いざ、連れ戻すとは言っていたものの場所がどこだか俺は知らない、ましてやどんなクエストを受けたかもわからないため、付け加えミラに説明してもらったが、まさか”ガルナ島”へ行っていたなんて思いもしないぞ…。
いや確かに二階のクエストボードの中では一番やすい報酬であるが故にか。
用意周到なのか、それともあの野生動物《ナツ》の鼻の良さもしくは感の良さなのか…。まぁややこしいクエストではない。俺とましてや俺より先にでたエルザがいれば十分事足りるであろう。
であってほしい…。
しかしここで一つ問題が出てくる。
移動手段である。ガルナ島はその名の通り”島”の分類だ。そう本島から離れる離島。移動手段となる足、つまり”船”が必要となってくる。”港町ハルジオン”までは列車でなんとかなるもののガルナ島事体の直通の定期便なるものが存在しない。なので船持ちの船乗り達に頼むしか方法がないのだが。
「すまねぇな…、あの島とは関わりたくねぇんだ。他を当たってくれ…」
「島にはいかねぇよ!あんな島の話も聞きたくねぇ!」
こうなってしまっている。頼みを聞いてくれるどころか、その名が出てくる度に断られるばかりだ。
”呪いの島”、ガルナ島。
「『近づくだけで呪いが降りかかり、その身は悪魔と化す』ねぇ…」
港の船乗り達は怖がって誰も島には近づかないらしい。実際何件かあたるも皆首を横に振っているのがこの証拠だ。
「…妄信だな」
「まぁそうであってほしいよな。事実だったらもうナツ達悪魔になってるだろうし」
ここまで断られるとさすがに心が折れてきてしまうが、ナツ達が帰ってこないとなるとどうにかしてガルナ島へいった手段があるということになる。
いやまさか泳いでいったんじゃないだろうな。…奴ならあり得るか。だがゆっくりしている時間はない。もし何かあった後では遅いのだ。もう失うなどはごめんだ。
と港の岸付近をピースとどうするかと途方に暮れているとどうも見知っている人物が目に入る。
「お、エルザじゃん」
そう視界の端に俺たちと同じく港の船乗りに頼み込んでいるエルザの姿が入る。あの緋色の髪に鎧は間違いないだろうエルザだ。
「何故だ!いいだろう行き来往復ぐらい!」
「ひっ!勘弁してくれ!あの島にはいきたくねぇんだ!」
前言撤回。
”脅し”でした。胸倉つかんだ立派な脅しでした。
「…相も変わらずだな」
「そうだな…」
彼女の変わりようのない姿に苦笑いを浮かべる俺達だが、彼女と行き場所は同じだ。合流するのも悪くないと彼女に駆け寄る。ついでにこの情けない表情を浮かべている船乗りを解放するために…とでも付け加えておこう。
「エルザちょっとたんま!すまんなうちのギルドのもんが…もう大丈夫だ作業に戻ってくれ」
「すまねぇ助かった…」
どうやら腰が抜けていたようでなんとも情けない表情で情けない去り方で消えていったがこの鬼の血相をしているエルザをどうするものおか。俺の背中冷や汗でいっぱいです。
「なっ誰だ!ん?グランとピースではないか」
「おっす」
「おっすではないはっ!なぜ交渉中のじゃm」
「エルザ…相手のことをもう少しは考えろ…な?」
「む…」
どうにか収まってくれたようだ。よかったと安堵をあげるもそういう場合じゃない。胸を下したおれは再度彼女に顔を向け、話を進める。
「エルザ。その様子じゃガルナ島行きの船は見つかってないらしいな」
「あぁ…。ということはグランもナツ達を連れ戻しにか…」
「まぁな」
「あいつらめ…。マスターを裏切りおって…!」
う、おおうエルザさんの怒り沸点頂点だ…。やばい怖い。話かけずらいにもほどがあるぞおい。俺も今度からルールはしっかり守ろう。いや守ってるけどさ。
「ま、まぁなんだまず足をみつけねぇと」
「それもそうだな。しかし私も何人か聞いて回ってはみたものの、はずればかりだっ」
あっ、ほかに数名犠牲者がいるんですね。かわいそうに…。俺は心の中で静かにねぎらいの合唱を送った。
「俺も、というかいるのか?本当にガルナ島へ連れて行ってくれる船乗りなんて…」
「現にナツ達があきらめて帰ってくるのなら、馬が合う。が帰ってきていないとなると移動手段は不明だがガルナ島には間違いなくいるだろう。だがしかし私達がいかねば話にn…ム」
「ん?どうしたエルザ?」
顔下に向け、これから先を考えていたであろうエルザの視線が鋭く上にあがる。真正面にいる俺へと視線が重な…らない?となるとエルザの視線の先は俺の背にある水平線だ。自然と俺はその視線の先へと移るわけだが、見えるのは真っ青な空を映す空ばかりだ。いや彼女が視線を向けるのにも理由が必ずしもあるはず…。
目を細め、凝らしてみると水平線に小粒ほどの影が見える。え、あれ?
