ーーーーーーーッ!
それは仕切りに山奥である岩肌に響いた。
甲高い声だ。耳に触るようなとても甲高い。
ーーーーーーーーーーッ!
その声は次第に大きくなり、止まる気配もない。
なんだなんなんだ。
黒い影はのそりと動き始める。背に散りばめられた石や砂…岩といっても過言でない大きさのものまでもががらがらと音をたて崩れ落ちる。
影はのそりのそりと暗闇の中、歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
次第に耳に響く声も近く鮮明に聞こえ、近くなるにつれ辛さか顔をゆがめている。影にも感情はある。生き物なのだから。この自分の眠りを妨げるものは何だと怒りを携えて。
そして影は目にした。
その編み込みで作られる小さな小さな揺りかごの中に収まる小さき命を。
「……ム」
小さく発した音は人が発する言葉だった。
「…どういうことだ」
一息つくとその揺りかごを覆った。
ΘΘΘΘΘ
どす黒い雲がおおぞらを覆ったある日。畑仕事にいそしむ男は見た。
人気のないごつごつとした山に一つの小山が飛び立つのを。
「あれはなんだべさ…」
天変地異でも起きたのか。そう思わせるほど、その影は大きかった。山の一部が削り取られ浮いてる?いやそんなはずは…。男の脳内はぐるぐると同じ思考を回すだけ。現状に理解できず追いついていないのだ。
「うぁ、う、うわぁーーーーっ!」
男は叫び声をあげた。かぶっている麦わら帽子さえ飛びそうになるほどに背を向け走った。影がこちらに向かって次第に大きく、否近づいてくるのだから。
だがそれもむなしく男は慌てふためいて逃げたせいか、小さな段差に気付かず転倒。顔を地面にぶつけるほど豪快なこけ方を見せることになったわけだ。
「あぎっ!いてぇだぁ…」
そして地が揺れた。
ーードスンッ!
「うわあぁうわ」
必至にバランスを取ろうとしようが揺れる大地の前に危うく座ってる体勢でも転げてしまうのではないほど大地は揺れ、木々を揺らす。
そして男は目の前の現実に直面する。
目前に存在する大きい黄金の瞳に。
「ひ、ひぃいい」
男は逃げようとするが恐怖がゆえ、腰が抜け立ち上がることもできない。必至に動く両手で地を這うことだけだ。
「…ちがうな」
「え」
だが男はそこで立ち止まる。その大きな影から声が聞こえたのだ。どういうことだ。慌てふためく男の頭では整理しきれない現状に再び混乱を招き、恐怖を与えるだけだったが、然り。
声はなおも続く。
「そうか、我もついにこの時が。待ち望んだぞお主」
訳が分からない。
男が現状を言い表すなら一番適切であろう言葉だ。
それもそのはず、周りには人はいないあるのはこの大きな影なのだから。
だが次の瞬間。突風が男を襲った。
「ッ?!うっぷ」
砂埃も混ざったその風に少々吹き飛ばされながらも木の枝にしがみつき、遠くに飛ばされずにはすんだものの、この男。今まさに、飛び立とうとしている影の正体を彼が遠ざかったことにより明らかになった。
「ど、どらごんだぁーーーぁあ!」
木々が揺れる音翼がはためく音で彼の驚きの声はかき消されたが、そう。
この影が彼がいう、どらごん。即ち竜。
その姿に似合う威圧を見せ、その場を去った。
「夢じゃぁない…」
彼が見たものは本物だった。自分の頬ひっぱたいても痛い上に先ほど転んだ時の痛みもそのままだ。自分は見てしまった。おとぎ話のような昔の話にしかでてこないという本物の竜を。
伝説の竜を。
だが人里に下り、話を信じてもらえなかった男であった。
ΘΘΘΘΘ
「んーっおっしゃ!」
俺は大岩とほこっても申し分ない岸壁の端から遠くにあるであろう遠くの景色を眺める。バンダナの隙間から漏れる空の色に同化する髪もそのさわやかな風で靡き気持ちがいい。
「天気良ーしぃ!今日は出発日よりだ!さぁ帰えるぞ今日こそ我が愛しの”ギルド”へ!っはっはっは!」
「…はぁ。まったくなにを言っているんだお前のせいで迷ったんだぞ…」
「面目ない…」
俺の隣で腕を組み、なおかつその俺の膝元までしかない身長で地に立つ茶猫。不釣合いの大型の銃を背に愚痴をこぼすこの偉そな物言い。俺はこの”相棒”となる猫を今すぐ絞めたいのは山々だが、今回の出来事は非常に俺が悪い。
ので只今絶賛反省中のわけだが。だが。
「いやまじでさ。ピースさんよ。お前が”翼”使ったら早い話ですむじゃないの?」
「…」
「ん?どうしたピース?」
突然の沈黙。どういうことだ、疑問を抱え目線を向けた途端に放たれた言葉。
「…めんどくさい」
「てめええええええ!このくそ猫がぁーーーっ!」
クールに放たれる言葉と裏腹にこめられる言葉の内容はまったくの正反対。っておい。
「…疲れるし」
おまけに言い訳追加ときたもんだ。いやだがしかし、この”グラン=ガイアウス”こんなところであきらめてたまるもんですか!
