。なるほど、かなり良い。だが…………これは経験というより、教育の結果か?」
そこで、ターニャは横の副校長に聞いてみた。
「彼らの教官は、いったい誰ですか?かなり、良いセンスだ」
が、どうも歯切れが悪い。えーだとか、あーと言い。ようやく絞り出したのが
「じ、上坊弘道大尉という男で…………」
「上坊?…………ああ、あの。なるほど、単なる泥酔した陰謀論者ではなかったという訳ですか」
そうこうしているうちに、上空では間もなく、決着の時を迎えようとしていた。
「実にいい指導ではある。が、まだまだ甘い。実戦用に工夫されていない。だが………………」
ついにあと一人になった。未だ血塗れで、しかし闘志に満ちたその男は果敢にもヴィーシャへと突撃していく。対しヴィーシャも、冷静に防殻を張り迎え撃つ。
交差は、一瞬だった。再び離れていく両者。だが
「ぐ、ご、が…………………」
彼は、白目を剥きそのまま放物線を描いて墜ちていった。そして、反対方向のヴィーシャは、特に何の感慨もなく一息つき、ゆっくりと降りてくる。
「ご苦労、ヴィーシャ。鈍っていないようで何よりだ」
「いえ、203の時に比べれば全然ですよ」
二人が和やかに談笑する、その後ろでは。
「く、くそぉ…………どうなってんだ畜生」
「ば、化け物だ…………」
「……………………う、動けねぇ」
死屍累々の惨状が広がっている。どうやら、とんでもない大波乱の始まりが、やってきたようだった……………
いせかるみたいな楽しい学校生活!のはずが、どうしてこうなった…………
そしてぇ!麻雀といい模擬戦といい、薄い戦闘シーン!!ひどいなぁ(自虐)今後に期待ですね(?)
次話は………今日の夕方!絶対だかんな!!多分だけど!!!
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