「海賊船だな…」
「…だな」
「はぁ?」
茶猫と女騎士が目を細めぼそりと呟いた。
え、あれ二人ともみえちゃうの?!あの小さな小粒大ほどの影が海賊船とわかるぐらいにはっきりみえちゃうの!?どんだけ視力いいんだよスコープでもしこんでんのかよ!とツッコミを入れるぐらい俺は驚き半分あきれ半分の表情を浮かべている。あまりの出来事に停止するのも性。
その間に冷静沈着の彼女は素早く動いた。
「グラン、ピースを借りる」
ーーガシッ
「「え?」」
これにはさすがのいつも表情をあまり見せないクールなピースも驚きを露わにし、茫然にくれるもすでに時遅し。彼は背に担いでいる銃を掴まれ、なすがままな状態。
そして颯爽と船に向かって走り出した彼女、エルザは止まらない。え、おいまじか?
俺はここにきてようやくこの常人離れした考えを持つギルドのメンバーの中でもさらに突起した彼女の思考にようやくたどり着いたのだ。いやてかまじか。
「ちょまて!エルザ!お前海賊船に乗り込むきか!阿呆か!もうちょっと探せば見つかるかも知れないだろうが!てかさっき言っただろう!もう少しお前らは人のことをだな…!」
「時間が惜しい!」
その一言で俺は彼女が見せる華麗な舞いのような一刀に伏せられ、駆ける中ピースを腕の中で説得し海賊船へと飛び立つ彼女を見送るのだった。
”足”が手に入ることだし、いっか。
俺はそう彼女の心配をせず、海賊船に乗る船員達にもまた静かに合唱を送る。
彼女、妖精女王《ティターニア》だし。
ΘΘΘΘΘ
さて彼女らを見送ったのはいいものを移動手段の空を飛んであの小粒ほどの船にいくという手もピースが連れていかれたわけで置いてけぼりつまりぼっち。
することもないので階段に座って少しの間休憩でもするかと腰を下ろしたところ、こちらに飛んでくるピースが視界に写った。どうやら休憩している暇もないようだ。
「随分早かったな」
「…エルザは重い…勘弁してほしい」
「お前の気持ちもわかるが…な」
彼女が身にまとう洋服は鎧だ。”HEART KREUZ《ハートクロイツ》”と呼ばれる服のブランド店制の鎧だ。風のうわさで彼女の迫力に負け無理矢理作らされたという話を聞いたが…。
まぁ鎧を着せた女性を担ぐといえばおわかりいただけるはず。どれだけの労力が必要か。そうはいってもまだ俺を運んでもらってないわけでもう一仕事してもらいたい。
よろよろと力なく降りてくるピースに声を掛ける。
「んじゃぁもう一仕事よろしく」
「…はぁ」
うん、休息を入れずにここまで来ているので疲労がたまっているのはわかるが、まぁなんだそう帰ったらたっぷり休息させてやるよ相棒。
そう心に止め俺は背中を掴む彼に身を預け、空に飛びだち数分もしないうちに米粒ほどの大きさだった船も近づいてくる。割とでかい海賊船だ。うん、海賊船であってる。だがしかし本当によくみえたなこれ…。
近づいてゆく甲板の風景も鮮明に映り始める。この場合普通は、船員が掃除など甲板の上で其々自分がなすべきことを行っている風景が飛び込んでくるであろう。そう普通は。
今の現状はどう足掻いても無残にも甲板の上に気を失った船員が転がっているとしかいいようのない残酷な状況だ。
俺はその状況は作り出したであろう先に到着しているはずのエルザを探す。
