「帰ってまいりましたマグノリアーァ!」
「…疲れた」
遭難していたこと一週間。時は少々飛び、ついに俺ことグランとこの俺の背でぐったりと寝込んでいる茶猫改めピース二人は我らがギルドが建つ”マグノリア”という街の門へたどり着いていた。
ようやくですよようやく!苦労の末、ピースを空に送ってたのはいいものを上空から街らしきものがみえないと返事が返ってきたものだ。とりあえず方角だけは確かなはず。その確信というなの直観を頼りにここまできたが、まさかわずか二日で街にたどり着けるとは予想をはるかに上回っての到着。帰宅である。俺の脳内もハッピーラッキーと浮かれているのは間違いない。
「…二日もだろうが」
俺の背に隠くれてみえないものの信用のない視線とぼそりとつぶやくようなツッコミが降ってくるがそれは受け流します。さらりとね。
だがまぁここで立ち止まっていてもしょうがないと悟ると大通りを一直線に歩き始める。このマグノリアの大通りに差し掛かるあたりに位置するギルドを目指すためにだ。
商売や店引きなど様々な音でにぎわう大通りはいつみても人通りを多く感じさせる。まぁ実際多いのだが…。
「おぉグランさんじゃねえかっ!どうだ!今日もいっちょ掛けていくか?!」
「グランくん久しぶりねぇ~。またうちのお店をよろしくねぇ!」
とまぁここの市場では俺の名前も程々有名であって…。こうやって通行するたびに声をかけてもらい、時には雑談し、時には買い物を…。なんだったりするんだが、実は今の俺。ちょいっと急ぎ足なのである。のんびり買い物をという雰囲気という場合じゃない。
そう主に俺の命が危ない。
俺の背中に冷や汗をかくほどだ。
「わりぃ!今日は急ぎの用事でギルドにいかないといけねぇんだ!」
「おうおう!んじゃぁ”ミラ”ちゃんによろしくねっ!」
「お、おう…」
そうこれだ。まさに今俺の不安要素はこの一点張りである。なぜ俺がこんなに焦っているかというと、この”ミラ”という呼び名で我がギルドの看板娘になるほどのちょーぜつ美人さんこと”ミラジェーン=ストラウス”。この娘とある約束をしていたのだ。
『グラン最近働きづめじゃない?体大丈夫なの?』
『あぁ。べつに問題ないぐらいにしてるつもりだが…』
『じゃぁ一週間後のここの日に、一緒に買い物にでかけましょう!』
『は、え?ちょっとまて。俺いまうけているクエストきてるんだけど?いや受付嬢であるミラならしt』
『そーしってますともしってますよーぉ。あなたがここ最近ギルドで見かけないことも、だけどもうクエストはすんでるんでしょ?一週間もあれば帰ってこれるってぐらいの場所ってことも知ってるんだからね!』
『いや、のんびりかえr』
『おーし決定!一週間後が楽しみだね!』
という経由の元無理やりといっていいほどの約束をこじつけられたわけですが、ここでいや無理だからといってもぶーたれてはぶてるだけ。むしろこの楽しみといったときのとびっきりの天使スマイルを眺めているほうがまだ楽。ましてやこのやり取りは遠距離での連絡用として開発されたラクリマと言い、魔力の塊である物体で通信しているのだ。実際にあってるわけでもないのにはぶてたミラの機嫌をあやすほうが面倒だと考慮した俺は約束していたのですが。とうの一週間は昨日である。つまり…。
すっかり忘れていました。はいすっぽりと。
いやまず遭難した時点でそのことに頭がいっぱいになることはご理解いただけるだろうか。否、どんな理由があろうともミラの機嫌を損ねてしまう可能性のほうがでかい。いやむしろ100%といっても過言ではない。
今はどうミラが機嫌を損ねず、それをいかに回避するかによっている。たかが女性一人の機嫌をというが。俺にとってこのミラジェーンという女性は特別であり、
「…見えたぞ」
俺の背に乗るピースからの呟きに思考は自然と中断され対策を幾度も練っているため下を向いていた顔を上にあげた。
一週間ぶりにみる我がギルド。疲れからか溜息まじりに俺は言葉を吐いた。
「ようやく帰ってこれたか…」
「…あぁ」
「妖精の尻尾《フェアリーテイル》!」
ΘΘΘΘΘ
「どういうことだ貴様ァ!!」
それは俺がギルドの門をくぐろうとした矢先に、強烈な打撃音とともに響いた。
何があったかといざギルドの酒場に顔を出すと、皆が皆同じ一点の場所に視線を向けている。その先にあるものこそ先ほどの怒鳴り声の持ち主であり、机を割ったであろう者。
怒りを露わにし、そのきれいな緋色の髪でさえ、怒りを体現しているのではないかとあふれる魔力により揺らめいている。ミラとは違う属性でクールな美人といわれその今や顔も怒りで顔が染まってしまっている彼女。
”妖精女王《ティターニア》”
それが彼女の強さの象徴であり、つけられた二つ名。本名は、”エルザ=スカーレット”