「俺だって疲れてんの!わかる?わかっちゃうだろ!空飛ぶより歩くの疲れる!言葉通じるよな?!そっちのほうがいつもより楽してんじゃねえかっ!」
「…人として生まれた運命に後悔しろ」
このくそ猫ぼそっと何か言いやがった!てめぇも魔法なかったらただの茶猫だろぉが!あっ。言葉を発してる時点でただのねこじゃねえか。って今はそういう場合じゃないんだよ!
なんやかんやで俺たちはこの方角にあるであろうギルドへと向かう途中遭難したわけなんだが…。
そもそもここはどこか
ここはフィオーレ王国。
この世界の一部であり、大陸の一部の国であり、国家間に存在する一部である国。
この王国には、”魔導士”と呼ばれる者たちの存在が欠かせなくなった国。魔導士とは元来より自身から放たれる”魔力”そのものを実物と化し、自らの力として振るう傲慢な物。使い方次第では、悪にも正義にもなりうるもの。
そんな危険なものを扱い、世の中にごまんと転がっている悩み事から事件それまたはばひろーい分野まで。仕事として扱われ、それを行い解決するのが魔導士って所。
そしてその仕事場の仲介ってやつが”魔導士ギルド”と属されるものだ。
どこかに所属または、仮として所属しなければ仕事はこない。わずかな例外としてフリーで動く者もいるがそれは自分から仕事をさせてくれ、というものよりほとんどが指名制。つまえいよほど有名じゃない限りないといって等しいっていうものだ。
つまるところそのギルドから仲介し、俺ことグラン=ガイアウスとくそ茶猫改めピースの二人でクエストすなわち仕事となる出来事を行い、帰ろうとした矢先この深い森でまよったってところだ…。
これじゃぁあいつのこともばかにできんぞ…。
「…このままじゃ、埒があかないな…」
「お」
「…飛ぶか」
「おぉおお!ピース様なにとぞお力をおぉー」
正直食糧も底をつきかけているのでそろそろ帰宅したいところなんだよ、まじでこれまじで!
「…フン」
ピースの背に一瞬の光が集まり、収束した光が散ったかと思わせると、そこに先ほどなかった天使のような真っ白い翼が二対現れる。
そうこれこそが魔導士が仕事を行うための力。”魔法”
それこそ何万種類もある魔法は個々に宿りし、魔力がうんだらこうたらでー。まぁ相性ってもんがあるらしいから誰でも何種類も使えるっていうわけではない。
むしろ一つの魔法を極め、強くなるってのが一般的だ。むしろ何種類も所持して扱えるものがいるのか…それこそ天才だろうという一言で済まされるだろうがまぁそれは置いといて。
「おぉし、いってこぉーい!俺とお前の未来はその翼に掛かっている!」
「…都合のいいことを。ん、まぁいい数分でもどってくる」
「おうよ!」
そう返事を返すと彼は二対の翼を羽ばたかせ、飛んでゆく。
あぁー、今日もいい天気だ。
ではでは、これからよろしくおねがいいたしまあああす!って何回言ってるんでしょうかねw
まぁそんなわけで彼グランさんとその相棒ピースをよろしくでっす!