幼女極東戦記   作:信濃氷海

9 / 53
セー…………フ?昼だよ、ね??

ね?


それではッ!どうぞッッ!!


第二章 学生よ、野望を抱け
第七話 洗礼、教育


統一暦1925年12月6日

埼玉県 修武台 陸軍航空士官学校

 

 

 この日、学校内は上から下への大騒ぎ、大変なバタつきようであった。

 

「一号候補生は全員講堂へ急げ!!もたもたするな!!」

 

 教官の怒鳴り声、学生らの走り回る足音。それらはやがて少しずつ一つの方向へと向いていき

 

「……………ったく、いきなり何だってんだ。せっかくの休みによぉ」

 

 講堂の硬い椅子にふんぞり返り、学生の一人がぶつくさ文句を言う。周りの者も皆それに同調し、講堂内の雰囲気は最悪であった。

 

「静粛にせんかッッ!!じきに重要な来賓が来る!!貴様らくれぐれも非礼の無いようにしろ!」

 

 壇上で、額に青筋浮かべた副校長が怒鳴り散らす。が、それを眺める学生の顔は冷め切っている。

 

「………副校長閣下よぉ、トイレ行ってきていいか?」

 

「駄目に決まっとるだろなんでさっき行っとかんのだ!!」

 

「来賓って誰だよ写真撮るわ」

 

()()()()になるぞッッッ!!」

 

 国際問題ぃ?知るか俺たちゃ天下の皇国士官様だぞ。すっかり興味をなくした彼らは、副校長の怒声などまるで気にせずくっちゃべる。

 

「………そういや聞いたか?上坊教官が憲兵に取っ捕まってボコボコにされたらしいぜ」

 

「はぁ?!あのおっさん()()は何やらかしたんだよ!」

 

 すると、トクダネを持ってきた学生がニヤリと笑う。

 

「なんとあの人、陸相主催の晩餐会で泥酔して大暴れしたらしい」

 

 あまりに斜め上のその情報に、思わず聞いていた学生らがどよめく。本当か、と咳き込んで尋ねると、確かに本当だと言う。

 

「しかもだ、その時絡んで暴言吐いた相手は、よりにもよってその時の主賓、帝国の駐在武官だ!」

 

「マジかよ………と言うか、なんで上層部のアホどもはおっさん(上坊教官)入れたんだ?あの人の酒癖の悪さは有名だろ」

 

「そりゃお前…………あの人は皇国唯一の“撃墜王”だぞ?呼ぶしか無いだろ…………天才ったってどこか致命的な欠点は有るもんだなぁ」

 

 と、壇上がざわつきだす。どうやら、その“来賓”とやらがきたらしい。

 

 ……………………カツ

 

 カツ、カツ、カツ、カツ……………………

 

 …………………誰に言われるでもなく、学生たちの喋りが止まる。ざわめきが小さくなり

 

 ()()が檀の中心に立つと、講堂は水を打ったように静まり返っていた。

 

「…………ご紹介させていただく。当校の視察に来ていただいた、プルッツェン帝国駐皇国大使館附駐在陸軍武官の、ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐殿並びに、その副官、ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉殿だ」

 

 やや、困惑したように副校長が紹介する。と、その瞬間

 

「…………アハハハハ!駐在武官?()()が??おいおい冗談は良くねぇよ副校長先生よぉ?!こんなチンケなクソガキが、軍人だぁ??ウワハハハ!!こいつは傑作だ、まーだ横の娘っ子の方がマシだぜ!!ククク、帝国ってのはただの道化の馬鹿どもだったってか!」

 

 それに、追随するように、学生たちの嘲笑が漏れ出す。慌てて副校長が止めようと怒鳴るが、全く効果はない。

 

 ………………しかし、何故かターニャにとっては、これは特に不快なものではなかった。実際、こういう風に直接的に言われる方が遥かにマシなのだ。無理矢理戸惑いや不快感を押し殺し、表面だけ友好的にされるより、よほど。

 

 むしろ、新鮮ですらある。あの、懐かしき帝国の士官学校を思い出す…………

 

 なるほど、無いと思っていたが……………しかし、これは職務上仕方のないことだ。ターニャは、そして

 

「…………私個人は、別にどうだって良いんだがな。しかし、職責上、それは看過できん。帝国を、侮辱することは許さん」

 

 エレニウム九七式、作動。魔力を込め、

 

 跳躍する。

 

「?!うごガッッッッッ!!!!」

 

 周囲の目には、一瞬にして彼が消えたように見えただろう。……………いや、こいつら(士官候補生)だったら分かるか?ターニャは、無表情に、冷徹に不逞学生を見下ろしながら、そう考えた。

 

「う、ぎぎぎ……………て、てめぇ」

 

「おや、まだ喋れるのか。驚いた、皇国軍人も中々やるではないか。まぁ安心しろ、別に命まではとらんさ。————慣れているしな」

 

 さぁ、教育の時間だ———————そして、ターニャはどこからともなく出したナイフを振り下ろ—————————

 

「………………………ほう、防殻術式か」

 

 振り下ろされたはずの刃は、透明な、()()()()()な装甲により、空中で止められていた。そうか、すると彼は

 