おっ、いたいた。おーいっ!エルザー降りて大丈夫かーァ?」
「大丈夫だッ!」
俺は彼女が気づくように声を張り上げ、手を振り確認を取る。それに答え片手をあげ返答をしてくれたところをみると彼女も大事には至ってないようだ。そもそも彼女が深手負うとこなどみたことない。
「っと、お疲れさん」
「…もう無理だ。寝る」
「はいよそこらへんで寝てな」
どうやらあまりの疲労に彼の集中力も尽きたようだ。半分俺のせいでもあるので俺を下した後休憩をとってもらうことにした。だがあまりのよろけさに落ちるのではないかと心配にはなったものの無事に目的地まで連れてきてもらったので彼には感謝である。当の本人は誰にも邪魔されないところで見張り台でおねむのようだ。
さてそんなわけで無事に到着した俺は舵をとっているであろう人物に剣先を向けるエルザへと歩き寄る。
先ほど剣を握っていなかった彼女がなぜ今になってどこから出したかもわからない剣を握っているのか。可能性的に海賊船に積んであった剣を拝借したという手もあるが、彼女は俺と同じ魔導士だ。
そうこれこそ彼女の魔法であり、武器だ。
彼女の魔法名は”騎士《ザ・ナイト》”
別空間にストックする魔法武器などを取り出し次々に持ち替えることを”換装”という。その”換装”を利用し、戦うスタイルなのだが、彼女は武器と別に自信の能力を底上げする”鎧”までも”換装”し戦う。その魔法こそが”騎士《ザ・ナイト》”というわけだ。
まぁこれが俺が彼女を心配しなかったわけであり、彼女の強さであるわけだが、本当に乗っ取るとは…。
聞かずともわかるだろうが念のためだ聞いておこう。そう思い俺は剣を右手に握る彼女に声を投げる。
「んで実際どうなの?」
「大丈夫だそうだ。…任せたぞ」
「ひぃ!わかったよ!いうことは何でも聞くから殺さないでくれぇー!」
その鋭い目線を向け、剣先を向け、さらに脅しをかけるエルザさんまじぱねーっす。機嫌が悪いのでいつもより何割も増して視線が鋭くなっている。えっ、いや本当に殺さないよな?
だがどうやら本当に足はつかめたようだ。これでようやくあいつらのいるガルナ島へはいけそうだ。
「大事になってないといいがな」
「あぁ…」
そうだS級クエストだ。何が起こっているのかわからないだけで不安になってしまう。それだけ危険な類であるS級クエスト。なにせ物によっては生死にも関わるものだ。あいつらの実力を疑うわけではないが、S級の中にもこのS級魔導士のエルザでさえ、危険な仕事もあるのだ。
今の返事を聞くにエルザもエルザなりにあいつらの事心配はしているようだ。少し怒りのほうが上回っているご様子。
「まぁあいつらの実力なら大丈夫だろ」
「あぁ、だがあの馬鹿どもには反省が必要だ」
ひぃいいだからエルザさん少しはその血相なんとかしてくれませんかね!?
ガルナ島まで俺の精神持つか不安です。そううなだれ甲板のはしっこで壁にもたれかかる。海風が気持ちいいと現実逃避。
はい。ちょっと中途半端ですがここできらせてもらいます!もう皆様もご存じかとおもいますが、今物語はガルナ島編からの始まりです!その前に起こったグランの経由はそのうち掘り出していくのでお楽しみに!ではでは!