そんな彼女が相対するガラの悪いやつは、”ラクサス=ドレアー”。このギルドのマスターの実の孫にしてちょーがつくほどの実力主義者。俺はこいつとよくケンカする中ではあるが故、あぁいう面構えなどには慣れているのだが、今はへらへらと笑っているのが酒場の入り口あるここからでもよく見える。
魔導士ギルドの中でも指折りなギルド。”妖精の尻尾”その中でもかなりの実力者として並べられる彼らがなぜ睨みあっているのか。
あの立場がエルザではなく、俺だったらどおりはいくのだが、あのエルザがだ。彼女の性格上、むやみな喧嘩を望まない。むしろ平和主義の人間だ。これは彼女の自論でありとてもそう当は思わないのだが。
しかし彼女とてそういう行動はなるべくさけるはず。
何かあった。
その一言に尽きるのだ。
「…む。なにがおきたのだろうか」
俺の背にいるピースも事に気付いたのか顔をのぞかせて言葉を発した。
「分からん。とりあえず、じぃさんに事情を…」
ガタンッ
俺が動こうとした瞬間だ。にらみ合い状態だったエルザが、二階から飛び降りた。
「私が連れ戻す。それまで皆は待っていてくれ。いいですかマスター?」
「そうじゃな…。お主が適任じゃろう…、まかせた」
「分かりました」
そう言い残すと俺の横をエルザは、そそくさと通り過ぎ俺に見向きもせず、ギルドを出て行ってしまった。つまりだ。みんなの視線の先であった注目の的が俺の横を通り過ぎ、消えていったのだ。そうすると自然に視線は消えた的から新たに表れた的へと移るわけで…。
「…」
「…」
皆が皆俺に視線を集中させているということになる。
「た、ただいま…」
俺の帰宅はなんともきまづい雰囲気になったのである。
ΘΘΘΘΘ
その沈黙したきまづい雰囲気を壊したのは以外にもエルザ、ラクサス共々と一緒に二階にいたミラだった。
「グラン!」
その胸までかかる綺麗な純白髪をゆらし二階から駆け下りてくる彼女の呼びかけに俺は体を彼女に向け、早速この場の状況の説明を要求したのは間違いないだろう。
「これはどういうことだ?ミラ」
「それが…」
言いにくそうに下へと視線を外したミラ。どうやら相当まずいことらしい。ギルドの二階と言えば指折りの実力者、つまり魔導士ギルド管理するトップの人間、マスターに認められた魔導士であるS級魔導士の資格があるものにしか受けれない曲者ばかりの仕事だ。何かトラブルでもあったのか。
俺は視線をこの”マカロフ=ドレアー”、じぃさんへと移した答えを聞かねばならない気がしたのだ。これはなにかあると。
俺の視線に気づいたじぃさんは、渋々と重そうに口を開いた。
「ナツとハッピー、それからお前さんは知らんじゃろうが、新人のルーシィがS級クエストにいったんじゃ」
頭を抱え、やれやれと困った風に溜息をつくじぃさんをみて。俺はようやく納得がいった。確かに合点のいく話だ。エルザがあれだけ怒りを露わにするのも確かだ。
「あぁ、あいつらやらかしちまったかぁ…」
「…馬鹿だな」
いや確かに馬鹿なのには変わりない、S級は本当に危険そのものだ。一度経験し身をもって実感しまえばいいという話もあるが、それは命あっての賜物だ。命なしでは、どうしようもない。
「さっきエルザが出ていく前に、グレイもナツ達を追いかけていったんだけど帰ってこなくてそれで…」
「なるほど、状況はわかった」
ミラが詳しく説明をしてくれるも彼女の顔は暗いまま、強ち自分がよく確認しなかったからなどと負い目をぬっているのだろうが。
ペチッ
「いたっ」
こんなやつにはデコピンが一番だ。まず自分を真正面に見て向き合ってくれるからな。
俺のデコピンに彼女は可愛らしい声を上げると軽く涙目になる。おいおい…俺そんな強くしてないぞおい。
「別にお前のせいじゃねぇよあの馬鹿が勝手におこした騒動だ。お前が気に病むことじゃねぇよ」
「で、でも」
「はいはい…。お前のそのいつものことは聞き飽きてる。それにあいつらが元気で帰ってくりゃぁそれで済む話さ。あっ、あと反省なこれ大事」
「う、うん…」
さてと、そう呟くときょとんとしているミラを置き、俺は肩を二、三度回し、俺の背からようやく地に下りた茶猫へと声をかける。
「もう少し休息は先になりそうだが、ついてくるか相棒?」
「…まぁまた疲れるが帰ってくれば、ミラにねこまんま作ってもらうさ」
言ってることと態度が不釣合いに見えるのは俺だけですか。まぁそんなことよりも。
「んじゃぁそういうことで。俺たちもあの馬鹿ども連れ戻してくるは」
これで俺の恋人も先ほどの顔とは打って変わっていつもの笑顔を取り戻してくれるといいな。
うん、今日の天気は晴天である!
ミラさんかわいいよってことでしたぁはい。まぁネタバレはよくないのであまり明かしませんが、