「………………貴様、魔導師か。………………そうか、そうか!ああなるほど、確かにここは()()士官学校だ」

 

 そして、くるりと後ろを振り向き、唖然としていた副校長に尋ねる。

 

「副校長閣下。ここには、何人の魔導師がいるのですかな?」

 

「はい?!え、ええと………24名ですが…………………」

 

 そうか、そうか。なら、こうしよう

 

「連帯責任だ。ここにいる魔導師諸君、この馬鹿の尻拭いをしたまえ。………………我々と、貴様たちでの、模擬戦だ」

 

 そう宣言したターニャの顔は、幼女と呼ぶには、余りに凶悪な……………

 

 

 

 

 

 

 

 

同年同日

埼玉県 陸軍航空士官学校 練兵場

 

 

「申し訳ありませんな、勝手に決めてしまって」

 

 ターニャが言う。が、副校長はさらに汗だくになったのみ。何故だろう?ターニャは実に不思議だった。

 

 彼女たちの見る先では、二つの勢力が睨み合っていた。

 

 一方は、怒りと屈辱に燃える秋津洲皇国の士官候補生たち。その数、24名。

 

 そして、もう一方は……………

 

「ほ、本当に、あれでよろしかったのですか?」

 

「無論。あまり、私の副官を見くびらないでいただきたい」

 

 当然だと言わんばかりに、ターニャがピシャリと言う。当初、候補生たちはてっきりターニャ自身が戦うのだと思い込んでいた。だが、蓋を開けてみれば………

 

「ヴィーシャ、行けるか?」

 

「勿論です少佐!」

 

 の二言で、相手はセレブリャコーフ少尉ただ一人となった。

 

 が、ターニャはかけらも心配していなかった。この程度のヒヨッコなど……………

 

「……………そ、それでは、只今より模擬戦を開始いたします!」

 

 審判を押し付けられた教官が、声を裏返しながら叫び、ピストルを頭上へと撃った。

 

 全員の宝珠が煌めき、その身体は宙へと舞い上がる。

 

 戦闘が、始まった——————!

 

 先に動いたのは、候補生たちだった。数の差を生かし、ヴィーシャを押しつぶすように突撃。そして、小銃を一斉に構え

 

 十字砲火を浴びせかける。が、

 

「……………?!くそっ!あれはデコイだッッ!散開、散開—————っ!」

 

「いや、遅い」

 

 ターニャが呟く。刹那、無数の銃声とともに、複数の候補生たちが呻き、墜ちていった。

 

「………っ!んなっ、なんだあの高度……………っに、人間かよ」

 

 上空からの急降下。集団は切り裂かれ、一人また一人と堕とされていく。まさに、セレブリャコーフ少尉は圧倒的だった。が、皇国側もまだ、諦めてはいなかった。

 

「くそっ、もうあと16人か…………機動をやめるなッ!おっさんの言ったことを徹底的に守れッ!」

 

 …………………数分後

 

「……………ふむ、これは」

 

 候補生側の残存数、9名。しかし、その残りの9名は、中々にしぶとく、中々に上手い。

 

「……………ほう、そう行くか。なるほど、かなり良い。だが…………これは経験というより、教育の結果か?」

 

 そこで、ターニャは横の副校長に聞いてみた。

 

「彼らの教官は、いったい誰ですか?かなり、良いセンスだ」

 

 が、どうも歯切れが悪い。えーだとか、あーと言い。ようやく絞り出したのが

 

「じ、上坊弘道大尉という男で…………」

 

「上坊?…………ああ、あの。なるほど、単なる泥酔した陰謀論者ではなかったという訳ですか」

 

 そうこうしているうちに、上空では間もなく、決着の時を迎えようとしていた。

 

「実にいい指導ではある。が、まだまだ甘い。実戦用に工夫されていない。だが………………」

 

 ついにあと一人になった。未だ血塗れで、しかし闘志に満ちたその男は果敢にもヴィーシャへと突撃していく。対しヴィーシャも、冷静に防殻を張り迎え撃つ。

 

 交差は、一瞬だった。再び離れていく両者。だが

 

「ぐ、ご、が…………………」

 

 彼は、白目を剥きそのまま放物線を描いて墜ちていった。そして、反対方向のヴィーシャは、特に何の感慨もなく一息つき、ゆっくりと降りてくる。

 

「ご苦労、ヴィーシャ。鈍っていないようで何よりだ」

 

「いえ、203の時に比べれば全然ですよ」

 

 二人が和やかに談笑する、その後ろでは。

 

「く、くそぉ…………どうなってんだ畜生」

 

「ば、化け物だ…………」

 

「……………………う、動けねぇ」

 

 死屍累々の惨状が広がっている。どうやら、とんでもない大波乱の始まりが、やってきたようだった……………

 

 

 

 

 




いせかるみたいな楽しい学校生活!のはずが、どうしてこうなった…………

そしてぇ!麻雀といい模擬戦といい、薄い戦闘シーン!!ひどいなぁ(自虐)今後に期待ですね(?)

次話は………今日の夕方!絶対だかんな!!多分だけど!!!

定期投稿の時間調査(投稿してほしい時間に投票してね)

  • 00時00分(夜中)
  • 12時00分(昼)
  • 19時00分
  • その他の時間
  • 何時でもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。